ハンティング記録


                                            個人の部屋へ
                                            ホームへ
                                            ハンティングの部屋へ

  
2024年2月12日(月)
B近年まれにみる

 花粉も飛び出している中、気力を振り絞って出猟。壊れかけていたGPSも新しいのを買った。今回も初めてくコースだが、途中で、1度行ったコースに合流する。今回は長距離を歩くプランで行く。
 10時40分頃歩き出す。最初の数十分は何事もなく、じきに、メインルートに合流。以前来たのは何年前か、ゆうに5年以上前だろう。
 延々と南の方角へ歩く。日が差して暑い。木陰は寒い。
 下斜面から鹿が逃げる足音。肉眼だとおぼろげにしか見えない。双眼鏡(8×42)で見ると、大き目の
鹿がこちらを見ている。角はない。少し遠い。しばらく見ていたが、そのうち鹿は立ち去った。幸先いいなと再び歩き出した。
 それから5分程度で、雰囲気のある場所に来る。下斜面に注意しながら近づくも、何もいない。ふと気が抜けかけた時、上斜面から音が。すると、30mほどの距離、
鹿(メス)2頭が、左右に分かれて逃げていく。撃とうと思えば撃てるタイミング。だが、下斜面ばかり気をつけて上がおろそかになっていた所で上に鹿がいたせいで、すこし拍子抜けしてしまった。
 しばらくたたずみ、また歩き出す。歩くと暑いが、高度が900mほどあるため、風は冷たい。日陰は水たまりに氷が張っている。ちょうど12時、日が差した場所で昼食を取り、休憩する。本当なら八代海も遠くに見えるはずだが、PM2.5 等のせいか、白く霞んであまり見えない。30分ほど休憩し、また歩き出す。
 うねうねと曲がりくねった道をひたすら進む。進行方向のすぐ下の斜面を
鹿が逃げていく。メスか。
 その後も歩き続ける。暑いし寒い。膝もやばい。道の真ん中、日に照らされて、白くシルエットが浮かび上がる。
鹿だ。4〜50mほど。これは映像が取れるかと、しゃがみ込んで、銃を地面に置き、ズボンの左ももポケットからスマートフォンを出そうとするも、なかなかうまくいかず。やっと出して撮影し始めたが、鹿の姿はない。くそ―。まあ、撃てる状態にあったということは俺の勝ちだ。どこかにいるかなとそろそろと近づく。下斜面かと思ったら上斜面の林を逃げていく。ふぅ。
 往路か帰路か忘れたが、
鹿をまた1頭見る。今日はだいぶ鹿と出合ったな。
 道もだいぶ下りになって来た。1時30分頃でまだ行けるかもしれないが、安全を取って帰ることにする。
 帰路の途中、下斜面からガサガサとうるさい。これは猪だなと分かったが、どうにもこうにも姿が見えない。思い切って少し近づくと、途端に逃げて行った。しばらくはあたりをガサガサとしていたようだが、次第に聞こえなくった。結局姿は見えなかった。また帰路へ。
 3時30分を過ぎ、もう今日はおしまいかなと、とぼとぼ歩き、緩い右カーブを抜けようとした先、どう見ても鹿が座っているように見える。オスで、しかも2頭。しかし、疲れ目で霞んでいるため、我が目を疑う。スパイクか?鹿に見える木の株か?いやしかし・・。目に入った時点ですべての体の動きを止める。不自然に体を止めたため、きつい。目も、なるべく鹿(らしきもの)を凝視しないよう、周辺視野でとらえる。ゆっくりと銃を構えてスコープで覗き込むが、どう見ても
鹿だ。でもまだ疑う。しばらく様子をうかがうと、首を動かしたり耳をブルブルさせている。信じられないが、オス鹿が2頭、座って休んでいる。もっとよく見たい。双眼鏡で見たい。でも、胸の前にあるホルダーを開けたら逃げるのではないかと怖くて、なかなか動けない。一旦後ろに下がるのも怖い。しばらくしてホルダーを開けて双眼鏡で見ると、まぎれもないオス鹿2頭。1頭は枝分かれした二股角、もう1頭もかろうじて枝分かれ。メス鹿は撃つ気になれず、オス鹿なら撃つ気になるかと思うも、日向ぼっこしている姿を見ると、しかもハーレムを作れずにあぶれたオス鹿2頭だと思うと、なかなか撃つ気にならない。せめてその姿だけでもできるだけ長く見ようと、体を動かせない辛さを我慢し、見続ける。
 首や腰が痛くなる。腕もしびれてくる。勇気を出して今度はレーザー距離計を左胸のホルダーから取り出し、距離を測ってみた。彼我の高度差ほぼ無し。右の鹿は62mで左は67m(うろ覚え)。結構距離はあるな。この距離でも、普通に動けば見つかる。逆に、動かなければ気づかれない。風向きもいい。距離がそこそこあるからか、座っているからか、あまり大きい鹿には見えない。撃とうと思えば撃てるが、あまり気が乗らない。どうしたもんかと、首と腰の痛みに耐えながら、数十分。鹿は、地面に頭を下ろしたりして完全にリラックス。ますます撃つ気が失せる。
 そのうち、何か物音がして、2頭が立ち上がる。なにやら、もう1頭来たみたい。そいつもまたオス
鹿だ。3頭、少しずつ斜面を登ったり下りたり、地面の木の根などを食べてている。双眼鏡で見続ける。斜面を登って見えなくなるならこちらもあきらめがつくが、なかなか登って行かず、うろうろしている。こちらもしびれを切らして、少し動いてしまった。そうするとたちまち鹿が気づいて動き出した。こちらは止まる。第3の鹿が道上にいて、警戒している。ちょっと動いただけなのでよくわからなかったみたいだ。必死に制止し、そろそろと双眼鏡を出して除く。鹿はこちらを見ている。動いてはダメだ。見続ける。そのうち鹿は警戒を下げた。第3の鹿は3,4又で、そこそこ角も大きい。でもなぁ。逡巡を続ける。銃を構えてスコープで見続ける。かがんで片膝をついて、構える。それでも照準は揺れて、なかなか定まらない。心理状態が出るのか。上下左右に波のように揺れる十字線。色々な思いの中、引き金を引く。外れたようだ。外れたのか、外したのか。鹿は驚いて斜面を登っていく。鹿がいた場所に行ってみるが、やはり血などは見当たらない。ホッとした気も半分。外した悔しさも。距離は70m前後だと思うが、集中力が高い時は、像も大きく見えるんだが、今回はそうではなかった。まあそういうことだ。もう十分堪能した。後は帰るのみ。日没は6時くらいだが、午後4時40分くらいには車に到着。歩きすぎて足、膝が痛い。
 今回は、近年まれにみる充実した猟だった。捕ってはいないけど、それはどうでもいい。

2024年1月14日(日)
Aこれだよこれ

 猟の気力が戻ったうちに、出猟。今日行くところは今まで行ったことが無い場所。10時頃歩き始める。歩き出して10分、ふと思い立って、進行方向の写真を撮る。逆光。撮り終わって、歩き出したところで、進行方向数十mの林に鹿が左へ逃げていく。うわぁ、これが無意識に足を止めた理由なのか。少し勘が戻ったか?気を取り直して進む。高度としてはさほど動かず、トラバースする形で作られた作業道を進む。
 2,3キロほど歩くと終点。鹿の糞はある。昼食を取りつつ休憩し、少し木々に分け入って、鞍部でいいポジションを見つけ、隠れつつ、日当たりのいい斜面を見張る。1時間か2時間か、日が当たっていても寒い。
 成果が無く、3時を過ぎる。もうそろそろ戻った方がいいか。静かに戻りつつ、鹿を見つけよう。3時半頃には、疲れのせいか、日が傾いてきたからか、辺りがよく見えない。これは今日もダメかなと思いつつ、戻りがけに、ふと気になる場所があった。鹿がこの斜面を下るイメージが湧いた。比較的遮蔽物がある場所の倒木に腰かけてしばらく待ってみることにした。
 そこまで期待していた訳ではないが、上斜面、下斜面、どちらも鹿が好みそうな場所。通り道の可能性が高い。どれくらい座っていたか、10〜20分ほどか、突然上斜面からガサっと大きい音がして、びっくりする。上を伺う。ガサガサという音がするが、こちらに降りてくるというよりは右に移動している。しかし見えない。右に移動しているなら、こちらの通り道(スペースが開けている)を通って下斜面(なだらか)に行くはず。銃を構えながら右に移動したところ、ドドッと音を建てながら
鹿が3頭、こちらが思った通りに通っていく。距離は30mほど。撃とうと思えば撃てたが、すべてメス。そのまま行かせる。久しぶりにこんな至近距離で鹿に遭遇した。こうだったな。こういう風な感じだった。この感覚も久々で、忘れていた。
 その後はそのまま帰る。前回にもまして充実感。しかし、左手指が重度のしもやけ。治るまで数週間かかった。

2024年1月8日(月)
@ブランク

今期は令和5年(2023年)度。前期(令和4年2022年)は2回ほど猟に行ったが日記を書かず。今期も、令和5年末は忙しくてとても猟どころではなかった。一念発起して半ば逆切れのような形で猟に行く。猟場に着くと、冷たい風が痛い。そういえば山の風はこうだったな、と思うほど、山から離れていた。なんだかんだで11時に歩き出す。去年はここで鹿を見たなぁとか思いつつ。汗をかきつつ登る。鞍部、稜線に到着、そこかしこの地面が掘り返されている。これは、来るのが遅かったな。鹿なのか猪なのか。これだけ地面の根っこを掘り返したのなら、もうここには来ないんじゃないのか?足を延ばして、これまで行っていない場所に進む。寒い。晴れているのに雪が舞う。風が強くて、こんなんじゃ鹿の足音など聞こえやしない。だいぶ奥まで分け入り、ほど良いスポットで1時間ほど粘ったが、寒さに限界。日差しのある所に戻る。それで、あっち行きこっち行きするが、結局獲物の姿は見えず。日が傾いて景色が黄色くなる。今日はダメか。メモピントが合わないし、仕方ない。来たら来たなりの充実感はある。

2020年11月23日(月)
@霧

昨年はなんだかんだで2回しか猟に行ってない。年々体力も視力も気力も衰える中,令和2年(2020年)も11月も下旬になってようやく出猟。
午前10時40分頃
山を登りだした。霧が濃くて,4,50m先を見通すのがやっと。このままだと猟にならないな。作業道は崩れていて,いくつも倒木を渡ったり,難儀する。歩き出して25分ほど,左カーブの道を過ぎたあたり,登りの45〜50m先か,鹿の姿あり。尻をこちらに向けている。もちろんこちらに気づいていない。スコープで覗く。撃つには鹿の向きが若干よくないが,撃つことは簡単。メスみたいなので,腕の力が無くなるか,鹿がこちらに気づくまで,スコープで狙い続ける。でも,20秒くらいで,鹿が左に走っていった。尻の毛は広がっていないので,こちらに気づいたかもしれないが,人間だと警戒してはいなかったみたい。距離系で測ってみたが,なぜが動作しない。距離の数字が出ない。電池はあるようで,壊れたか?と思った(後で使ってみると動作したので,霧で暗くて動作しなかったようだ)。
歩いていくと,鹿が今度は警戒鳴き。さっきの鹿か,違う鹿かも。
その10分後,山の下の方から,銃声らしき音が2発。さっきの鹿が下りて行ったのか?少し場所が違うようだが・・。
数キロ歩き,大きな岩に腰かけて休む。霧は相変わらず深い。そこを起点に,少々歩き回った後,昼食を取る。昼頃になると少しずつ霧が晴れてきた。日も照ってきた。
稜線北側の雑木林に近づいて様子をうかがう。地面に動き。双眼鏡で見ると,ヤマドリのつがいだ。鹿などは今はいない。また岩の場所に戻る。この岩に腰かけて,気が向くままいろいろとあちこち行ってみよう。
また銃声が2発。こちらは山の稜線の上にいるが,下の林道が通っているあたりから聞こえた。まあ正確にはどこから銃声なのかはよく分からないのだが。
遠くで,工事車両(ショベルカー?)やチェーンソーの音が時折響く。今日は勤労感謝の日では?
あっちに様子を見に行っては戻って休憩,次はこっち,などと繰り返していたら,ある場所で,突然,鹿の警戒鳴き。ずいぶん近い。稜線の斜面で遮られた向こうにいるようだ。少しずつ近づく。近いようだが足音などはしない。普通は鹿が遠ざかって鳴く声も小さくなるが,逃げる気配がない。だいぶ待ったが,うるさいので,わざと足で地面をけったりしたが,効果がない。「うるさい!」「あっちへいけ!」と怒鳴ったが,逆に鳴き返してくる。しびれを切らして,鹿に相対しようと右へ移動。うーん。眺めてみたものの,近くにはいないようだ。うん?だいぶ向こうで何か動いたか?双眼鏡で覗くと,鹿の首から先だけが葉木から覗いていて,サッと引っ込んで,逃げて行った。距離計では70m。鹿の声は響くので,遠くにいても近くにいるように錯覚することが多い。メスのようだったので,別にいいや。また岩に戻って休憩。
数十分休憩し,あちこち行く。再度,鹿がいた場所のもっと先まで行ってみると,下方でガサガサっと逃げる音。鹿だろう。姿は見えず。

 つづく

2019年12月28日(土)
A暖冬

 前回の猟からまた1カ月空いてしまった。年内にせめてもう一回は猟に行こうと,午前9時に家を出発。車で山道を走っている間は鹿は見なかった。10時半頃猟場に着き,歩き出す。ここはもう6,7年ほど来ていない場所。あまりにも奥地なのでシカやイノシシなどもあまりいない(皮肉なことに人里近くにシカやイノシシはいる)。歩き出しても,新しい足跡はほとんどない。それでも,山を歩けるだけでも良しとしよう。今日はハンティング用のザックではなく,登山用(正確にはバックカントリースキー用。スキーはしないが。)のザックを使ってみたが,歩くたびにギシギシ言って,獲物の足音に注意しながら歩くのが難しい。ここら辺は高度800〜900m前後なのに,そこまで厚着は必要ない。6,7年前に来たときは30cmくらい雪が積もっており,歩くのが大変だったが,雪の一つもない。つららはあるし,水たまりは凍ってはいるが,大分暖かい。暖冬を体感する。
 歩き出して1時間程経った頃,進行方向にパッと目に入った姿。ピタリと止まり,見る。
鹿だ。ずんぐりとしているがさほど足は長くない。スコープで覗く。鹿に間違いない。距離は少し遠いが狙える距離。角は無い。地面の草かなんかを探しながらウロチョロしており,横向きで静止している時間が長いので,簡単に撃てる。もちろん,撃つ気は出ない。こちらは一旦物陰に引っ込み,スマートフォンを取り出して,録画しようとしたが,撮影になってしまい,シャッター音がしてしまった。しまった,と思ったが,動画撮影に切替えて,また物陰から出たが,鹿の姿はない。シャッター音に気づかれたか。それなりに距離があるのに,鹿は耳もいい。そのうちに少し遠くから鹿の警戒鳴きが聞こえてきた。さほど警戒したような鳴き方ではない。あー。鹿が居た場所との距離を距離計で測ると,45〜50m位のようだった。そこまで大きくない鹿で,ずんぐりとしており,これまで見てきた鹿と比べるとちょっと違うなぁと感じた。今,日記を書いていてハタと気付いたが,もしかしてカモシカだったか?インターネットで画像を検索したら,どうもカモシカだったんじゃないかと感じるようになった。まさかカモシカがいるとは思わなかった(今まで猟で出合ったことがないから)から,カモシカという選択肢を考えていなかった。
 また歩き出す。昼に日向で昼食を取る。日差しは強く,暖かい。小休止の後,また歩き出す。作業道を歩いているが,その終点まで行き,分かれ道まで戻って,少し高度が低い道を歩く。しかし,その道も,木々が生い茂って歩けなくなったので,戻る。
 少し道を戻り,稜線上の比較的平らな場所で,木の陰に隠れて待つことにした。1時間以上待ってみたが,寒さに耐えきれなかったし,午後3時半頃には少しずつ山が暗くなり出しているので,戻ることにした。だいぶ疲れた。体力が無い。方というか首に銃をスリングで吊るしているが,少し具合が悪いらしく,首が痛くて仕方ない。2週間前には背中・右肩甲骨辺りの関節を痛めて死にそうな思いをしたこともあり,無理しないようにしよう。
 車まであと数百mという距離で,だいぶ疲れてぼおっとしながら歩いていたため,進行方向約50m先にいた
鹿2頭に気づくのが遅れた。ハッとして立ち止まったが,間に遮蔽物も何もなく,1頭に気づかれて,逃げ出されてしまった。仕方ない。角も無かったし。車まで来たが,まだごご4時頃。少し違う作業道に行くことにした。数百m歩いたが,もう疲れた。日没までは時間がまだあるが,もう帰ろう。車に戻り,帰途に就く。
 帰り中,もう人里のすぐ近くの山道,
鹿が2頭(母子)がいた。さほど警戒していないようだったので,車から降りて「おい。あっちいけ!」という。さすがに逃げて行った。また車に乗り進んでいたら,またさっきの鹿達が道端にいた。こういう警戒心がない鹿が,車で流し猟をしているハンターに簡単に撃たれてしまう。腹が立ったので,また車から降りて,今度は至近距離から「こら。あっちいけ!」と怒鳴る。なんだか大して警戒せずに逃げていく様がまたまた腹立つ。少しは懲りたかな。簡単に撃たれないように祈る。俺は一体何をやっているのかと常々思うが,自分の気持ちに正直に行動しているだけ。撃ちたいと感じた獲物だけ撃つ。それだけ。

2019年11月30日(土)
@令和元年の狩猟開始

 狩猟解禁日は11月1日からだが,仕事やらなんやらの都合で週末もゆっくりできず,12月にもなろうかという時期にようやく狩猟に出た。
 山里の集落を少し上がったところで,今季初の鹿と遭遇。スパイク(オスで角が枝分かれしていない若い鹿)だ。こんな時間にここにいるってことは,ハンターがあまりいないのか?と考えていたら,数分後,また鹿だ。どちらもそんなに小さくない。狩猟人口の減少と関係があるのかどうか・・・。
 自宅から1時間程度で目的地に到着。車を止め,装備を整えて歩き出す。今年は暖冬で,平地では気温も上がるが,ここ(山奥)ではやはり寒い。でも,通常ならこの時期ここは凍り付いていてもおかしくない,積雪があってもおかしくないが,そこまでではない。この分ならジャケットは着ないでもいいだろう。午前10時頃から歩き出す。
 最初の内は目のピント機構がうまく働かず,視界がボヤっとしている。鹿が居ても見つけられる自信がない。ある程度慣れるまでは数時間かかるかも。
 おっと,道が崩れている。これなら他のハンターは来ないだろうから,鹿が居る可能性が高い。そこかしこの地面が掘られているから,鹿か,考えたくないがイノシシが好き放題しているんだろう。地面には鹿の足跡もある。崩落した部分を乗り越えたり,倒れた木をくぐったりして,なんとか先に進む。体幹が弱っているのか,バランスをうまく取れずにやじろべぇみたいにフラフラする。静かに歩きたいが,落ち葉が乾燥して歩くとバリバリと音を立てる。どうすることもできない。
 数百メートル歩いたか,眼下の沢を少し除いたとき,反対斜面で動き。そろそろと動くものが見える。
鹿だ。三頭。角は無い。警戒鳴きもせず尻の白毛も立てず,静かに斜面を遠ざかり,見えなくなる。距離は80m位か。いるなぁ。警戒鳴きをしないということは危険をそう感じていない,ハンティングプレッシャーを受けてない,つまりハンターに追われていないということ。だいぶ人が入っていないと分かる。
 しばらく待って,また歩き出す。おっと,また崩落だ。今度はなかなか通り抜けるのが大変だ。木の根っこにブーツが挟まって仰向けに転ぶ。無様な姿だ。ヨロヨロと崩落部分を抜ける。汗が噴き出る。日差しも強い。
 また数百メートル進むと,鹿がよく出る場所に着く。その手前から慎重に歩き,しゃがんで木々の間を透かして様子を見る。すると,70m位の距離だが,動きあり。銃のスコープで覗くと,
鹿だ。一頭。少し小さめか?こちらに気づいたようだが,警戒鳴きもせず,姿を消した。しばらく様子をうかがうが,何も変化なし。なので,鹿が居たあたりまで慎重に進む。たどり着き,ふと佇むと,なにやらガサガサと進行方向左前・斜面下で音がする。鹿か?今度は音が左に移動した。崖下の沢を覗くが,見えない。今度はもっと左,進行方向からして後ろから音がする。ガサガサガサガサ・・・と小刻みな音。いやな予感。イノシシか?そうするうちに,姿が見えてきた。数十mの距離があるが,斜面をイノシシが上ってきた。イノシシを撃つつもりはないが,向かってくれば撃つしかない。イノシシがそこまで大きくは無かったので,少し安心した。携帯で動画を撮影する。数十秒撮ってもこちらに気づかないので,「おい!おいっ!」と呼びかける。さすがにイノシシかこちらを向いたが,しばらくこちらが何なのか分からないようで(イノシシは視力が悪い),二呼吸後,ザザッと方向を転換して元来た斜面下をすごい勢いで掛け下って行った。すごい怒っていたようだった。距離は何mかなと距離計で測ろうとしたら,バッテリー切れ。
 また歩き出す。途中,キジかヤマドリから威嚇されたり,姿は見えない小動物に驚かされたりしながら,奥へ奥へと進む。昼食を取り,一休みして,また奥へ行く。猟初日だから疲れやすい。終点まで行かず引き返したいと弱気になったが,この場所は数年来ていなかったし,今日行かなかったら今期再び来ないかもしれないので,無理して行ってみた。途中,また道上斜面が崩落していた。何とかやり過ごし,歩き出しから約4km,終点に着いた。すると,7,80mの距離で,またしても
鹿。二頭。角は無し。こいつらも警戒鳴きをしない。鹿はいるなぁー。
 それ以上やることが無いので戻る。汗だく。この頃には少しずつ日が傾いている。疲れもだいぶたまっている。歩いていると,姿は見えないが鹿が飛び跳ねて逃げていく足音がする。トボトボと歩き続ける。崩落場所を挟んで4,50mの距離を
鹿が逃げていく。角は無いし,こちらは崩落場所を超えるのに必死。その後,4時過ぎに車の場所まで到着。試しに駐車場所の下の方の反対斜面を見に行くと,底でもやはり鹿が居て2頭逃げて行った(ちと遠かった)。
 日没(暦上)は5時11分だから,まだ猟はできるが,ここはかなり暗い。もう止めだ。車に戻り,帰る。帰る途中,また鹿に会う。またスパイクだ。朝スパイクに会った場所とはちょっと違うが,同じ鹿かもしれない。
 そんなこんなで,だいぶイノシシと鹿に荒らされた国有林の話でした。 今日の歩行距離は約8km。

2019年3月9日(土)
E愉快な仲間たち

 今年最後の猟。前回の猟からまた1カ月も空いた。この日記を書いているのは6月4日で,もはやよく覚えていない。それはともかく,休日しか猟に行けないので,明日は用事があるので,今日が最後。今から猟場の開拓はできない。開拓はオフシーズンに林道回りなどをするとして,最後の猟はどうしようか考えてみた。その結果,今季初めて行った場所で,しかも鹿がたくさんいた場所に行ってみようと考えた。12月1日に行った場所。あの時は12月でもまだまだ暖かくて,歩くときジャケットなど着れない位で,年末年始寒くなり,現在,猟期終わりで寒さは峠を越している。
 12月1日は初めてだったので,あまりあちこち歩きまわらなかったが,今回は,南の稜線を少し下って見た。何もなし。また北上して,鋭い稜線に少し降りてみた。風が強くて音が分からないが,至近距離で鹿が見えた気がしたが,しばらくして近づいたが鹿を見ることはできなかった。
 谷に降りる作業道(荒れて倒木だらけ)を降りて行ったりしてみた。谷に降りる作業道は,車どころか人も歩いていないように見える。そういう場所には,決まって動物の足跡,地面を掘り起こした跡がたくさん残っている。地面を掘り起こした跡はたぶんイノシシ。前回はイノシシは見なかったが,谷底に近いところまで降りれば大分いそうだ。降りれるところまで降り,動物がいる気配がプンプンするが,こういう場所は大分不安になり,緊張する。休憩がてら数十分待ってみたが,少し怖くなり,来た道を戻る。こんな底にいたら,イノシシが向かってきたら(ほとんどはあっちが逃げるが),人間は逃げられない。こういう勘は当たることが多いので,登り道を戻る。降りるのは楽だが上るのは大変。汗が出る。汗が出ると臭いを振りまいて動物に察知されるので,なるべく汗が出ない程度のスピードで登る。途中,上から「ギュィー」とかなんとか鳴き声がした。臭いにおいもしたので,緊張する。こちらを察知しているのか分からない。何かが降りてくる様子もない。また登り出す。
 ようやく,稜線近くの道まで上がった。そこから東へ。12時を過ぎたあたりで,岩に座って昼食(カロリーメイトとスニッカーズ)をとる。食べながらボーっとしていると,道前方から何か生き物が歩いてくる。狸?とおもったが,アナグマだ。こちらに気が付いていないようで,少し日が出ていて気持ちいいのだろう。「ルンルン」とでもいった風で,軽やかに歩いている。どんどん近づくが,どこまで来たらこちらに近づくんだろうと思って見ていたが,大分近づいたところで,こちらに気づいたのか分からないが,右に90度曲がり,道の上斜面(道から少しだけ高くなっている)へ上がろうとし出した。そのまま登って遠ざかるのかと思いきや,登ろうとしてすぐに,あきらめた?のか,また道に戻り,来た道を戻って行った。別に走って逃げたわけでもない。何だったんだろう。距離計で図ると,一番近づいたところで9mも無かった。山の中でこの距離は本当に至近距離。能天気な奴だなぁ。まあ,こんなところに人が来るのはほとんどないからなぁ。
 昼食を済ませ,谷底双眼鏡で覗いた後,稜線の北側に行ってみた。勇気を出して林の中に入る。木々が多くて暗い。絶対ここは動物が頻繁に行き来している。落ちている枝で立ち木をこすって音を出してみた。オスジカが角を研ぐ音の真似だ。猟期末だから,オスジカが縄張りを守ろうとこちらに急行してくるのをイメージしたのだが,10分以上は擦っては耳を澄ます,を繰り返したが効果は無かった。諦めて稜線の日向側に戻る。
 さて,これからどうしたものか。稜線の南側をもう少し先(西)まで行ってみるか。鹿が居そうな場所なのに,これまで獲物の姿を見たことはない。最後だから行ってみよう。足音を立てないように気を付けて,少しずつ進む。そんなに期待はしていなかったが・・・,終点地点を望める場所まで来たところ,いた。予期しない場所に獲物がいると,状況を把握するのに一呼吸必要になる。あちらが気づいたとしてもこちらの姿は頭だけしか見えないという,ぎりぎりの状況でこちらが先に気が付いた。すぐに視線を外して,そろそろとひざを曲げて頭の位置を下げる。
メス鹿だった。オスじゃないのか〜メスかーと逡巡したが,一応狙うだけ狙おうと考え,銃を構えて頬付けをしながら,ゆっくりと上体を上げて,スコープに姿をとらえる。鹿は横向きで,こちらに気づきつつも,あまりよく分かっていない様子。人間とまでは気づいておらず,何か変だ位の感じかもしれない。50m以内,40m位か。スコープの十字でとらえ続ける。鹿は動かない。こうなったら,腕がしびれて銃を下ろすのが先か,鹿が逃げるのが先か,勝負だ。何十秒なのか,1分以上なのか分からないが,腕の限界がきて,銃を下ろした。鹿はまだ居る。こちらは疲れた。あれ?鹿の近くに小さい黒いのがいる。イノシシか?2匹。スコープで覗く。アナグマか?いや,だ。2匹の狸だ。猟中に狸を見たのは初めてかもしれない。つがいか?親子か?そのうち鹿は林の中に消えて行った。狸はしばらくいたが,そのうち林に消えて行った。距離計で測ると,鹿までの距離は44mだった。距離を測る前から,撃っても外さない確信があったが,メスを撃ってもねぇ。現場がどんな状態か見に行った。特に変化なし。
 銃を構えていた場所に戻り,そしてもう少し後ろに戻り休憩した後,また様子を見に行った。鹿は来なかったが,また狸が2匹,出てきていた。双眼鏡で覗き続ける。紛れもない狸。何時間か前に,斜面の下の方を歩いていた時,上からすごい獣臭がしたのは,もしかしたらこの狸たちかもしれない。
 そのうち狸もまた林に消えていき,こちらももう時間的にも体力的にも限界。下山する。
 これで今期は終わり。1発も撃たなかったが,充実感はそれなりになる。撃とうと思えば何頭でも撃てるし,新しい場所にも行ったし。

2019年2月10日(日)
Dたそがれ

 またまた日にちが空いたが,格好の連休に猟に出発。
 午前10時過ぎ,前回車を止めた場所に停め,その南側の谷へ。地面はぬかるみ,歩きにくい。標高は800m以上。鹿の足跡は少しは見受けられる。稜線を超え,南の谷へ。ここも大きな谷だが,基本は杉林だから,鹿はいるかなぁ?どうだろう。日差しを受け,稜線の数十m下に平行に作られた作業道(車は入れない)を歩く。どこまで続いているか分からないが,下りになっているのが,帰りの登りの辛さを想像させて,気が重い。
 少しずつ,主には南側の下斜面(数百m下まで)を双眼鏡で覗いたりしながら,作業道を下る。足跡は・・・小さそうだが,何頭かの鹿の足跡,それも今朝のものらしいのがある。鹿が上り下りした跡もそこかしこにあるが,肝心なのはいつ上り下りしているかだ。日中は動いていないかな?数十分下ると終点。そこから先は杉林がなくて雑木になっている。作業道も無い。また少しずつ上りの道を戻る。息を切らせては銃は撃てないので,なるべく歩幅を小さく,ゆっくりと上る。途中,休憩できそうな場所にザックを下ろし,腰を下ろして休憩。そうこうしているうちにもう12時を過ぎたので昼食をとる。
 谷のどこかか,それとも谷向こうかは分からないが,チェーンソーの音がする。音が反響するので正確な位置が分からないが,数km先,少なくとも銃弾が届く場所にはいないようだ。
 その休憩場所に腰を据えて,主には下の斜面(まばらな,ある程度間伐された杉林)を双眼鏡などで覗く作業をする。南に面して日差しがあるうちはそこまで寒くは無いが,肝心の成果がない。見通しはいいのだが,その分鹿は来ない。ある程度人の手が入っている場所には,鹿は来ないことが多い(少なくとも昼間は)。たぶん,標高はもっと下がるし,道路にも近いが,作業道の終点があった場所の先の雑木林の所に鹿が居る気がする。でも,それこそ雑木が生い茂っており人が歩くのはほぼ無理だろう。切り開かなきゃ。
 次第に雲が厚くなり,太陽が雲の中へ。気温は下がる,谷底から冷たい風が上ってくる。目の前には大きな谷,しかし動物はいない。いるとすれば時折鳥が鳴くくらい。じっとしているだけでも疲労して,なんだか眠くなる。ふと気づくと,オフコースの「たそがれ」が頭の中で流れている。中学校時代によく聞いていた曲だ。別に,今山の中が黄昏れてい居るわけではないのに,不思議だ。猟の最中,大体は単調な歩きの最中だが,頭の中に曲が自然と流れ出すことがある。シチュエーションと曲はさして関連しない。何の作用だか分からないが。
 少し変化を付けようと,作業道を登ったり下りたりを繰り返すが,成果なし。
 午後2時過ぎだったか,北の方で銃声。それ以外は変化なし。
 午後4時半となるも相変わらず何も起きないため,あきらめて車に戻ることにした。鹿の足跡はあるんだがなぁ。車に戻るが,そのまま帰るにはまだ時間がある。今日の日没は午後5時50何分。車の周りの斜面を覗いたり待ったりしてみたが,ダメだった。どうも,ここら辺は日中は鹿が出ないと思われる。ここの少し北の方では前回鹿がいたが,来たか東の方に鹿はいると思われる。
 まあいい,今期はもうこの場所に来ることは無い。来期,状況が変わっていることを期待しよう。

2019年1月13日(日)
C霧

 今年は暖冬だからか,寒くて猟に行けない,という日はあまりない。連休がある週末に行けなかったら次いつ行けるか分からないので,行くことにした。天気予報は「曇り」だったが,降水確率も低かったので,まあ大丈夫だろう。
 今回行く所は全くの初めての場所。地形図を見て,大体のイメージや鹿の生息場所の予想を付ける。車をどこに留めて,どういう風に歩くかなどは,現地に行かないと分からない。航空写真ではある程度高いところまで林道がありそうだが,一般車両通行禁止になっている場合も多い。その場合は車で入らず,脇に車を止めてそこから上は徒歩で登る。また,そういう場所でもハンターが車で入ってくることもあるので,気が気じゃない。林道を登って,どこか小さい作業道など,車が入ってこれないルートに入れたら理想的だ。
 県道から林道に入る。天気は曇りで霧が深い。外に出て様子を伺う。寒い。来るまで林道を登る。幸い,通行禁止の看板は無く,最近できた道を登って行くが,どうも嫌な予感がする。道を作っている途中で,どん詰まりまで行くと引き返すに引き返せない(道が狭い上に切替しスペースもない)可能性がある。途中広い場所があったので,勇気をもって引き返し,比較的安心する道まで戻った。時刻は午前10時過ぎ。
 この頃から,霧もそうだが,小雨が降りだした。・・・・待てども待てども小雨は断続的に降り続ける。1時間が過ぎた。止まない。帰ろうかと思ったが,時間と共に晴れるのでは,という思いから,帰れない。待っている間に,ちょっと早い昼食もとっておいた。
 12時を回った。少し雨の様子が変わった。峠を越した気がする。代わりに霧は深い。決断の時だ。ザックを背負い銃を担ぎ,意を決して歩き出した。林道の分かれ目,ほとんど車が入っていないであろうと思われる支道を歩き出す。霧で10数メートルしか視界がない。たいてい大丈夫なはずだが,やっぱり怖い。南北に連なる稜線の鞍部を西から超えて東側へ。霧がえもいわれぬ雰囲気を醸し出す。比較的なだらかな,作業道だ。通常,道以外の場所が急斜面のことが多いが,ここは,道の上下に登ったり下りたりし出来そうなくらい緩い斜面。YouTubeでよく見るアメリカのハンティング動画に,オレゴンの森(霧と緑深い植物)にそっくりだ。ここ数年,天気がいい日にしか猟に行っていないので,こんな霧が出ているハンティングフィールドは久しぶりかもしれない。
 肝心の鹿はどうか。地面に足跡はある。しかしさほど新しくはない。斜面に上り下りした後はある。しかしこれも最近の跡とも言い切れない。なんだかパッとしない場所だ。そうこうするうちに,道は折れ曲がり,南へ稜線沿いに歩くことになった。地面が盛大に掘り起こしてある。木の根っこの横がボッカリと穴が開いている。イノシシか?それにしてもどこもかしこも跡だらけだ。ゆっくりと歩いて様子を伺うが,イノシシ・鹿の姿は見えない。音もしない。雨はパラパラと降るが,耐水加工のハンティングウェアでしのげる程度だ。銃が濡れるのは仕方ない。
 稜線を数キロ南に下ったが,少し雨が強くなってきたし,次第に高度が下がっているので,帰るときの登りの苦労を考え,引き返すことにした。
 またオレゴンの森(風の場所)に戻ってきた。こんどは,少し下の道(下にも道があった)を行こう。もうだいぶ稜線歩きで疲労している。パラパラと降る雨はある程度止み,次第に明るくなってきた。若干天気が回復したようだ。全体的に暗い場所で,見通すのは困難。往きに鹿が居なかったこともあり,あまり期待をせずに歩く。日が当たる場所があった。こんなところに珍しい,竹林(細い)だ。竹林は鹿が居ることがよくあるからなぁ。感覚的には鹿が居る可能性が高い。その手前は鹿かイノシシが地面を掘り返した場所がある。その掘り返した地面をもっとよく見ようと近づいたとき,目の前の竹林一面で白い尻が躍る。
鹿だ。一番左が大きい。角がない。右3匹は小さい。角は無い。母鹿と小鹿3頭の計4頭だ。竹林だからさすがの鹿でも動きは鈍い。母鹿は撃とうと思えば撃てたかもしれないが,小鹿3頭を連れている鹿を撃てない。メスを撃つ気もないし,それに,こちらは直前まで気づかなかった。こちらの負けだ。銃を構えることもなく,鹿を見送る。鹿たちは鳴くこともなく下って行った。距離計で測ると,23m。えらく近かったな。いたんだなぁ,ここにも。鹿が。鹿はどこにでもいる。「ここはいないだろう」と安易に考えてはだめだ。それにしても,オスジカはいないなぁ。もっと高度が低い,しかし人が来れないような急斜面にいるんだろう。そこに行こうとしたら命懸けだ。
 数十分後,車が見える場所まで戻ってきた。車に帰ってもしょうがないので,鹿が降りてきた跡がたくさんある斜面の木立の近くで,待ってみた。じっとしていると寒い。霧も出たり晴れたり。1時間ほど待ってみたが,成果が無いので,トボトボと車に帰る。一旦は銃をしまって,車の中で休憩。日没は午後5時30分。まだ1時間以上ある。そうだ,朝に引き返した作業道に歩いて行ってみよう。車に帰ってきた時も,今日は他の車の跡はなく,誰も来ていない。歩くのは大丈夫だろう。これで今日の猟は終わりだ。
 緩やかな登りを歩き出す。何百メートルか歩くと,地面に鹿の足跡。新しい。あれ,これはどう見ても今日だ。鹿が歩いているのかなぁ・・・とボーッと目を落として歩いていると,目の前,50m以上は距離があるが,
鹿が一斉に(4頭)に逃げ下る。こんどは盛大に鳴いている。4頭?さっき(といっても2時間近く前だが)の母小鹿か?真相は分からないが可能性は高い。ここらの山はあいつらしかいないのか?
 しばらく道を行って,後戻りして車に戻る。
 新しい場所の開拓と,鹿との出合い,この二つはクリアした。しかし,このまま,「オスジカしか撃たない」方針だと今期は鹿を撃つ機会はあるのだろうか?

2019年1月7日(月)
Bなかなか・・・

 前回の猟で右ひざの半月板を痛めたようで,2週間はフイにしてしまった。年末年始はなんだかんだで猟には行けず,フラストレーション(行こうと思えば行けたはずなのに気乗りしない自分のふがいなさも含め)だけが募る。
 土曜が前日からあまり天気が良くなかったためパスし,日曜に猟に行くこととした。行くと決めてもどこに行くかを家を出る直前まであれこれ迷う。ようやく決めて9時ころに家を出る。
 目的地は山奥の奥だが,ある程度通い慣れているからか,1時間ちょっとで到着。10時過ぎに歩き出す。
 比較的穏やかな天気だったので,登りが続く場所で試しにジャケットを脱いで歩いてみることにしたが,甘かった。冷たい風が容赦なく体を通り抜ける。その間中体温を奪われ続ける。登山で,歩き続けていられるなら問題ないが,ゆっくり歩いて要所要所で立ち止まって辺りを警戒する猟で薄着は厳しい。ジャケットを脱がなければよかった,どこかで着よう,と思いつつ少しずつ歩いていると,左斜面上,30〜40mほどの距離に,白い尻が左へ歩いている。こちらに気づいていないようなので双眼鏡で確かめると,
鹿だった。角は無いのでメスだろう。撃とうと思えば撃てるが,メスだし,まだ11時だ。藪は深いが少し観察することにした。すると,これから行こうとしている山の奥から,車のドアが閉まるような「バン」と音がした。ビックリ。え?車がどっかから入っているの?ここは作業道だが,一般車両通行禁止で,日曜は作業していないはずなのに。車がいつ来るかとドキドキしたが,いっこうに車の音はしない。鹿も,しばらくごそごそしていたがどこかに行ってしまったようだ。
 仕方ないのでここでジャケットを着て,風を防ぐジャケットのありがたみを感じつつ,再度歩き出す。車のドアが閉まるような音がした場所に行ってみるが,今日来た車のタイヤ痕などは見つからない。もしかしたら,山のふもとの車の音だったのか?集落には思いのほか距離的には近いから,車で来るなら何十分もかかるが,音だけなら谷をうまく登って驚くほど鮮明に届くこともありうる。そういうことだったんだろう。
 日差しがある場所は暖かくて気持ちがいい。しかし晴れ過ぎても,木が生い茂った場所が見通せず,鹿を見つけるのに難儀する。そのため,数十分後,『ここらへん,日光が眩しくてなんも見えんな』と思っていた場所で,鹿を逃した。50m位前の斜面から「ワン」と何かが鳴いたが,何も見えず。最初は,猟犬がいるのかと思ったが,その後逃げていく途中で盛大に鹿の警戒(威嚇?)鳴きがした。「ワン」ではなく「ブォフ」と表現するのが正しかったのだろう。あんな鳴き声をするのはオスだろう。しまった。オスを逃した。でも見えなかったんだから仕方ない。その数百m先でも,こんどは小さい鹿の警戒鳴きがする。もちろん,そこかしこに鹿の寝床やフンだらけ。
 12時過ぎに昼食を取り,その少し奥で,しばらく鹿が来るのを待ってみる。寒い。立っていても寒いので着込めるだけ着込むが,とにかく寒い。1時間以上粘ったが,あきらめて,もっと奥へ行く。前期,前々期にも行っている場所。ここでは,鹿を2度見たことがある(一度は外したが撃ちもした)。ここは暖かい。ここなら日が差す間は待っていられるだろう。2時ころになっていたが,今日の日没は5時24分くらいなので,車まで帰る時間を考えても4時までは待てる。さっきと打って変わって日光が当たり暑いくらい。ここは沢始まりの場所だが,ふと30m程の距離にある木を見ると,どうも鹿が角を研いだ跡のような傷がある。双眼鏡で覗くと,間違いない。ここはオスジカが来る。これまではなかったことだが,今回はオスジカが来ている。今は基本的にオスジカしか撃たないことにしているので,俄然やる気が出てくる。問題は,こちらが待つ時間に鹿が来るかどうかだ。朝や夕方や夜に来ているってことだって大いにあるが,その場合は打つ手なしだ。一縷の望みを捨てず,ポジティブに待ち続けるしかない。
 暖かいのは幸いしたが,できれば小さい折り畳み椅子が欲しい所だ。2年前までは持っていたが壊れてそれっきりになっていた。立ち続けて,きつくなったらしゃがんで,では本当に膝や腰に負担が来る。前回はそれも一因で右膝をやってしまったらしい。しかもここは待つ場所が,斜面上から丸見え。鹿は上から来ると想定していたため,待つ場所としては良くないが,待てる場所がここしかないので仕方ない。
 ・・・・とはいえ,あんまり好感触もなく4時を過ぎてしまった。上の方でガサガサと音がしたのは確かだが,よくわからなかった。少なくとも,傷がある木の所には何も来なかった。前期だったか,アナグマがここに来たのになぁ。何も来ない。
 4時過ぎて,あきらめて戻ることにする。この時点でもう今日の猟は終わりのようなもの。帰りの車までの歩きの途中に出合う可能性はあるが,オス鹿じゃない限りはあんまり撃つ気はない。だいぶ疲労した。とぼとぼと帰る。歳のせいか,少し暗くなっただけで周囲が見えづらい。数百m歩いたところで,目の前20〜30m先を黒いのが斜面を少し上っている。形から,アナグマ?と思ったが,よく見ると小さい
イノシシだった。2頭いた。一頭は1m程登ってこちらを伺っている。イノシシなんて撃ったところで面白くもないし,どこかに親イノシシがいたらえらいことなので,「あっちへ行け」と怒鳴った。イノシシはフゴフゴ言いながら登って行ったが,あんまり遠くまでは行かなかった。相手してられないのでさっさと先を急ぐ。
 すると,そこからまた200mも歩かないところで,こんどは下斜面を見ると,2頭の
鹿がこちらを見ている。距離は40m位。メスのようだったので,「おーい」と手を振ると,尻をブワッと拡げて逃げていき,盛大に鳴き始めた。その後,オスジカに逃げられた場所を通ると,さっきの鹿の鳴き声につられるように,ここでも鹿が鳴いていた。勝手にせい。
 歩き続けると暑いので,またジャケットを脱ぐ。途端に風が通り抜けて,冷たい風が吹いていたのを思い出させる。今度は歩き続けるから大丈夫だろう。銃はザックに括り付けて,その後も車まで歩く。帰りは短く感じるはずだが,今日は疲労していたからか,なんだかとても長く感じた。
 車に帰り着いたのは5時15分頃。本日の歩行距離は約10km。
 

2018年12月1日(土)
A稜線挟んで

 今回は前回の猟の場所の4kmほど西へ。
 車で向かう途中,前回車を止めた場所に差し掛かる。川に沿って続く道を走っていると,川向こうの斜面,70m位離れた場所を
鹿が元気に走っている。おう,今季初めて見た鹿だ。そのまま車を走らせると,数百m行ったところで,さっきの鹿だろう。目の前の道を右から左に横切って逃げる。あいつはもう少し思慮深くならないと長生きできないな。
 目的の場所に到着。車を止め,稜線目指して登りだす。ここは初めて来るところなので,地形図と衛星写真(航空写真?)を見て大体の感じは掴んでいるが,実際のところどういう風かは行ってみないと分からない。それが楽しみのひとつではある。
 ハンティングは鹿を殺すだけが目的ではない。経験をフィードバックしながら鹿の生態を研究し,地形を研究し,鹿の居場所を推定し,状況を想像し,時間帯やどのように行動するかを考え抜き,計画を立てて,それを実行する。行ったことがない場所に行き,想像と答え合わせをし,現地を見てまた考え,周囲を観察し,忍び歩き,待ち,暑い寒い怖いを耐え,たまに鹿と合い,猟が終わったら行動を反芻して楽しみ,反省点があれば改善し,また次の計画を立てて・・・。
 ともあれ,少しずつ作業道を歩く。最近できた作業道だ。今日は暑い。汗がすごいし日差しに焼かれる。鹿の足跡は・・・いっぱいある。しかも新しい。今朝のものに違いない。小鹿は1匹はいる。ほかの鹿の足跡で,蹄の先の方が広がっている(逆八の字)のがある。ふーん。
 斜面下は比較的緩やかに谷底まで斜面が続いている。谷向こうの斜面までは1kmはあるだろう。
 どんどん歩く。3kmほどで作業道が途切れる。そこから先も稜線を歩こうと思えば歩けるが,無理はしない。正午を過ぎたので,カロリーメイトなどを食べて休憩。この場所は絶対に鹿が居る。足跡があるからここら辺を鹿が頻繁に行き来している,というだけではなく,昼間にも絶対に行き帰する。今は東西に続く稜線の南側にいるが,南側の谷から登ってくる,すぐ北の稜線を南に越えてくる,どちらも可能性大。今日はここで3時ころまで鹿を待ってみよう。そのあと移動しても,日没まで2時間はあるから他のこともやれる。
 少しだけ道を戻り,日差しの中,鹿を待つ。目よりも耳を頼りに。じっとしているとそれは寒くなる。ジャケットを着こむ。1時間待つ。立ったりしゃがんだりして,待ち続ける。
 何時ころか,2時半過ぎか・・,距離的に4,50mほど北が稜線だが,そこらへんから,はっきりとした音じゃないが,何か,感覚的に,『グワッ』とプレッシャーが来た気がした。ほら来た!としゃがんだまま臨戦態勢になり待ち構えた。しかし,一向に何事もない。そのうち平穏な日なたの稜線に戻った。あれぇ,おかしいなぁ。来たと思ったがなぁ。気のせいか。それから数十分。数十m移動したり,上を見たり下の斜面(谷底)を見たりしたが,成果なし。
 仕方ないので,もう数十m道を戻って稜線に上がる。なにか北の稜線の反対側から音がした気もするが,往々にして気のせいのことが多いので,あまり気にかけず,南の谷底を双眼鏡で覗く。何もなし。
 ふと気になって,往きにも少し見たが,稜線北側に様子を見に行く。南の谷底を覗いて10mしか歩いていないが,稜線北に出たとたん,思いがけない光景。30〜40mの距離に,
鹿が3頭。一斉にこちらを向いている。真ん中の鹿は明らかに小さい。小鹿だ。6つの目玉の何ともかわいらしいこと。角はない。メスだ。一番近い鹿の尻は白く逆立っている。こちらも驚いたがあちらも突然のことで驚いているようで,数秒,見つめあう。なんだか,ずっと見つめあっていられそうなくらい,空気も時間も止まったかのような。メスを撃つ気が無いので,メスしかおらず少々がっかりしたが,撮影だけでもしようかとズボンの右ポケットから携帯電話を出そうと目をそらして動いた瞬間,ダダっと鹿が逃げ出す音。目を上げると鹿はいなくなっていた。遠くから警戒鳴きが盛大に上がる。撃つ気はないが,メス鹿でも出合えればまあうれしい。しかも,こちらの読みはそれほど外れてはいなかった。
 ここにいても仕方ないので,ザックを背負い,違う場所を探索に行く。数十分歩き回り,また同じ場所に戻ってきた。少し休憩。日没まであと1時間もない。さっき鹿が居た場所に行き,しゃがんで少し様子を見る。鹿が来るはずはないが,しばらくすると,前回聞いたのと同じような,鹿の鳴き声。オスか?どこにいる?
 いろいろとうろうろしたが,成果が無かったので,帰途に就く。作業道を下っていると,日没の数分前,もう結構暗い中,6,70m先の斜面を2頭の
鹿が逃げ登って行く。角は無いようだ。どっちみち暗いから撃たないが。
 日没の少しあと,車まで帰り着く。
 今日は歩いた距離は6kmほど。さほど歩かず,待つ時間が長かったが,新しい場所に行き,鹿にも一応出合い,撃つチャンスがあった(撃たなかったが)ことを考えれば,成功と言えるだろう。 

2018年11月24日(土)
@平成30年初猟

 なんだかんだといろいろあって,猟解禁から3週間も経ってやっと猟に出れた。いろいろ考えていたが,やはり小鹿はもちろん,メス鹿も撃ちたくない。撃つとすれば,オスジカ。流し猟は当然しないが,自分の考えたシチュエーションで撃つ。獲り方にもどんどんこだわって行こうと思う。獲れない確率が高くなるが,充実感が違う。というわけで,今回は,オスジカを狙う。オスジカはそうそう目にすることはできないし,人が歩ける場所を歩いてもなかなか見られない。一応,候補を絞り,獲りたいシチュエーションを厳選し,それにこだわってみる。午前10時前頃に場所につき,車を降り,登り始める。初めて歩く場所で,鹿の足跡はちゃんとある。しかるべき時に来れば確実に鹿が居る。しかし,ここは一応様子を見に来ただけで,先を行く。目的地は,谷というか沢というか,底の幅がせいぜい100m位のU状の場所。そこかしこに鹿の足跡,フン,寝ていた場所がある。鹿が入り乱れている場所だが,この時間帯に出てくるとは限らない。今日はここの一点集中で,何時間でも,それこそ日没まで居座ろうと決意。正午を過ぎ,2時ころまでは日差しも暖かったが,気づかないうちにどんどん気温が下がり(暖かい時でも吐く息は白かったが),気が付けば体の震えが止まらない。あまりの寒さに頭痛がする。それでも,これも含めてのハンティング。耐えて耐えて耐え抜くのがハンティング。今日は鹿が来ようと来まいとここで待つと決めた。昼前か,すごい遠くで鹿の警戒鳴き。こちらに気づいたはずはないので,おかしいなと思っていた。しばらくして,谷の反対側,中腹ほどにある林道(関係者以外立ち入り禁止)を,軽トラが下っていく。関係者の車両なのか,それとも禁止されているのに立ち入ったハンターの車両なのかはハッキリしないが,鹿が鳴くというのはまあそういうことなんだろう。その後,下の方,車を止めている方角から,銃声がした。その後,1時間くらい経ったか,話し声がした気がする。それに,銃声が続けざま3発した。どこで発砲しているか分からないが・・・・。
 結局,同じ場所で,寒さに震えながらまちつづけた。その間,左斜面100m程度の距離から,鹿の声。警戒鳴きではない,誰かに甘えるような声。小鹿か,メスが鳴くのか?姿は見えず。その1時間ほど後か,今度は右斜面200m以内から,また違った鳴き声。オスのような鳴き声。鳴き声をよく知らないので,ちゃんとした判断はできないが,オスだと思われる。どちらも,こちらに気づいていない。気づいていたらあんな鳴き声はしない。発砲はしなかったが,貴重な鳴き声を聞けただけでも良しとするか。
 ここでオスジカを取るという目論見は不成功。ちょっとやり方を変えないとここでは鹿は取れないだろう。あんまり同じ場所でやっても面白くないので,次は,また違う場所で,違う趣向で,オスジカを狙ってみよう。

2018年3月11日(日)
E最後

新しい場所に行く。20m以内の距離で1頭,40m以内で1頭の鹿と遭遇。その後,谷底に鹿発見。距離は50〜60m。撃ち下ろし。引き金を引いたが逃げていく。当たっているはずなのに,どうも,外したようだ。仕方ない。先を進む。かなりな距離を歩き,帰り際,午後4時半頃か,眼下の谷(沢)の底に2頭の鹿。距離は100mはある。我ながらよく見つけられたものだと思う。双眼鏡(8倍)で覗いても,いるとわかっていなければ見つけられないくらい。でも,母子鹿。できる限りオスしか狙うつもりは無かったし,もう1時間もせずに日没となる。今日で猟も最後だから,さほど撃つ意欲もない。ずいぶん観察したが,少しずつ沢を登っていき,鹿から外れた。道は沢の上流に向かっているので,無理かとは思ったがそろそろと,身をかがめながら近づく。すると,歩いている場所のすぐ下,20mもない距離の沢に,鹿が居る。さほど大きくない鹿。ずっと見てても一向に鹿はこちらに気づかない。せっかくなので携帯で動画を撮り続ける。鹿は気づかずにどんどん上って近づいてくるので,ほどほどのところで声をかけてやった。鹿は驚いて逃げて行った。人が入らない場所(軽トラなどが乗り入れない場所)は,こうも鹿は無警戒になる。これで今年の猟は終了。1頭も獲れなかったが,新しい場所に次々と行き,刺激をたくさんもらった。獲った獲物の数にはこだわらない。いかに充実できたかがすべて。もっと猟に行ければよかったというのは唯一の心残りか。

2018年2月17日(土)
Dちょっと南なだけなのに

 前回の場所から少しだけ南へ。もう10年近く通っていない(しかも1回しか通ったことがない?)ところなので,途中,道に迷う。雪は残っているし道路は凍っているし,ぬかるんでいるしで,タイヤは泥でぐちゃぐちゃ。
 
 ようやく目指していた場所に着き,車を止めて歩き出したのが午前10時30分。分かれ道を左へ。歩き出して5分で鹿が鳴く。しかも近かったのでびっくり。こちらは鹿を見てもいないのに鹿に鳴かれたということは,先に気づかれた訳だから,撃つのは無理だろう。まだ歩き始めたばかりだし撃ってしまえば猟は終わりだし。しかも,まだ弾も込めていない。一応,銃に弾を込め,安全装置をしっかりと掛け,再度歩き出す。すると,進行方向(尾根を登る道)に
鹿が逃げていく。逃げていくといっても少し悠長な動き。2頭?3頭?オスではない。少しずつ登って行きじきに見えなくなった。おー,いる所にはいるなぁ。鹿が居た斜面まで来て,さっき鹿を見た場所を距離計で測ると,100m超えていた。結構距離があったんだな。てことはある程度大きい鹿達だったんだな。どうも,距離感が鈍っている。山は距離感が狂う。小さい鹿でも近い距離だとそこそこ大きく見えるし,小さいな,と思っても距離が遠かっただけで,仕留めてみると結構大きかったなど。

 先を行く。少しずつ勾配が厳しくなるが,ここら辺は比較的なだらかだから,それほどきつくはない。日差しが無いと所には雪が残り,日差しがあるところはまぶしくて霞む。よく見えない。いたる所,鹿が居てもおかしくないような斜面。足跡は大小数えきれない。こんな場所はそんなには多くは無い。地面は昨日までの雨で,いい意味でフカフカで足音を消す。悪い意味ではドロドロでブーツに泥がまとわりつき歩くのに疲れる。分かれ道を左へ。すぐに行き止まり。後戻りして右へ。比較的雑木が多い。うん?また分かれ道。左へ行くと上に登る道,右は少々下って尾根を回る。下るのは簡単,登ってみよう。上る道は尾根の北側なので日が差さず暗い。暗いということは寒いということ。今回は服の選択がある程度うまくいったのか,雪が残る場所なのに,さほど寒くもなく(出している顔以外は),歩いて体温が上昇しても汗が不快なほど残らない。なんというか,こんなにも鹿を撃つイメージができる場所だらけの所は無いな。でも,ここは本番ではない。ここを通り過ぎて,前回たどり着けなかった谷に行くのが目的だ。そんなに時間をかけずにこの場所は通り過ぎよう。道が崩れていて危ない場所もあった。なんとか落ちずに通り抜けられたが,振り返って,通り過ぎた場所を見ると,帰りはちょっと無理そうだが・・どうしたもんか。そうこうするうちに,山の稜線が下りてきて,明るくなってきた。山の反対側,稜線の反対側(南側)に出られそうだ。おっと,作業道がある。助かった。日の下に出る前の林の中,ここらはずいぶん地面が掘り返されていて,イノシシでもいるのかといぶかしむ。

 作業道に出た。左は上の稜線,見晴らしがよさそうだ。右は下の谷に下っている。まずは左へ。ここらへんは鹿が何頭も寝床にしているな。叢がいくつも潰されている。上に登る。遠くまで見える見える。前々回に降りた谷が見える。そこに降りた道もばっちり見える。5,600m,もしかしたら1km以上離れてるかもしれんが。あそこまでどうやって行くんだ?ザックをようやく下ろし,休憩。標高は800m以上ある。風も強いが日が照っていて気持ちいい。杉はもう花粉を出す間近だろう,紫がかった茶色に変色している。休憩がてら,今いる稜線を少し歩きまわる。見ると,地面が何メートル四方も掘り起こされている。鹿か?イノシシか?ちゃんとした知識が無いのでいまいち分からない。しかし,見たことがないくらい大規模な掘り返しであるのは確かだ。ここは多分,人が全く来ないんだろう。稜線から,右の下り道を見る。あそこらへんに鹿が居ればばここから撃てるんだが。距離はどれくらいか?距離計で測る。120m?そんなにあるのか?どうもここら辺は距離感が狂う。ここで猟をするならライフルじゃなきゃダメだな。

 歩き回るのも飽きて,下ろしたザックの所に戻り,座って昼食をとる。食べ終わり,カロリーメイトの紙箱をガチャガチャやっていると,いきなり,後ろから今まで聞いたことのないような「
ブォッ!」という鳴き声(?)。ビクッとなったが,何の声か分からない。犬ではないはず・・すると,今度は鹿と分かる鳴き声がした。だいぶ怒っているような声だ。またブォッ!と鳴き声がする。これは鹿か。銃を取り,屈んで様子を伺う。ちょうど背後の沢かその向こうの反対斜面から声がするが,杉や雑木で全く見えない。動きも見えない。なので,できる限り屈んで左側,さっきの地面が掘り起こされていた所まで移動する。でも見えない。何も見えない。双眼鏡はザックの所においてきている。銃のスコープでは見つけられるはずもない。姿が見えないまま鹿としばらく対峙していたが,鹿が走り去る音がして,それっきりとなった。それから少し待って様子を見に沢まで行くが,当然,何もいない。あきらめて,ザックの所に戻る。あんな風に鹿に威嚇されるなんてほとんど初めてだから,びっくりだ。やっぱり,ここらにいる鹿は撃たれたり狙われたりした経験が無いんだろう。そりゃそうだ,こんなところまで来る奴なんてそうそう居るわけがない。車を降りて4キロは山を登ってこないといけないからな。だからこそ自分は来たんだが。

 休憩終了。やることは,下に下る道を降りること。ザックを背負い,歩き出す。岩だらけで歩きにくい,岩でつまずいて銃身が岩にぶつかりすごい音が谷に響き渡る。左手もしたたか岩にぶつける。心の中で悪態をつきつつ(これ以上音を立てたくない),下る。下りきった沢の部分,もっと下ろうとした,いよいよ本格的に道が崩れていて,ちょっと無理そうだ。沢の上に道が続いているので,登ろうか・・・・。ちょうどその思案中,銃声がした。遠いような近いような。風に流れてきたのか?少し不安になる。まあ,行くしかない。沢を登る道を数十m行くと,これまた崩れていた。これは強引に突っ切れない。沢に落下してしまう。もうこれは沢の底を少しずつ上るしかないみたいだ。道を戻り,沢に降り,沢に沿ってを必死で上がる。道が崩れている部分を超えて,岩を登って道に戻る。それだけで汗が噴き出す。こんなに寒いのに。

 しばらく息を整え,歩き出す。そこからは順調に上る。途中も道が崩れていて下(100以上はあるか?)を見ないようにすくみ上がりつつやり過ごし,やっと,稜線の鞍部まで到達。ここから先はさほど危なくはないだろう。ザックを下ろし,ジャケットなどを脱ぐ。一番下のウェアを日光と風にさらして汗を乾かす。南側に面した斜面を歩くことになるが,多分ずっと歩いて行けば,3キロほどで朝登って来た道のどこかの分岐点に合流するはずだ。まだ太陽が沈むまでは十分時間がある。しばし休憩。

 汗もある程度引いたのち,また出発。難所を超えて気が楽になった。どこもかしこも鹿が出る可能性が高いが,かといってそうそう鹿が出るわけでもない。程よい日差しと冷たい風が気持ちよくて,少しぼぉっとなっていたのかもしれない。何百mか歩いて,右カーブを曲がったところ,突然,
鹿と目が合って双方ビックリ。目の前20mほどの道の上2mほど高いところ。こちらも驚いたが鹿も驚いたろう。ダダっと走り去った。こちらは疲労でとっさの反応はできず,見送るしかない。でもオスではなさそうだったので,まあいいやと,見送る。しかし,鹿は,40m位の距離の木々の後ろで止まり,なんだか怒ったような鳴き声を続け,それ以上逃げようとしない。こいつまで俺を威嚇するのか。こちらも負けずに「うるさい」「あっちへ行け」とと怒鳴る。あちらも負けずに泣き続ける。やけくその鳴き方。もう面倒なのでこちらは道の下の斜面を眺めてやり過ごそうとするが,鹿は逃げずに,鳴くのをやめようとしない。ここまでされるとなあ,撃つかどうかは分からないが,一応,銃を構えスコープで狙いを定める。しかし,鹿の姿が探せない。鹿の鳴き声からどこに隠れているかはおよそ分かるのだが,姿を見ないで撃つのは絶対にしない。狙うというより,どこにいるのか探していたが,疲れて来たのでそれもやめた。そのうち,鹿は一声鳴いて逃げて行った。その時に姿が見えた。痩せた鹿だったかな。まだ若かったろう。鹿もいなくなったので,先を進む。鹿が居た場所を通る。なるほど,ここは絶好の日向ぼっこ場所だ。すごく気持ちがよさそうだ。鹿の気持ちはよくわかる。ぼーっと上の斜面を見ながら歩いていると,雑木の無効を鹿が逃げていく音がする。まだいたんかい。

 そこから,なだらかに道は下っている。どこもかしこも鹿が通っていておかしくない。長い長い道を下ると,ひときわ開けた場所に出る。左は杉林,右は雑木林が斜面上の稜線まで続く。こんなところがあるなんてなぁ。そこを抜けると,1キロも歩かないで,朝通った道に通じるところに出るはずだ(GPSの地図上)。少し日が傾てきた。午後3時半頃。何やら音がする。どうせ鳥が地面をほじくる音だろう。鹿の足跡と紛らわしい。一応確認すべく,しばし屈んで音の主を探す。よく見えないが鳥だろう。どうしよかな・・・・としゃがんで考えていたところ,背後から異音がした。振り返る。先ほど通り抜けてきた開けた場所,雑木林の所,距離的には100m位か,何か黒い物が動いた。イノシシか?と思ったが,短足のザザザザという音ではなく,ザッザッザッという足音で,犬か?とも考える。でもあんな大きい,まるでセントバーナードみたいな犬が猟犬にいるかなぁ?とも思う。その動物は,雑木の深いところを移動し,開けた場所を意図的に避けているようで,少しずつこちらに近づいていく(左に移動している)。ちょうど目の前,50m位に来た時に,チラッと姿が見えた。バカでかい
イノシシだ。日頃見ていたイノシシよりも段違いにでかいから,足音が違ったんだ。イノシシは斜面上の稜線に近い部分を平行に移動し,姿が見えるところで左向きのまましばし止まった。こちらに気づいた。撃てないわけではないが,懸念が二つ。いや三つだ。@稜線に近いので万が一でも弾が稜線を超えることがあってはならない。Aあちらが高い位置にいるので,撃って手負いにしたらまっしぐらにこちらに向かってこられて,ボルトを操作する間に次弾が間に合わない可能性がある。B多分今まで見た中で一番デカいから怖い。色んな思いが瞬時にめぐるが,イノシシが姿を見せたのはせいぜい2秒ほどで,すぐに見えなくなってしまった。もっと左は開けているから姿が露わになるか,そうしたらもう腹を決めてやってやろうと銃を構えて待っていたが,現れなかった。音もしない。稜線を超えてあちら側に行ってしまったのだろう。一息つく。こんなところにあんなデカいイノシシが出るのか,とちょっと怖くなる。よくよく地図を思い出したら,この南西をずっと下って行けば,直線距離で10キロもない距離に集落があるはずだ。やっぱり,イノシシは集落の近くに出没する。鹿・特にオスジカも。

 イノシシが出たので,ここは鹿も来るかもしれないと思い,何十分か待ってみたが,成果は無し。あきらめて道を下る。そうこうするうちに,朝通った道との分岐点までたどり着く。何か所かで止まって鹿が通るのを待つがダメ。あきらめて移動していると,目の前数十メートル先を
鹿が逃げて行く。なかなか,待っている場所に鹿が通りかかるような都合の良い話はないな。午後5時45分くらいに車を置いた場所に帰り着く(日没は6時)。まだ雪は消えずに残っている。ブーツも車も泥だらけ。帰途に着く。

 今期で一番充実した日だったかもしれない。鹿は(イノシシも)撃てなかったが,いろんな出合いがあった。撃てない,仕留められないフラストレーションは溜まっているが,生き物を殺すことが主目的ではない(少なくとも自分は)。ハンティングという行為を通じて得られる体験をしに来ている。そこでどのような体験をするか,自分が何を感じられるかが大事。
 今期,あと1,2回行けるかなぁ。

2018年1月27日(土)
C無断立ち入り禁止

 年末年始と猟に行けず,そろそろ行けるかなと思っていたら痔が悪化(毎年恒例)し,ようやく行けるかなとなったのが1月も終わり。なんということだ。
 ただ,猟に行かない間にアメリカからブーツなど色々購入して,それを使ってみる機会と考え,前向きに行こう。
 前回の谷に,今度は違う場所からアプローチしてみよう。前回車を止めたところからさらに何キロか奥地に。車を止め,歩き出す。午後10時50分。天気はいいのに,空気の冷たいのなんの。不思議なさわやかさ。至る所凍っている。霜柱,水の流れが丸ごと凍っていたり,地面の水分が凍っていて,歩くとバリバリと音がする。こりゃ鹿に逃げられる予感しかない。20分ほど歩いたか,いきなり,木に「無断立ち入り禁止」の金属板。ここは自分の良心が試されている。たぶん先を行っても誰も来ないだろうし誰にも見られることは無い。しかし,ただでさえハンターのマナー,法令違反が世間で言われているところ,ただ通るだけだといっても,ここを通ればずいぶん楽,通れずに引き返すとなると目的地に行ける保証もないといっても,そこはほれ,弁護士だ。自分を許せない。ということで,引き返し,途中,川を渡り,沢を登っていく。途中まではよかったが,最後の方は急な斜面を登ることになる。何とか登れたが汗だくだ。
 そこは前回のルートと尾根を挟んだ反対側。林道になっている。もちろん,だれもが来れるようなところではない。林道とはいえ,いたるところが崩れていて,車など通れない。何とか尾根の向こうに出ようと,何キロも歩いてみたが,どうしても登れない。途中,鹿の鳴き声。ピー,ピーと。姿は見えないが小鹿のようだ。歩きに歩いたが,結局諦めて,逆方向に歩く。また鹿が鳴くが,こちらは歩き疲れてぐったり。
 反対側に歩いたはいいが,鹿はいてもおかしくない場所はいくつもあったにもかかわらず,鹿はいなかった。ヤマドリは2羽くらいいたか。
 どんどん暗くなる。寒くなり。五木はやばいな。やばいくらい寒い。もう午後4時ころには暗くなり,寒さが尋常ではなくなる。雪はそれほど残っていないんだが,あんまり寒くて,帰り道に疲れて疲労凍死するんじゃないかと一抹の不安。歳のせいか,どんどん目が疲れてピントが合わなくなってくる。戻り道,下で鹿が鳴く。必死で目を凝らして鹿を探す。谷の底,150m以上距離はありそうだが,
鹿が歩く姿。双眼鏡で探すが,見つからない。まあ,仕方ない。
 少しずつ来た道を戻りながら,車に帰り着いたのが午後5時20分頃(日没は44分くらい?)。全く新しいところは,勝算は低いかもしれないが,面白い。今度もまたここに来よう。ただし,少し違う登り方になるが。もう少し南の方から登ってみようか。

2017年12月9日(土)
B雪

 今日は大通峠(八代市東陽町と五木村の境)を超えて五木村へ。大通峠に差し掛かると,さすがに寒いね。山肌や道端には雪が積もっている。
 午後10時50分くらいに歩き出す。雪を踏みしめて登る。歩き始めて10分も経たないうちに,右側斜面80〜100m位の距離に動きが。
鹿だ。1,2,3頭。最後尾が一番大きい。母鹿か。この場所は猟場への通り道で,発砲が可能かどうか少し怪しい所なので,銃には弾を入れていない。勿論撃つつもりもなかったので,登って逃げ去る鹿達を見送る。鹿が鳴いている。先を進む。
 至る所雪で,地面には鹿の足跡。複数の鹿だ。なんだか,犬の足跡も交じっているか?犬が入っている場所だと望み薄だが。人の足跡はない。雪の下は氷が張っており,バリバリと音がする。今は雪が降っていないが,昨夜降ったんだろう。雪が新しい。
 30分ほどで尾根に出た。ここから,南に大きな谷を見ながら,西へ尾根に沿って歩く。鹿の足跡は大きいのから小さいのからいくつもある。ここには何度も来たことがあるが,こんなに足跡が残っていたことは無い。
 昼12時20分頃,やっと休憩し昼食をとる。しかし寒くて座っていられない。歩いて汗だくなので余計寒い。ここはいつも寒いが,今日は格段に寒い。止まっていると冷えてるので,休憩もそこそこに,歩き出す。日差しのある場所に出ると幾分か楽になる。ここから先は行ったことが無い場所なので,わくわくする。尾根を横切る形で西に行く。左下の谷は深い。歩いていると,感覚的に,鹿がいるであろう場所がいくつも見つかる。カラスも鳴きながら飛んでいる。カラスがいる場所には鹿がいることが多く,どうもカラスはハンターに鹿がいることを知らせているのではないかと前々から感じていた。斜面の上,下(特に下方向)を注意して歩いていると,突然,後ろの上斜面から鹿の鳴き声がしてビックリする。振り向くと,そう遠くない斜面の上の方に
鹿がいる。そんなに大きくないし,角はなくメスのようだったので,『メスかぁ』とガッカリしたが,この鹿はまだ撃たれたことが無いのだろう,鳴いて少し上に逃げはしたが,後ろ向きに姿をさらして首だけこちらに向けて様子を伺っている。銃を構えてスコープで狙う。どうも構え方が悪いのか,少しスコープの十字が落ち着かない。かなり十字が揺れるが,まあ当たるだろうとの予感の下,引き金を引く。鹿は微動だにしない。と,少しして鹿は尻の毛をようやく逆立てて逃げて行った。当たっていないということだ。獲れないというより,当たらなかったことに少々ショック。距離計で測ると,水平距離で約58m。当たらない距離ではない。鹿の立ち方は確かに狙いにくかったが,それでもなぁ。
 あきらめて歩き出す。数十分歩いたか,開けた場所に出る。眼下の深い谷,向こうの山の斜面がよく見える。山肌はほぼ雪。すごい所だ。奥地も奥地だ。ここから少し歩くとドンドン高度が下がっていき,谷底へ到達。午後2時過ぎ。GPSを見ると,ちょうど5Km歩いて到達。帰りは登りを5kmかと思うと,そうゆっくりはしておられない。ただ歩くだけなら問題ないが,獲物を探しながらゆっくり歩かないといけないので,時間がかかる上に,どうにもこうにも銃が重い。ここで何か事故でも起きたらだれも助けてくれない(簡単には来れない)ことを思うと,ここからさらにウロチョロする元気はない。少し休憩して戻ることにした。
 帰りは登りできつい。来た道を戻っていると,日が当たったところはだいぶ雪が解けていたりする。あれ,来たときは無かった新鮮な鹿の足跡がある。タイミングがずれるとこういう風に出合えずに終わる。午後4時ころ,後は沢を30分ほど下るだけの場所まで来た。もう結構暗いが,鹿は出る気配。30分ほど適当な場所で待ってみるか。鹿が鳴いた。ここは待つ価値がありそうだ。・・・・どうも鹿がいそうな気がするが,それらしき音がするのだが,姿は見えない。
 4時半だ。もう無理だ,暗くなった。帰ろう。
 帰るとき道を間違えて,右往左往。沢の反対側を歩いていたと気が付いて,強引に沢を横断する。こちらの立てる音を聞いたのか,鹿が鳴く。いるんだなぁ。
 5時になる前に車に帰り着いた。
 今回は,発砲1発で,猟果はなし。でも,これまで行ったことがない新しい谷に降りた。面白そうな谷だった。獲物も(特にオスジカ)取りたいが,歩いて,新しい場所を探索する方が楽しい。
 

2017年12月2日(土)
Aリベンジならず

 今度も先週行った場所に行く。午前10時半頃から歩き出す。途中,違うルートを行ってみる。道がぬかるんで,足場が悪くて,歩きにくいったらない。汗だくになる。ここは一般車両通行禁止の場所だが,どうも,最近(数日以内?)に,車が通っているようだ。猟の車なら違反ということになる。それはともかくとして,車が来る場所には,鹿は出にくくなる。困ったな。このルートは今期は今日が最後かな。12時半頃に昼食をとる。日が当たる場所は暑いくらい天気がいい。
 そこから数十分歩き,終点間際まで来た。ここに来るまで,鹿はおろかアナグマすら見ていない。土鳩はいたな。
 終点の約70m手前で,終点の沢に鹿が来るのを待つことにした。日差しはあるが,とにかく風が冷たい。持てる限りの服を着て,座ったり立ったり,数歩前に出て沢の上下の様子を見たりして,2時間以上。成果が無いな・・・と思っていたら,ちょうど,沢の様子を立って見ていて,足が疲れたので屈もうとしたとき,こちらがいる斜面の上の方,感覚的には100m以上上か,鹿の鳴き声がした。風向きの都合でこちらの臭いが届いたのか,こちらのちょっとした動きが見えたのか。遠いからまだチャンスはあるかなと,もう少し待ってみたが,ダメだった。そろそろ4時近くになる。もう日が傾き始めてしまった。暗くなると獲物が見えないので撃てない。それに,車まで急いでも1時間ほどかかる。ここはあきらめて,戻ることにした。車までの帰り道も,できる限り静かに警戒して歩いたが,鹿を見ることもなかった。帰りは五時少し前だが,もうかなり暗い。
 車で帰りながら,今日は鹿一頭も見なかったなぁ,そういう日なのかなぁ,と考えていたら,人里近くでやっと1頭鹿を見た。
 こういう日もあるさ。今日は8q歩いた。別に距離を歩けば良いわけではないが,獲物を探しながら山を歩くというのは,疲れるが心地よい。
 次は場所を変えようかな。

2017年11月25日(土)
@29年度初猟

 猟期が始まってだいぶ経つが,やっと出猟。午前10時半頃に歩き出す。歩き出して5分も経たずに鹿の警戒鳴きと走り去る足音。地面には鹿の足跡が多数。ここは昨期も来たが,こんなに鹿の足跡は無かった。大きいのから小さいのから多数。
 気を取り直して再び歩き出す。初めての猟だから体を徐々に慣らしながら行かないと,もう若くないからな。目も山に慣れていないので焦点がなかなか合わない。ここは山が深いから本当はかなり寒い場所だが,今日はそこまで寒くない。
 12時近くになった頃か,目の前の斜面に小さい生き物が。狸か?と思ったら,アナグマだ。10メートルあるかないかの距離で,斜面の虫か何かを探している。左を通り過ぎて行こうとするので,「おーい!」と呼び掛けてみた。餌探しを邪魔されたアナグマは不愉快そうにこちらを見る。逃げはしない。にらみ合う。「あっちへ行け」と言いながら手を振っても,じっとこちらを見る。仕方ないのでこちらは反対方向に歩き出す。アナグマも元の作業に戻った。何なんだろうな,アナグマって。
 10分も歩かないうちに,また目の前20mも無い距離,今度は歩いているところの下の斜面に,あちこち土を掘ってエサを探しているアナグマが。さっきのアナグマではない。例えば鹿がこの距離にいたら気づかないはずはないが,こちらがどんどん近づいてもアナグマは顔すら上げずに餌探しに熱中している。近くに行ってどういう反応になるか分からないので,ある程度の距離で呼びかけて,手をパンパン叩いてやった。アナグマはこちらに気が付いても,さして気にするでもなく,少しずつ遠ざかって行った。やれやれ。
 奥に歩いていくとやがて終点となる。終点が見えてきたところで,斜面を上に
鹿が逃げていく。鹿は警戒鳴きをしばらく続けて遠ざかって行った。
 これ以上は歩けない。ここで昼食を取り,少し休みつつ待ちをしてみよう。現在時刻12時15分くらいか。
 一息入れていると,向こうの斜面,数十m先,また小さいものがごそごそ動いている。見ると,またアナグマだ。さっき見たアナグマかな。斜面を左から右にかけて歩いて,登って見えなくなった。ふう。
 下の斜面,沢を何かが下りていく音(上がる音?)が数回。
 3時になるかならないかのころだったか,視界右上に動くものを察知。斜面上,こちらからは50m以上上か,
鹿の白い尻が。2頭,右に移動している。そんなに大きくはないようだ。オスではなさそう。銃のスコープで狙ってみる。藪が少し深いが,狙えないではない。しかし,オスではなさそうだし,大きくもないので,是が非でも撃ちたいとまでは思えない。右に移動して,どんどん藪が濃くなる。もうスコープでもほとんど姿をとらえられない。すると,こちらが見つかってしまったのか,鹿は来た道を走って後戻りし出した。反射でまた銃を構えて,スコープで狙い,引き金を引く。まあ,こういう状況では当たるはずもなく。むなしく銃声だけが響く。
 しばし佇む。もうここには鹿は来ないだろう。ここにいても無駄だ。引き返そう。
 来た道を戻る。
 車まであと10分ほどという川のそばで,向こう岸を鹿が逃げていく。まだ日没まで30分以上はあるが,暗くて探せないくらい。山は暗くなるのが早い。特にここは奥地。
 やっと車まで戻った。初日から10kmくらい歩いて疲労困憊だ。
 銃やらザックやら下ろしていると,突然上から鹿の鳴き声。ビックリ。見ると,100mほど上を
鹿2頭が鳴きながら逃げていく。さっき撃った鹿だと感じる。 
 車で帰る途中,鹿2頭(うちオスジカ1頭)を見る。ここにいるのか。
 やっぱり,猟は歩いて,探して,待って,耐えてこそだ。獲れる獲れないはその次だな。獲るとしてもオスジカだ。そんなこと言っていると今季猟果はゼロになるかもしれないが。

2017年3月12日(日)
E子鹿

 今期はこれで最後の猟となってしまう。前回行った場所の近く,尾根伝いに西に行ってみる。車で向かっている時に鹿一頭を見る。
 午前9時45分頃に歩き出す。尾根は何とか歩けるが,藪が深くて見通せない。おまけに好天が続いたせいか,地面の落ち葉や木がカリッカリに乾燥していて,歩くと盛大な音がする。これは失敗だったかな。尾根伝いだといくつかの鞍部を越えるので,降りたり登ったりですぐに息が切れる。尾根は鹿かイノシシが地面を掘った後がそこかしこにある。
 何十分歩いたか,突然,鹿の鳴き声が左前方から。ザクザクと歩く音がしているが,姿が見えない。「うるせー!」と怒鳴り返す。鹿は次第に遠ざかっているが,相変わらず鳴き続ける。しつこい。先を進む。先を進むが鹿が逃げた方向に尾根が続いているので,たびたび鹿が鳴く。今日は失敗だな。
 昼過ぎに腰を下ろして休憩。カロリーメイトを食べる。今日は暑いと思ってジャケットはザックの中に入れている。暑いのは暑くて汗をかくが,風は冷たいので寒くもある。ジャケットを着ようかどうしようか迷いなが歩いていたが,さすがに止まって腰を下ろすと寒さが耐え難いので,化繊ベストとジャケットを着る。
 新しい猟場を開拓するのは,緊張もするが,やはり楽しい。見たこともない場所,地形はドキドキする。鹿などが地面を掘った後はいっぱいあるし,獣道は明確にあるが,今のところはさっきから逃げ続けている鹿以外は,鹿などはいないようだ。
 前回行った一番奥の場所のちょうど上の尾根に来た。往路を戻るのはきついから,いざとなったらここから下に降りて,稜線を巻く道を戻るとしよう。今午後2時くらいか。
 1時間半ほどじっとして待っていたが,風が通りすぎるだけで獲物は来ない。3時をとうに過ぎてしまった。もうそろそろ戻ることを考えないと日が暮れる。あきらめて下に降りることにした。涸れ沢を強引に降りる。ジグザグに・・・途中滑って転ける。散々だ。膝が痛くなる。ようよう作業道に降りた頃,左前方に動きが。白いしっぽを広げた
鹿が少し逃げて止まってこちらを見る。今日山には入って初めて見た鹿だ。でも子鹿だ。今はできれば雄ジカだけを狙いたい。メスすら撃ちたくなくなっているのに子鹿はなおさらだ。子鹿は振り返ってこちらを見て止まっている(といっても数秒であろうが)ので,確実に撃てたが,撃ちたくないのでわざと背中を向けて『向こうに行ってくれ』と念じる。キャメルバックの水を飲み,しばらくして振り向くと,小鹿はいなくなっていた。まあ,これでいいのだろう。距離計で測ると約45m。
 尾根の北側,100m以上下にある道を戻る。途中の鹿のホットスポット(であろう場所)で今季の猟収めの待ちをすることにした。午後4時位なので,日没(6時22分くらい)いっぱいは無理だとしても,午後5時半くらい,あと1時間半くらいは時間がある。
 前回来た時よりはだいぶ過ごしやすい。少なくともガタガタ震えずに待たなくて済む,という程度だが。木に隠れるようにして屈んで待つ。鳥はそこかしこにいるが,鹿が近くを歩く音はしないようだ。途中,何百mも下の方で小鹿が母鹿を呼ぶような甘えた声がしたが,こっちに来ることは無いだろう。そうこうするうちに日が傾く。日が傾くと日の光が黄色くなってくる。黄昏である。冬は黄昏ることなく暗くなる印象で,日が傾いて山が黄色くなると,春だなと感じる。もう時間も残り少ない。これ以上じっとしていたら座ったままゲームオーバーとなってしまうので,鹿が来るであろう斜面に近づいてみることにした。想定では,歩いている場所の上斜面に鹿が来る,それを待っていた。下の斜面はあまり見込みがないと思っていたし,下の斜面に来ていれば自分が隠れている場所からは音が聞こえるはずだが,待っている間音が聞こえなかったので下の斜面にはいないのだろう。下ろしていたザックを左手に持ち,ソロソロと音をたてないように歩いて近づく。ザックを下ろし,もっと近づく。一応下斜面を見る。・・・・いないようだ。が,なんか違和感。でもなにもいないようなので,今度は上斜面を見るために数歩歩いた時,下斜面でいきなり「ピョッ!」と大きな鳴声。ビックリして下に目をやると,
鹿(さほど大きくない)が一目散に逃げて行った。銃を構える間もない。うわー,いたのか。ずっと待っていたところと直線距離で70mくらいしかないのに,気づかなかった。あの鹿の様子や鳴き声からは鹿もかなりびっくりしていたようだ。あちらも人間が近くにいたことに気づかなかったのだろう。お互いいることに気づかなかったようだ。こちらもビックリしてなにもできなかった。距離計で測ると水平距離38m。少し落ち着いて上斜面を見たが,何もいない。
 その後,車に戻るまで獲物とは遭遇せず。
 車で帰る途中,滝の近くで道路上に
小鹿がいた。その眼のつぶらなこと。
 これで今季の猟はおしまい。6回出猟し,基本的には毎回別の場所に行き,捕獲は2頭,あえて撃たなかった鹿数頭,撃って外した鹿1頭と,猟の回数の割には充実したシーズンだったと言える。なにより,何年かぶりにオスジカも獲った。
 これからはオスジカ狙いで,よっぽどのことがない限りメスも撃たないようにしようかな。言うは易しだが。そろそろライフルに移行するかな。 

2017年2月25日(土)
D何をやっているんだ?

 猟期終了まであと少し。今期は年末年始に行けなかったので,後悔の無いようにしなければ。
 今日も,数年行っていない場所に行く。途中の山道は一部泥でぐちゃぐちゃだったり,陥没していたりで,車を走らせるのもたいへん。猟と同じくらい,猟場に行くまでの車の運転で疲れる。大体崖を縫うようにして上ることになるし。
 猟場に着き,午前10時半頃に歩き出す。久しぶりに来たとは言っても,大体様子はわかっている。上を見たり沢の下を覗いたり。支尾根を巻く(横に)道を歩く。数十分歩くと,鹿がいる可能性が高い場所に来る。そこは道の上も下も可能性が高い。6年ほど前か,斜面下で鹿を撃ったことがある。でも,数年来ていないし,そんなに簡単に鹿と出会えるはずも無いので,その場所が見える位置に少々不用意に出てしまった。すると,目の前約30mに3頭の
鹿がまとまって地面をあさっていた。そこは,ちょうど日光が差す場所で,日の光に照らされて毛が輝く鹿が一度に3頭もいたもんだから,ちょっとびっくりして固まってしまった。まだ歩き出して40分くらいしか経っていないし,3頭ともメスのようだ。小さくはないが大きくもない。ここで撃って今日の猟は終わり,というのもなぁ・・・・メスだしなぁ・・・と逡巡。すると,視線に気づいたのか,一番近くの鹿が顔を上げてこちらを見た。ヤバいと思って視線を逸らすが,この距離だから無駄だ。しばらく目を伏せていたが,鹿は数秒もたたず踵を返して逃げだす。残りの2頭もつられて逃げ,3頭とも斜面を登って木々の中に隠れあっという間に見えなくなってしまった。しばらく呆然とたたずむ。一番可能性の高い場所ではあったが,こんなに予想通りに居合わせるもんかね?鹿がいた場所まで歩き,底から鹿を見つけた場所まで何メートルだろうかと振り返った瞬間,後ろの方で音がした。慌てて振り返ると,歩いている道の数メートル下の斜面を逃げていく鹿の尻が。距離は40mもない。さっきの今なので到底鹿を狙える心裡状況ではなかったので,反応が遅れた。鹿の逃げ方からして大きい,しかもあれはオスの挙動に見えた。うわー。こんなことってあるもんか。注意散漫すぎたが後の祭りだ。今度こそ本当に呆然としてしばらく立ち尽くす。・・・・先は長い。気を取り直して歩き出す。
 ここのもう一つ先の沢も,鹿がいる可能性が高い。斜面上で鹿を撃ったことがある。半矢で逃がしたが。ソロリソロリと進む。すると,さっきの
鹿達がこっちに逃げてきていたのか,また居て,こちらを見るなり一目散にまた斜面を駆け上って逃げていく。狙えない。まあいい。先に進む。
 まっすぐ進むと大きい尾根を下るので,左(西)の支尾根の斜面を横切る道を行く。道は崩れていて少々危ない。崖の中腹を横切って進むうちに沢側の木々が途切れ,沢を挟んで反対側の斜面が見える場所まで来たところで,反対側に日差しが差すいい場所があった。こちらから数十メートル下で,見下ろす形になるが,何気なく目をやると,少々遠いが,茶色いものが。
鹿だ。2頭いそうだ。鹿がこっちに目をやると丸見えになってしまう。急いで腹這いになる。まず銃のスコープで覗いてみる。やはり鹿,2頭だ。距離は100mはゆうにある。銃を一旦置いて,腹這いのまま,胸の前のビノケース(双眼鏡ケース)から双眼鏡(8倍)を取り出して,鹿を観察する。どちらも角は無い。1頭は小さい上に,背に白の斑点が見えることから,昨年春に生まれたか?もう一頭は茶色く,毛並みもよく,おなかが大きい。腹いっぱい食べているからか,もしかしたら妊娠しているのかもしれない。今年,もうじき子供を産むのか?日光が当たる地面をエサを探しているので,こちらに気が付く様子がない。腹這いのままもう一度銃を構えてスコープで覗く。いつもは3倍だが,ちょっと距離が遠いので5倍くらいで覗いてみる。スコープ上では十分に狙えるが,問題は距離だ…。レーザー距離計で測ると,水平距離で118m。うーん。先週の照準だったら,もしかしたら何とかなったかもしれない。鹿もほとんど動かないし。今の照準は,30〜50mに最適化しているので,100mを狙うならかなり弾がドロップするはず。しかもどれくらいドロップするのかわからない。70mですら怪しいかもしれない。スラッグ弾はこんな感じだ。複数の照準設定を準備するほど射撃場でいろいろ試してもいない。ライフルがあればなぁ。というか,ライフルがあっても,この親子は撃つ気が失せる。あんなに開けた場所で日光に当たりながらいるなんて,野生動物として不用心に過ぎる。真っ先に淘汰される奴らだ。・・・距離が距離だし,オスでもないから,ここはやり過ごそう。立ち上がり,崖を横切って進む。もう少しで鹿たちが見えなくなる場所まで歩いて振り返るが,相変わらず鹿たちはのんきにしている。少々呆れつつ,先を進む。数百mほど歩いたか,ここら辺も鹿がいてよさそうな場所だと思っていたら,50mほど先の少々藪深い斜面を,また3頭の鹿が逃げていく。最初に会った鹿達か?3回目の遭遇か?同じ鹿かはわからないが,どうやらここら辺はハンターが来ないのか,いやに鹿が呑気にしているようだ。ここで昼食をとる。
 少し休憩をし,今後どうするか思案。ここらへんは初めて来たところなので,どうすればいいかわからない。一旦道を戻ってさっきの親子鹿を見た場所に行く。鹿たちはまだいる。寝そべって日向ぼっこしている。少し遠くから双眼鏡で観察する。母鹿は頭を上げて,目は薄めなのか,真一文字の糸目状態で眠っているらしい。小鹿は少し離れたところで寝ているようだ。風は冷たいが,日光があれば天国に思える。鹿たちにとっては過ごしやすい日和なんだろう。何十分観察したか,最初に観察した時間も含めれば1時間は観察したろう。そのうち,鹿たちは左の方に少しずつ移動していった。水でも飲みに行ったのか?しばらくあちこち探したが,見えなくなったので,こちらもまた沢の奥に戻る。
 奥に行くと道が怪しい。少しく下るように道が続いているが,歩くにも苦労しそうなくらい荒れている。ちょっと下ってみようか。苔むした,滑りやすい木々を踏みながら用心して下る。何分もしないうちにブーツが苔を踏み滑って横にコケる。銃口がゴミだらけになる。沢を下るので,少々危ない。倒木を乗り越え,潜り,ヨタヨタと歩く。もう歩ける状態ではないほど終点に来ると,姿は見えないが鹿が鳴く。位置的にはさっき見えなくなった親子鹿が水を飲みに降りてきていて,ちょうどこちらも別の角度から接近してしまったようにも思える。でも,鳴き方は,オス鹿が縄張りを主張しているようにも思える。しかしちゃんとした知識はないのでどちらかはわからない。どうせ見通しも聞かず,歩くこともできないので,元来た道を戻る。昼食をとった場所に戻るころには汗だくになってしまった。
 そこから道を戻る。親子鹿が望めた場所にはもう鹿はいない。稜線の北側の道に出る。そこから今日来た道を戻り,朝鹿と遭遇した場所を反対側から窺うことにした。待ち猟だ。鹿がいそうな(実際にいた場所でもある)斜面に遠からず近からず,こちらが極力見えない場所に陣取り,待ち続ける。まだまだ寒い。日が落ちてくるとドンドン冷えて,座っていると耐え難い。
 結局,想定したようには鹿は来てくれず,午後5時半頃にはあきらめて引き上げた。
 車で帰る途中,もう少し下れば集落のところで,
鹿がいた。しかもイノシシも集落の近くを好む。何を好き好んで食べ物もない,寒い山奥にいるもんか。

2017年2月18日(土)
Cやっぱり照準か・・・

 仕事のせいでまたまた期間が空いてしまった。あっという間に猟期が終わってしまう。意を決して猟に繰り出す。今回は,数年は行っていない場所。
 雪解けでぐちゃぐちゃな山道を延々と走る。途中,車から30mくらいの近さで鹿が逃げて,止まってこちらを見る。車から降りて撃つのは簡単だが,そんなお粗末な猟はおもしろくも何ともない。素通りする。11時くらいかにようやく猟場に着き,歩き出す。歩き出して5分もしないうちに,左側の沢,40mほどの距離に
鹿が逃げていく。そんなに警戒していないようだったので,視界さえ良ければ撃てるのだが,見えにくい。少々後を追ってみたが,見えない。
 先を進む。久々なので目が山に慣れておらず,目のピントが合わない。慣れるまでに数時間はかかるだろう。風は冷たいのに,汗だくだ。沢の右側を少しずつ登る。何百m歩いたか,沢の反対側,左側斜面にガサッと音がした。鹿だ。姿は木々で見えない。しばらく様子を見たが,上に逃げていったようで,結局姿は見えなかった。あきらめてまた沢を登る。また沢の反対側にヤマドリが逃げていく。撃つつもりはないが,鳥を撃てるのは2月15日までだから,撃てない。また登る。
 鞍部に出て,峰の南側に出る。とたんに暖かい。右側の斜面を横に行く。林務道だから道はある。歩くのに苦はないが,少しずつ下っているので,帰りは登り道になることを考えると憂鬱になる。
 結構歩いて,さっき歩いた斜面が深い沢の反対側に臨める場所に来た。もう12時をとっくに過ぎているので,ここらで休憩して昼食をとろうか。手ごろな石に腰を下ろし,昼食をとる。寒い。反対斜面は日が当たっている。反対斜面(といっても何百mも距離がありそうだ)は数年前に伐採と杉の植林がされているようで,山肌がよく見える。ここら辺を獲物が上ったり下りたりしていてもよさそうだがなぁと思うが,見る限りは動きはない。ところが,スニッカーズとカロリーメイトを食べている途中,反対斜面の中腹に動きがあった。黒いずんぐりした感じで,イノシシと推定できたが,双眼鏡で覗く。
イノシシだった。子供も連れている。レーザー距離計で測ると,305m。ライフルなら何とかなるかなぁ?と思いつつ,散弾銃(スラッグ弾)では到底無理な距離だから,あまり興味はなく,視線を落として食事をする。しばらくしてまた斜面を見ると,子供1頭しかいない。母イノシシは木陰に消えたようだ。子供は2頭だったか?それっきり見えなくなった。
 昼休憩後,先を進む。何十分も歩いたが,あんまり進むと帰りの時間も考えないといえないから,ほどほどで引き返す。引き返すということは,登りになるということ。いやー,疲れた疲れた。汗だくになったので,上に着ている服を減らす。ジャケットを脱ぐと風が冷たいのでジャケットは脱げない。ようやく尾根の鞍部に到着し,倒木に腰を下ろす。鞍部なので風の通り口。風が強い。フードを被って腰を下ろす。眠くなる。疲労凍死への道。しばらく休憩して,元来た道を戻る。こちらは風がものすごい。途中,一つ西側の沢を登ってみる。足が限界。靴が小さめなので踵が靴擦れ気味で痛い。苦労して数百m登ると,雰囲気がよさそうだったので,鹿が来そうな場所の50m位離れた下の方に座って隠れて,待ってみた。数十分待ったが,寒いだけで成果は無し。でも,ここは絶対鹿が通る道だ。足跡もあったし。もう一つ西の支尾根に行ってみる。もうこれが最後だ。体力,特に足の靴擦れが限界だ。トボトボと上る。さっき鹿を待っていた場所,鹿が来ると予想した場所を左に見ながら登る。もうそろそろ稜線に出そうなところで,ガサッと音がした。これは鹿だと思ったが,止まったままでは稜線を超えて逃げられるだけだし,もう少し上って見える場所まで移動しないといけない。10歩くらい上がったところ,ガサガサっと鹿が慌てて登りだしたのが見えた。
メス鹿か。逃げるコースを予想して銃を構えていると,予想したコースを通った。狙える。スコープで覗き,引き金を引く。鹿は背中の中ほど部分の毛を逆立てて逃げていく。外れたか。そうだった,照準が100mに合わせてあった。30mなら10p以上スコープの十字の上に弾が行く。動いている物を狙っているのでもっとズレることもありうる。ちょうど背中の上をかすめたようだ。少し先を追ってみるが,もう無理だ。あきらめて戻る。もう耐力が限界だ。帰る。さっきの鹿との距離は30mだった。
 銃の限界か技量の限界か。自分の腕では,100mゼロインの設定では,近距離(20〜50m)を持って狙えない。瞬時に修正はできない。照準を変えよう。

2017年1月14日(土)
B雪と風の中の

 年末年始はなんだかんだと猟に行けず,結局,前の猟から2カ月も空いてしまった。気候もガラッと変わって,雪も降ってんじゃないと覚悟して猟に出発。数年行っていなかったところに行くことにした。なんだかんだと時間を取られ,山の奥の奥の猟場に着く。車の通った形跡はない。
 歩き出したのが午前11時ころか。ここからどれだけ歩くことになるのか・・・。雪は数センチ積もって,時折雪が風に舞う。すばらしい。風は痛いどころではない冷たさ。雪の上には車の轍も足跡もないから,この場所には今日はだれも車で来ていない。それだけでも気分がいい。その代わり鹿の足跡もほとんど見当たらない。まあ,今日は雪山を歩くだけでもいいか。
 服の選択がよかったのか,歩くのにちょうどいい。我慢できないほど寒くはなく,風もよく防いでくれているし,かといって汗だくになるほど暑くはない。足跡がない雪の上を,トボトボと少しずつ前に進む。日差しはたまーに差すくらいでだいたいは曇りの中。とても雰囲気がいい。
 昼過ぎ,昼食をとって少し休む。歩いていないと途端に寒さが身に染みる。唯一外気に触れている顔が痛い。冷気が体のそこかしこから染み込む。
 また歩き出して,数十分経ったくらいか,前方の斜面少し上に
鹿がいて逃げ出す。感触としては右に逃げて少し走って止まってこちらの様子を見るだろうと思えたので,膝を着いてしゃがんで銃を構えて待つ。こちらの予想通りに鹿が逃げ,止まり,こちらを見たので,すかさずスコープを覗き,引き金を引く。鹿は逃げた。あれー。あ,そうだった。スコープの照準は100mに合わせてあるから,50mとかでは20センチ以上上に弾が行く。鹿との距離は,距離計で測りはしなかったが35〜40mくらいだったので,しかもこちらから見えていた尻を狙ったので,修正が必要だったな。少し下を狙わなきゃならなかった。前回の猟から2カ月も空いていたので瞬時に修正することができなかった。こんなんだと,照準を100mに合わせておくのは使いづらいな。50mに合わせておいた方がいいかもしれない。少し進んで鹿の様子を見るがどこにもいない。あきらめて奥へ行く。
 渡りにくい沢を,ブーツを水に浸けながら渡り,少し雰囲気がある場所に着く。案の定,ここらへんには鹿の糞がいっぱいある。今は鹿がいないが,夜などは鹿の寝床になっているんだろうなと想像できる。こういうところは不思議と寒風も和らいでいる場所だから,鹿が寝床に選ぶのは理解できる。
 人が歩ける終点まで来たが,ここも鹿の寝床らしき状況。すぐに引き返すのはもったいないのでしばらく隠れて待つことにする。
 どれくらい待ったか,寒さで指がかじかむ。もちろん防寒の手袋をしているが,それでも苦痛。どれだけ我慢できるか・・・。・・・1時間以上は待ったか。雪が崩れたりする音が獲物の音に聞こえて,すごく紛らわしい。成果がないがこのまま待ち続けるかどうしようか。このままだと他の場所に行けなくなる。ここはあきらめて,いったん途中まで戻って,違う山(尾根)に行くことにする。
 分岐点まで来て,今度はより西側の尾根を巻く道を歩いてみる。ちょっとしたアップダウンもつらい。もう一つ坂を越えよう,あと一つ越えよう。あそこまでは行ってみよう,で歩き続け,西に面した斜面で開けた場所に出た。ここら辺は鹿がいそうだが,どうかなぁ。足跡はなかったが・・・。もう一つ先に行ってだめならもう帰ろう。そう思い,支尾根を巻く道(左カーブ)を超えて…進行方向数十m先,道の上の斜面で動いた。
鹿が一頭走り上る。距離はわからない。膝を着いて銃を構える。鹿は少し上って止まってこちらを見た。今度は鹿の胴体の数十センチ下を狙って引き金を引く。鹿は平気なようで,少し走ったので,当たっていない。次弾を装填しながら鹿の様子を見ていると,もうワンチャンスありそうだ。下を狙って当たらないなら普通に狙うしかない。今度はそのままスコープの十字で胴体を狙い,引き金を引く。鹿はドーンと崩れ落ちて,見えなくなった。当たった。メスジカだ。発砲時刻は午後4時10分頃。距離計で測ったら,75mだった。調子が良ければ立膝撃ちでもこの距離で当たるな。当たった所は狙いより10センチ程度上のようなので,50mでの着弾点よりは少しドロップしているようだ。こんな微妙な修正が必要なら,照準を変えないといかんかなぁ。
   

2016年11月12日(土)
A4年ぶりか・・・

 土曜,晴れ。少し起きるのが遅かった。猟場に行く車中,道路を鹿が逃げていく。この時間帯に出歩いているのは,まだ時期的に警戒をしていないのか。
 山を登りだしたのは午前10時40分頃。今回行くのは前回と違うコース。このコースでは何度も鹿を撃ったことがあるが仕留めたことはない。イノシシは仕留めたことはあるが・・・。まあ,イノシシを撃ってもねぇ。ここは最初の登りがきつい。20分くらい,ちょっと歩いただけで汗だくになる。しばらく息を整えて,西に向かう。
 少し気分が乗らない。前回もそうだが,鹿を撃つ意欲が少々欠けている。でも山に入っていたい。鹿を探したい,というアンビバレントな状況。
 どれくらい歩いたか,数十分歩き,日向に出て,また陰に入ろうかとふと進行方向に目をやったときに,前方20mほどに
鹿,しかもオス鹿が立っていた。こちらと目が合うと鹿は踵を返して逃げていき,斜面を少々上って警戒鳴き。姿はほとんど見えない状態なので撃てもしないし,ここで殺気を出しても逃げるだけだから,「あっちへ行け!」と怒鳴るだけにした。鹿は上に逃げて行って、しばらく鳴いていたが静かになった。ここでオス鹿を見たのは初めてだ。角を研いだ跡は木の幹に残っていたりしたから,オスが来るのは間違いないが,なかなか昼間に出ることはない。角の長さは30pちょとくらいかな。
 少し歩くと,今度は左斜面下を
小鹿が勢いよく逃げていく。ここはしばらく人が来ていないんだろうな。
 沢を見下ろせる場所につく。ここのコースでは半分くらいのところ。もっと先に行こうかとも思ったが,まだ猟の初めだし,今日はここで待ち猟でもしようか。
 歩くと汗が出て困るくらいだが,止まってじっとしていると,こんなに冷えるのかというくらい冷えてくる。座っていれば寒く,立っていても寒く,立っても座っても腰や膝が痛くなる。たまらずジャケットを着る。フェイスマスクもする。もちろんオレンジのベストと帽子は着用。オレンジを着ていないと撃たれやしないかと心配でならない。この場所にはそうそう来れる人はいないとは思うが・・・・。
 そうこうするうちにすぐに正午。腹は減らない。1時に飯を食おうか。飯と言っても,スニッカーズとカロリーメイトで手早く済ませるのだが。食欲もあまりない。
 12時40分頃に昼食をとる。寒い。鳥は盛大に至る所で鳴くが,鹿らしき足音はあまりしない。少し遠くで岩を落とす音がしたから,鹿が歩いているのかなとは思うが,姿は見えず。できることはとにかくじっとしていること,なるべく木々に紛れること,寒さに耐えること,耳と目を総動員して動くものを探すこと。ハンティングとは忍耐である。やるべきことは寒さと不安に耐え続けること。
 ここで待ち猟をしたことは数知れず,鹿を撃ったことは1回しかない(しかも逃げられた)。今日もまた待ちぼうけか・・・。午後1時を過ぎ,立ったり座ったり,木にもたれたり,最小限の動きで体のこわばりや寒さを紛らわせる。
 午後1時20分頃か,広く視野に入れている沢の右側(東側)の斜面上に動く黒い物。左から右に移動している。木々の後ろで見えにくいが,角もあるようだ。スコープで覗く。
オス鹿だ。さっき(と言っても約2時間前)逃げたオス鹿か?分からない。少しウロチョロしたがなかなか見えない。そのままでは狙えないので,進行方向に木々の隙間を探す。鹿の進行方向5,6m先にちょっとだけの切れ間がある。ここを通ってくれるか?通りそうだ。銃を構えてスコープで木々の隙間を狙い,来るのを待つ。来た。引き金を引く。鹿はビクッとして走り出す。当たった。鹿は右に走っていたが何を思ったか右に方向転換してこっちに下ってくる。まっすぐこちらに来る。攻撃されたので反撃に来たようだ。あっという間に目の前に迫る。スコープで狙えないくらい近い。どうしようもないから見守るしかない。鹿は目の前10mもない距離まで来てこちらが人間だということに気づいたのか,いきなり左に曲がり,下へ逃げようとした。その時鹿はこちらに右横腹をさらすことになった。このままでは逃げられる。スコープを覗いていては撃てない。肩付けもせず,スコープも覗かない状態で,感覚的に狙いを定めて引き金を引く。当たった。鹿はすぐ下の木にぶつかって倒れる。そのままでもほどなく死ぬだろうが,可哀そうなので,とどめを刺す。生き物を殺すことへの罪悪感とそれでも止められない猟への欲求。何回も何回も南無阿弥陀仏を唱える。残滓処理をして,しばらくたたずむ。いろいろな感情を整理しつつ。そうしていると,また斜面上に小さいものが動く。狸か?と思ったが,どうも違う。ハクビシンのようだが,ほとんど山で見た記憶がない。初めてかもしれない。撃つつもりもないし逃げられても一向にかまわないので,「おーい」「こっち来い」と呼びかけてみると,不審そうにこちらを見るが,さほど気にすることもなく地面を探し回っている。そうこうするうちに下に降りはじめ,どんどん近づいてくる。「あっちへ行け」と怒鳴っても,いやな目つきでじっと見てくるだけで,逃げようとしない。大したタマだ。人間に狩られたことがないんだろう。キリがないのでこちらが立ち去ることにした。帰る。
 最後にオス鹿を撃ったのは多分平成24年の2月頃だったはずだから,約4年ぶりだと思う。このコースのオス鹿は,いることはわかっていたが,幸運にも今回仕留められた。何年も探していた鹿だ。今期は,もう鹿が獲れなくてもいいかなぁ。猟には行きたいし行くつもりだが,やりたいことをやるのを優先しよう。

2016年11月5日(土)
@平成28年度狩猟開始

いよいよ今年も始まった。
午前10時前くらいに歩き出す。
10時半頃,曲がり道を過ぎると,前方に鹿がいた。静かに膝を着き,スコープで覗く。鹿はこちらに背を向けて横になり,頭だけ垂直に上げて,日向ぼっこしているようだ。こちらに気づいていないようだ。地面に寝そべっているので少々狙いにくいが,撃てないことはない。角度は水平。でもここで撃ってしまえば今日の猟は終わり。いい天気で,まだ奥に行ってみたいが,どうしようか。一旦,鹿から見えない場所まで静かに後戻る。レンジファインダー(レーザー距離計)を取り出し,こそっと鹿を覗き,距離を測る。73.5m。思ったより距離があったな。また鹿から見えない場所に戻り,どうしようかなぁと思案しつつ,レンジファインダーをケースに入れ,フラップのボタンを留める音が「パチッ」としたところ,鹿が逃げていく音がした。下の沢に逃げていき,警戒鳴きを始める。ボタンの音で気づいたのか?それともこちらの臭いが今になって届いたのか?まあ仕方ない。奥に行こう。
そこから10分か,20分か,歩いて,ある沢を覗く。ここから沢の底までは100mあるかないか。うーん,いないようだなぁ・・・・と思ったら,沢の底ではなく,手前数十メートルの距離に
鹿がいて,逃げて行った。うわぁ,底ばかり見ていて,近い距離に目のピントが合っていなかった。気づかなかった。こういうこともよくあるな。距離計で測ると25mくらい。また歩き出す。
鹿の足跡はいくつもある。いつも通りだな。
正午少し前に奥地に着く。行き止まり。日差しが強くて汗だく。シャツを脱いで乾かす。昼食と休憩をとる。
1時前に再稼働。来た道を少しずつ戻る。
途中の沢を覗ける場所で,しばらく待ってみる。時折眠気が来て必死に堪える。数十分頑張ったが,成果なし。ここはダメか。また歩き出す。
午後1時40分,ある沢を覗ける場所に来たところ,目の前で
鹿とバッタリ。こちらも驚き,鹿も止まる。やばい。思わずゆっくりと膝を着いてしまった。しまった,と思ったが動いてしまったものは仕方ない。鹿から視線をそらしつつ,じっと動かず,しばらくして鹿の様子をちらっと目だけ動かしてうかがう。鹿は変わらずこちらを見ている(ようだ)。こちらは動けない。あっちが警戒を解いてまた地面の芽などを探し出さない限りはこちらは動けない。だるまさんが転んだ状態。体が硬直する。何とか耐えなければと努力しつつ,時折ちらっと鹿を見るが,鹿はこちらを警戒しているようだ。でも逃げてはいかない。ここが我慢のしどころだ。何分なのか,何十秒なのか,また鹿をちらっと見ると,鹿が動き出していて下を見て芽を探している。助かった。ちょうど鹿は盛り上がった土の後ろに消えた。もうほぼ大丈夫だ。体の硬直を解いてゆっくりできる。その上でやっとスコープで鹿を覗く。撃てる。でも,なんだか,撃ちたくない。もう少し様子を観察しよう。鹿は地面の木の芽かなにかを探しながら少しずつこちらに近づいてくる。そして斜面下に見えなくなった。こちらの右側は沢なので,その沢の斜面,こちらの右方の下斜面を歩く音がする。とりあえずこいつは行かせようか。数分音を立てていたがいつのまにか聞こえなくなった。下に降りて行ったんだろう。下を覗いてみたが,鹿はいなくなっていた。さっき鹿とばったり会った距離を測ってみると,30mだった。楽勝な距離だな。でも,まあいいや。
また歩き出す。1km以上歩いたか,下の方で鹿が誰かを探す鳴き声がする。
前年の猟でも待ち猟をした場所で,最後は待つことにしてみた。午後3時半頃から少しずつ日が陰り,気温が下がる。午後4時過ぎたら,昼の日差しの暑さと全く違う,冷気が忍び寄る。今日の日没は午後5時24分。あと1時間ほどだから,今日はジャケットを着ずに我慢してみよう。こんなに寒くなるか?と思うほど寒くなったが,なんとか我慢しながら鹿を待ってみた。でも結局ダメだった。帰ろう。
ちょうど車に帰り着いたのが午後5時24分きっかりだった。今日の猟は終了だ。
メス鹿は撃つ気が無くなったのかなぁ。オス鹿しか撃つ気が無くなったのかなぁ。

2016年3月12日(土)
Iやっぱりこれだな

 今期最後の猟。いまだに1頭も捕獲していないことはさておき,もうこれで来期(9か月後)までお預けになる。どこに行くか,どんなプランで行くかはさんざん悩んだが,とにかく,今まで行った事が無い場所に行くこと,歩けるだけ歩くことを重視しよう。
 とはいえ,寝坊して,登り出したのが午前10時半頃。支尾根を登って行って,途中から行った事が無い斜面へ行ってみよう。
 登り出して15分ほどで,前方40〜50mに
鹿が居た。鹿はすぐに逃げ出して見えなくなった。この時期はこんな下にいるのかぁ。もう少し上にも鹿が居るかもしれない。慎重に登り続ける。数十分登ったが,鹿はいない。何週間前に来た時にオスジカが角で削っていた木の幹が,もっとひどくなっていた。相変わらずオスがいるんだなぁ。ここで見たことは無いが。
 気を取り直してまた登る。ここはきつい。風は冷たいのに汗がどんどん出る。体から湯気が出続ける。
 今まで行っていたコースとの分岐点に来る。もう昼12時を過ぎた。時間がかかりすぎたな。これは計画全部ができない可能性もある。ともあれ,ここからは全く行った事が無い,未知の場所になる。こういう時が一番わくわくする。ドキドキする。
 おー,この先はこうなっていたのか。あそこら辺(沢の反対側斜面)は鹿が居そうな場所だなぁ。遠くで見る分には鹿はいなさそうだ。
 沢を巻いて歩き,反対側にたどり着く。道が崩れて,急傾斜を横切る。足を取られないように下を見ながら歩いていると,右斜面上に
鹿が居た。あわてて銃を構えてスコープを覗くが,木々が密集していて,鹿が捉えにくい。結局逃がしてしまった。おー,やっぱり,今まで来たことが無い場所には鹿はいるんだなぁ。捕れるかどうかはその後の話だが,まずは鹿と出合わないことには始まらない。
 なんとか急斜面を横に渡り,一息つく。この先も日当たりのいい雑木林の斜面だ。数十m歩くと,今度は左斜面下(少し遠い)に
鹿が逃げていく。2頭だ。鹿はしばらく逃げて,こちらから姿を隠せただろうと思ったところからはコソコソと遠ざかって行く。小癪だ。撃てないことは無かったが,遠かったし,無理して撃っても仕方ないので撃たなかった。鹿はいるところにはいるなぁ。
 しばらく斜面下を見てみたが,成果が無いので先に進む。先を進むと少々険しくなって,沢も深い。沢の底は結構深い。その沢を渡り,しばらく進むと,またガラッと雰囲気が変わり,本格的な危険を感じる。もうここは鹿でないと渡れない斜面だろう。行こうかとも思ったが,ここは落ちたら間違いなく死ぬ。しかも落ちる確率は個人的には90%。落ちる予感しかない。ここら辺の感覚がマヒするとそのまま進んで死ぬんだろうな。まだ冷静だ。行くのをあきらめて,休憩と昼食をとる。
 来た道を帰る。さっきの分岐点まで戻る。
 ここからはいつも行っている斜面(南側)に行く。すぐに鹿が鳴き出した。下斜面。姿は見えない。せっかく来たのに鳴くなや。ここら辺は鹿がずいぶん警戒しているなぁ。違うハンターが来ているのかもしれない。とはいえ他の場所に行くのは時間が足りない。もう午後3時半だ。いろんなところから見えない位置にしゃがみ込んで,あとは時間まで待ち猟をしよう。今日の日没は6時22分頃。でも車まで帰る時間を考えれば,ここにいるのは5時か,5時半頃までがせいぜいだな。
 少しずつ日が傾くにつれ,どんどん寒くなる。風は順風。つまりこちらの臭いは前方に流れているので,ちょっと前方から鹿が来るのは無理だ。左側の上斜面から降りてくる鹿だけがターゲットだ。ここは今まで3頭くらい撃ったなぁ(全部外したが)。4時半頃か,ボォーっとしてたら左前方から鹿の鳴き声が。結構近い(70m位か)。姿は見えない。なんか驚いたような鳴き声だったが。あぁ,こちらの臭いが風の向きでいきなり運ばれてきて驚いたんだろうな。こちらとしてはガッカリだが。目論見がご破算。ここに座って待っている意味がなくなったが,かといって他にすることも無い。
 しばらく座っていた。5時20分頃か,もうこれは無理だ。今期は終わりだ。帰ろう。帰途に就く。結構疲れた。まだ明るいが,トボトボと支尾根を降りはじめる。数百m下りたところで,右方向,20mもない距離に
鹿が。結構大きい。鹿も驚いて逃げ出す。止まれば撃とうかと思ったが,尻の白毛が広がっていたのでこれは無理だなぁ。あっという間に下って見えなくなった。鹿はすごいなぁ。鹿が10秒で行けるところまで,人は5分10分かかる。こんなんじゃ普通は勝負にならない。この差を埋めるのが人の努力だ。
 少し歩き出すと,下から鹿たちが逃げていく音が複数。おいおい。俺は上の方でずっと待っていたのに,下にいるのかよ。しかも何頭も。徒労感がいや増す。
 そこから先は汗だくになりながら下りて車にたどり着く。
 今期は結局1頭も獲れなかった。待ち猟にこだわったからか,歩いた距離は短い。反省点はいくつもあるが,やりたいことをやったという点では,満足感もある。新しい場所にいくつも行った。結局,こういうやり方でずっとやっていくんだろうな。鹿が獲れるかどうかも大事だが,やっぱり,新しい所に行く,新しいことをやる,やっぱりこれだな。まあ,1頭も獲れていないのは変わらないが。せめて1頭でも獲れてればなぁ。

2016年3月5日(土)
Hこれでいいんだろう

 猟期も残り少ない。あと行けて2回だろう。しつこいようだが,今回もまた同じ場所に行く。自分が獲りたいシチュエーションで成し遂げたい。
 猟場に行く途中,路上で鹿が走っている。右前方を走り,目の前の道路を左に横切って,斜面を登る。撃てるだろう。車を止めて,ちょっと道から斜面を登って(路上発砲は禁止),そこから鹿を狙って発砲すればいい。斜面もそうきつくないし,鹿も一目散に逃げる感じでもない。でもぐっとこらえた。もう流し猟はしないと何年も前に決めたじゃないか。今期鹿が獲れていないからといって,流し猟に逃げる自分を許せるか?こんなことをしたいのか?いや,今自分がやりたいのは,山に自分の足で入って,きつい,辛い,寒い,暑い,怖い思いをして,孤独に耐えながら,自然との一体感を感じながら,鹿との勝負をすることではないのか。撃つ撃たない,獲れる獲れないはその先の話だ。とかなんとか自分に言い聞かせながら,止まることなくそのまま車を走らせた。もう春に近くなり,鹿が日中どんどん下に降りてきているんだろうな。
 そうこうして,猟場に着く。午前10時半頃に登り出す。今日は暑いぞ。歩き出すと途端に汗が噴き出る。歩き出して20分,鹿が下に逃げていく音がするが,姿すら見えない。小さく鳴く音。数分歩くと,今度は斜面上の方から鹿が鳴く。2頭か。下の鹿が小鹿で,上の鹿が母鹿のように思えた。
 いつもは行かない緩やかな上斜面に行ってみる。鹿のフンだらけだ。だろうなぁ。ここで鹿を2回見たことがある。鹿が好きそうな場所だもの。緩やかな斜面で,雑木林。
 今回も,前回待ち猟をした場所で待ってみることにする。今日は少し早めに戻って,もう一か所で待ち猟をしよう。
 山は基本寒いが,今日は比較的薄手の服でも,全然寒くない。街の方ではかなり気温が上がっているだろうな。そのかわり,風がすごい。轟々と音を立てて上から下から前から後ろから,いろいろ方向が変わりながら風が吹く。風に吹かれ続けると体力を消耗するので,ジャケットは着て,座って待つ。来る途中気づいたが,そこかしこの地面が掘り起こされて,木の根っこが食われている。これがイノシシなのか鹿なのか分からないが,ずいぶん食べ物が少なくなっているんだろう。これだけ荒らされた後に,鹿たちがまたここに来るんだろうかという疑問もあるが,よく分からないのでとりあえず待ってみる。12時なので昼食もとって,水を飲んで,座っていると,どんどん睡魔が襲ってくる。寒くて凍えるか,睡魔が襲うかのどちらかが常。山は極端だ。
 3時頃に,数百m戻って,沢を望む場所でまた待つ。
 風の音のせいで,鹿の足音などが聞こえない。音がしても,鹿の音なのか,風が木の葉を散らしたのか判別がつかない。不意に音がして振り返っても,どうも風が舞った音だったり。ただ,一度,下の斜面数十mで突然した音は,他とちょっと違っていて,鹿かイノシシだったんじゃないかと思うがなぁ。ほんとのところは分からん。
 立ったり,座ったりを繰り返すと鹿に察知されやすくなるのは分かっているが,立ち続けるのはつらいし,座り続けるのも足首やひざや腰に悪い。成果が出なくて今日は辛い。
 前回と同じ事をしても仕方ない。少し沢に近づいて,数十分様子を見る。成果は無い。今度は沢を渡り,反対側の斜面に行って,数十分待つ。成果は無い。あきらめて元の待機場所に戻る。どんどん日は傾く。ダメだ。5時を過ぎる。やっぱり今日もダメだったか。戻る。
 今日は全く成果なしだった。同じ場所に来過ぎたのもよくないのだろう。ただ,成果は無くとも,やりたいことをしたのは間違いない。やりたくないことはやらない。流し猟なんてやらない。それで鹿を捕れなくても,それは仕方ない。これはこれでいいんだろう。 

2016年2月28日(日)
Gこれでいいのか?

 前回惜しかったので,その雪辱ということで,また同じ場所に行く。前回撃ってハンティングプレッシャーを高めて鹿を警戒させていながら,同じ場所に行くというのは,獲れにくくなるのではないかと思う反面,逃したという悔しさを晴らしたい,鹿の生態が少し分ったという面もあるので,行きたくなる気持ちが強い。
 今回はメインの銃(ボルトアクションスラッグガン)で行くことにする。
 午後10時半頃に登り出す。歩き出して30分ほどで,前方,姿は見えないが鹿が逃げる音がした。こちらはあわてず,ゆっくりと歩く。
 前回の場所を通り過ぎ,少し危険な場所まで来て,それ以上は行かずに戻り,前回待ち猟をした場所に近い,少しくぼんだ場所を待ちポイントとした。今日は前回と気温がだいぶ違う。吐く息は白いが,前回よりだいぶ過ごしやすい。そうこうするうちに12時を過ぎたので,待ちながら昼食を手早くとる。
 前回と同じように,くぼんだ場所で座って待ちながら,時折コソッと,沢を覗ける場所に移動し,周囲を観察し,何もなくてスゴスゴとまた待ち位置に戻る,という手順をを繰り返す。しかし,1時間経っても,2時間経っても成果は無い。
 4時頃か,あきらめて道を戻る。
 すると,いつも鹿を待っていて全然成果が無かった沢の上方を,鹿が逃げていく音がした。鹿はこちらがここで待っているときは来ないのに,こんな時だけいる。やっぱりこちらの姿か,臭いか,音か,察知されているんだな。
 とりあえず,さっき鹿が逃げたこの場所(沢)で,日没近くまで様子を見てみよう。ここは,上方斜面,下方の斜面,目の前の沢の上から下まで見通せる。その反面こちらの姿が察知されやすいリスクもある。沢の反対斜面の上方が見通せないのだが,鹿は大体その付近を移動する。ここがもう少し観察しやすければいいのだが。
 5時を過ぎて,もう残り時間が少ない(日没は6時過ぎ)が,何も成果が無かった。途中に沢向こうの方で鹿が下りたのだろう音がしたが,例によって何も見えない。このまま何もせず帰るのはもったいないので,沢向こうの斜面が見えるよう,沢に近づいてみた。すると,10mほど歩いただけで,沢の下の方で,鹿が鳴いた。おっと,やっぱり居たんじゃないか。鹿はやたらと鳴く。こりゃダメだ。もう帰ろう。
 その後,何事も無く車まで帰る。走り出して数分,路上目の前に鹿が逃げていく。少し小さめ。道のすぐそば数mのところでこちらを見ている。車を止めても動く気配がない。運転席のウインドウガラスを開けると,少し歩き出したが,警戒している様子が無いので,「おい!おい!」と呼び止めると,鹿は『なんだ?』という顔をして立ち止まってこちらを見る。10mもない距離。余りの警戒心の無さからして,まだ撃たれたことが無いんだろう。こういう鹿が安易に路上に出てきて,車の流し猟をするハンターに撃たれることになる。鹿には「バイバイ」と言って帰路に着く。
 さて,今回は猟の間は鹿の姿を見ることができなかった。今期はまだ鹿を捕っていない。歩いて鹿が取れそうな場所で,しかも近場は,大体行き尽くしたか。これ以上どうすればいいか。今期は待ち猟ばかりだが,そればかりやっても成長は無かろう。もう少し工夫をしないと。それと,以前撃ったシチュエーションで,もう一度同じように撃とうとしているのも良くないか。同じ場所に行き続ければ,鹿も警戒するだろう。現に,この場所は,初めて行った猟期は何回も鹿の姿を見れたが,今は遠くからこちらの音を察知して姿も見せずに逃げていく。
 うーん。これでいいんだろうか?良くは無いだろうが,何か打開策は無いのか? 

2016年2月21日(日)
Fブローニング2

 今回もまたブローニングの散弾銃を持っていく。今期はまだ鹿を捕っていない。絶好のチャンスをこれまで何度フイにしたことか。もう猟期も残り少ない。なんとか1頭捕りたい。
 とはいえ,今日は少し出遅れた。午前11時30分頃に山を登り出す。ここは,時間があまりない時用の猟場で,昼から行ってもある程度猟ができる場所(捕れるとは限らないが)。大して登る訳でもないが,最初の数十分はそこそこ急な坂道。何度も登っているので慢心していたのかもしれない。先日までの雨で地面の下はぬかるんでいたのかもしれない。登り足が滑って前に転び,顔を斜面に打ち付ける。メガネと右手と銃が泥だらけになった。急いでメガネを拭くが,レンズに傷が入っておりテンションが落ちる。出ばなをくじかれた。そこかしこに付いている泥をできるだけ落とし,少しずつ登る。
 登り始めは寒さをそれほど感じなかった。歩いている間も,寒さは我慢できる範囲。なるべく音を立てないようにゆっくりと歩く。周囲に目を配りながら歩く。歩き始めて1時間位経ったか,ガラガラっと音がした。鹿が逃げていく音だ。その後,しつこく鳴かれ続ける。迷惑な話だ。仕方ないので鳴く鹿を無視して進む。日当たりがいい場所を過ぎ,比較的開けた杉林と雑木林が交錯する場所に差し掛かる。歩いている場所の下斜面を覗くと,20m程の距離に小さめの
鹿がいた。鹿はこちらを見るとすぐに逃げ出した。銃を構えるが,ジグザグに遠ざかって行く鹿を結局照準に捉えられず,姿を見失った。気を取り直して進む。そのうち,道が崩れて歩くには危険な箇所に着く。今日はあまり調子が良くない。フラフラする。こんな時は無理をせずに,引き返す。ついでに服を着増しして,昼食もとっておこう。
 数百メートル引き返して,日当たりのいい沢で鹿を待つことにした。この沢は上方がいかにも鹿が下りてきそうな雰囲気をしている。その沢から70mくらい離れた,沢の下方もぎりぎり見渡せる場所に,適当な岩を見つけて座り,待ちを始めた。
午後1時半頃か。
(待ち場所から沢を望む)
 待ち始めたのはいいが,日影に居続けることになるので,思いのほか寒い。ガタガタと体が震える。1時間以上我慢に我慢を重ねたが,どうにも寒さに耐えられなくなり,沢と逆方向にある,座っていた場所から30m位後退し,日差しがある場所に避難する。日差しに出て,一息つく。少しずつ体力を回復させる。5〜10分位まどろんだ後,また待ち場所に戻ろうと歩いている途中,目的の沢,日差しのある場所に違和感。鹿だ。小さくはない。こちらが気付いた直後に鹿も顔を上げてこちらを見た。距離は40〜50m。ここで急な動きをすると鹿は確実に逃げ出す。ゆっくりと動かないといけない。いつ鹿が逃げ出すかとドキドキしながら,ゆっくりと銃を持ち上げる。しかし,ちょうど右足が前に出ていたのがネックになった。右利きの者が銃を撃つときは,左足を前にして左手で銃を下から支え,銃のストックを右肩付近に付ける。右足が前だと構えにくい。右足を後ろに動かすか,それとも左足を前に出すか,どちらも怖くてできないので,右足が前に出たまま左肩を前にする,ねじれた格好で,無理やり銃を構える。ブローニングはオープンサイトなので,スコープを覗くように簡単にはいかない。いつもスコープで狙っているのでオープンサイトに慣れていないこともあり,なかなか目の焦点が合わない。オープンサイト越しの鹿はだいぶぼやけていて,これでいいのかどうかわからないまま,引き金を引く。鹿は踵を返して逃げていく。当たったはずだがなぁ。ザックを背負って鹿が居た場所に行ってみる。その場所には血などはないようだ。逃げた方向に血を探す。一つだけ見つけた。さっきの鹿の血に間違いない。今回はスラッグ弾ではなく,バックショット(6粒弾)だったので,致命傷にはならなかったのか。バックショットで撃つには少し遠かったので弾がばらけたんだろう。
 その後は道を戻り,去年もよく待ちをした場所で,午後5時過ぎまで待ってみたが,成果は無い。あきらめて帰る。途中鹿が盛大に鳴いたが姿は見えず。
 車に戻る。
 今回もチャンスがあったのに,決めきれなかった。最後の詰めが甘いなぁ。少し不意を突かれたのもあるし,あの右足を前にしたまま狙うのではなく,一歩左足を踏み出したらよかったのか?いやぁ,あの状態で足を動かせば鹿は逃げたろう。ということは,仕方なかったということだ。 

2016年2月7日(日)
Eブローニング

 猟期も残り少ないのに,また間隔が空いてしまった。
 今回は趣向を変えよう。ボルト式散弾銃ばかり使っていたので,ブローニングのセミオートマチックを持っていく。銃身が長くて山を歩くと邪魔だが,たまにはいいか。
 場所も,ここ2年ほど行ってなかった場所にしよう。
 午前10時10分頃に山を登り出す。鹿のフンは至る所にある。山の様子はあまり変わっていないようだが,倒木が増えたか?消え残った雪がところどころにある。吹く風は結構冷たい。こんなに晴れているのに寒い。以前メスジカを撃った付近(小さな沢)に来ると,沢の反対斜面の上の方から鹿が鳴く。おっと,いるなぁ。でも,警戒心が強いな。100mほど進んだ所の木の幹が,ガッサリ角で削られている。オスがいる。さっきの鹿はオスだったのかなぁ?

 ここからはちょっと急な斜面が200mほど続く。足場も悪い。ヘトヘトになりながら登り上がる。少し楽になった斜面を歩いていると,右前の,日向になっている側の斜面から鹿が逃げていく音。これは追っても無駄だと,しばし佇んで休憩し,息を整える。しばらくして,今度は同じ斜面の右後ろから鹿が逃げていく音がした。鹿がそろそろと後ろに回り込んで,ダッシュで逃げて行ったのだろう。さっき鳴いた鹿かなぁ?
 先を進む。先を進むといっても,稜線を登っていくだけだが。地面は枯葉や枯れ枝ばかりで,一歩歩くごとにバリバリと盛大に音を立てる。木の間をすり抜けるのも苦労をする。こんな様子じゃ鹿に知らせているようなもんだ。ちょっと今回は難しいかもなぁ。鹿のフン,しかも大きいフンがいくつもある。
 
 その後も登り続け,このルートでいつも長時間過ごす場所に到着。約2時間かかった。日差しは強いが,寒い。倒木が増えており,ちょうどその間に座ったりして,周囲からなるべく見えないように様子をうかがう。今現在は,付近に鹿はいないようだ。今日はここで待ちをしよう。
 10分かそこらだったろうが,小便がしたくなった。なので,少し道を戻ったところで小便をした。ブーツで地面を掘り,小便をして,上から土をかけて,なるべく臭いがしないようにして。また元の場所に戻り,また待ちを再開する。すると,何分も経たないうちに,前方から鹿の鳴き声。いきなりだったのでびっくりした。どう考えてもさっきの小便の臭いが風に乗って鹿に届いたとしか思えない。確かに風向きは背後からだ。やっぱり尿は大敵だなぁ。かといって小便をしないわけにはいかない。何らかの方法を考えないと。
 鹿は何十分も鳴きつづけていた。仕方ないので,食事をとる。スニッカーズとカロリーメイトを齧る。スニッカーズは寒さでバリバリに固くなっている。
 鹿の声がしなくなった後も,ずっと同じ場所で座って待つ。持ってきた防寒装備を全て動員し,途中からは背中にカイロを張って寒さに耐える。前の方でたまに音がして,その度に警戒し,コソッと様子を確認するが,いつも鳥が地面を飛び回る音。
 結局,午後5時過ぎまで待ち続けたが,ダメだった。数百m,前方に様子をうかがいに歩いたが,斜面下から鹿の鳴き声。姿は見えず。正午頃に鳴いていた鹿か。そんなところにいてもどうすることもできない。
 
 それからは,一目散に下山する。日没まであと20分ほどあるはずだが,予感ではここからは日が暮れる速度が速そうだ。案の定,急いで降りている最中どんどん暗くなっていく。
 日没前に車に戻ったが,暗い。
 今回のコースは,もう1回くらい試してみたい気もするが,途中,犬のフンもあったので,他のハンターが犬を入れているのかもしれない。だから鹿の警戒心が強いのかもしれない。

2016年1月10日(日)
D115m?

 平成28年になって初めての猟。これまで行っている場所は,とりあえずは他のハンターとバッティングしないで歩けるので,比較的安心して猟ができる。それに,まだ獲物を獲っていないので,獲物が獲れるまでこの場所で猟を続けようか。
 午前10時に歩きはじめる。少々寒いが,思ったよりは暖かい。午前10時20分頃,鹿のホットスポットを通る。沢を目前に,その沢を横切る道を進む。すると,沢の手前100mほどに来たところで,上の斜面から鹿の鳴き声。姿は見えない。声もある程度遠い。もう察知されてしまったのか。沢には鹿はいない。
 沢を横切り,道を進む。そこから数百m程歩いた。その間も,斜面の上や下を覗く。すると,斜面下,木々や葉の間のほんの小さな隙間から沢の底が見えた。ちょうど日光が当たっている。椿の花か,地籍調査の際のオレンジのテープかわからないが,赤い物が見えており,その近くに,黒っぽい塊がある。石かもしれないし倒木かもしれない。無駄骨に終わることもあるが,一応気になったので双眼鏡で見てみる。・・・胴体が見える。首や頭も見える。
鹿だ。角はない。メスジカか。オスジカは黒く,メスジカなどは灰色なのだが,日の光に照らされているからか,その鹿は茶色く見えた。なので最初はイノシシかと思ったのだが,鹿だった。鹿が沢の底,日が当たる場所で,座っている。鹿の目は見れないので,こちらは鹿に見られていない。チャンスだが,狙うには射界が狭すぎる。とりあえずレーザー距離計で図ってみる。115m?水平距離で?感覚的に直線距離で100m以上ありそうなのはわかるが,水平距離で115mだとすれば,直線距離だと何mだ?まあそれはともかく,弾道は水平距離で計算するので,直線距離は無視していい。115m先を撃つのと同じ。しかし,その距離はブリネッキスラッグ弾ではちょっと難しい。どうしようか。撃って仮に当たっても,取りに行くには崖を下らなければならない。下りたら,もう上がれない。下の道(どこまで下りないといけないかわからないが)まで下りないといけない。まだ,その場で,見える場所で死んでくれればいいが,走られたらもっと厄介だ。元々今日の予定は日没前に待ち猟で,その前に山の奥に行っておこうと歩いている。ここで撃てば,鹿に警戒されて午後は鹿が出てこないかもしれない。でも,ここで撃たなかったとして,午後に鹿が出てくる保証もない。今日は一発も撃たずに終わるかもしれない。いろいろ考えたが,鹿を撃つ誘惑に勝てなかった。撃とうと決意した。しかし,射界も狭い,もっと広い場所から狙えないかと移動してみたが,鹿を見ることもできない。幸運にも,ふと下を覗いた場所だけが狙える場所みたいだ。かなりの俯角(下向き)だ。試しにスコープを3倍のまま覗いてみるが,これでは米粒位の大きさにしかならない。6倍にしてみる。何とか狙えそうだ。集中力が高まったのか,スコープ内の鹿の画像がみるみる大きく感じ出した。スコープの倍率が高ければ高いほど照準がぶれるが,この時は6倍なのにほとんど揺れない。これはいける。引き金を引いた。反動で銃口が若干上がり,スコープ内の画像がぼやけ,元に戻る。鹿が居た場所には何もいない。バサバサと鹿が逃げる音もしない。だから当たった証拠はない。しかし,本当に感覚的なものになるが,当たったと感じる。距離的には信じられない思いもあるが,確かな感触だ。自分の中では「半矢」と記録しておこう。肝心の鹿を探す気力はない。崖を降りる自信がない。なら撃つなという話だが,誘惑に負けた。
 それから,道を進み,前回鹿を撃ち損じた場所を過ぎ,ある沢の近くで昼食をとる。
 午後1時,来た道を少しずつ戻る。午後2時頃,鹿のホットスポット(沢)を望む場所で,なるべく隠れて待ちに入る。沢までの距離は約80m。ここで5時まで(3時間)待つ。歩いている間は気にならなかったが,じっとしていると寒い。使い捨てカイロを体の前後に張り付けているが,貼っているのも分からないくらい寒い。手足と頭が痛い。一時は疲れもあって眠気が出たが,その後は体がガタガタと震える。ひたすら耐える。午後4時過ぎか,沢の反対側,100m以上離れたところから,ガラガラッと音がした。鹿が下りてきた音のようだ。木々が何重にも連なる中を必死に透かし見る。しかし,音は途切れ,こちらに来る様子はなくなった。
 結局午後5時までいたが何もない。午前中の発砲は失敗だったか?車に戻ったのが日没(午後5時19分)とほぼ同時。帰る。数百メートル走ると,川のそばから
鹿が飛び出て逃げていく。位置的には,4時過ぎころガラガラっと音を立てて下りて行った鹿のようだ。沢の反対側をまんまと下の林道まで下りて行ったみたいだ。あまり大きくは無かった。しばらく道を進むと,今度は小さな鹿が逃げていく。今年の夏生まれた鹿だな。
 今回の総括。遠距離射撃で当てた(たぶん)。寒い中3時間待った。厳しければ厳しいほど思い出になる。だが,まだ今期は一頭も捕獲してないな。今度はどうするか。まだまだ同じ猟場で研究を続けるか,場所をガラッと変えるか。

 ※水平距離で115mで,角度が仮に45度だったとして三角関数を利用して直線距離を計算すると,162m位になる。うーん。

2015年12月29日(火)
C当たる気がしねぇ

 年末は12月28日まで仕事だった。正月には気持ち的に猟に行けないかもしれないので,年内に1回行っておこう。前日はなぜかあまり寝付けなかったので,当日朝はあまり調子が良くなかった。前回と少し違うが大体同じ場所に行く。峰近くを歩いて,そのあとは中腹を横切るプラン。
 午前8時10分に歩き出す。寒いが,日差しがあるところは暖かい。歩きながら考える。こんな時に鹿はどこにいるだろうか。たぶん,日差しがあるこんなところに・・・と,歩いている道のすぐ上の斜面を見上げる。すると10メートルほどの近距離に
鹿が居た。目が合った鹿はすぐに逃げ出した。あんまり大きくない鹿だった。午後8時30分頃。それにしても,鹿が居たところからはこちらが歩いているのはずっと見えていたはずなのに,こちらが顔を挙げて目が合うまで鹿は逃げなかった。鹿も寝ぼけていたのか?
 そのあとは,淡々と歩いた。目的にしていた作業道は,倒木が激しい。いくつかは潜ったり乗り越えたりしたが,どうにもならない倒木にぶつかり,しばらく思案に暮れる。無理して乗り越えることはできなくはないが,この道を行っても鹿はいないはず(一応行ってみるだけの目的だった)ので,無理してまで行きたくない。怪我もしたくない。何十分かあれこれ考えて見たが,あきらめて戻る。戻る途中,眼下の作業道(今日歩いてきた道)が見える。ちょうど沢を巻く,U字カーブになっており,日差しも降り注いでおり,いかにも鹿が好きそうな場所。もちろん,来るときは鹿はいなかった(はず)。上からみると,広い範囲が見通せて,少し待ち猟をしてもいいかな,と思えた。レーザー距離計で測ってみると,下の道(一般車両通行禁止なので,「公道」ではない。)まで水平距離にして約80m。狙えない距離ではない。しばらく待ってみよう。その間に今日の猟のプランも練ってみよう。何十分経ったか,そんなに長くは待っていないが,なにやら,監視している道の下斜面で,鳴き声がする。甘えたような,鹿の鳴き声のようだ。こちらからは見えない。しばらく鳴いていたが,あまり期待せず,ぼーっと待っていたが,そのうち声もしなくなり,待つより奥に行ってみようと思い立ち,下の道へ下る。下の道にたどり着き,奥へ行こうと歩き出したが,道はU字になっており,その真ん中は木などがあって,下の斜面が見えないので,歩く途中に一応確認しようと覗き込んだら,
鹿とバッタリ目が合う。鹿はババッと向こうへ逃げ出した。一応銃を構えてスコープで覗きこむと,少し逃げた鹿が立ち止り,こちらを見ている。これはもらった!と引き金を引く。鹿は逃げ出して見えなくなった。えぇ〜?当たらなかった?確かに撃った瞬間銃身が少し上下にぶれたが,それで外れたのか?おかしいなぁ。距離計で測ると約30m。ほぼ水平。外れる要素はほとんどないが,当たらなかったのは事実。思案に暮れてしばしたたずむ。不可解さを消化しきれないまま,奥へ進む。
 倒木をいくつか越え,奥まで行く。作業道の終点まで行く。新鮮な鹿のフンが,大きいものと小さいものが一山ずつある。母鹿と小鹿か。今は鹿の姿は見えない。しばらく奥の沢で休憩し,食事をとる。
 また歩き出し,そこかしこ見て回ったが,鹿とは会わず。
 来た道をある程度戻って,鹿が出る可能性が高いと思われる場所が見通せる少し離れた場所で,鹿を待ってみた。耐えられないほどではないが,寒いのは寒い。指もかじかむ。午後3時半まで待とう。・・・・何もなく3時半になった。鹿が出てもよさそうだったが,あいにく今日は出ないようだ。ここで最後までいるのはもったいない。前回の猟に通ってみて,鹿が出る可能性が最大の場所に行ってみよう。
 そこへ行く途中,下の斜面で鹿が鳴く。木の葉が茂っており何も見えない。前回の猟の時もここで鹿が鳴いたな。同じ鹿だろう。姿が見えないのが癪に障るが,あきらめて道を戻る。
 目的の場所(沢)に着く。沢のU字の中心部が見えるように,数十メートル離れて待つ。50m以上は離れている。離れれば鹿に見つかる可能性は減るが,当然,こちらも鹿を見つけにくい。ストレスがたまる。上から沢の下を除く。望みはありそうだが,鹿の動きはない。沢の上の斜面も見る。来てもよさそうだが,なかなか動きが見えない。何十分待ったか,このまま日没までここにいるか?それとも他の場所も見てみるか?今日は朝から山に入っているので,体力もかなり消耗している。午後4時も過ぎると少し暗い。・・・もうここはあきらめよう。戻ろう,と20mほど歩いたところ,沢上の斜面に動きが。
鹿が2頭,比較的大きいのと小さいのと上に逃げていく。距離的には待ち続けていた場所から100mほどの距離,ギリギリ見えない場所だった。大きい方はオスだった気もする(角を見てはいないが)。くっそー。もう10分,20分待っていれば,鹿が少しずつ斜面を下りてきて,撃てたのではないか?くっそー。でもまあ仕方ない。鹿はもう見えない。あと数十分で日没だ。戻りながら鹿を見つけよう。
 そこから車を止めた場所までは普通に歩けば20分もかからない。とぼとぼと歩きながら,しかしある程度周囲を気にしながら,道を戻る。車まであと数百m程度の,これまた沢。カーブを曲がって沢の方に向いた瞬間,
鹿とバッタリ。鹿は逃げ出したが近い所で止まってこちらを見た(後で距離計で測ると約25m)。近い。鹿は横を向いている。ほぼ水平の位置関係。これまためったにないチャンス。スコープを覗き,確信をもって引き金を引く。轟音がとどろく。スコープ越しの鹿の顔が驚き,右に逃げだす。うわっ。外れた。少しだけ距離が空いたが,ボルトを操作し次弾を装填し,難しいと思ったが引き金を引く。また外れた。鹿は支尾根を登り,高い所で止まってこちらを見ている。距離は100m以上だろう。木々に隠れてもいるし,ちょっとこれ以上は無理だ。鹿が上に逃げていくのを見守るしかなかった。まだ午後5時前だが,もう車も近い。今度こそ終わりだ。車に戻る。
 今回は,2度も絶好のチャンスがあったのに,どちらも外した。外す距離ではないのに。スコープがずれているのかと思い,家に帰って機械を使って照準を調べてみたが,さほど問題なかった。そうすると,撃つ人間側の問題だ。銃の保持,頬付け,狙う場所,引き金の引き方,呼吸方法,もろもろがダメだったということ。近距離で鹿がこちらを見ていることがプレッシャーになったのかもしれない。絶好の条件だったことが逆に気負いの原因になったのかもしれない。なんにしろ,3倍のスコープを使って25〜30mの水平射撃で外すなんて,恥でしかない。
 猟前に射撃の練習をしてなかった。スラッグ弾は福岡や佐賀の射撃場まで行かないと撃てない(熊本では撃てない)から,なかなか行きづらい。練習しないでも大丈夫だと思ったが,やっぱり練習すべきだった。
 

2015年12月21日(月)
Bなぜ狩りをするのか

 平成27年も終わろうとしているが,まだ2回しか猟に行っていないので,遅れを取り戻すべく,何とか年内にあと2回は行こうか。日頃はグーグルアースで地形を見ながらプランを練る。あーしてこーして,こうなったらこうしよう,とか。ある程度のプランが決まらないと,なんとなく行く感じでは朝起きれない。今回は,これまで全く行った事がないコースでやってみよう。どうなるかはやってみないと分からない。そのコースがどういう状況かもわからない。気温は低いが晴れなので,服装の選択が難しいかもしれんな。
 午前9時半頃に登り出す。途中まではこれまでの道と同じだが,今回は,少し奥まで作業道を歩き,ある分岐点から斜面を登ることになる。
 歩き出して20分,下の斜面約40mを
鹿が逃げていく。先を進む。分岐点まで来て,斜面を登り出す。鹿が上り下りしている跡が明確にある。登るコースは少し急だが,登れないほどではない。しかし暑くなってきた。途中,ジャケットを脱ぐ。余り汗をかくと臭いで鹿に逃げられるので,そろそろと,息が上がらない程度の,汗をなるべくかかない速さで登る。
 20分くらい登ったか?進行方向約30m先の薄い茂みを
鹿が身をひるがえして逃げていく。小さかったな。ここはやっぱり鹿が居るんだな。この斜面は,稜線から下の川へ最短で来れるから,一番見込みがあるようだ。ただ,どの時間帯にどこにいればいいのか・・・。
 もっと上る。稜線が近い。稜線が近くなると,空が見えてくる。足元も悪いからそろそろと登っている。日影になる場所は雪が少し残っている。少し止まって上の斜面を透かし見る。ん?少し何か動いたか?身をかがめ,片膝を付き,様子を見る。肉眼では見えない。スコープ(3倍)でもよくわからない。双眼鏡(8倍)で見ると,いる。最初はイノシシかと思ったが,
鹿だ。小さいか?少し動いて緑に隠れて見えなくなったので,少しこちらも近づく。そうこうするうちに,その鹿のいる方向から,甘えるような鳴き声がしてきた。その鹿か,近くに他の鹿が居て鳴いているのか?どうも,その小さな鹿が鳴いているようだ。こちらの足音を,母鹿か仲間の鹿かと間違えているのか?レーザー距離計で測ると約80m。狙えない距離ではないのだが,確実な自信はないし,なにしろ小鹿だからなぁ。いい機会だから,可能な限り近づいて双眼鏡で観察しよう。ズカズカと歩いたら,さすがに鹿はこちらが鹿でないことに気づいたみたいで,翻って上に逃げた。しかし,少し上で立ってこちらを見ている。双眼鏡で見ると,耳が大きい。警戒心もさほどではないから,今年生まれた鹿なのは間違いないようだ。ここでも撃てる状況だが,双眼鏡ではっきり小鹿と確認できてしまったので,ますます撃つ気が削がれた。なので,背を向けて,斜面を登り出した。鹿は警戒鳴きをしだした。稜線に登り,杉林の中に入りザックを下して休憩したころにやっと鳴き声が止んだ。
 しばらく休憩していると,今度は全く違う場所,しかも数十mの距離から鳴き声がした。ピヨッというような。探っている声か?よくわからない。10分ほど警戒したが,じっとしていても時間が経つだけだ。左に迂回してみる。ぐるっと回ってみると,鹿が本格的に警戒鳴きで逃げていく音。さっき登るときの小鹿とは違う声で,2匹が鳴いている。ぐるっと回ってみたら,今度は3か所から鳴かれている?こんな体験は数年ぶりだ。少し開けた場所にザクザクと歩いていく。姿は見えず,鹿の声はする。緩やかな斜面を登っていくと,その頂上付近,鹿が逃げていく音と鳴き声。姿は見えないがまた違う鹿だ。開けた場所から八代市街,八代海,普賢岳も見える。風は冷たいが,日差しが痛い。
 しばらく経って,これまで行った事がない,この稜線を北に進んでみる。けもの道のような踏み分け道を,ビクビクしながら歩いてみる。東斜面は日が照っているが,西側(急斜面)は雪が残っている。鹿が居てもよさそうな雰囲気だが,いない。距離的には400m程度の距離を,1時間ほどかけてゆっくりと進む。結構な登りが始まる場所まで来て,しばらく休憩。どうも,ここらは歩くときに音がし過ぎるので,獲物が逃げてしまう感じがする。見込みがないので,戻ろう。
 開けた場所まで戻る。今日の計画は,可能であればこの場所で鹿を撃つことだったので,可能な限り,ここで鹿を待とうか。候補としては2か所。右下の少し段になっている場所と,左方向の,約100mほどの距離にある場所。こちらは木陰に隠れて待ち続ける。風は冷たいが,日差しが刺すように痛い。
 2時間以上待ってみたが,成果がない。だんだん日が傾いてくる。今日の日没は5時13分だったはず。車に戻る直前までは鹿が出そうな場所が続くので,車に帰り着くのは午後5時頃にしたい。そのためには,4時半くらいまでしかここにいられない。
 時間が来た。帰ろう。帰る道筋,見込みは薄いが,鹿が出る可能性もある。帰りは往きとは違う,遠回りの道を帰る。
 少し疲れてしまったか,あまり静かに歩くことができず,ドスドスと音を立てて歩く。ちょうど左に折れる道を回ったところで,目の前30m程で
鹿とバッタリ。鹿は急いで逃げていく。こちらは急いで挙銃する。スコープにとらえた鹿は右に曲がり横腹を見せる。難しいとは思ったが引き金を引く。鹿は斜面を登って見えなくなる。外れたな。鹿が鳴く。ちょうど,往きに登った道の近くまで来たところだった。この場所は,上下に鹿が移動する場所なんだな。
 とぼとぼと帰る。しばらく行くと,斜面下の方からオスの鳴き声(だと思う)。しかし緑で姿は見えず。
 その後,車に帰り着くまで何もなし。
 今日は,獲物を捕れなかったが,ずいぶんと満足感がある。鹿も何頭か見ることができたし,外れはしたが鹿を撃てた。
 今年,もう一回でも猟に行ければなぁ。

2015年11月28日(土)
A一発も撃たず

 前回と同じ場所に行くことにした。前回は沢始まりの鞍部でほとんどの時間を過ごしたが,今回はその奥の稜線やその向こう側まで行こうと思う。
 午前10時30分頃に歩き出す。前回の山歩きで慣れたのか,今回は少し楽に歩ける。それでも沢始まりの鞍部までは1時間かかった。少し休憩し,その先の急斜面を登り,稜線に到達。昼12時を回っていた。前回と同じく工事の音がする。どうやら,2か所でやっているみたいだが,近いか遠いかよくわからない。それはともかく,稜線を歩きながら,斜面を覗き見た。稜線の上は,鹿の寝床がそこかしこにある。まあ,気持ちよさそうなところだからな。人にとっては風が冷たくて厳しい所だが。
 斜面は,結構見込みがありそうな,鹿が来そうな場所だと感じたが,しばらく様子をうかがってみたが,鹿はいない。なので,南側に稜線を歩いてみる。しばらくすると下りになり,開けた場所にでる。GPS上では,等高線の間隔が広い,つまり緩やかな場所がある。杉林ではあるが,楽に歩けそうだ。いったん戻り,何時間か稜線上で斜面下から鹿が来るのを待ってみたが,ダメだった。なので,さっき行った稜線の南に向かい,杉林に行ってみた。ここらの山では珍しいくらい平たい場所だ。鹿が杉の木の皮を剥いだ後はいくつもあるが,鹿の気配はない。そこそこ歩き回ったが,成果は無かった。ここらは,鹿が来るとしても夜なのかもしれない。あきらめて戻る。
 また稜線上で鹿を待つ。風が寒い。座ると寒い。立つときつい。じっとしていても想像以上にカロリーを消費しているようだ。3時を過ぎ,4時になると結構薄暗くなる。今日の日没は午後5時12分。車に戻る途中に鹿を撃つチャンスをかんがえると,4時半くらいには帰途につかないといけない。結局4時40分過ぎに帰途につく。途中鹿を見ることもなかった。鹿がいたとしてもよく見えない位暗くなっていた。日没時間が来たので,銃から弾を抜く。車に帰り,装備を積み込み,走り出す。車を発進させてから数秒もしないうちに,数十メートルの距離に鹿が居て逃げ出した。こんなもんさ。

2015年11月24日(火)
平成27年度初猟

 11月1日から始まった猟期もはや1か月経とうとしている時期に,ようやく猟に行けることになった。まずは初めに成果を上げて(獲物を捕って),あとはゆっくり猟期を楽しもうという考え方もあるだろう。でも,そのためには確実に取れる場所に行くことになる。確実に取れるということは過去に何度も通って猟場に精通していないといけない。それでは正直面白味がない。なので,今まで行った事はあるが鹿を見たことがない,または獲物を逃した場所に行くことにした。数年前に行ったっきりの,比較的長い,険しい沢を鞍部まで登りあがってみることにした。
 猟場に着くまでの道路,集落を抜けて数分もしないうちに鹿が居た。車を見て逃げ出す。鹿は驚くほど集落の近くにいる。集落の近くの方が撃たれない,危険がないことを知っているようだ。
 猟場について,午前8時半くらいに歩き出す。湿気が強く,比較的暖かい。汗がかなり出る。足場も悪く岩を踏むとその苔に滑って転ぶ。久しく山道を歩いていないのできつい。山道と言えるほどの道もない沢を登る。数年前に鹿を見た場所に来たが,気配はない。1時間くらいで鞍部まで登りあがる。ブーツや手袋や銃が泥だらけ。エネルギー不足か,消耗が激しくて目の前が暗い。立っていられずにしゃがみこむ。数十分かかってやっと生気を取り戻す。
 今日はあまり天気が良くない。始終曇りで,いつ雨が降ってきてもおかしくない。それでも,時間が経つにつれ少しずつ太陽が昇って,雲を透かして周りを明るくする。鈍った勘を取り戻そうと,じっとして周りの音に耳を凝らす。
 途中,登ってきた沢から鹿の足音らしき音が聞こえたような気がしたが,そこかしこで落ち葉が落ちる音がしているし,風が葉を揺らす音もするので,確信が持てない。近づく様子も無く,音は立ち消えた。
 もう今日はここでずっと待とう。鞍部を超えた反対側の沢,その東側の斜面の上の方からも音がしたような気がするが,空耳も多い。
 昼を過ぎ,少し日が差してきた。下の方から,伐採のチェーンソーの音が聞こえ,バリバリっと木が倒れる音。うわぁ,近くで伐採しているのか,ちょっと今日は獲物の見込みはないなぁ。伐採場所は近くのような気もするし,近くでやっているように聞こえても結構離れていたりするのが山の常。しばらくすると音が遠くなったか。少なくとも登ってくることはなさそうだが,あんまり発砲音も聞かれたくないなぁ。獲物が来てもどうしようかなぁ。
 何時間待っても獲物の気配がないので,少し奥に行った場所にある急斜面を登ってみることにした。盛大に音がするが仕方ない。道なんてないので適当に木に掴まりながら少しずつ登って行く。登りきると汗だくだ。・・・しかし,登ったところで,特に何か見つかったわけでもない。2方向に緩やかに尾根があるので,歩いて探せそうだが,うーん,なんだか気が進まない。疲れているせいか。なので,今回はいったん降りて元の所に戻る。
 また待つ。木に背中を預けながらしゃがみこむ。上の斜面でパキッと音がしたが,それっきり。どんどん暗くなる。午後4時半ころになるととても獲物を探せる状況ではなくなったので,降りることにした。
 下りるのは30分もかからない。車を止めている場所に着こうかとしたとき,目の前数十メートルの木々の間から突然
鹿があらわれ,ピョンピョンと飛んで走り去っていく。まだ5時前(今日の日没時間は午後5時13分)。すかさずスコープで狙いをつける。射線的に少し躊躇したが,鹿が右に転回し横腹が見えたので半ば無意識に引き金を引く。当たってもよさそうだと思ったが,行ってみるが鹿はいない。血もない。スラッグは弾速が遅い。ライフルなら当たってたな。走る鹿を撃つのは難しい。距離は50mほどか?
 車に着くころには結構な雨が降ってきた。
 というわけで,初猟は思ったようにはいかなかった。獲物は取れた方が楽しいに決まっているが,常に新しい所を,新しいシチュエーションをと求めてもいる。どうしたもんか。
 

2015年3月19日(木)
平成26年度猟総括

猟期最後の土日は行く気満々だったが,結局行けなかった。今期は8回しか猟に行けず。猟果も芳しくなかった。ただ,雪の中をさまよって鹿を撃ったりしたこと,これまで行った事がない場所を開拓したこと,待ち猟を限界までしたことなどはいい経験だったと言えるか。今期は週末(特に日曜)の天気が悪いことが多かったなぁ。総括としてはそれ位か。

2015年3月9日(月)
8 5時間半

 猟期終盤なのに天気が悪くて何週間も空いた。前回惜しいことをしたし,いろんな可能性がある場所だから,あの場所でどうしても捕りたい。
 11時前に登り出す。登り始めて10分もしない,ここに初めて来たときに撃ったイノシシが居た場所よりも近い場所に
鹿が居た。こちらが鹿に顔を向けた瞬間,鹿は逃げ出した。距離は30mも無い。こんな場所に鹿がいるなんて。固定観念を持たないのがコツだ。
 気を取り直して,日が差す暖かい斜面に行ってみるが,成果なし。
 いったん戻り,前回と同じ場所に行ってみる。数百メートル行くと,さっき逃げた鹿だろうか,鹿が逃げていく足音。姿は見えず。
 どんどん歩き,前回待ち続けた場所へ。ちょうど12時に待ちスタート。今日は天気がいい。前回よりはたいがい薄着で来たが,日が差すと暖かい。吐く息は白いから,それなりに気温は低いのだろうが,疲労も重なり,若干眠くもなったりする。鳥は盛大にそこかしこで空や地面を飛び回り,餌を探している。それが鹿などの足音と似ていて紛らわしい。
 前回と同じく,沢の反対側から時折ガラガラっと石を落とす音がする。鹿なのだろうが,姿が見えない。どうもおかしいなぁ。こちらに鹿が来ないのはともかく,姿が見えないのはなぜなのか?
 3時もとうに過ぎた頃だったか,反対側の斜面,木々の間にチラッと,
鹿が登って行くのが見えた。それ以上は全く見えない。距離は約50m。やっぱりあっちの側を登ったり下りたりするのか。でも,沢の下には全く姿が見えなかったが・・・・。
 相変わらずこちらに鹿は来ない。寒くて体が震え続ける。ザックが重いが,下すと寒さが増すので下せない。どんどん疲労する。4時になる。今日の日没は午後6時18分だったはずだ。帰る時間も考えて,午後5時半までここで粘って,ダメなら戻ろう。
 そうこうするうちに,簡単に5時になる。午後5時になるとさすがに日光の色が変わる。まだ太陽は沈むまで余裕があるが,薄暗くなる。
 5時半少し前,また音がした。身構える。動悸が激しくなる。しかし成果がなく,音がしなくなった。とうとう5時半。戻る時刻だ。でも,どうしても気になるので,沢を渡って反対側に行ってみた。あれ?こんな感じだったっけ?勘違いしていた。もっと先に行けた。あー,ここは前々回雰囲気がある場所だと感じてた場所だった。なるほど。ここを鹿が上り下りしていたのか。納得だ。あれっ?少し先に小さな沢がある。ここを上り下りしてたのか。どうりで全く鹿が行き来するのが見えなかったはずだ。こちらが張っていた沢の先の沢を上り下りしていたんだ。前回近くに来た鹿はたまたまだったのか。くっそー。これなら,待っていた場所から数十メートル高い斜面で待っていればよかった。それなら,60〜70m位の距離になるが,狙うのは可能だった(と思われる)。
 惜しいことをしたなぁと思いつつ奥に行ってみると,沢から
鹿が逃げて行った。あー,ここだった。ここと,もっと手前の沢を勘違いしていた。勘違いに気づいていれば,今回は違う作戦で行けたのに,5時間半も無駄にした。
 今度こそ帰る。今日の午前中行った場所に行ってみると,また鹿が斜面下を逃げる音。盛大に鳴きはじめる。もっと先に行ってみるが,何もいない。もう結構暗くなった。今度こそ帰ろう。ヘッドランプを点けて帰る。
 やれやれ,もうあと1回猟に行けるかどうかなのに,手痛い失敗をした。5時間半も無駄にした。1発も撃たなかった。あと1回行けるなら,今度こそリベンジしたいところだが,どういう作戦で行こうかねぇ。

2015年2月15日(日)
7 待って,待って,待ち続けて

 いよいよ猟も終盤に差し掛かっている。あと3回行ければいいところだが,天気が悪ければあっという間に終了だ。今期は場所を変えずに,前回の場所を出来る限りやってみようか。

 午前10時30分に斜面を登り出す。一旦は右側の斜面を平行に歩いていたが,途中,下の道路に近く(200mくらい?)なっている場所で,車の音と犬の鳴き声。誤射されてはたまらないので,来た道を急いで戻る。

 で,登ってきた尾根の左側へ歩き出す。4〜500mくらい歩いたか,進行方向の少し下,距離的には50mほどか,木々や枝枝の向こうに視線を感じる。鹿が右向きでこちらを見ているようにも思えるが,スコープで覗いても判別できない。双眼鏡があれば,と思ったが,こんな時に限って装備しておらず背中のザックの中。もし鹿が居たら,ザックを下して双眼鏡を取り出そうとしたらすぐに逃げられるだろう。この時はそこまで確信が得られていないので,まさか鹿が立ってこちらを見てないだろうと思い,そのまま歩き出す。数十m歩いたか,30m程下を
鹿が逃げていった。場所的には多分さっきの場所。やっぱりあれは鹿が立っていたんだ。くっそー。

 それから数百m歩いたか,下の方で犬の声と,銃声。場所的には路上発砲の疑いが濃厚だが,こちらから逃げ出した鹿が道路近くに降りて,ちょうど車で通りかかったハンターが発砲したのではないか。たぶん間違いない(下は崖の中腹を道路が横切っているから,人がいるとしたら路上しかない。)が,確かめることはできない。こちらに来なければそれでいい。誤射されなければそれでいい。時刻は正午頃。

 また数百m歩く。前回鹿に逃げられた場所(沢)に着く。今回はむやみに先に行かず,ここを勝負場所と決めた。今は鹿は見当たらないが,ここには必ず何らかの形で鹿が来ると確信している。絶対に。
 そこまで寒くはないが,待つのはつらい。立って見張ったり,屈んで見張ったり。時折,沢の向こう斜面(木々で見えない)を鹿らしき足音がする。登って行っているのか下っている音なのか,来た音なのか,そこにいた鹿が去って行ったのか,全然見えない。全然見えないのが悔しい。しかし鹿は見える位置にいつかは来るはず。
 待ち始めて2時間位,午後2時過ぎか,周りで好き勝手音を立てる鳥たちに紛れて,沢ではない,こちらがいる斜面の上から音が聞こえてきた。そっと右を向き,上を見る。比較的なだらかな斜面の上方,40mほどか,音が聞こえ,動きも見えた。
鹿だ。来た!待った価値があった。少し小さめか。銃を構え,スコープを覗きながら打てる場所に鹿が来るまで待つ。しかし,上方に挙銃し続けるのは思った以上に腕がつらい。待ち続けて鹿が来たので動機も激しい上に腕ががくがくしているのに,なかなか鹿は降りてこない。地面の木の芽などを探して歩いている。しかも木々が重なって射線がほとんど取れない。鹿に気づかれる危険はあるがやむを得ず少し右に移動してみるが,少しも狙いやすい場所はない。そうこうするうちに,鹿が頭を挙げた。小さめの鹿の顔と目まで肉眼で見えた。それから姿が見えない。やばい,気づかれたか?しかし逃げた音もしない。しばらく固まって様子をうかがっていたが,何分経っても姿も見えず音もしない。仕方ないので,待機していた場所に戻る。しばらくして,沢の反対側,上方で少し鹿の鳴き声がした。さっき鹿が居た場所に変化はない。やっぱり逃げられたのかなぁ。本当にがっかりした。辛い思いをして待ち続けたのに,やっと鹿が来たのに,ダメだった。…仕方ない。今日は意地でもここで待とう。
 
 また同じように待つ。そんなに何頭も同じ場所に来ることは少ないだろうが,他にアイデアもないし,さっきは発砲もしていないから,時間が経てば鹿が来ないとも限らない。待とう。・・・・・・・待ち続けるのはこんなにもつらいのか。ザックや銃は重い。動かないと寒い。腰が痛い。膝も痛い。首も痛い。その間中,360°目と耳を総動員し警戒している。ただボーっとしているわけではない。あの時なんで鹿を撃たなかったのか?もう鹿が来ないならあのチャンスにかけてもよかったのではないか。今日も撃たずに終わるのか・・・・・・。
 待ち始めて3時間,午後3時頃,また音がした。鹿が居た上斜面の右,50mほどの所に動きが。
鹿だ。1時間前に来た鹿より大きい気がする。右に少し移動して,態勢を整えて銃を構える。姿勢はきつい。鹿が下に降りてくればいいのだが,どうも斜面を平行に進んでいるようだが。様子を見ていたら逆に少し登りながら右に移動しているようだ。これはまずい。スコープで覗くと,木々の切れ間に何とか狙えるスペースがある。この機会を逃すわけにはいかない。引き金を引く。しかし,当たった様子はない。鹿は倒れず,銃声にびっくりしたみたいで尻の毛が広がった上で登って行った。確かに,狙うには射線が厳しく,無理な体勢だった。待ち続けて体力も消耗していた。でもなぁ,50m位だからなぁ。当たらない距離じゃない。この程度の腕だということか。しばし呆然。2度も来たチャンスなのに,成功しなかった。
 あきらめきれず,30分ほどは待ってみたが,少し集中力が切れてきた。発砲したからここはもう無理だろう。少し道を戻る。数百m戻った場所の下から鹿が鳴く。疲れたので腰を下ろして休憩。倒木に腰かけていると,目の前の雑木が鹿の角でめくれあがっている。オスがいるな。
 しばらく休憩して道を戻る。今日最初に鹿を見た場所を過ぎたあたりで,下斜面から鹿が下りていく音。姿は見えず。
 朝,途中まで行った方向にまた行ってみる。小さな沢に差し掛かると,こちらからは木々で見えない沢の反対側斜面,30mほどの距離を鹿が逃げていく音。姿は見えない。構わずに進むが,鹿は盛大に鳴き続ける。姿は見えないからいまいましい。100mほど歩いたらまた沢が見えてくる。下の斜面を除くと,40m程の距離に小さめの
鹿が2頭いて,こっちを見て逃げていく。狙う暇もない。少し追ってみるが,こういう場合は無理と相場が決まっている。
 少し戻った沢の付近で石に座って周囲を観察する。もう疲れた。
 帰ろう。
 
今日は惜しいことをした。やっぱり待っている場所に鹿が来る時の感覚はたまらない。猟果は伴わなくても,歩いた充実感が無くても,待ち続ける間の苦痛が良かったな。

2015年2月7日(土)
6 そういうことも

 いつもは日曜に猟に行くのだが,今週は土曜に行くことになった。
 先週までに行った場所はまだまだ研究の余地があるので,同じ登り口から行こう。
 少し遅いが午後11時頃に登り出す。先々週にイノシシを撃った場所の奥へ。山腹を横切るように歩く。今日は少々体の調子が悪い。凸凹なところを歩くと体がフラフラして体幹が安定していない。こういうのはちゃんと自覚して用心しないと,思わぬところでバランスを崩して斜面を落下することになる。落ちても途中の木々のどこかで大体落ち止まるとは思うが,何もない崖もある。慎重に歩くに越したことはない。
 杉林だったり雑木だったり,比較的なだらかな場所だったりで,なかなか雰囲気がある場所も多い。ここは見込みがある場所だなぁ。でも歩ける場所は比較的開けているから,斜面上の雑木が多い場所には居ても,人が歩ける場所には鹿などは出てきにくいかなぁ。おっ?これはオス鹿が角を木で磨いた跡がある。オス鹿がいるんだなぁ。結構見込みがある場所か?
 そうこうするうちに,沢に近づくと,沢向こうの木々(葉が落ちて枝だけ)が日光に照らされているのが見えてきた。こういう所は鹿が出やすいイメージがある。少し遠い場所からしばし耳を澄ますも,あまりよくわからないので,沢から50mくらいまで近づき,様子をうかがう。すると,ガラガラっと音がする。おっと,いるな。動悸が激しくなる。屈んで様子をうかがう。姿が全く見えずに音だけなので,なんとか動くものが見えないか目を凝らす。その後,音はしたが,結局動きが見えずに時間が経つ。鹿は逃げたのかな。このままずっといるわけにもいかないので,もう少し沢に近づく。数十m近づいて様子を見るが,分からない。鹿は逃げたのだろう,あきらめつつ,しかしなるべく静かに沢を横切る。石も多いので音がするのは仕方ない。沢を丁度横切って向かい側を向いたとき,30mほど先に
鹿がいてこちらを見て逃げ出した。うーん。鹿は確かに居た。音がした場所にまだ居た。しかし狙う暇もなく逃げられた。これまで何度もこういう状況になるな。
 鹿は下に逃げ去り,姿は見えなくなった。あきらめて,先を進む。ここからは杉林。少し歩くとまた雑木。数百m歩くが,ある沢でもう先に進むのをやめた。風が冷たいのか,思いのほか寒いが,しばらく沢を眺めながら休憩する。
 いろいろ考えたが,戻ることにした。さっき鹿が居た沢に着き,今度は反対側から少し様子をうかがってみることにした。付近の石に座って鹿を待つ。座ると寒い。シャツを一枚着る。何分待ったか,あきらめて,沢を横切る。すると,上斜面50m以上離れているか,鹿が鳴く。姿は見えない。これはダメだ。歩き出す。もう一つ先の沢へ近づき,様子を見る。ここも雰囲気がある。下斜面に,ガサガサ音がする。動悸が激しくなる。姿は見えないが,ここは勝負だ。こちらの姿が見られないように姿勢を低くしながら下を警戒する。音は時折するが,姿は一向に見えないし,音が大きくもならない。焦ってはダメだと我慢する。屈んでいると寒い。数十分居たか,音がしなくなった。ダメだったか。また歩き出し,沢の反対側に出て,下斜面を見る。ここは本当に雰囲気がある。鹿のフンも大きいの小さいの新しいの古いのいろいろ,そこかしこにある。下から音がした。でも,姿が見えない。よく目を凝らすと,鳥だ。鳥は思いのほか音を立てて地面に降りたり飛び立ったりを繰り返す。こういう所は鹿も好きなはずだから,ここでもしばらく待ってみよう。・・・・今はいないようだ。無理か。戻る。
 車を止めた道路から登りあがってきた場所に戻ってきたが,今回も反対側の山腹に行く。先週見込みがあると思っていた場所まで来て,岩に座って沢をうかがう。しばらくしたら,上斜面を鹿が歩く音。ドキッとした。もう来たか。様子をうかがうが,こちらには来ないようだ。音がしなくなった。
 その後もずっと待っていたが,居るのは鳥ばかり。鳥の音が本当に紛らわしくて嫌になる。
 そうこうするうちに雨が降ってきた。少々の雨は別に問題ないが,暗くて周囲が見渡せなくなった。雨も止む気配がない。帰る。
 今回は空振り。今回歩いたコースはかなり有望な感じに見えたが,見ることができたのは鹿1頭。まあそういうことはあるさ。ここはもう少し研究しよう。 

2015年2月1日(日)
5 フェア

 猟期も後残り1か月半。せっかくの猟期だからできる限りのことをしたい。前の週はすぐにイノシシを撃って終わってしまったので,今回は前回のコースの奥へ行くことにする。

 車で猟場に向かう途中,道路上に鹿がいた。角はなかったようだが,黒かったのでオスだろう。下の斜面に降りて行った。

 車を道路わきのスペースに止め,準備をしていると猟の軽トラが通り過ぎる。荷台には猟犬が2頭,後ろ向きにちんまりと座っていた。


 午前10時40分登り始める。急こう配なので,ジグザグに少しずつ進む。感じとしては,いつどこに獲物が居てもおかしくなさそうな場所が続く。しかし,初めての場所なので緊張する。少し歩いては周囲を見渡し,耳を澄ましで進んでいく。やっと稜線に出る。少し開けた場所からは遠く八代海が見える。

 稜線を上へ登る。当たり前だが木が茂っていて歩きにくい。おまけに両側の斜面も木が生い茂っていて,見通しがきかない。どこにイノシシがいるかもわからず,気が休まらない。本当なら足音を立てずにこっそりと歩きたいのだが,そうするとバカなイノシシと近距離で鉢合わせすることにもなりかねず,ストレスが大きい。なので逃げられても仕方ないという気持ちでドカドカ歩く。

 少々雰囲気がある場所に出る。谷の始まり部分。少し佇んで様子を見る。すると,左下斜面の少し遠い所から,動物が岩を落とすような音(前の週のイノシシのような)がする。これはまたイノシシか?屈んで,しばらく様子をうかがう。何度か同じような音がしていたが,なかなか近づいて来ないようだ。痺れを切らしてまた奥へ進む。

 200mほど歩いたか,また少し開けた場所に出る。等高線が緩やかな場所。ここに出た途端,臭いがした。尿のようだ。動物が近い。しかし・・・,地面を見るとそこかしこ穴だらけ。イノシシでしかありえない。うーん・・・。まばらに杉が植えてあるから,見通しは効く。その場で少し様子を見るが,さほど変化はない。では,ゆるやかな斜面を上に登っていくか,それともその斜面を左に巻く道(けもの道?)を進むか。とりあえず斜面をトラバース(巻く)するか。100mくらい歩く。下の斜面はよく見えない。沢にたどり着く。反対斜面は日に照らされて,いかにも鹿などが下りてきそうな場所だ。これは待ちポイントとして有望じゃないか?休憩がてら少し様子をうかがう。

 鳥があちらこちらに動き回るから,紛らわしくて仕方ない。何分経ったか,下の方で少し音がした。その後,ダダッと鹿が走り下りる音。やっぱりここにはいる。でも姿が見えない。少しもどかしい。ここはある程度の時間待つ価値がありそうだ。風はそれほど吹かないし,日も照っていないわけではないし,雪も降らないが,かなり寒い。特にじっとしているとガタガタと体が震えてくる。しゃがむとと余計に寒い。あまりに寒いのでシャツを一枚追加で着て,グローブも1段階厚い奴に変えた。かなりマシになった。何十分経ったか,それとも数分なのか分からないが,また音がした。そしてまたダダッと鹿が駆け下りる音。えー,見えないところを動き回られてもなぁ。あまりにも寒く,成果もないので,いったん戻り,斜面を上に登ってみる。そこかしこは地面を掘られて根っこを食い荒らされている。杉の幹の表面も食われている。こりゃここらの杉は軒並みダメになるんじゃないか?掘り返されてない地面を探すのが大変なくらいだ。上に行ってもどこも穴だらけだ。鹿のフンも新しいのがあるから,鹿もいるんだろうが,この穴はイノシシだろうなぁ。まあ,誰もこんな山奥には来ないからやりたい放題だろう。
 
 しばらく探索し,少々手詰まり感が出始めた。さっきの沢近くに行ってみる。どうも,けもの道かわからんが,沢の向こう側斜面を巻いて歩けるかもしれない。行ってみる。おぅおぅ,どこまで人間がいけるかわからないが,歩けそうだ。数十m歩くと,動物の痕跡,新しいものが複数あった。鹿かな?さっきの音はここにいた鹿が動き回っていたからなのかな?鹿からはこちらの様子が見えていたのかもしれない。こっちからは全く分からなかったが。けもの道を調子に乗って進むと危ない目に合うから,早々に引き返す。まあここは今後の研究にとっておこう。

 さて,もうあとは帰るしかない。結構日も傾いてきた。帰り道は往きより怖い。寒さと立ち尽くしの疲労でドカドカと歩く。途中,斜面下,強い風の中からガサガサという音。小さなイノシシだろうが,目をどんなに凝らしても姿が見えない。しまいには音がしなくなった。あきらめて帰る。途中,斜面を左に少し行けそうな場所があったので,ちょっと覗いてみようか。木の枝が邪魔でなかなか進めないが,その内,下斜面,20mほどに小さめの
鹿が2頭,こちらを見て逃げ出す。一瞬迷ったが,鹿が下に逃げずに進行方向斜面を上に登りそうな雰囲気だったので,少し後を追った。やはり登っているが,木々でなかなか見えない。銃のスコープで覗きながら,わずかに尻が見えていたので,難しいかなと思いつつ,引き金を引く。手ごたえ無し。外れたな。

 また帰り道を下る。このまま下に降りると車がある道路に出る。午後4時なので,まだ時間はある。前回イノシシを撃ったのと反対側に行ってみる。ここも歩きやすそうだ。歩きやすそうだとは言いつつ,疲労でヨロヨロ。一歩ごとに石などに足を取られて足をくじきそうになる。雰囲気的には獲物もいそうだが,道路に比較的近いから,難しいかもしれない。ずいぶん歩いてみたが,谷間なので日没前でも相当暗くなってきたこともあり,引き返す。まあ,ここも今後の研究材料としよう。
 車に戻ったのは午後5時過ぎ。日没まで数十分時間はあるが,もうヘトヘトだ。
 帰る。
 考えうる限りフェアにハンティングをしようという考えで,今のやり方になっている。犬に獲物を探させないし追わせないし,車で流し猟もやらない。二方に分かれて獲物を追い詰めたりしない。自分の足で歩き,自分の目と鼻と耳で探し,一対一(時には相手が複数)で獲物と勝負する。まあ最後は銃の力を借りて数十mの距離を稼ぐのだが,これは仕方なかろう。別に弓矢でもいいが,丸腰では野生動物に勝つわけがない。可能な限りフェアに行こう,というのが自分の猟のやり方で,これは今後も変わることはない。

2015年1月25日(日)
4 どうしたもんか

 年末年始はなんだかんだで猟に行けず,結局また1か月以上間隔が空いてしまった。確かに用事があったり体調や天気が悪かったり等なのだが,それにしても1回は行けただろうに。猟欲が落ちているのか?猟が怖くなってきているのか?行く場所が見つからないのか?1月にせめて1回は行こう。前の晩から道具やウェアを部屋に並べてできる限りの用意をしていたおかげで,朝からスムーズに用意を整えて,出発。
 今度の場所は今まで全く行った事がない場所。地図上は結構険しい斜面を登り続けて,支尾根くらいまでたどり着ければ少しは楽になるかな?という感じだが,現地に行ったらとても登れない位険しいかもしれず,猟ができるような場所ではないかもしれない。行ってみないと分からないが,行き慣れた場所やコースばかりでは緊張しない。面白味がない。新しい場所での,『この先はどうなっているのか』という刺激がたまらない。

 現地に到着し,道路のそばの杉林の間のスペースに車を止め,午前10時30分頃に斜面を登り出す。車を止めた道路は山道だが一本道なので,特に猟期は結構車の量が多い。登り始めて数分も経たないうちに,眼下の道路を車が難題も通り過ぎる。まあ別にいいや。

 ほんの数分歩いただけの場所に,地面を盛大に掘って木の根を食べていたであろう穴(直径1.5mほど)がある。これはイノシシじゃないのかなぁ。付近には寝床のようなものもある。鹿のフンは無い。イノシシかぁ。いやだなぁ。斜面上,いろいろな木々を透かし見る。目がぼやけている。山に目が慣れていない。1か月以上山に入らなかったブランクも一因だろう。周囲がよく見えないと心細い。すぐそこに動物がいるのにピントが合っていなくて見えない,ということもままある。

 上の様子を見ながら少しずつ登る。途中,左の少し遠いところでガラガラっと石が落ちる音がする。動物がこちらに気づいて駆け下りて行ったかもしれない音。止まって少し様子を見たが,よくわからない。気づかれても仕方ないと思いまた登り出す。道から200mほど登ったか,少し平坦な場所に出る。もっと上に登れそうだが,左右にも行けそうだ。どうしようか少し迷っているうち,また左の方から石がガラガラっと落ちる音。少し不安になる。さっきの音が動物が逃げた音なら,もう遠くに逃げたはずで,またこんな音がするのは考えにくい。ハンターが少しずつ歩いていて,その時に石を踏んだり斜面から落としたりして音を立てているなら,こちらに進んでくるのか?こちらも慎重に歩いているが,音は立ててしまう。その音をあちらのハンターがこちらを獲物と勘違いすることもありうる。途端に動悸が激しくなる。姿が見えたらすぐに声をかけて誤射を防げるが・・・。しばらく音はしない。様子をうかがう。こちらのオレンジの帽子とベストが見えるように立ってみたり座ってみたりしたが,反応はない。誤射されて死ぬほど無益なことはない。何分経ったろうか。十数分はじっとしていたが,相手がこちらと同じくらい辛抱強くない限りは音がしてもよさそうだが・・・。これ以上じっとしていても時間の無駄だ。獲物かもしれないしハンターかもしれないが,音がした方に行ってみないと始まらない。近寄ってみる。足音は全く消すわけではなく,ハンターなら人の足跡とわかるであろう程度に足音を立てて歩く。100mも歩かないうちに音の主が見えた。
イノシシだ。小さい。少し上の斜面で地面を盛んに掘ってエサを探しているようだ。距離はせいぜい20m程度か。死角にいるこちらには全く気付いていない。気づかれないように障害物の後ろに隠れつつ,銃を構え引き金を引く。イノシシは10mほど転げ落ちて倒木に止まる。死ぬだろうと思ったら,しばらくして立ち上がって歩き出そうとした。なんてタフなんだ。もう一発撃ってとどめを刺す。それでもしばらく動いていた。大きさは鼻の先から尻までが約80p,せいぜい20sあるかないかだろうか。発砲時刻11時10分。このイノシシがあの穴を掘っていたんだな。こんな小さいイノシシでも山はあんなに荒らされてしまうんだな。あと1年も経てば結構大きくなってしまっていただろう。
 
 こんなに早く獲物と出合うとは思っていなかったので,ほとんど山を歩いていない。神経は張りつめたが運動にはならなかった。でももう2発撃って,あと4発しか弾が無い。なので帰る。

 今回,害獣のイノシシを駆除したとはいえ,憎たらしいほど丸々と太った大きいイノシシではなく,小さめのイノシシだったので,やはり少し心が痛む。小さいといっても野生動物だし牙もすごかったが。あんな小さいのにあんなにタフだった。そのタフさに畏敬の念も覚えた。長い時間念仏は唱えたのだが,それで心のわだかまりが解けるわけでもなく・・・・。
 

2014年12月14日(日)
3 やれやれ

 前回と同じ場所に行くことにする。途中の道でハンターの軽トラック数台とすれ違う。道に鹿が死んでいる。
 現場に着き,午前10時25分に歩き出す。今日はほとんど雪は無い。
 10分後に前回とほぼ同様に
鹿が逃げていく。距離は50mほどか。
 約40分後,前回鹿を撃ったところと数十メートルしか変わらない場所(沢)を上から覗くと,鹿らしきシルエット。距離は約40m。動かない。双眼鏡で見るがよく見えない。雪があれば見やすいんだが。肉眼ではどう考えても鹿の胴体に見えるが,乱視が強いのでぼやけてはっきりしない。しばらくじっと見ていると,不意に景色が動き,
鹿が頭を上げたのが分かった。鹿で間違いない。こちらを見上げた。反射的に頭を引っ込める。しばらく隠れてどうするか考えた。見られたから,逃げられたかな。でも逃げたような音はしない。銃を構えてスコープを覗いたまま上体を上げる。鹿はまだいた。ここで逡巡。先週と同じような場所で同じような時刻に撃つなんて,ちょっとなぁ。今回は1頭で止めにするつもりだから,ここで仕留めてしまうと今日はもう猟は終わることになる。様々なことが頭をよぎりつつ,少々無理な体勢だが引き金を引く。撃った瞬間,反動で銃のストック(肩当)がバックパックのショルダーストラップの上を滑った。外れたな。肩当てがしっかりしていなかったか。鹿は沢の下に逃げていく。2頭いたのか。残念半分まぁいいか半分。
 奥に進む。稜線に出る道ではない,奥へ。日差しがたまに差すが,その時に登り道だと途端に汗が出る。でも基本は雪が降るほど寒い。特に風が冷たい。背に腹は代えられずゴアテックスレインウェアを切る。ガサガサうるさいので基本は使いたくないが死ぬよりましだ。ゴアテックスを着ていてもそれで済むほど甘くはない。寒いのは変わりがない。ある道は行き止まり,分岐点まで戻って違う道を進む。寒さはもっと厳しい。心境はまさしくミゼラブル。指が凍えてやばい。足先もやばい。基本動いていないとまじやばい。
 時刻も午後3時前,そろそろ稜線に行かないと活動時間が取れない。稜線の道に行く。稜線に出ると風はもっと厳しい。雪が比較的残っているので,遠方が見やすい。しばらく木立に隠れて様子を見るが,じっとしていると冷たい風で身が切られるように痛い。轟々と稜線の鞍部を横切る風に耐え切れず,うろうろと獲物を求めて動き回る。足跡はあっても姿はない。
 4時を過ぎた。車まで1時間くらいはかかるはずなのでもうそろそろ帰らないとまずい。帰路につく。車まで100mほどの距離の場所で,鹿が数十m先を駆けていく。その頃は薄闇で,見つけるのは無理だ。車に戻り,帰る。
 次回はどうしようかな。この場所をもう少し頑張りたい気もするが,嫌なこともあったから,全く違う場所を研究してみたい気もする。

2014年12月7日(日)
2 雪

 日曜しか猟に行けないのに雨だったり予定があったりで,結局最初の猟から1ヶ月空いてしまった。今度は,前期に行かなかった所に行ってみよう。車両通行止めの場所。ここなら流し猟の車は来られないだろう。安心して歩ける。
 歩き始めは午前9時35分。思った以上に雪が積もっている。10分も歩かないうちに沢の反対斜面(距離は約50m)上の方に動く物が右方向へ。
鹿だ。木が邪魔で見えない。右に移動してスコープで覗くが,見えない。そのうちに鹿が鳴きだした。見えない物は仕方ない。道を進む。
 数百m進み,右上の斜面を仰ぎ見て,左下の斜面を見下ろしながら歩いていると,正面30m程に動きが。
鹿が逃げていく。しまった。絶好のチャンスだった。鹿が逃げた方向に向かって100m程歩く。右奥の沢の近いところから鹿の鳴き声がしばらく続く。左の沢の方からも違う鳴き声。右の沢を少し登る。スコープで覗いていると鹿が斜面を登っているのが見えた。もう少しで狙えそうだったのだが。そのうち鳴き声が遠くなる。あきらめて斜面から下りる。
 積もった雪を踏みしめて進む。下斜面をいつものくせで何気なく覗くと,
鹿と目が合い,鹿はダッと向こうの斜面を登って逃げ出す。こちらは反射的に腰を屈めてスコープで覗く。距離は約30m。鹿は登っているが10mほど上がって止まりこちらの様子をうかがう仕草。このチャンスしかない。鹿の背中,前足の付け根付近,少々右付近だがこの際構わない。引き金を引く。鹿は倒れて斜面を落ちていく。手応えはあった。発砲時刻午前10時30分。鹿は見えない。近い所に死んでいるのか,逃げ去ったのか分からない。しばらくうろちょろして下の様子をうかがったがよく分からない。もう仕方ない。雪も積もって地面の様子はよく分からないがそろそろと急斜面を下りてみる。鹿は大体あそこにいたはず・・・。血はあった。そこから下へ・・・いた。数十m下の倒木に止まっていた。雌ジカだ。

 ・・・息も絶え絶えで道に登り上がり,先を進む。10分ほどで分かれ道。稜線に登り上がる道を進む。高度が高くなるので雪も深くなる。獣の足跡は無いわけではない。途中ヤマドリが逃げていく。数十分かけて稜線に出る。雪も深いが風も強い。小高い場所に登っていく。足跡がそこら中にあるが,今は何も見あたらない。もう1頭撃っているから,ここで帰っても良いのだが,もっと奥に行ってみる。この道はどこに通じているのか。方向的にはもしかしたら帰り道をショートカットできるかもしれない。歩き出す。どんどん歩くが,GPSを見ていて,もうこれ以上行ったら来た場所と全く違う方向に行ってしまう。まずいまずい。引き返すことにしたが,途中,下に下りる林務道?のような物がいくつかあったので下りてみる。雪が深くて結構危ない道だ。鹿の足跡はある。少し進むが,どうもおかしい。下斜面(沢)は険しい。おっと,
鹿がいた。鹿は逃げる。スコープで追いながらチャンスをうかがう。鹿はしばらく逃げたが止まった。距離は約50m。チャンスだ。引き金を引こうとした瞬間,銃をしたから支える左手が右にぶれて,引き金を引いたときに照準が右にぶれたので,外したのがすぐに分かった。結構疲れていたのが影響した。これが変な癖にならなければいいが。しばらく道を進むが,道が途切れて急斜面。駄目だこりゃ。戻る。嫌な予感がし出す。まだ時間があると安心していたが,こんなんじゃすぐ日が暮れちゃうんじゃないか。雪道を歩くのは想像以上の疲労。焦りが出て,帰る途中,分岐を違う方向に行ってみる。登り道だから「こっちがいいかな」と考えてしまった。登ったがその後下り坂。結構下るが,また行き止まり。嘘だろ。トボトボと来た道を上る。足がやばい。滑ったりふらついたり。登ってまた下りる。分岐点に戻るが,そこから急な道を上る。ようよう道に上がる。もう変な道は止めよう。来た道をそのまま戻ろう。稜線まで戻る。午後3時半頃。この道を行かなきゃ2時間半早く戻れたな。こんな雪でこんな風なのに,汗だくで一番上の蛍光オレンジベストまでグッショリ。銃もバックパックも雪で濡れている。
 少し元気が出てきた。帰ろう。今から帰っても,帰り道に鹿を撃つチャンスもあるだろう。トボトボと帰るが,鹿はいない。あぁー,駄目だったな。車に戻る。
 バックバックを下ろし,銃から弾を抜こうとしていたとき,背後の斜面,結構近いところから鹿が鳴きだした。警戒鳴きではない,威嚇か?雄か?鳴き声からすると朝鳴いていた鹿かな?近づいて様子をうかがうが,木で何も見えなかった。あきらめて弾を抜き,銃をケースに収める。あんまり鹿が鳴くので「うるせぇ!」と怒鳴るが,鹿はまるで逆切れしているかのように間髪入れず鳴き返してくる。なんて奴だ。もう帰る。午後4時50分。

 帰り道,道の左側に
鹿が踊る。距離は10mほど。すぐ下で見ている。しかも3頭だ。車を道横の空き地に入れ,銃を取り出し,弾を入れて鹿がいた場所を見ると,見事にどこにもいない。まあそうだろうな。また弾を抜いて銃をケースに入れて,今度こそ帰る。

 1ヶ月猟に行かなかったが,結構な様変わりだ。雪山猟をこれでもかとばかりに堪能した。ゴアテックスかウインドストッパーのジャケットがいるな。フリースだと暖かいが歩くと途端に汗だくになってしまう。

2014年11月3日(月)
1 風

 平成26年度初めての猟。前猟期最後に歩いたところをトレースしてみよう。
 午前11時に出発。ここら辺は高度が高く,ひどい時は雪が膝上まで積もることもある地域で,風が冷たい。もちろん今日はさすがに雪は降らないが。出発早々,鹿の足跡は見つかる。でも,ここら辺は無理だろうな,奥まで行かないと。
 
 数十分歩くと,地面がそこかしこ掘り起こされている。どうもイノシシのようだが,まさかなぁ。ここまでイノシシが来るかなぁ。今まで見たことはないのだが。

 周囲を観察しつつなおも進む。結構歩く。小尾根を巻く道のカーブを少し過ぎたあたり,下斜面からガサガサと足音。鹿がこちらに早くも気づき遠ざかっているのか?四つん這いになってジワジワと近づき下を覗くと,黒いものがゴソゴソとしている。小さいな?距離は3,40mか。スコープで覗くと小さい
イノシシだ。エサを探しているか?今期初の獲物だ,イノシシの背にスコープの十字を重ね,引き金を引く。イノシシは10mほど転げ落ち,斜面に平行に,向かって右に逃げ出す。当たったはずだが。あんなに小さいのに倒れずにまだまだ元気に逃げていく。逃げた方向の様子を見に行くが,姿は見えない。音もしなくなった。逃げられてしまった。当て所がよくなかったかな。発砲時刻午後1時。

 気を取り直して先を進む。前猟期最後に鹿を撃った場所に到着。季節が早いので,木々の葉がまだ落ちていない。緑の葉でよく見通せない。まあ仕方ない。そんなに何度も同じ場所で鹿が捕れるはずもなく。道は続いているので先を進む。尾根に出たところ,風が一段と強い。寒くて寒くて,服を1枚着た。道は二つに分かれていたので右を進む。尾根の西側を巻く道になるか,進みながら,尾根の反対側(東側)の雑木林の方を警戒する。100mくらい行った場所で,その尾根の反対側から,鹿の鳴き声。オスのコール?縄張り主張の鳴き声のようだ。こちらの気配を察知して,自分の縄張りだとアピールしているのか?恐る恐る尾根から顔を出して雑木斜面を見下ろすが,暗くて何にも見えない。あきらめる。もう一方の道にも行くが,成果は無し。分岐点まで戻り,少々後戻りして前期鹿を撃った場所をもう一度確認し,また分岐点に戻って,横倒しになった木の幹に腰かけながらオスジカのコールが聞こえた方向を警戒していると,右後ろから銃声。右後ろは谷になっているから,谷のずっと下での銃声が登ってきたのかもしれないが,結構近くに感じてドキッとした。だれかここまで来たのか,とも一瞬思ったが,こんなところまで歩いてくる者はそうそういない。それ以降,銃声もしないし,誰かが来る様子もない。やはり谷下の銃声なんだろう。谷の音は上に登っていく(上からだと下の音が聞こえやすい)気がする。
 
 冷たい風に耐え切れなくなり,とうとうゴアテックスのレインウェアまで羽織って,いろいろと頑張って右往左往してみたが,成果はない。日も傾き始めた,早く帰らないと真っ暗になる。いそいで道を引き返す。車までは何キロもある。どんどん日は傾く。ザックも重く銃も重く,肩と腰が痛い。もちろん膝も痛い。途中,ヘッドランプを点けながら歩く。途中,日の入り時刻となったので,銃から弾を抜く。車まで辿り着いたのは午後5時30分過ぎ。暗い。ヘトヘトになりながら,帰途に就く。

 帰る途中,鹿3頭と会う。いずれも集落の近くだ。暗くなると下に降りてくる。捕るのは大変だ。

2014年3月9日(日)
8 雪

メスジカ 1頭 捕獲
弾薬 3発
歩いた距離 7.75km

 「一般車両通行禁止」の看板の前に車を停車し,昼12時10分頃に歩き出す。日が照るといろんなものを脱ぎたくなるくらい暑いが,少し陰ると途端に冷たい風に体が凍える。吐く息は白いので基本は寒い。手袋をしている手も凍える。道は崩れて人が歩くのも大変なくらい。上り坂だったり下り坂だったり,右に曲がったり左に曲がったり,日は照ったり曇ったり。途中,背後から車の音がする。「一般車両通行禁止」だから,狩猟者の車ではないはずだが,勘ではハンター。その時は車が通れない分岐した道にいたから,遭いたくなくて急いで見えない曲がり角まで進んだ。通り過ぎる車の音。こちらまで入ってくることはないと思うが。また歩き出したが,そんなに間がないうちに,背後から発砲音。さっきのハンターか?結構音が近くてドキッとする。車の流し猟は危ない。早めに遠ざかることにする。そのあとも2発,断続的に発砲音がする。人が来ない場所まで来て猟をしているのに,ここまで車が来る。いやな気持になる。私は流し猟など嫌いだし(もう初心者ではない),「一般車両通行禁止」の道に車で乗り入れたりしない。犬で獲物を追ったり,グループ猟で獲物を囲ったり(危ない)はしない。単独忍び猟こそが,ハンティングにおける自分なりの,野生動物とフェアにやり合う方法。なんなら,弓矢でもいい(3月17日補足:日本では許可されないが,アメリカでのボウハンティングのような方法でも現在はとれるくらい技量が上がったということ)。ハンティングとは忍耐である。ギリギリの忍耐の先に得られる成果だからこそそこに充実感が得られる。

 その後も歩き続ける。杉林を抜け,雑木林になった。雪はパラパラと降る。風も強い。獲物がいる可能性が高まる。数十メートル歩くと,道の下の藪から,結構大きなシカが,ガラガラと盛大に石を落として下に逃げて行く。藪が深くてほとんど姿も追えない。今日初めての鹿。やっぱり,居るところには居るなぁ。ここから先は道もますます悪くなる。右側が沢の,道が崩れて歩くのもやっとの場所を過ぎると,右下の沢が見えるようになってきた。この場所はシカがいる可能性が高い場所だと,直感した。鹿がいるのがごくごく自然にイメージできる。今いるのか,今日いたのかはわからないが,用心して歩くに越したことはない。少しずつ歩きながら,右下の沢を,藪を通して透かし見る。ようやく底が見えてきた。いた!鹿だ。沢をゆっくり登りながら地面のエサを探しているようだ。ここからだと小さく見えるが,実際の大きさはわからない。数歩戻って,幸運にも鹿を狙えるような藪の切れ目があったので,そこから引き金を引く。命中(発砲時刻午後2時15分)。鹿は崩れ落ちる。しかしもがいている。ズレたか?苦しみを長引かせないようとどめを刺そうかとは思ったが,しばらく様子を見ていると,動かなくなったので,降りることにした。いやぁ,急だな。登るときには死ぬ思いをするだろうな。少しずつジグザグに降りている最中,鹿が動いている。とどめを刺そうと引き金を引くが,距離が近くてスコープの十字と着弾点がズレ過ぎていて,弾は上をかすめる。もう少し近づいて,今度こそ息の根を止めた。1発目は脊椎付近に当たっていたようだ。撃つときは小さく見えたが,直に見ると結構大きいメスジカだ。鹿の場所から撃った場所を見上げると,距離は50mくらいあったかもしれない。結局3発も使ってしまった。かわいそうなことをした。こんなことなら二発目を早めに撃ってやるべきだった。・・・登るときは想像以上に大変だった。地面は崩れやすい。ところどころにある木に掴まり渡りながら少しずつ上る。途中休むとどんどん力が無くなって登れない恐怖があり,できるだけ早く登る。道に登りあがって大の字でしばらく喘ぐ。ブーツも銃も泥だらけだ。

 あとは帰るだけ。風で雪が平行に降る。停めた車まであと1kmほどの場所で,鹿が誰かを呼ぶような鳴き声。少し考えたが,様子を見た。成果がなさそうなので,帰る。

 あと猟に行けても1回(3月15日)。もしかしたら行けずに終わるかもしれない。今期はなかなか猟に行けなかった。人が来ない,流し猟の車が来ない,猟の犬も来ない場所が理想的なのだが,なかなかないなぁ。
 3月17日補足:結局3月15日には猟に行けず。今期の猟は8回で終了。どうも,スコープの照準を遠くに合わせすぎたか。猟期前に射撃場(佐賀)に行かなかったからなぁ。そこだけが反省点かな。

2014年2月9日(日)
7 ハンターの質

メスジカ 2頭 捕獲
弾薬3発
単独忍び猟

2014年2月3日(月)
6 暑い

歩いた距離 約10q
弾薬 2発
捕獲 ゼロ 

2014年1月11日(土)
5 縄張り

 いつもより早く準備ができ,出発し,午前11時15分頃に山を登り出す。今日は目が山に比較的早く順応している。

 稜線に上がった。いつもならじっくり時間をかけて南側斜面を伺い,目が慣れてから歩き出すのだが,今日はせっかくいつもより早く山に来られたんだから,時間がもったいない。早々に歩き出す。地面の枯れ葉はバリバリと音を立てる。歩き出して5分もせずに,進行方向70m位先か,鹿が逃げ下る音がした。まあ仕方ないか。この地面の状況では慎重に歩いても逃げられたに違いない。

 ここでゆっくり歩いても時間がもったいない。どんどん歩いて奥へ進む。数百m歩き,鞍部の手前で,下の沢底をのぞき見る。100m以上の距離があるし,間に木々が生い茂っているので,見るのになかなかエネルギーがいるが・・・うん?何かが動いた。鹿か?茶色に見えたが・・・なかなか見えない。少ししたらまた何かが動いた。しかし遠ざかっている。しばらく見ていたがそれっきり動きは見えなかった。鹿なのかもしれないが定かではない(鹿の動きだったが)。鹿だったとしてもあれを狙うには来た道を戻らないといけないが,気が乗らない。そのままにしておこう。

 先を進む。すぐ上が鞍部なので,慎重に登る。ここの鞍部は大きい。緩やかなので鞍部の長さは40m以上ある。横にも縦にも広い。下った先の斜面は北側に面していて杉林となっている。ここで鹿に逃げられたこともあるので,慎重に目をこらす。何十mもの高さの杉が規則正しく並んでいる下り斜面。その杉の間を縫うようにして目を走らせる。一つ,白いものが見える。距離は60m以上か。まるで鹿の尻のようだが,鹿のシルエットには見えず,杉の表皮を守るための布か,それとも大きめの白い石か。一応,スコープで覗く。肉眼で見るよりは大きくなるが,印象はさほど変わらず,何なのかよく分からない。銃を下ろしてまた肉眼で見る。うーん。もう一度スコープで覗く。すると,動いた。動いて初めて鹿の首が分かり,さっきの白いものが鹿の尻だったことが理解できた。見えていたのは,後ろ向きの
鹿が,右から首を巡らせてこちらを伺っていた姿だった。うわー,鹿のシルエットには見えなかった。後の祭り。もう後を追うことは不可能だ。取り逃がしてしばらく呆然とたたずむ。自分自身への失望と共に,また歩き出す。

 しばらく歩いて,鞍部を下り,登り,稜線を巻く道をバリバリと音をさせながら進む。前々回イノシシを撃った場所(次の鞍部)に行くが,当然のことながら何もいない。鞍部を下り,登る。なるべく音を立てないように慎重に登る。支尾根を見渡せる場所に屈みながら来て,銃を構えながら少しずつ上体を上げる。見える範囲にはいない。仕方ない。先を進む。眼下の沢を覗くがいない。西側に比較的大きく開けた場所を上からのぞき込むようにして慎重に進み,しゃがんで耳を澄ます。普段する山の音とは少し違うガサガサする音がする。当初は右側かと思ったが,よく耳を澄ますと,しゃがんでいる場所の下斜面から出ている。そろそろと少しずつ上体を上げて様子を見ると,チラッと,黒い物体が,眼下斜面,30〜40mほどに見え隠れする。左から右に斜面を横切っている。スコープで覗く。
鹿だ。二頭?絶好のチャンスだ。でも木々の後ろだし,斜面の凹凸で背中の部分が少し見え隠れするだけで狙いにくい。しかも,今撃てば,きつい斜面だから,少しでも逃げられれば捕獲は無理だ。右に行くなら,沢の方に向かっているから,沢の底なら捕獲が比較的容易だ。ここはぐっと我慢だ。こちらも,しゃがんだまま様子をうかがいつつ,少しずつ右に移動する。途中姿を見失う。少し焦る。もう少し右に移動する。おっと,もうあんなところに行っている。距離が出てしまった。これ以上待つと,沢の反対斜面を登られて狙えなくなる。スコープで覗いていると,もうここらへんが最後のチャンスだろう。若い鹿か,背に白い斑の名残が点々と残っている。引き金を引く。鹿は少し下半身がクニャッとなった気はするが,向こう斜面にいた母ジカ?(もうあそこに行っていたのか)の方向に転換し二頭は逃げていった。うわー。外れたかなぁ。構えが万全ではなかったのか,肩と右ほほが痛い。チャンスだったのになぁ〜。やれやれ。少し未練があり,鹿が逃げていった,さっき通り過ぎた支尾根の方に戻り,支尾根に行ってみたが,何もいない。ふぅ。

 また道を戻り,さっき撃った場所にまた戻った。下斜面を見ながら,しばしたたずむ。何十秒その状態でいたか,いきなり,背後からガサガサッと,鹿が姿を翻して逃げていくかのような音がした。ここは稜線近くだから,背後はすぐが稜線で,斜面と言うよりは丸く緩やかな,比較的平坦な場所。そこに鹿がいたらしい。結構な近さだった。鹿に背後をとられたな。

 そこから約100mほどか,稜線を進み,いつも座って待つ場所まで来る。先ほど背後にいて逃げていった鹿なのか,左奥の方で鹿の鳴き声がする。座ってぼーっとしていると,いつしか鹿の鳴き声もしなくなったようだ。早めに猟を始めたので,なんだか,ここでじっと時間を過ごすのがもったいない。ほどほどで切り上げて,道を戻ったりいろいろしようか。その前に,少し,南側の沢の様子を見ることにした。ここ2年ほどはここから先にはほとんど行っていない。稜線の上から下の沢(向こうの斜面で囲まれた窪地)を立ったままボーッと覗く。どれくらいしたか,いきなり,右側のかなり近い場所から,鹿の鳴き声がした。えっ?なに?右を向いてしゃがみ,様子を見る。鳴き声はかなり近い。近いといっても30〜40mはあるが,通常こんな距離から鳴かれることは少ない。しかも,この鹿がさっき逃げていった鹿だとしたら,わざわざ戻ってきたのか?ちょっと信じがたいが,鹿は執拗に鳴き,しかも遠ざかっておらずとどまったまま鳴き続けている。鳴き方も,警戒鳴きではなく,なんだか怒っている。まるでこちらに対し「こらぁ,あっちへ行け!」とでも言っているように感じる。スコープで覗くが,木々の向こうから鳴いているので,姿は全く見えない。あちらが逃げない以上,こちらも逃げる理由はない。こうなったら長期戦だ。腕と目が続く限りスコープを覗き続ける。そのうち,チラッと
鹿の姿が映った。距離は50〜60mほどか,鳴き声や様子からして雄なのだろうが,角までは確認できなかった。雄だとしても若い雄なんだろう。鳴き声がしなくなったと思ったら,さっきよりももっと近い場所から鳴き声がして,少し逃げてまた止まる。なんだか,こっちを人間と思っておらず,自分の縄張りを荒らしに来た何物かだと思っているのか。時間としては5分か,10分か,測ってはいないが,互いに我慢比べをした後,鹿は沢を降りていき(スコープで途切れ途切れに追う),向こう側の支尾根の斜面に消えていった。そしてまた鳴き出す。こんなに距離が出たらもう無理だろう。撃つチャンスは残念ながら無かった。あきらめて,来た道を戻る。戻る最中,かなり長い間鹿は鳴いていた。こういうこともあるんだなぁ。

 歩き続けて,車を置いた林道の稜線の反対側(車にすぐ帰れる場所)まで戻ってきた。前回,鹿を逃がした場所。前回と同じように鹿が来てくれるのを願って,今回は前回よりも数十m右で待つことにする。まだ午後3時過ぎで,日没(午後5時29分)まではかなり時間がある。たっぷり,ゆっくり待てる。とはいえ,今日は寒い。しゃがんだり地面に座り込んだりして待ってみたが,寒くてとてもじっとしていられない。そんなときは立つしかない。・・・・・時間は過ぎていく。当初はある程度高かった太陽は少しずつ,着実に下がっていく。気温は下がり続ける。寒くてブーツの中の足の指が痛い。これはきついぞ。どこまで耐えられるか。今日は最初からジャケットも着ているから,これ以上着るものはないぞ。成果がないので,数十m左に移動する。ここが周囲の中では一番日が当たる。それでもずっと照っている訳ではない。風も通りすぎる。4時になり,4時半になる。4時半にもなると周囲は暗くなり始める。不安も募る。午後5時になる。もうかなり暗い。こんなんじゃ,5時29分まで待つのは無理だ。15分までも無理かもしれん。すると,(5時前後だったか)左の斜面上付近,凹凸で見えないが,向こうからガサゴソと何かが近づいてくる音がする。すぐにイノシシだと分かった。姿は見えないが,20m程の近いところにある木の枝や葉が揺れている。ここまで近くて,しかもこちらに向かって歩いてくるのならやるしかない。木の枝が揺れる方向に向き,しゃがんで,銃をいつでも構えられるよう準備して,待つ。しかし,ガサゴソと音は続いていたが,いっこうにこちらの方に来ない。ジリジリと待つが,姿は見えないまま,なんだか音が移動しているようだ。少し場所を変えたりして,立ったりして,姿が見えないか探したが,見えない。そうこうするうちに,その斜面のずっと上,こちらからの距離は70mかもっとあるような,稜線に近い斜面に動きがあった。急いでスコープで覗く。稜線なので,丸々と太った
イノシシのシルエットが左に翻った。あんなに大きいのに身のこなしが軽い。左に移動しているようなのでスコープを左に巡らせて探すが,見えない。逃げられたんだ。イノシシはこちらに来る直前に,此方の臭いを察知して方向転換して上に登っていったんだ。

 その後,少し気を取り直して下の斜面を警戒するが,どんどん暗くなってきたため,やむなく撤退することにした。方向としては,イノシシが超えていった稜線の方向に変えることになる。稜線を上ってみたが,当然のことながらイノシシはいない。
 こちらはそのまま斜面を降りて林道に到達,車に戻り,帰途についた。

 獲物は捕れなかったがいくつものチャンスはあった。鹿に縄張りを主張されたのはこれが初めてかな?少なくともこんなに近い距離で主張されたのは初めてだな。

2014年1月5日(日)
4 そういう日もあるさ

 年末年始が痔で横になっているしかなかったため,絶好の猟日和を何日もフイにする。正月休みもどんどん無くなり,最終日の5日(日曜)に,「もうこれじゃいかん」と一念発起し,痛み止めを持参して猟に出発する。午後1時30分頃に山を登り出す。1ヶ月以上猟に行っていないので,目のピントがなかなか合わない。体力も落ちている。途中,峰向こうかららしい銃声が聞こえる。
  
 ようやっと稜線に出る。すでに汗だく。今日は頭につけるカメラも用意した。電池が1時間くらいしか持たないので,今日はあるていどの速度で歩かないと。目は全然木々に慣れない。下の方から犬の鳴き声。さっきの銃声のハンターが連れている犬か?歩くと地面の枯れ葉もバリバリと盛大に音を立てる。バリバリと音を立てるのにソロソロと歩いてもしょうがないので,どんどん歩く。何百メートルか歩いたところで,先の方でガサガサと(もちろん始終どこででも周囲でガサゴソ音がするが)いう音がした。進んで様子を見るが,姿は見えず。あの音はイノシシだったな。追っていくが,姿は見えず,音もしない。逃げられたか。まぁあれだけ音を立てて歩いたら逃げられるのも当然だ。仕方ないので先を進む。
 
 暑くて上着を脱いでいたが,吹き上げる風が冷たいので上着を着る。しばらく歩くが,気配もない。どんどん歩いて,前回イノシシを撃った場所に着く。前回と同じように耳を澄ますが,何も聞こえない。下を覗くが,何もいない。もう一つ先の支尾根にも行ったが,姿は見えない。稜線に戻り先を進み,比較的広い斜面が見渡せる場所に着き,下を覗く。目がまだ慣れていないが,いないようだ。歩き出す。10mも進まないうちに,下からシカの警戒鳴き。ソロソロと進みながら下の様子をうかがうが,シカの姿は見えず。いつも座って待つ場所まで来た。しばらく,数十分待って見たが,成果はない。カメラを見たら作動していなかった。どうやら電源は入れたが録画ボタンを押し忘れたみたいだ。しばらく使っていなかったからなぁ。3時半。そろそろ戻っておかないと,帰り着く頃には真っ暗になってしまう。カメラの電源を入れて,来た道を戻る。

 戻る途中,前々回鹿を撃ち損ねた場所付近(歩く場所からは下の斜面。見えない。)からそれらしき音がする。やった。ソロソロと近づくが,なかなか見えない。音がしている場所を見るが,いない。いるのは鳥ばかり。しばらく右往左往したりじっと様子をうかがっていたが,どうやら,鳥が出す音だったらしい。うーむ。残念。

 登り上がってきた稜線のすぐ近くの斜面,いつも待ち猟をする場所で,最後まで待ってみよう。今日の日没は午後5時23分頃だから,5時までは待とう。あと1時間もないか。鳥が相変わらずそこかしこでうるさいが,獣らしき物音はあまりしない。当初はまだ太陽もそこそこ高かったが,どんどん低くなり,薄暗くなってきた。こりゃ今回はまるで成果なしだな。午後5時となる。うーん。座っていると寒いので途中立ったりする。下で鹿の鳴き声がする。これは上がってくるな,とこれまでの経験で分かったので,警戒する。薄暗いので早く来てくれないと見えないし撃てない。タイムリミットは刻々と近づく。ジリジリと待つ。下ばかりを警戒するが,右40mほどに物音。音がする方を見ていると,斜面を上がっていく
鹿の白い尻と後ろ足がチラッと見えた。近づきたい衝動に駆られたが,今から行っても逃げられるだけだ。そのままにする。あれを撃つのは無理だから,望みは薄いが他の鹿がしたから上がってくるのを待つしかない。あの鹿の様子だとこちらには気づいていなかったな。あと5mでもいいからこちらに近い斜面ならばっちり撃てたのに。5時10分まで待とう。10分などあっという間だ。暗くなった。帰ることにした。

 今回は一発も撃たず。まあ,こういう日もあるさ。こういうこともあるさ。
 

2013年12月7日(土)
3 ゲット

 

 結果:イノシシ(メス)捕獲。

2013年12月1日(日)
2 当たらない×4
土曜にいい天気で猟に行ければ良かったのだが,首が痛くて断念。日曜はあまり天気は良くないようだが,朝の時点では,一応大丈夫そうで昼から晴れるとの予報。今日行かなければ1ヶ月猟に行かないことになる。せっかく11月1日から猟が解禁なのに,結局11月に1回しか行けなかったなぁ。
今回も同じ場所。林道(もちろん「進入禁止」ではない)に入り,いつもの場所に車を止めて,斜面を登り始める。昼12時15分頃。最初は藪の間を通るので,怖くてたまらない。その先はもっと急な斜面となる。登っている最中,背後(近くではない)から銃声が。ハンターは居るんだなぁ。どこだろう?
 いつものように稜線に出て,ここから南側の斜面を稜線とほぼ並行(たまには稜線を跨いで)に進むのだが,いきなり日が陰り,しとしとと雨が降ってきた。様子を見ていると,本降りになりそうは気配も。やっと登ってきてこれから,というのに。気分が暗くなる。しばし雨に打たれて(幸いにも梢の下だからさほど濡れない)ジッと立ち尽くす。かなり暗くなったが,天気が変わり,こんどは晴れてきた。晴れてくれば晴れたで日が当たらない部分が真っ暗になって周囲が見通せない。このまま経っていても仕方ない。歩き出す。しばらく歩いたが獲物はいない。下から犬の吠える声がする。猟犬?ハンターが下の方にいる?まさか進入禁止の林道か?

 それはともかく,どうしようか。前回はここら辺で猟をしたが,今日は奥に行こう。数百メートル進む。すると,斜面下から鹿の逃げる音が。岩を蹴飛ばして盛大に逃げている(音がする)。姿は見えず。少し様子を見て,また歩き出し,100m程先の鞍部に差し掛かったところ,鞍部の南側の沢から銃声が響き登ってきた。今度はかなり近く感じた。ドキッとする。うわぁ,マジか。爺さんに誤射されなきゃいいが。

 鞍部を急いで通り過ぎ,銃声の場所から遠ざかろうとした。また数十m進む。地面が掘り起こされている。嫌な予感。前もここら辺にはイノシシがいたな。下で猟をやっているなら,イノシシや鹿が上に逃れてくる可能性も高い。しばし,藪が多い眼下の斜面を眺めながら一息つく。すると,眼下の沢の藪の向こうからなにやら異音がする。途端に心臓がバクバクとなる。嫌な予感。そのうち,ゴフッゴフッという声が。間違いない,イノシシだ。藪の向こうからちょうどこちらの沢に向かってくる。イノシシなんか撃ちたくもない。ヘタレだが正直怖くもある。なので,イノシシに聞こえるように露骨に舌打ちをしてやった。足も踏み換えた。すると,効果てきめんで,異音は,こちらの沢には来ずに,途中で向かって左に方向転換していき,音がしなくなった。やれやれ。やっぱりいたなぁ,イノシシ。ここまで来て帰るのも何だから,とりあえずいつも行っている場所まで行こう。先に進む。

 そこから数十mで,また鞍部。しばらく左下の沢の様子を見たが,変わった様子はないので下り出す。音はする。右側の斜面も見るが,見たところ獲物は居ないようだ。鞍部から数十メートル登ると稜線。上がってすぐにヌタ場がある。前期に大きなイノシシがいた場所。ここら辺は地面がそこかしこ掘り起こされて,確実にイノシシがいた(いる)事が分かる。そこから右に支尾根があるが,ここも緩やかに下っており,木々もあるので,先の方はよく見えない。ここは良く鹿を見る場所なので,警戒しながら近づくと,こちらの足跡を聞きつけたのか,先の方でガサガサッと右へ逃げる音。イノシシかなぁと感じ,あまり気が乗らないが,一応見に行く。一旦後ろに戻って右から回り込む形で,緩やかな斜面を下り,下を調べる。すると,見ていた場所より左側にいる。鹿か。周囲の情景に溶け込んでいて見逃すところだったが,こちらを見ているようだ。あまり刺激をしないように,視線を合わせないように,そろそろと銃を挙げスコープで覗く。
子鹿がこちらをじっと見ている。距離は20mそこそこか?小さい上に正面を向いているので狙点が思いのほか小さい。安全装置を外し,引き金を引く。銃が雨に濡れていたせいか,白い煙が上がる(初めての経験だ)。鹿は左へ飛び跳ねて逃げた。弾は外れたのだろう。なんだかスコープの照準が合っていないのか,引き金の弾き方が悪くなってしまったのか,近距離の獲物を外してもさほど意外ではない。もう逃げてしまったろうが,少し様子を見るため,鹿が逃げた方向に歩くと,支尾根の反対斜面に居たようで,鹿がまた逃げていった。仕方ない。

 また稜線に戻り,先を進む。もうここら辺になると,地面を掘り起こした後が本当にひどい。イノシシが好き放題にしているかと思うと,嫌な気分だ。さっき鹿を撃って外した場所から,百数十mほどか,西側に比較的開けた斜面がある。ここも鹿がいそうな場所で,事実鹿を撃ったりしている。さっき撃ったばかりだから鹿がここらにいる可能性は低いと思いつつ,集中力が切れていたのか,不用意に下斜面を覗き込んだ。
 目の焦点はあまり合っていない。目が疲れてしまっているか。それで,視界はぼやっとしているが,白い物と鹿らしきシルエットが見える気がする。クリアな頭なら
鹿(それも2頭。)とすぐに認識して撃てたのだろうが,頭が鈍磨していたようだ。ボーッと見続けて,少し遅れて銃を挙げて撃とうとしたら鹿が逃げ出し,慌てて1匹を狙って引き金を引く。当たるはずもない。あっという間に鹿は見えなくなった。ふぅ。先へ進む。

 そこからまた100mほどか,いつも座って待つ場所まで行き,座る。下の斜面からはさっきの鹿か,鳴き声がずっとしている。姿を探すが見えない。ここら辺の地面はイノシシが木の根を探して掘り返して穴が出来ている。西側下斜面を望みながら座って待つが,背後からイノシシが来ないか不安で,全方位に耳を向け,変な音がしたら(大体は鳥か木の葉が落ちる音)キョロキョロと頭を巡らせる。気が休まらない。少し神経質になりすぎている気がするが,イノシシが地面を掘り返した新しい跡が幾つもある場所で,当たらない銃(ボルトアクションな上に給弾不良の不安がつきまとう)を持って一人でいれば,不安にもなるだろう。しばらく居たが駄目だったので,帰ることにする。

 子鹿を撃った場所の鞍部付近を歩いていると,また銃声。前に銃声がした方向。ドキッとする。少し暗くなってきているのに近くにハンターが居たら誤射されないか。オレンジのベストと帽子をかぶっていても,撃つ奴は撃つ。これでは帰り道に忍び足が出来ない(鹿と間違われてしまうから)。あきらめて,音を気にせずノッシノッシと歩く。だいぶ歩いて,最初の鞍部(今回のコースには3つの鞍部がある)に差し掛かろうとした時,凄い声で鹿に鳴かれる。野太く大きい。オスが縄張り侵入者(こちら)に威嚇音か。誘い出せればと,こちらも声を真似てみる。どうやらすぐに見抜かれたか,普通の警戒鳴きがして,どんどん遠くなっていった。あきらめて鞍部を越えて道を戻る。

 前回鹿を撃った場所に差し掛かる。ここからは帰るのも楽だ(斜面を数十m登って,直線距離で200mほど急斜面を下りれば林道)。5時まで鹿を待とうか。約1時間程か。これは慣れたものだ。途中,下から鹿の鳴き声。やっぱり居るなぁ。でも上がってくるかどうか。数十分が経ち,右側40mほど離れた場所からガサゴソした音がした気が。でも藪があるので見えない。鳥かなぁ?周囲でひっきりなしに鳥がガサゴソやるので判別はしがたいが,気になった音といえばそれくらいだった。

 本当に暗くなって数十m先を見るのも困難。5時前だが帰ることにする。林道に下りる途中,鹿の声がする。暗いのでどこにいるかよく分からないが,遠くに移動せずに鳴き続けているようだ。何度も鳴くので音を頼りに目を凝らす。鹿の白い尻が見えた気がする。スコープで覗くが,なかなか探せず,数回目にやっと
鹿の姿が捉えられた。遠い。70m以上か?鹿も小さい。でもこれが最後だろうから,引き金を引く。当たらなかった?鹿は左に移動したが,まだ撃てそうなのでまた引き金を引く。当たらなかったか?まだ時間は大丈夫だと思いつつ時計を見ると,午後5時5分頃。今日の日没は5時11分のはずだから,セーフ。待っている時に右でガサゴソした音は,鹿の足音だったのか。右数十mをやり過ごされたのか?
 車に戻り,帰路に就く。
 今回の総括。集中力に欠け,獲物への執着心が弱かった。当たらない銃への不信感。スコープの照準が合っていないのか,腕が落ちているのか。結局4発も撃ったのに全部外してしまった。
2013年11月4日(月)
1 当たらない?

 平成25年度最初の猟。起きたはいいがダラダラと時間が過ぎ,結局山を登りだしたのが午後1時。なんというか,やっぱり猟のために山には入るのは怖いから,行きたいんだけどなかなかグズグズとなってしまう。どこにいこうか。前期の前半に行っていた場所にまずは行こうか。山に分け入る時に一番緊張する。全然山に行っていなかったので目も慣れていない。いつどこの藪からイノシシが出てくるかと,正直怖くてたまらない。道なき斜面を登るため,ふくらはぎは数分で悲鳴を上げる。何十分も掛けて稜線に上がる。息も絶え絶え,汗も噴き出す。目は相変わらず慣れない。少し稜線で止まって目を山に慣れさせる。見える範囲では何もいそうにない。いつまでも足が前に行かない。でもこうしていても始まらない。意を決して踏み出す。少しずつ,少しずつ。

 前日から今朝まで雨が降っていたために程よく地面が湿気ており,足音はかなり軽減されている。数歩歩いては斜面下を警戒する。数十メートルを時間を掛けて進む。目が木々の間をピントを合わせつつ彷徨うため,目が疲れる。付近は鳥がそこかしこでしきりに鳴いて,ガサガサいう。風は右左上下から吹いて,木の実や木の葉をしきりに落とす。これが足音に聞こえて,神経に障る。それでも我慢して進んでいると,右方向(進行方向)からザッという異音が。目を向けると,まだ落ちきっていない,緑の葉っぱ越しに,白い尻が動いて止まる。スコープを向ける。大きい
鹿だ。メスのようだ。距離は30〜40mで音がした方(こちら)を伺っている?葉っぱが邪魔で狙いにくいが,しゃがんだり動いたりすれば逃げられるに決まっている。鹿の首根っこ付近,実際には葉っぱで隠れている部分を狙って,引き金を引く。今期初めての射撃。前回猟が終わってから射撃にも行っていないので,やはり勘が鈍っているのか,若干体が後退した。頬付け肩付け,衝撃の逃がし方がうまくいかなかったようだ。鹿は消えてしまった。足音も聞こえなかったので,どうしたのかと近づくが,逃げ出した足跡しかない。下の方で鹿の警戒鳴き。見える範囲では血も落ちていない。駄目だったか。しばしウロチョロしていたが,駄目だった。発砲時刻は午後2時10分。もう少し慎重に狙えば良かったが,最初の射撃だから,仕方ないか。これから慣れていかなければ。

 さて,これからどうしようか。発砲したため,ここで待っていてもあまり成果は考えにくい。さりとて,奥に行くのもなんか気が乗らない。あーだこーだ考えていたらどんどん時間が経ち,3時になり,奥に行くのも微妙な時間帯になっていく。立って下斜面を向いてボーッとしていたら,下から足音が聞こえる。すぐ下だ。ハッとする。すると,木々や緑の葉の間から,鮮やかな赤茶色の体が見えた。立派な
ヤマドリだ。まだ現時点では鹿と猪しか撃てない(鳥は11月15日からだったかな?)し,別に撃つ気もないし,撃ってもスラッグ弾では体がバラバラになるだろう。じっと見守っていると,斜めではあるがどんどん上に上ってきて,かなり近くになってこちらに気付いたようだ。ヤマドリはこちらに気付いていないような風を装っているようで,最初は何気なく方向を変えてまた下に平然と歩いていたが,少し距離が出たらダダダダッ―と走り下って行った。ヤマドリを追うのは危険だと,昔話だかなんだかでも言い伝えがあるが(ヤマドリを追っているうちに山深く入り込んで帰れなくなる,という怖いお話),まあヤマドリやキジには好きにさせとこう。
 ヤマドリはいいとして,これからどうしよう。仕方ない,今日は初日だから,ここら付近で待ち猟をしようか。

 これまでも待ち猟をしていた場所に,南向き斜面を望む位置で腰を下ろし,待つ。途中,左側を警戒しやすいように,少し場所を左に移動して立って警戒する。立ったり座ったり,膝も痛む。日没まではまだ時間があるが,雲で日が陰ると途端に暗くなる。今日の日没は午後5時20数分だったか,まだ2時間近くはあるな。・・・・。
 昼食を取ってなかったな。おにぎり二つ持ってきたので,一個だけでも食べよう。カロリーが低下すると集中力も低下する。おにぎりを来るんだラップの音にも注意する。でもどうせ食べればその匂いを獣がかぎつけちゃうからな。なるようになれ,だ。

 かなり待ったな。ここまで待てば,ここで待ちぼうけになる予感が強くなっても他に行くことも出来ない。あとは日没近くまで立ったり座ったりして待ち続けるだけだ。午後5時までは待とうか。ボーッと待っているのではなく,いつどこから足音がするか分からないので(鹿が来るとしたら真下か左下からか),耳を澄まし,目をそこかしこ動かす。前期みたいに,背後の斜面上をコソッとイノシシが通ったり,こちらに来たり,というのを恐れて,木の実や葉っぱの落ちる音がする度に後ろもくまなく警戒する。そうこうするうちに日も陰ってくる。日没ではなくても相当暗い。どんどん目が利かなくなる。どんどん見込みがなくなる。寒いのでジャケットを着て,ひたすら待つ。まあ,初日だからこんなでも仕方ないか。でも,猟の初期の方が雄ジカなどを獲る確率は高いんだがな。どんどん暗くなってくるので,今日は駄目かな,と思っていると,斜面下の方から,鹿の鳴き声がする。「キュルォーーーーーォゥ」といった感じ。やっぱり下には居たな。でも登ってくるかは怪しいところ。でもまあ,期待はせずに日没までは待とう。

 それからまた暗くなり,トワイライトの中,意識が鈍磨した中でボーッと立っていると,下の斜面,暗い中の木々と緑の間に動きが。40〜50mか。スコープで覗くと,角がある黒い
雄ジカ。木々が密集して狙いにくいため,屈んで右に移動し,比較的開けた場所,狙えそうな場所に鹿が来るのを待つ。鹿は右に少しずつ歩いている。狙えそうだ。本当はもっと開けた場所で撃ちたいところだが,どんどん暗くなって狙えなくなる。焦っていたのか,程々狙えると思った時点で引き金を引く。鹿はいない?外れたか?少し様子をうかがっていると,左の方,若干近くなった場所(40mくらい)に黒い物体が動いた。イノシシか?と嫌な予感でスコープを覗くと,黒い,首の太い,角がある雄ジカだった。さっきの鹿か?よう分からん。でもこれがラストチャンスだろう。さっき外してますます焦っていたのか,集中力が下がっていたのか分からないが,ほどほどのところで,首を狙って引き金を引く。右耳がキーンと鳴る。鹿は後ろ足をビクンと高く上げて(当たった証拠だ),右に逃げていく。逃げられると追うのは不可能だ(暗いし)。うーん。残念。あんなに大きい鹿は,急所に当たってもその場に倒れてはくれない。首付近には当たったのだろうが,首は弾が貫通することがあるからな(腹も同じ)。狙うべきはやはり心臓だな。角度的になかなか心臓が狙いにくいからどうしても上を狙わざるを得ない。射撃時刻午後4時50分頃。しばらく様子をうかがっていたが,全然分からない。しかたない。凄く暗くなったし,もう帰ろう。帰り際,この地域の時報(5時)が鳴る。車に帰り着き,帰路に就く。

 初日はこんな感じで終了。猟を始めたのも遅かったが,やはり猟期初めは鹿を撃つ可能性は高い。でも半矢。不完全燃焼。こうすれば良かった,ああすれば良かった,銃の照準は合っているのか,それとも俺の腕が悪いだけなのか,などと考えることがいっぱい。スコープはよく見えるようになったのだが。まあ,猟を始めて何年も経つが,いつまで経ってもこんな感じっすわ。
 

2013年3月9日(土)
14(最終) アイピース

 今期の猟もあと1回しか行けない。今期は14回も猟に行けたか。1月にしばらく猟に行かなかったことが今となっては悔やまれるが,寒くて起きられなかったんだから仕方ない。最後だからか,いつもよりも若干早く家を出て,また同じ猟場に向かい,午前10時15分頃に山を登り始める。

 しかし,今日は暑い。万が一の遭難を考えてジャケットは背負っていくとしても,シャツ2枚しか着ていないのに,登り始めて数分で汗が出てきた。これは先が思いやられる。

 30分ほど歩いてきた尾根上,暑い。帽子を薄い奴に取り替えるために少し止まる。ぼやっと周囲を眺める。少し北側斜面の下に違和感がある。なんとも形容しがたい胸騒ぎというか。気のせいかな。尾根の上なので,風は思い思いに吹きすぎる。その風がやむ少しの合間,なんだか異音がしたような気がする。どこから音がしたのか,本当に音がしたのかもよく分からない。思わず後ろを振り向く。分からない。静止して耳を澄ませる。気のせいかも・・・北の斜面から音がし出した。何かが走り出した。
鹿だ。3〜40mほど。スコープで捉えるも,斜面を走り去ってしまった。・・・どんな場所でも注意をしてないとな。

 今居る尾根は,平らな部分が200mほど続いている。鹿を見たところから約100m程行くと,倒木と藪と密集した木々で,行きにくい。尾根の北側斜面の木々が密集する場所を用心しながら歩く。すると,藪のあたりでガサゴソと音がする。また子鹿かと思ったが,どうもその音がイノシシのような気がする。一気に緊張が高まる。少し様子を見る。藪のあたりはしばらくゴソゴソ言っていたが,収まったので,少しずつ近づく。そのうちに,北側斜面,沢向こうの斜面からゴソゴソという音が。あっちに逃げていったのか。イノシシと確信したわけではないが,どうもそんな気がする。嫌だなぁ。ここにも来るようになったのか。すると,何分もしないうちに,ガサゴソ音が消えていった方向から,銃声が3発。さほど離れていない。ハンターが居たのか。逃げていった獲物はあちらのハンターに撃たれてしまったか。それはまあ仕方ないことだが,俺が犬の役をしたかたちか。
 
 まだ藪を抜けるのはこれからだ。緊張する。落ちている木片を何個か藪に投げる。なにも変化はない。少しだけ安心し怖々抜ける。

 藪を抜けたらあとは尾根を登っていくだけ。以前比較的緩やかな尾根を100mほど歩き,鹿を撃った場所を抜け,次は少し登りになる。枯葉を踏みしめ,少し登っては止まって耳を澄まし目を凝らし,また歩き出す。木を見ると,新しい鹿の角の研ぎ後。
 
 角が小さめの雄ジカ(スパイクだろう)がここら辺を通るみたいだな。でも見たことはないし,今日見られるかはちょっと疑問だ。
 
 そうこうするうちに,比較的開けた杉の斜面を登る。こちらは斜めに登ってきたが,見下ろすと結構下の沢まで杉が並んで植林されている。なかなか杉林には鹿などはいない(日差しが入らないし,遠くから姿を見られるので)。特になんということもなく,いつも通り周囲を見るようにふと下の斜面を見る。すると,3,40m下か,動くものが。ぱっと見イノシシのようだ。スコープで覗く。やはり
イノシシだ。ここにまで出るようになった。急斜面で,さほど大きくないイノシシなので,バイタルエリアを狙うのは難しい。イノシシは右から左に歩きながら餌を探しているようだ。こちらには気付いていない。しばらく狙った後,引き金を引く。当たった。しかしイノシシは倒れることなく,斜面を下へ逃げていった。日が差さない場所なので結局姿を見ることはできなかった。下りられない斜面ではないが,見える範囲だけでも100m以上ありそうだ。帰るときはそれだけ登らないとならないが,ちょっと考えるだけでめまいがしそうだ。
 
 もともとイノシシを捕りに来たわけではない。イノシシは死んでくれればそれでいい。ということで,先もまだあることだし,先に進むことにした。

 斜面はしばらくするとまた緩やかな尾根に変わる。もちろん,緩やかと言っても平地ではない。歩くのに汗をかかなくていい,つまずいて転んでも転げ落ちる心配は一応しなくていい,という程度。しばらく行った先,また北側に沢がある場所を少し過ぎた斜面,場所的に動物がいそうな場所で腰を屈めて少し様子をうかがう。グゥーという音を聞いた気がする。これはイノシシの威嚇の鳴き声。空耳かどうか分からないが,慎重に耳を澄ます。それ以上何も聞こえることはなく,しばらくしてまた歩き出す。

 そこからは前回と同じような道のりを経て,九電の作業道に登る。途中,右の尾根向こうの沢を何かが走り下っていく音がした。道に登り上がる。午後1時を少し過ぎていたか。

 
 地面を見ると,あちこちに掘り返したあとがある。これはイノシシに違いない。ここら辺までイノシシが来ているのか。鹿は来ないかもしれんな。


(カーブを曲がる)

 ここは南に面していて本当に気持ちが良い場所。しかも平地もある。寝っ転がっても転がり落ちない。人間がそう思うんだから動物はよっぽど気持ちが良かろう。前回鹿を外した斜面をおそるおそる覗くが,鹿はいない。上の土手にも居ない。ちょうど良い,ここらに座って昼食を取る。
 これからどうしようか。先週と同じように斜面を登るか?イノシシがいると思ったら,あんまり行きたくなくなる。ただでさえ登るのがきついのに。この暑いのに,これ以上汗をかきたくない。天気も良いし,猟も最後だし,待ちぼうけでもいいや。今期最後はここでひなたぼっこしようか。ということで,この気持ちの良い場所に必ず鹿が来るはず,との見込みから,待ち猟をすることにした。午後2時10分開始。

 見込みとしては,下の斜面から鹿が上がってくるのを撃とうと,下斜面を向いて座る。どうも見にくいので,上斜面の土手に背を向けるかたちで立ったまま待つ。
 ・・・立ったままで待つのは結構苦痛だな。地面も真っ平らではなく幾分傾斜しているし,下の斜面だけではなく,時折後ろの土手も警戒しなければならない。腰が痛い。足が痛い。座ってみる。楽だが下斜面は全く見えず,背後の土手が怖い。また立つ。体中が痛くなる。しゃがむ。寒くないのが唯一の救いか。

 ・・・・1時間くらい経ったが,どうも感触が悪い。場所を変えよう。少し道を戻り,カーブの頂点あたりで腰掛けて,待つ。日差しは暑いくらい。風は暖かく,これまでとは違い,花の香りすら運んでくる心地よさ。こんな心地よさでひなたぼっこしながら猟が終わるか。それもまた良し。難点は風。強めで,しかも向きが頻繁に変わる。鹿などの足音が聞こえる距離でも,風向き次第では全く気付かないこともありうる。なので,周囲を視覚で警戒するのと同時に,音に細心の注意を払う。
 
 なんだか,無駄に終わりそうな気がしてきた頃,場所を変えてちょうど1時間経つか経たないか位か,あっちこっちから風が巻く中,ガサッガサッ,という音がした気がする。最初は木や葉が風に揺れているだけかと思ったが,どうも違う異音。途端に緊張が高まる。耳を澄まそうにも,風の向きが変わり強く吹く間は無理で,風がやむのをじりじりとしながら待つ。風の向きが変わる。また音がする。鳥か?いや,違う。イノシシか?緊張が高まる。ガサガサいっているが正確な位置は分からない。ちょうど土手の上,こちらが座っている場所からは見えない位置にいるようだ。見える場所まで近づきたいが,風の向きがあっちこっちに変わるので,近づく音が聞かれるのではないかと気が気でない。音を立てないようにしゃがみ姿勢で少し歩き,腰を少しずつ上げながら,土手の上の木々を覗く。最初はよく分からなかったが,白い尻が見えた。スコープで覗く。
鹿だ。でもよく見えない。もっと近づかねば。こんどは地面に四つん這いになりながら,枯葉や枯れ木の音を立てないように忍び寄る(傍目には何と無様な格好だろうかと思いつつ。)。程よいところでまた頭を少しずつ上げながらスコープで覗く。鹿が土手の上の地面を前足で掘りながら餌(新芽?)を探している。距離は30m程度か?距離は大丈夫だが,なにしろ木が邪魔でなかなか狙いづらい。ハンターズフィーバーで動悸もする。横を向いてくれればいいのだが後ろ向きで,白い尻毛ばかり目に入る。いつこっちを向いて気付かれるかとドキドキする。もう少し見やすいところに移動するか。でもこれ以上近づくのはリスクがある。この焦燥感は体に悪い。長く続けられない。良い具合に鹿が左側を向いた。このチャンスしかない。スコープで覗き,引き金を引く。あれ?当たらなかったか。鹿は2頭いた。1頭の鹿は驚いて,土手を下りてきた。チャンスだ。次弾を装填しようとボルトを動かす。目は正面を向いている。土手を下りた鹿はこちらに向かってこようとしてこちらに気付き慌てて左へ90度転換し道下の斜面を下りようとする(まるでスローモーションのように脳裏に焼き付いている)。次弾は・・・・くそっ!まただ。弾が薬室前に引っかかって入らない。そうこうするうちに鹿は下斜面を下っていく。あくせくしながら何とか次弾装填したが,すでに鹿は下って行ってしまった。でも,もう1頭は?鹿が餌を探していた土手に近づく。すると,もう1頭の鹿がこちらに行こうとしていて,こっちが近づいてきたので逆方向に逃げ出した。さっきのが母ジカで,こいつが子鹿か。子鹿といってもそこまで小さくはなかったが。逃げた方に進むと,40mほどの距離で止まっている。尻だが,この際どうでもいいと思い,引き金を引く。当たったかどうか分からんが,鹿はまた逃げだした。今度こそ見えなくなるくらい遠くに逃げると思ったが,追ってみると,少し逃げてまた止まっていた。また発砲する。当たったか分からん。姿も見えなくなった。土手を上り,鹿がいた地点まで行ってみる。血らしきものはない。しばし呆然と佇む。何回外せば気が済むんだ。今日で今期の猟は最後なのに。やれやれだ。もうこれ以上何かをする時間はない。すでに4時半は軽く回っている。早く帰らないと山中で真っ暗闇になる。まっぴらごめんだ。来た道を飛ぶように戻る。30分もかからずに下りる。

 なんだかんだとあったが今期も終了。とにかく獲物を外すか半矢になることが多かった。気になる。家で銃の手入れをしているとき,何気なくスコープの接眼レンズ側,ぎざぎざが付いた部分を回してみる。回る。接眼レンズを回す。回る。あれ?ここもしかしてピント調整か?少し回してスコープで覗く。ハッキリ見える!もっとちゃんと調整してみると,同じスコープとは思えないくらい鮮明な画像が。これまでアイピースの焦点調整がちゃんと出来てなかったから散々外していたのか!安物のスコープだから解像度もそれ相応だと思っていたら,全然違ったんだ。ここ何年も獲物に逃げられることが多かったが,このせいか!(そればかりではないだろうが。)。
 
 なんとも恥ずかしい失敗だが,また一つレベルがアップしたとでもしておこう。来期からはもっと猟果は上がるはずだ。

2013年3月2日(土)
13 最短記録

 前回,絶好のチャンスを些細なミスでフイにしてしまった。残り少ない猟期,手を広げずに,今の場所を奥地まで,行けるところまで行ってみよう。

 今回は比較的早くに出て,午前10時45分に登り始める。これまで通り尾根を辿って山の奥まで分け入る。尾根を巻く踏み分け道の藪を歩いている最中,すぐ下の藪から,何かが逃げ出す音。子鹿のようだ。今日は奥まで行くので,時間を節約するために,子鹿は追わずに先を進む。前々回に鹿を撃った沢を過ぎようとするころ,尾根のすぐ反対側から変な音がする。そっと覗くと,鳩のつがいだ。キジバト?変な音を立ててこちらを威嚇する。鹿じゃないから無視して進む。そうこうするうちに前回鹿を逃した場所のすぐ近くまで来た。どこに鹿がいてもおかしくないので,そっとそっと,枯れ枝も踏まないようにして慎重に歩いてきた。なのに,カーブになっている場所に上がろうとしたときに木を踏んでバキッ!と盛大に響かせてしまった。こんなにそっと歩いてきたのにまさかここで音を立ててしまうなんて。でも出してしまった音は仕方ない。気を取り直して,周囲を改めて伺う。目に見える範囲には異常はなさそうだ。今日はここから先に尾根を登る予定だから,前回鹿を逃した場所は様子見程度にしておこう。ここにいてくれたら楽だがなぁ。前回の今回だから,それはうまくいきすぎだ。一応,そろそろと,南側斜面へ続くカーブを曲がる。前回鹿がいた場所には,何もいない。まあ,そうだろう。では,下の斜面にはどうか?・・・・!近い!すぐ下に動くものが。イノシシか?いや,鹿だ。鹿が日の当たるなだらかな斜面で新芽を探して食べている。なんという幸運か。しゃがんで,銃を構えて再度そろそろと頭を上げて下を覗く。いる。せいぜい10mか。スコープにとらえて,引き金を引く。・・・鹿は倒れず,そのまま逃げ出す。あれっ?当たってない?その後ろからもっと大きめの鹿(母ジカだろう)も逃げ出す。2頭いた。母ジカは一旦止まってこちらの様子をうかがってから,また逃げ出し,姿が見えなくなった。鹿の鳴き方からすると,前回反対斜面に追っていった鹿のようだ。では,打ち損じた鹿は前回すぐそこで逃げられた鹿か。同じ鹿を,2回続けて,絶好の状況で逃してしまったことになる。10m前後の距離で外れたなんて,最短記録だ。

 すこし斜面を下りて鹿がいた場所周辺を確認する。血は流れていない。いや,鹿の逃げ方から弾が当たらなかったのは分かっている。鹿の大きさからして,当たってたらただでは済まない。道に上がり,しばし腰を下ろして佇む。発砲時刻は午後1時15分頃。2時間半も大変な苦労をして山の中を忍んで歩いてきたのに,10mが当てられないなんて。スコープなのに。・・・この銃は近いときほど慎重に狙わないと,外してしまうようだ。

 仕方ないので,弁当を食べて,しばらく休憩することにする。上着を着たまま歩いてきたので,汗だくだ。射撃というのは難しい。慢心というのはかくも恐ろしいものなのか。いや,たいして慢心していたつもりはないが,獲物との距離が近いと,「もらった!」と気がはやってしまう。外すはずがない,という無意識の慢心が,銃の頬付けや,引き金の弾き方に影響を与えてしまう。

 まあいい,先を進もう。北側斜面も少し行くがあまり様子は変わらないので,この尾根(カーブとなっている道の上の尾根)を登ろう。ここは,九州電力の作業道か?一部は階段のようになっているので登りやすいことこの上ない。でも,初めて行く場所はかなり不安。周囲を確認しながら少しずつ進む。地図上では,比較的なだらかな場所まで数百m尾根が続いているようだ。鹿がいてもおかしくないような場所だ。糞も大量にそこかしこにある。大きな糞だ。中間くらいに来たあたりか,GPSを取り出して,現在地点を確認する。やれやれ,とGPSを胸ポケットにしまい,ぼんやりと進行方向に視線を戻す。・・・?道の少し右側。斜面に,地面とどうかしているような感じで,なにか,顔らしきものが見える。・・・・・・時間としては何秒かだと思うが,意識としてはかなり長い時間凝視をする。近くを見ていきなり遠くには目の焦点が合わないせいだ。だんだん焦点が合ってくると,それが
鹿の顔だということに気付く。鹿が,斜面から顔だけを上に出してじっと見つめている。距離は15mほどか?感覚的にはすぐそこ。鹿だと気付いて,やばい,と思い,うつむいて視線を外し,ゆっくりとしゃがみ込んだところ,鹿は突然逃げだした。ああ,やっぱり駄目だったか。鹿は沢の中で盛大に鳴き始める。仕方ない。道を辿って登り出す。どうも,鹿は沢の反対斜面にいるようだ。しばらくしゃがんで様子を見るが,姿は見えない。次第に鹿の声が遠くなる。あきらめるしかない。大きめの鹿だったな。

 もう少し行けば,なだらかな場所に出そうだ。何歩か進んだところ,突然,上の方から鹿の鳴き声がした。えっ?上にも居る?こちらからは見えないが,あちらからはこちらが動いたのが見えたようだ。少し下がって様子を見る。鹿は複数いるようだ。このままでは何も見えないので,少しずつ,慎重に進む。何かが動いた。スコープで覗く。
鹿だ。小さめ。若干遠いし,木が邪魔で狙えない。スコープで姿を捉えつつも,引き金は引かなかった。埒があかないので,少しずつ進む。100mも登らないうちに開けた場所に出る。九州電力の鉄塔だ。まだ新しい。切り開いたばかり(それでも数年は経っていそうだ)。鹿はいない。ウロウロとしていると,下の沢の方から鹿の鳴き声。下りられてしまったか。ここから先に登るのはちょっとどうかな。どこまでも登ってしまうと帰りは真っ暗になりそうだ。しばらく佇んだ後,下りる。鹿を打ち損じた場所まで戻る。時計を見ると,ちょうど1時間経過。もしかしたら違う鹿がいるかもしれないと思い,沢まで続く道を歩いてみる。すると,斜面のずっと下の方から鹿の鳴き声がする。それ以外はなし。しばらく座って待ってみるが,見込み無し。

 もう4時になる。これは早く帰らないと明るい内に山を下りられないのではないか?尾根を下る。前々回に鹿を撃った場所(沢)の少し手前で,
鹿が白い尻毛を逆立てながら逃げ出す。距離は20mほどか。下りながら探すが,姿は見えず。数百m下りたあたり,かすかに鹿が逃げ出す音。姿は見えず。藪をかき分け下りる。もう道路まであと少しになった。前回待った場所でまた待ってみる。動かないで居るとやっぱり寒い。前回は鹿が降りていく音がしたが,今回は数十分待っても何もなし。午後5時30分まで待って何もなかったので,あきらめて下りる。すると,なんだか,これまで聞いたことがないような鳴き声らしき声がすぐ近くでする。しばし動きを止める。こういう音は鹿の鳴き声に思えるが,自信はない。しばらくじっとして,もう帰ろうかと思ったとき,また至近距離で声がした。甘えるような声だ。音の位置もすぐ下の斜面から。そっと覗く。すると,すぐそこ。それこそ5mも離れていない場所に,鹿が草を食べている。子鹿か。だからあんな声がしたんだ。母ジカも居ると思われるが見える場所にはいない。少し考えて,銃を構えながら上体を出し,スコープで狙いをつける。さっき至近距離で外しているから,慎重に狙いを定め,引き金を引く。銃声が大きな谷にこだまする。子鹿は倒れる。すると少し先の斜面から鹿の鳴き声。母鹿だろう。下りていき様子をうかがうが,こちらに気付いて逃げ出し,遠くから鳴く。発砲時刻は午後5時30過ぎ。

 今日は2つの最短記録更新。1つは狙いを外した最短距離,もう一つは,仕留めた最短距離。子鹿を撃つと,少し心が痛む。でもこの鹿は蹄は大きかった。成長すると大きく育って被害を増やしたであろう,というのが唯一の慰め。

 帰り,国道219号線のすぐ近く,車の量が多い県道沿いの川の向こう岸に,
鹿が平気で草を食べている。ここは公道だし,すぐ近くに民家があるので,銃で撃たれる危険がないことを知っているんだ。3頭いた。いまいましい。

 

2013年2月23日(土)
12 ワンチャンス

 前回の射撃に満足したところだが,まだまだ山の奥に行けそうだ。奥はどうなっているのか?恐さもあるが興味が尽きない。残りの猟期はあとわずかだから,前回の猟のもっと奥まで進むか,それとも,もう一つ目星をつけている新しい場所に行くか。まあ,前回鹿を撃った場所はこれまで行ったことのない,新しい場所だから,もう少し開拓しよう。
 ということで,前回と同じコースを辿り,どこまで行けるか分からないが奥まで行ってみることにした。
 山に入ったのは前回とほぼ同じ時刻。午前11時45分頃。尾根に取り付く場所で,下の方からガサゴソとした音。鹿かもしれないしイノシシかもしれない。こんな場所で撃っても面白くも何ともない。しばらく様子をうかがったが,近づいても逃げられるだけだろうと思い,このことは忘れて,尾根を登る。尾根を上がりだして,それこそすぐ,今度は尾根の左側(北側)の沢からか,沢の向こう登り斜面からか,鹿が逃げる音。そして警戒鳴き。こんな所にいたのか?姿が見えないのでどうすることも出来ず,鹿の鳴き声が続く中,尾根を登る。鹿の鳴き声が遠くなる。途中,通りにくい藪を過ぎ,グネグネと登っていると,また鹿が鳴き出す。どうも,鹿も山を登っているようだ(それか違う鹿か?可能性は低いが。)。

 ようやく,前回鹿を撃った場所まで来る。ここから先が未知のフィールド。ここは沢始まりで,東に向かって(比較的)なだらかな登り斜面となっている尾根を登ることになる。尾根に沿った形で,杉などの切り出した木材を運搬する道(U字型に大きく削ってある)がある。そして,尾根の南側に,なにやら踏み分け道がある。いったんは踏み分け道を東に向かう。斜面の中腹を横切る形で出来ているその道は,左上の雑木林をうかがいながら,慎重に進む。途中,幅が狭くて歩くのに難渋する場所もあり,しかも,すぐ先は道が途絶えていた(急な沢で行き止まり)。獲物もいない。元に戻る。

 そうこうするうちに2時となる。しょうがない,この上の尾根を登ろうか。息が乱れる以外はさほど苦労せず登る。枯葉がバリバリと音を立てるのは本当に仕方がないのだが,獲物は逃げるだろうな。比較的開けた,平坦な場所を過ぎ,次第に尾根が細くなってくる。獲物の気配はない。糞や,倒木の根っこを利用した寝床は,快適そうなのが幾つもある。横になっていたであろう場所も幾つもある。しかし姿は見えず。いてもこちらが歩く音を遠くから聞いて逃げているんだろう。尾根が細い場所で,しかも木々が茂っていると,とても歩きにくい。もう少しすれば少し広くなるが・・・。しばらく逡巡し,意を決して歩き出す。
 
 倒木を幾つも超え,もう少しで尾根が広くなろうという場所が見えてきた・・・正面2〜30m先,尾根上を
鹿が逃げ出す。あっ,やっぱり奥にはいるんだ。鹿は尾根の左(北)斜面を奥へ走る。鳴き声が響く。執拗な,やけくそな感じの鳴き方。こちらは尾根を登り,左側を少し進んで様子を見る。少し奥は沢になっていて,沢の向こう斜面を鹿が逃げていく。姿はちょっとしか見えない。しばらく様子をうかがう。すると,こちらの斜面側の沢始まりの方向からガサゴソと音がした。鹿がいたか。姿は見えず。

 先ほどの鹿はずっと鳴き続けているが,追うのは無理と判断し,先ほど登ってきた尾根に戻る。反対側(南側)はかなり平坦だ。ここは歩きやすそうだ。少しずつ進んでみる。すぐ先に支尾根があり,その間が沢になっている。歩く場所からは沢の全部は見渡せない。さっきガサゴソいっていた鹿はこちら方面に移動したはずだが,ちょっと様子をうかがった感じではよく分からない。もう少し歩くと支尾根を並行に,左カーブを曲がるように踏み分け道が巻いている。南に面しているので凄く日が差している。どこまで歩けるか分からないが,行けるだけ行ってみよう,と思い,歩き出し,カーブを左に曲がったところ・・・20mちょっと位の距離か,小さめの
鹿が立っていた。左向きに立ち,こちらを見ている。なるべく体を動かさずそろそろと銃だけを持ち上げるとき,鹿は動かず,「いける」と思った刹那,体が無意識に膝を折って屈んでしまった。それを見た鹿は突然斜面を下って逃げだした。逃げる方向を音で予測し,狙えそうな場所で銃を構えスコープを覗いて待つ。狙い通りにスコープの中を鹿が左から右へ通り過ぎる。引き金は引かない。スラッグ弾は弾速が遅いから鹿がスコープに入ってから引き金を引いても遅すぎて当たらない(ライフルが欲しい)。そこから先は鹿がどこに行ったか全く分からない。下の斜面を逃げてしまった。あのまま銃を構えてスコープを覗き引き金を引けば確実に仕留められた感触が残っている。だからこそ,不用意にしゃがんでしまったのが悔やまれる。考える間もない反射動作。鹿を見てから逃げられるまで2秒と掛かっていない。でも,本当なら狙える時間が2秒も時間があればすごい好機。何時間も山を歩き,その間神経を張り巡らせていて,チャンスが2秒もあれば本当にラッキーだ。今回のシチュエーションも本当にラッキーで,確実に仕留められたはず。
 
 まあそれは置いといて,仕方ないので,先を進む。南側斜面を横に歩く。100m程度で水が流れる沢の音がしてきた。すると,こちらから見えない斜面下を逃げる音。鹿だろう。ここにも居たか。踏み分け道は沢の向こうに続いているが,今日はここまでにしとこう。戻る。

 また尾根に戻り,下り出す。音を立てずに慎重に歩きたいが,疲労が足にもかなり来ているので,バリバリと登るとき以上に音を立ててしまう。
 
 雑木を縫うようにして尾根をどんどん下り,前回鹿を撃った場所を少し過ぎたあたり,尾根上で少し日が当たっている雑木の向こう20m位を
鹿が逃げ出した。今日は鹿の白い尻ばかりを見ている。撃つのは無理なのでダラダラと下る。藪を怖々抜けていると,右下の沢から鹿の鳴き声。進行方向なのでバリバリと歩いて進み,下の沢を覗くと,鹿の白い尻毛と後ろ足が,向こう斜面を登っていく。2頭か?鹿はこちらから見えないギリギリの所で断続的に鳴き,こちらの様子をうかがう。このやけくそな鳴き方は,奥で逃げた鹿か?よくわからん。鳴き続けるので,こちらもしばらく様子をうかがうが,姿は絶対に見せないように移動し続けている。
 最後はあきらめ,鹿の鳴き声を背に下る。

 道路が見えたところで,その斜面の反対側が気になるので,しばらく待つことにする。もうそろそろ5時になろうかという頃。日没は6時8分からまだまだ時間はあるが,日が傾くと山には日が入らず暗くなるし,日が当たる場所もほぼ横から日が当たるからまぶしくてしょうがない。だから,午後5時半には帰ろう。しばらく座って様子をうかがう。そんなに間も空けず,沢向こうの支尾根あたりから,鹿らしき動物が駆け下りる音がする。やっぱり鹿はいるなぁ。でも,それからしばらく待ったが,何の変化もない。寒くなる。時間が来たので帰る。
 
 というわけで,今日は収穫なし。チャンスは1回あったが,それをモノに出来なかったのが悔やまれる。でもハンティングとはそういうものだ。少なくとも私の中のハンティングは。長い苦しみの中での数少ないチャンスだからこそ,成功も失敗も記憶に残る。忍び猟や待ち猟だからこそだ。最近思うのは,数少ないチャンスをモノにして鹿を撃つことの楽しみもそうだか,鹿を求めて長時間山を彷徨うのが一番の楽しみではないか。散々山をほっつき歩いてその先に鹿を撃つというのがあると本当に満足できる。これが楽しくなると流し猟なんてやってられない。

2013年2月16日(土)
11 やはり忍び猟

 先週の猟は楽しかった。鹿を獲ったことではなく,山の中であーでもないこーでもないと色々考えながら過ごせたこと。しもやけになりかけたくらい寒かったが,本当に気持ちいい体験だった。久しぶりに猟に行くと,あぁ,やっぱりいいもんだ,と改めて思う。今期は同じ場所にばかり行っていて,猟果もあり,まだまだ獲物(特にイノシシ)がウヨウヨいるのだが,マンネリになっていてフィールドの新鮮味(刺激)が少なくなっていた。それでモチベーションが下がっていたのが,猟のために起きられなくなった要因の1つ。やっぱり『ここを登ったら(下ったら)この先はどうなっているのか?鹿はいるのかいないのか?』というドキドキ感が欲しい。

 ということで,新たなハンティングフィールド(猟場)を開拓すべく,地形図と航空画像を何度も何度も見る。あそこに行ってみよう。
 車を道の空きスペースに止め,歩いて山に入る。午前11時30頃。道の側だからすぐ近くには鹿はいないとは思うが,目を慣らすようにして少しずつ歩き出す。右斜面のすぐ上(数十m)は尾根になっている。一旦直進して尾根下りに取り付き,Uターンする形で,当初右上に見ていた尾根を登り上がる。歩きやすい。地籍調査の赤杭が打ってある。こういうところは歩きやすい。尾根上なので風は吹き上がるが,尾根をずっと登って行けそう(奥に入れそう)で,見込みがある場所の気がする。歩くと枯葉でバリバリ音がするがこれは仕方ない。先がどうなっているか分からないので慎重に進む。登りであることは確かだが,かなり緩やかなので,ハイキングみたいに登れる。尾根の右下は道なので,左下斜面(日は差さない)を主に警戒しつつ,尾根自体や尾根を巻くようにして進む。初めての場所を歩くときは本当に時間が掛かる。でも楽しい。新しい刺激だ。鹿の糞は至る所にある。それも,大きい奴。これは期待できそうだが,タイミングが合うかどうか。1時間ほど経ったか,歩きづらい場所に来てしまった。藪が凄い。木々も密集していてあまり見通せない。

 さて,どうしようか。先に進むのが少し不安になってくる。休憩と昼食も兼ねてここでしばらく周囲の様子を見よう。立ったままで昼食を食べ,前後左右を見つつ,休憩。どうしても,尾根をまっすぐ進むのには躊躇する。色々考えた末,右側斜面,南側をうろうろと見ていると,なにやら道がある。獣道かもしれないが,ここなら歩いて進めそうだ。ここを辿って進む。シダやらなにやらのブッシュの側を通るのだが,何が出てきてもいいように覚悟を決めて進む。通りにくい場所をやり過ごせて,まだまだブッシュはあるが,歩けそうだ。ウロウロすると,鹿の寝床発見。まるで,今までそこに寝ていたかのようだ。
 

 少し開けた南側の斜面で,しばらく佇んだり,写真を撮っていると,目の前20mほどの大きなブッシュから鹿の警戒鳴き。あまりに近いのでビックリ。でも鹿の姿は全く見えない。こういう場合は獲るのは無理。様子をしばらくうかがっていると,次第に斜面上の方に移動していったようだ。こちらはどうしようか,今まで行ったことがない場所にズンズン進むのは気が引けるが,やっと鹿に遭遇した。ここらへんに鹿がいないはずがない。さっきの鹿を獲るのは無理かもしれないが,この先にはもっとチャンスがあるはずだ。

 ブッシュの右から登り上がる。そこまで斜面はきつくなく,滑らずに登れた。木の切り出し道か?尾根の右側を上に続いている。そこを歩くと比較的楽だが,尾根の反対側が全く見えない。少し考え,その道ではなく,尾根の上を歩いて,左側(北側)斜面を警戒することにした。尾根まで登り上がり,北側の沢の様子をうかがう。向こうには5〜60m先にもう一つの尾根がある。こちらの尾根と上で合流するようだ。木々で向こうの斜面はなかなか見通せない。さほど歩かないうちに向こうの斜面で鹿の警戒鳴き。さっきの鹿だと思われた。タタッタタッと逃げていく音はするが姿は見えず。くそ−。

 気を取り直して,これから登る尾根を仰ぎ見る。たいしてきつくないので,ゆっくり周囲を警戒しながら登れる。木々も人がすり抜けられる程度にはまばらだ。こういう場所は期待できる。大切に,少しずつ登る。さほど登らないうちに,左側の尾根とこちらの尾根が近づく,つまり沢の始まり部分に近づく。こちらから沢を左に見て,その向こう斜面が近づくが,ちょうど日光がポッカリと当たっている場所が見えてくる。暗い斜面なので目立つ。ああいう所は鹿が好きなんだがなぁ,と思いながらも,周囲を警戒しながら少しずつ登る。そうこうするうちに,日光が当たっている場所が近づく。ふと見ると,鹿の胴体が日光の中に浮かび上がっているように見える。スコープで覗く。ビンゴ。
メス鹿だ。右向きで静止。十分に射角は取れてる。距離は約50m。ほぼ水平射撃。安全装置を外し,スコープの十字を右前足付け根に合わせ,『一発』と確信出来るほどのすばらしい条件で引き金を引く。スコープの中の鹿は前足から崩れるようにして倒れ,斜面を落ちて,数m下の倒木で止まる。動かない。次弾を装填しつつ周囲を見ると,鹿がいた向こう斜面の左数十mで鹿が逃げる音。姿は見えず。射撃時刻午後2時少し前。

 しばし,理想的な射撃の余韻に浸る。不安に負けずに奥に入ってきて良かった。距離はそこそこあったが水平射撃だったのでいろんな要素を考えずに済んだ。こんなにドンピシャな射撃はそうそう無い。少なくとも前回の流し猟よりもずっと達成感がある。もう今日は終わってもいい気がしてきた。この先の尾根はもっと登れそうだが,それは今後のお楽しみに取って置こう。元来た道を戻る。途中,違う尾根に行き,下りて,また元に戻る。ここらは結構研究の余地があるようだ。日当たりの良い場所に座ってひなたぼっこをする。こんな楽しいことを出来ている現状に感謝する。

 その後,午後5時過ぎまでウロウロしたり1つの場所で隠れて待ったりしたが,成果が無く終わる。山の中で待っている途中,眼下の道を大きな四駆が大きな音を立てて上っていく。今から行くというのは,流し猟でしょうか?もしそうだとしたら,そのデカイ四駆が泣きますな。

2013年2月11日(月)
10 流し猟というもの

 前回猟に行ってからいろいろとタイミングが合わず,結局猟に行けたのは2月に入ってから。あと1ヶ月しかない。これまで大体ずっと同じ場所に行っていていまいちマンネリなので(イノシシなんて撃ちたくないというのもある),違う場所に行くことにした。色々考えたが,猟を始めてから散々行っていた場所で,前猟期には行ってないところに行くことにした。行くことにしたのはいいが,朝起きられない。良い天気なのに起きられない。家で日差しを浴びてボーッとすること多数回。2月11日(建国記念日)に,やっと行けた。

 今日も日差しが良い。でも,高度が上がるにつれてひんやりとする。途中,道端で鹿に出くわす。車を降りて撃っても良かったが流し猟は嫌いだ。そのまま通り過ぎる。それにしても,こんなに良い天気だが猟の車には出会わない。銃規制が厳しくなり,銃猟をする人口は確実に減っている。それで良いんだろうか?あんなにイノシシがいるのに?鹿がいるのに?

 目当ての場所は「一般車両進入禁止」なので,その手前の都合良い場所に車を置いて歩いて山に入る。午前11時40分頃。歩き始めて2分(マジで)で鹿が鳴き出した。幸先が良いというか何というか。鳴き声からすると子鹿だろう。声はすれど姿は見えない。斜面の上の方。あきらめて歩き出すが,ずっと鳴き続けている。

 ここは,これまで行っていた場所の倍以上高度が高い。車で走っているときもチラホラ雪が残っていたが,歩くところはもう雪がそこかしこに残っていて,おまけに5p以上はある霜柱が地面を覆っている。ゆえに歩くとバリバリと盛大な音を立てることになる。駄目だこりゃ。ここを歩いて登ったら気付かれないわけがない。地面がデコボコして歩きにくい。苦労して登り続ける。体がなまっているので必死。風も冷たい。寒い。ずっと登るのではなく,数歩進んで止まって辺りをうかがって・・・の繰り返しなので,雪や霜を踏みしめる足がどんどんかじかんでいく。ブーツ越しに冷やされて,足が次第に痛くなってくる。ヤバイ,しもやけになりそうだ。

 どれくらい歩いたか,一応の目当ての鞍部まで7割くらい来たくらいのところで,目の前に動き。沢の左側を登っているが,その反対側の杉林に白い尻をした
鹿が少し逃げた。距離は80m以上。木が邪魔でなかなかちゃんと見られない。目を凝らしたりスコープで覗くが,移動しないとちゃんと見られないので,少し進む。すると鹿は逃げる。2頭いた。逃げられて見えなくなった。この状況では逃げられても仕方あるまい。左上の斜面から音がするのでしばらく様子をうかがう。10分ほど足の冷たさを我慢して様子をうかがうが,どうも鳥のようだ。あきらめてまた歩き出す。100mほど歩いたか,沢が2つに分かれている(正しくは,2つの沢が1つに合流しているところを登ってきた)。右の沢の方で鹿が逃げていく。距離はさっきよりは近いが50mはあったか。狙える状況ではない。さっきの鹿達だ。どちらを登ろうか。左は日当たりが良いが,その分藪がひどくて登れそうにない。右は日当たりが無く雪だが,その分藪が無く登れそうだ。鹿が逃げていった右の沢を登ろう。もうすぐ先には鞍部も見える。とはいえ,雪は滑る。もちろん普通のブーツを履いているだけなので,盛大に滑っては登る。やっと鞍部に到着。風が冷たい。鞍部の向こう側(東側)は暗い。南北に長く拡がる稜線に出たことになるが,どちらに行こうか?鹿が逃げたらしい南?北に行こう。少々登ってまた下って,その先は藪。獣道が稜線をなぞるように北に向かって続いているようだが,少々怖い。しばらく休憩する。日は当たっているが寒い。ゴアテックスの服で来れば良かったと後悔。ここでしばらく待機するが,鹿が来る様子はない。

 仕方ないので少し北に登る。そんなに急斜面じゃないが,100mも登れば更になだらかになるはずだ(GPSの地図上では)。でも,人が歩いた形跡は全然無い。そういう場所は本当に怖い。どこまで行くか,どういう行動を取るかの決断は完全に自分一人に委ねられている。どういう判断をしてもそれは自分で責任を取らなければならない。このギリギリの状況が楽しい。ここからどこまで登っていこうか?登れば登るだけ,進めば進むだけ,帰り道の事を心配しなければならない。地形的には危険な場所ではなく,GPSがあるので帰り道に迷うことはないが,歩けば歩くだけ帰りの時間を考慮しなければならない。しかも,この藪を歩くと音で獲物に気付かれてしまう。奥に行けば行くほど(人がいない場所であればあるほど)獲物がいる可能性は高いが,気付かれて逃げられてしまえば骨折り損になる。色々考えて,帰ることにした。鞍部まで戻り,今度は南に行ってみる。少し行くと急な登り。ちょっとためらうほどの急斜面。登るのは登れるだろうが,帰りが辛そうだ(今考えると登っておけば良かったと後悔)。しばらく様子を見て,鞍部に戻り,沢を下る。

 沢を下るが,下るときはもっと音がする。鹿はいない。南斜面に日が当たる。鹿が降りてきそうなところを待とうか。沢の反対側,杉林に行き,あんまり隠れるところはないし,斜面なので座れる場所すらないが,倒木に腰掛けて待ちに入る。午後2時半。

 石がガラガラッとそこかしこで落ちる音と,鳥の声を聞きながら,沢を吹き下ろす風に凍え続ける。こちら側には日は全く当たらない。ガタガタと震える。立っても震える。一応,5時頃まで待ってみよう。今日は日没は6時くらい。ずいぶん日が長くなったもんだ。

 我ながらよく我慢したと思うが,どうもここに鹿は下りてこないようだ。下りてくるときがあるとしても今日ではないみたいだ。午後4時45分,下ることにする。もうかなり太陽が低くなってきた。下りて,一応,隣の沢にも登ってみるが,いない。今日は成果なしだ。車に戻る。

 お茶を飲み,銃を片付けて,車に乗って道を下る。何分下ったか,川の近くを通りかかったとき,
鹿が川に水を飲みに出てきていた。すぐ近くを通りかかり,鹿は少し斜面を上がって逃げた。でも止まっている。鹿は2頭。銃はもうケースにしまっているし,流し猟は嫌いだ。でも,今日は散々苦労したが鹿を逃がしている。一発も撃っていない。逃げられるだろうが,一応やってみよう。車を降り,銃をケースから取り出し,ボルトを操作して薬室を開放し,弾を入れ,薬室を閉鎖し,狙う。ちょうど良い向きには居てくれないが,距離的には30数mか,狙うのには問題ない。左の母ジカ(とおぼしい)の左胴体に,極力急所に当たるように狙いをつけ,引き金を引く。鹿は崩れ落ちて道まで落ちてきた。もう一頭も一緒に下ってきた,こちらが狙っているのに気付いて左に走ってまた斜面を登って止まった。急いでそちらに走って探るが,無理なのが分かって,ふと撃った鹿を見ると,立ち上がろうとしている。撃った弾は下半身の骨を砕いたようだ。苦しみを長引かせないよう,撃つ。外れた。あまりに近すぎてスコープの狙いがズレた。狙いを修正して3発目は当たった。・・・3発も使ってしまった。

 流し猟について。猟を始めた頃は鹿を見ることも簡単ではなく,見るだけでなく撃てる状況になるのはもっと困難だった。どういう状況でも良いから撃ちたい,という気持ちなら,流し猟は有効だろう。鹿の中で警戒心が弱い個体が流し猟で撃たれるだけなのだが,流し猟で鹿を何度か撃つと,「鹿を撃つのは簡単」「鹿を撃ってもつまらない」と思ってしまう。忍び猟で鹿を撃つのは大変なのに。ダラダラと林道などを車で行ったり来たりしながら,運悪く出ていた鹿がいたら車を降りて降りて撃つ,なんて,そればっかりやるのは願い下げだ(所詮『趣味』だから,何を好もうと勝手だが。)。事前に計画を立て,自分の足で山を登り,目を皿のようにして探し,落ち葉の音すら逃さないほど耳を澄ませ,寒さや暑さやきつさや恐さに耐えながら,それでも一瞬のミスで何時間もの努力が無駄になる,その反面,獲物の気配を察知した時のゾワゾワッという感覚,獲物を見つけ,こちらに気付かない獲物に狙いをつけ,引き金を絞るまでの貴重な瞬間。これこそがハンティングの醍醐味である。山は相手のテリトリーである。人間はよそ者である。地の利は相手にある。相手がいつも生活する場所に入っていって,捕獲する。いくら相手が動物だとはいえ,こちらがおいそれと獲れるわけではない。通常なら不可能なことを可能にするのが銃である。銃があって初めてイーブンとなる。車で走って,道に出ているシカを撃つなんて,全くフェアではない。最近感じる流し猟で捕獲したときの後味の悪さは,このアンフェアさにあるのだろう。「生き物を殺すなんて」と,ハンティング,狩猟への嫌悪感・風当たりの強さは承知の上である。「生き物を殺すのに,フェアもアンフェアも無かろう」,という考えも少しは理解できる。それでもなお,自分が『フェア』と考えるやり方でハンティングを続けるつもりである。それが,スコープ付きボルトアクションを使う,そして忍び猟・待ち猟をするというスタイルなのである。流し猟は今後はよっぽどのことがない限りしないようにしよう。猟の成果が無いときはしてしまうかもしれないが。

2013年1月19日(土)
9 大丈夫かここは・・・・

 年が明けて初めての猟が1月19日とは・・・,ずいぶん時間を無駄にしたようだ。天気に恵まれて,猟に行かないわけにはいかない(決して嫌々行っているわけではないが)。準備を整えて,11時過ぎに家を出る。

 前回イノシシに肝を冷やされたが,また同じ場所に行こう。そうそういつもいつもあんな目には遭わないはずだ,との淡い期待を秘めて,林道(作業道)に車を入れる(もちろん,侵入禁止の道ではない。)。路面を見ると,数日以内,多分今朝かな,別の車が入っているようだ。別に何の期待もなく,注意もせず車を走らせ,カーブを曲がった先に
鹿が2頭(いずれも若い),尻を向けてこちらを見ている。こちらも止まる。鹿は動かない。どけよ,との意味合いを込めて軽くクラクションを鳴らす。鹿は走り出し(尻毛は拡がっていない),正面の斜面を登る。こちらも道を進む。あの様子じゃ,逃げ出さずに斜面にいて様子をうかがってるんじゃないか?と思い,無駄かもしれないとは思ったが,少し先で車を止めて,銃を取り出して戻り,こちらも様子をうかがってみた。案の定鹿は斜面にいた。3頭だ。道から斜面に入り,狙いやすい鹿を見定めて(鹿が小さい上に40m以上?しかも暗い。少し厳しいか?),引き金を引く。倒れたようだがハッキリしない。他の鹿は逃げ出す。撃った鹿は見当たらない。一旦は車に戻り,ザックなどを取り出して,また斜面に戻る。鹿が鳴いている。倒れた鹿を呼んでいるに違いない。そうだとすれば,撃った鹿は倒れているはず。戻ってきている鹿も狙えそうだ。北側斜面で暗いが,スコープで覗くと,バッチリ見えた。母ジカのようだ。仰角で厳しい射撃だが,揺れる十字で懸命に鹿を捉え,引き金を引く。タイムラグがあって鹿が逃げ出した。外れたか。惜しい。
 最初に撃った鹿はどこだろう。大体の見当は付くが・・・あ,動いた。あそこか。急斜面を登る。鹿の近くまで来たが,やはり小さかった。でも死んでいない。苦しみを長引かせないよう,もう一発撃つ。それでも死なない。もう一発撃つ。しばらくして,やっと死んだ。スコープなので近距離は少し狙いが外れるせいか。野生動物はタフだ。急所に当たらないとなかなか死なない。倒れすらしないでどこまでも走る。この鹿には苦しみを長引かせてしまって申し訳ないことをした。手を合わせて念仏を唱える。

 車を走らせ,いつもの所に車を止める。装備を調えて,斜面を登り出す。登りだしてすぐ,斜面の左側,ガサゴソと音がする。石を落とすようなガラガラと音もする。どう考えてもイノシシだ。開始早々ゲンナリする。もしかしたら他のハンターが放した犬かもしれない。誤射だけは避けたいので,口笛を数回吹いてみる。口笛には反応しない。そのうち音もなくなった。ここにまでイノシシがのさばりだしたのか。嫌だなぁ。再び登り始める。

 尾根に出る付近ではソロソロと用心して南側斜面に顔を出す。右横数十m先と,下の左側斜面数十m先でガサゴソと音がする。えぇー,もうここで?イノシシのような音がするため(少なくとも右横の音は鹿ではなさそう),一挙に不安になる。一応,弾は7発持ってきていたが,さっき4発撃ってあと3発しかない。不安で腹が痛くなる。しばらく右横と左下を警戒する。ガサゴソ大きな音を立てる割には一向にこちらに来る様子もないし,姿が見えることもない。数十分はそうしていたか。進展が無いので,仕方なく,少しずつ歩き出す。南側斜面にほぼ並行に出来た踏み分け道を西に向かい,ソロリソロリと歩き出す。近づいても,右横のガサガサ音はやむことがない。これは鳥だな。鳥って案外大きな音を立てるのだ。左下はどうか?よく見えない。上と下を用心しながら歩く。歩いては耳を澄まし目を凝らし,また少し歩いては・・・の繰り返し。この道は少し先で,下の方の道に合流する。合流後,今度は下の道を逆方向(東)に少し歩いて,斜面下の様子を見に行く。前に鹿を撃った沢を見るが,いない。その先(東)も一応見に行く。すると,比較的なだらかな下斜面の2,30mの距離に
鹿がいて,こちらと目が合って鹿が逃げ出す。もちろんこちらは間に合わない。鹿は尻毛を立てていないので,そう警戒していた訳でもないようだ。子鹿ではないが,そう大きな鹿でもなかった。周囲を見渡し,しばし佇む。

 これからどうしようか。時刻は午後1時頃。何しろ弾が3発しかない。今日は午後から少々曇るというが,今のところは晴れ間が続いていて居心地が良い。別に猟の成果を誰かと競っているわけでもないので,ここで鹿が来るのをのんびり待とうか。イノシシが来るかもしれないが,奥に行ってイノシシが出るよりはここで出た方がよほどいい。という訳で,待ちに入る。

 時間は過ぎていく。日差しはあるが,風が冷たい。足先,手先,首回りが冷たい。冷たい風は上着の中にまで入り込む。今日は寒い。ヤバイ。座っていられない。立つ。ずいぶん経ったあと,下の方で鹿の鳴き声(呼ぶような声)がするが,待てども鹿は上がってこない。鳥だけが周囲で騒ぎ,時間が過ぎていく。木々には新しい葉が芽生えてきている。まだ1月なのに,もう葉が出ているのか。

 待場の右側斜面,緑に茂っている葉で見えないが,ガサゴソと大きな音がする。鳥ではない。間違いなくイノシシだ。動悸が激しくなる。こちらに来るなら撃つしかない(弾は3発だが)。ガサゴソがずっと続くが,こちらに来る様子ではない。風向きが逆なので,こちらの臭いを絶対察知しているはずだ。イノシシが1頭なら撃ってもいいが,何頭もいるなら撃ちたくない.あっちに行って欲しい,と内心願う。そうこうするうちに,音がしなくなる。向こうに行ったのかな?とは思ったが,経験上,多分上斜面に出るはずだと予想される。しばらく様子を見ていると,果たして,上斜面に
イノシシの姿が見えた。灰色なのでよく見ないと見落とす。イノシシは右へ歩き出す。距離は35〜40m。スコープで覗いていると,後から後から出るわ出るわ,合計6頭。小さいのから大きいのまで。行列のしんがりが一番大きい。丸々と太って,腹が地面に擦りそうな位せり出している。そいつだけが少し止まった。こちらを確認するために違いない。こちらが何もせずに見守っていると,そいつはまた動き出す。群れは斜面を登り,尾根に向かったようだ。しばらくすると音も姿もしなくなった。回り込んでこちらに来るかともちょっと思ったが,来ないようだ.まあ,当たり前か。1頭だったら撃っても良かったんだが,6頭。しかも,大きいのが確実に3頭はいた。最後尾の大きな奴を撃ったとして(確実にヒットできる状況ではあった),そいつが斜面を転げ落ちてくれば,他のイノシシも斜面を駆け下りてきて・・・,どういうひどい展開になったかあんまり考えたくない。今回はやり過ごすに限る。しばらく興奮していたが,次第に冷静になり,また座って待ちに入る。遭遇時刻は午後3時数分。


 寒い。風が冷たい。鼻水が止まらない。5時くらいまで居よう。今日の日没は5時37分。ずいぶん日が長くなった。でも,日没まで時間があっても暗くなるから,あまり成果は期待できない。少しだけソロソロと右往左往してみたが,成果無く,5時を迎える。帰ろう。尾根に登り,反対斜面を下りて,車に戻る。

 車で林道を少し戻り,いつも家族に帰宅の電話を入れる,開けた場所に車を止める。下りて電話をし,温かいお茶を飲みながら,しばし佇む。すると,目の前斜面の上の方から,ガサガサ音がする。鹿だろう。音からすると下りて来るかもしれない。銃を取り出し,様子をうかがう。すると,何の気なしに見た右斜面中腹に,
鹿が2頭いた。目が合って鹿は駆け上る。スコープで覗くがなかなか捉えられない。見えなくなったが,しきりに鳴いている。この2頭と,さっきのガサガサいっている鹿で,少なくとも近くに3頭の鹿がいることになる。互いに呼び合っている?まだ撃てるか?日没まではまだ少しある。しばらく様子をうかがう。ガサガサいわせている鹿は一向に見えないが,右の方で鳴いている鹿は,あるときふと白い尻が見えた。少し移動してスコープで覗くと,なんとか狙えそうだ。ただ,不安要素が一杯。また仰角で,鹿もそれほど大きくない。距離としては6〜70mか。自分の腕とスラッグ(ブリネッキ)で,しかも立射では,ちょっと可能性が低い。スコープの十字も揺れる。でも最後のチャンスだ。引き金を引く。外れたのはすぐに分かった。鹿は逃げて見えなくなる。もう駄目だ。あきらめて帰る。

 約3週間空けての猟の成果は,不本意ながら流し猟での子鹿捕獲。他はイノシシをやり過ごし,2頭の鹿を外す。まあ自分のことは良いとして,イノシシが増えている?誰か撃たないと尾根の両側の集落が大変なことになるだろ。あんなイノシシの群れは自分の手に負えない。誰か犬使ってでもグループ猟をしてイノシシをがんがん捕ってくれんかなぁ。都合の良い願いだが。それとも俺がやるしかないのか。やるなら,セミオート銃でバックショットでやるしかないな。

2012年12月29日(土)
G5時間

 事務所も年末休業に入り,年内に1回は猟に行っておこうと,出発。今の猟場はとにかく鹿がいる(イノシシもいる)から,天気も良いし,前回と同じような待ち猟を一度じっくりやってみようと考えた。寒さを凌ぐために今度は使い捨てカイロも持って行く。

 山を登り,尾根に到達し,そこで数十分目を慣らしてから,少しずつ尾根を南に下り,前回イノシシを撃った場所に着く。午前11時40分。待ち猟開始。

 そこからが長かった。日差しは結構あり,南に面していることもあって日が差している間はそう寒くもない。もちろん風は冷たいが,山にいるにしてはかなり快適だ。だからこそここで待ってみようと思ったのだが。それでも,何もせず待つのは結構辛い。鳥はあちこちでうるさい音を立ててこちらを驚かせる。こちらは耳を澄ませ,左右・前後をひっきりなしに警戒。獲物が来るとすれば下からだが,そうとばかりは限らない。後ろ上斜面も警戒する。

 待ち始めてすぐ,下斜面のもっと下の方,遠いところから犬の声がしたと思ったら,しばらくして発砲音が一つ。あれで驚いた鹿達が上に逃げてきてくれればいいのだが,あんまりそういう風になったことはない。

 ・・・・するのは鳥の音ばかり。鳥はだんだんこちらに慣れてきたのか,しまいにはこちらを無視してすぐ近くで喧嘩をし出す。いったい何羽いるのか。鳥以外は,長い時間,そこかしこを警戒し,耳も澄ましているが,どうも来てくれないようだ。これだけ山にいるので知らないところで逃げられているとは考えにくい。うーん。

 1時間が過ぎ,2時間が過ぎ(昼飯はおにぎり),3・・・,4・・・・,5時間が過ぎ,午後4時半を越えた。今日はこのまま鹿の姿も見ずに終わるのか。まあいいか,もともと,山で過ごすだけで終わってもいいと思って待ちに入ったのだから。少々焦りがありつつも,そこはかとない心の平穏の中で佇む。下から鹿の鳴き声。誰かを呼ぶようだ。しばらくすると,眼下左の沢の斜面がガサガサと音がする。おっ?と思ったが,ここからは木々が茂っていて何も見えない。鳥の音かもしれない。よく考えれば鳥以外の獣(通常は鹿)が来た可能性がかなり高いはずなのだが,このときはあまりにも待ちすぎて,精神が弛緩しきっていたようだ。様子をうかがうこともせず,そのままボーッと座っていた。このガサガサとは関係なく,周りも少々暗くなってきたため,周囲の様子を一応をうかがうために,歩く。すると,そのガサガサ音がした斜面ドンピシャの所,歩いてきたこちらとの距離20mもない近距離を
鹿が逃げ出す。・・・・まったく。何時間掛けようと,詰めが甘いと全てが水の泡。一応静かに後を追うが,遠くに逃げてしまった。しばし佇む。あの鹿は先週弾を外した奴じゃないか?まあ,仕方がない。待ちすぎて気が長くなったのか,ちょっとやそっとでは残念という気持ちにもならない。日が落ちかけてきた。つるべ落としだ。あっという間に暗くなる。暗い山を歩くのは嫌いだからもう帰りたい。ぼやぼやしていると5時になる。歩いてきた道を引き返す。何十秒も歩かないうちに,斜面上の方からガサゴソ音がする。見上げて目を凝らすと,30〜40m上をイノシシがこちらの進行方向と逆に歩いている。2頭いる。先週と似たようなシチュエーションだが,今度のイノシシはそこそこデカイ。4〜50sくらいありそうだ。チラッと不安も横切ったが,あまり深く考えることなく,スコープで狙う。足が短いので木々に隠れやすいので,なかなか狙えない。少し逆方向に歩いて狙い,後ろの奴に引き金を引く。命中。ズザザーッ!と斜面下のこちらがいる方向に落ちてくる。前のイノシシもこちらに向かって下りてくる。でも仕方ない。やるしかない。ボルトを操作し次弾を装填し,体勢を立て直して下りてくる撃ったイノシシをスコープ一杯に捕らえながらなんとか引き金を引く。イノシシはギャー−!という悲鳴を上げ,動きを止める。こちらはボルトを操作してポケットから弾を出して装填しながら見ていると,前を歩いていたイノシシはこちらの左2m程を駆け下りて逃げていく。.大きいなぁ。なかなか弾が入らないので見ると,また薬莢が薬室に張り付いて取れない。またかよ!撃ったイノシシは動き出し,こちらの右へ転げ落ちて木にぶち当たって動きを止める。その背中には弾が貫通したのか,傷跡が見える。こちらは弾を装填しなければ話にならない。このときのために先々週からザックに入れている,ジュラルミン製の組み立て式の棒(銃腔内の掃除に使う)を取り出し,ねじ式になっている棒を組み立て始める。その最中,止まっていたイノシシがまた息を吹き返し,斜面を降り下っていった。イノシシはタフだ。2発当たっているのに。こちらがまだ棒を組み立てていると,背中から,ウグァー,ウグァーとうなり声。見なくても分かる。先頭を歩いていたイノシシだ。仲間を撃たれて頭に来ているに違いない。万事休すか。もう恥も外聞もない(そもそも誰も見ていない),迷いは一切無く,銃と棒を左手に,右手にザックを抱え,言葉にならない威嚇の叫びを出しながら,後ろも振り返らずに一目散に逃げ出す。イノシシが追いかけてくれば余裕で捕まる程度にしか動けない。途中でザックを背負い,目の前の斜面を登る。ここで止まっては駄目だ。心臓が破れるかアキレス腱が切れるか膝を痛めるか,どれも嫌だが少しでも無理しなきゃ。尾根に登り上がり,やっと後ろを見る。イノシシはいないようだ。でももう一時も無駄に出来ない。尾根の反対側を下り,どんどん下り,ほうほうの体で車にたどり着き,車の中に入ってやっと一心地つく。汗びっしょりで,息が詰まって気管が痛い。

 よろよろと車を運転し帰る。帰る途中,若い
オスジカを見る。やっぱり,日暮れ近くにならないと活発に動かないからなぁ。獲りにくくなったな。

 今日は5時間待って何もなく,その後一波乱。獲物が出ないときは一切でないし,出るときは突然出る。そういうもんだ。

2012年12月24日(月)
F北風

 めっきり寒くなって,しかも晴れていればハンティング日和。雪も降りそう(山ではすでに降っているだろう)。朝早くから行くつもりだったが起きれず,ダラダラと。今日はこれまでとは違うところに行こう。行きすがらの道で檻を積んだ軽トラとすれ違う。山深くなるにつれ雪が残っている。車を止めて歩き出したのが11時頃。だれも歩いた様子はないので歩きにくい。霜で地面が凍っており,歩くとバリバリと音がする。倒木を越えたりくぐったり。風が冷たいな。耳がしもやけになりそうだ。道は少々険しくなり,岩がせり出す。通れないことはないがすこし命の心配が。あきらめて少し戻り,数十m上にあるちゃんとした作業道に上がる。
 
 しかたない,この道を歩くか。この道はこれまで何回か来たことがある。鹿がいそうな場所は数カ所あり,もっと奥では実際に鹿を撃ったこともある。こういう道を黙々と歩くのは本当に退屈だ。山の中に入っている感触がしない。地面には車が走った跡。霜柱を壊しているから,今朝誰かが車で入ったんだ。歩くのが余計つまらなく思える。そうこうするうちに,鹿がいそうな場所(南側)を見通せる場所に来た。道の右側の鞍部の先にある。そこばかり見ていたら,左20m程先の方に突然動きがあり,ハッとして向くと,
鹿が二頭逃げ出した。二手に分かれて斜面を登って逃げたので(鹿はよくそうする),どちらが狙えるか迷っている内に狙えない場所に行かれてしまった。左の鹿がちょっと警戒鳴き。仕方ない。あきらめる。目当ての斜面に鹿がいないか確認しに行ったが,いない。道に戻って先を行く。道が進むと北からの風を直接受けるようになる。その風の冷たいこと,痛いこと。改めて山の寒さを再認識。風に刃向かいトボトボと緩やかな登り道を上る。かなり進んだ。ここは東から西へ拡がる大きな谷の北側(地図で言えば下側)の斜面に沿って出来た道を東に向かって歩いている。谷の向こう側が見渡せる。左下斜面の気になるところを覗いて,右を向いたら,また鹿だ。さっきの鹿だろう,さっきよりも近い場所に二頭座って休んでいた。こちらに気付いて驚いたみたいで一目散に逃げ出した。こうなったら駄目なので,早々にあきらめて先を急ぐ。ここら辺は前期に鹿を撃った場所だが,今は一面雪。鹿もいそうにない。

 終点到着。風が冷たい。ちょうど1時間ほど掛かった。しばらく遠くの景色をながめながら休憩し,来た道を戻る。

 車に戻り,やっぱりいつもの所に行こうと思い直し,車を走らせる。とにかく早くいつもの尾根に登ろう。いつもの作業道に乗り入れ,いつもの場所に車を止め,斜面を必死に登って尾根に上がって座って一息着く。こちらは南側に面しているので,風はひんやりしているが日差しもあり,さっきとは打って変わって心地よい(あくまで比較問題だが。)。すでに2時間ほど山を歩いているから目もかなり山に慣れている。先週は,このすぐ下で鹿が見えずに逃しているので,慎重を期したい。どんな異音も,動きも見落とさないように慎重に周囲をうかがうが,いないようだ。時間だけが過ぎてもしょうがないので,少しずつ移動する。相変わらずここはやかましい。鳥のせいだ。バサバサとそこかしこで地面に下りたり飛び立ったり葉っぱを揺らしたり木の実を落としたり,木をつついたり。今日は既に散々歩いたので,もうあまり歩きたくない。少し右往左往し,下や上の斜面の様子を見た。さほど異常な点はない。よし。ここら辺で待ち猟をしよう。日差しも良い。あまり下斜面から露出せず,かつ大体見渡せる場所に座る。2時前後頃からだったかな,主に下の沢を目当てとして,待ちに入る。

 しばらくは座って周囲に溶け込む。日差しが強まったり弱まったり,鳥があちらこちらを移動する音を聞きながら耳を澄ませ目を凝らす。そのうち,ふと,おにぎりを食べながら待とうか,と思い立つ。まだ待ち始めてそんなに時間は経っていない。今のうちに食べておこう。立ち上がり,銃を下ろし,ザックを下ろし,おにぎりを取り出し・・・,あ,座ると寒くなるので,ジャケットも着よう。ブレイズオレンジのベストを脱ぎ,ジャケットを着てジッパーと格闘し・・・?下の方でガサゴソ音がする。ふと下の斜面を見やると,右から左へ黒い塊が移動中。
イノシシだ。母イノシシの後ろに2,3匹の子供。母親もそんなに大きくはない。慌てて銃を取り上げ,狙いをつける。木々の後ろを移動するので狙えない。少しずつ左に移動しながら様子をうかがうが,結局狙えずに終わる。ちくしょう,こんな時に出やがって。別にイノシシを撃ちたいわけではないが,せっかくのチャンスではあった。遭遇時刻は午後2時半頃。あきらめて,ベストを着て,ザックを背負って,座っておにぎりを食べた。おにぎりは冷たく,硬くなっていていたが,おいしかった。食べるのは一個だけにしておこう。食べ終わり,水を少し飲んで,また待ちに入る。

 座ってじっとしていると,やはりここも吹く風が冷たいことに気付く。ジャケットを着ても寒い。グローブをしている手もかじかんでくる。足先も凍える。ちょっと場所を移動して,見通しやすい場所に行こう。座っていると,右手に日が差す。手をかざす。その部分だけは暖かい。それにしても,ここがこんなに寒くなるなんて。あまりに寒く,じっとしていられない。座ったり,そっと立ったり,左右に数十m移動して,様子をうかがう。いない。支尾根を見張るが,いない。時間はのろのろと過ぎていく。体はかじかみ,震えが止まらない。何回目の往復か,移動しながら下斜面をふと振り返り覗くと,動く物が。最初はイノシシかと思ったが
子ジカだ。視線を感じたのか,地面の餌を探していた子ジカが顔を上げ,こちらを真っ正面から見上げる。距離としては25〜30mほどか。ヤバイ!警戒している。いつ逃げ出すか分からない様子。ここで動くわけにはいかない。静止し,視線も外す。ちらっと鹿を見ると,まだ見ている。鹿を見ないようにして静止しているしかない。どれくらいの間そうしていたか,ちらっとまた鹿を見ると,鹿はまた地面の餌を探し出した。人間だと分からなかったようだ。こちらは迷彩服(リアルツリーAP)にフェイスマスクもしていたからな。フェイスマスクがなければ,いかに静止していようと一発で逃げられていた。やっと動けるようになった。最小限の動きで向きを変え,挙銃し狙いをつける。鹿の姿が木に隠れたためしばし待つと,左側から首が見えてきた。狙える。もう少し待って,前足後ろの心臓を狙えば良かったのだが,首でも命中させられるとの慢心があったのか,首を狙って引き金を引く。鹿は驚いて逃げ出す。あれ?当たらなかったか?あれぇ〜?しばし佇む。あんなチャンスを。こんな好条件で外すなんて。また気が急いてしまったのか。

 この沢で撃ってしまったので,再び鹿などが来ることは,少なくともすぐには考えにくい。その左右の支尾根や沢を数十分ごとに見に行く。いない。寒さと震えだけが募る。移動途中,下の方から鹿の声が聞こえる。
 そうこうするうちに4時を過ぎる。これからが出やすいのではないかとも思えるが,いない。右の方向,遠くから,人の話し声が聞こえた気がして,様子をうかがうが,足音なども全くしない。幻覚か?
 かなり寒さがこたえた頃,沢の右側からガサゴソうるさい音がしてきた。イノシシだろうと思ったらやっぱり
イノシシだった。2時半頃通り過ぎたイノシシだろう。沢を登ってくる。距離としては20mほどか。ブッシュがあるので狙いやすいよう登らせて,先頭の母イノシシを狙って引き金を引く。轟音で耳鳴り。母イノシシは転げ落ちる,子供のイノシシは下に逃げ出す。ボルトを操作して次弾を装填し,近づく。イノシシはどこに行った?よく見えない。しかし,下から「ウゴァー,ウゴァー」と威嚇する声。前期に手負いのイノシシに向かってこられた記憶が蘇る。ここは斜面だから向かって来ても狙い撃ちだが,気持ちのいいものではない。肝心のイノシシが見つからない。右の方の支尾根に行ってみても,姿はない。どこに行ったのか?しばらくしたら声はしなくなった。死んだのだろう。でも確認していないから半矢だ。捕獲できず,また不完全燃焼だ。

 そろそろ日が陰ってきて暗くなり,寒さも今以上に増す。でも不完全燃焼。シカでも出てきてくれないものか。なんだかんだ考えながら佇んでいると,斜面の上の方から音がする。見ると,ずいぶん上,30m以上あるか,
イノシシが移動している。さっき散り散りになった子供のイノシシか?狙えるものは何でも狙う。少し移動してスコープで狙いをつけ,引き金を引く。当たったはず。すると,狙ったイノシシかもう一頭いたイノシシか知らないが,何を思ったか斜面を下って,こちらに駆け下りてくる。こちらはあっけにとられる。スコープでは狙えない。小さいイノシシだが,よく見るとこちらに向かってくると言うより一目散に下に逃げているようだ。危害がないと瞬時に分かったのでそのまま見ていると,こちらのすぐ横1.5mほど左を駆け下りて行き,瞬く間に見えなくなってしまった。呆気にとられて見守る。まあ,あんな小さな猪を撃ってもねぇ。作物のことを考えるとホントは撃った方がいいんだろうが。

 上に,撃ったイノシシがいないか様子を見に行く。かなり高いところを歩いていたみたいだ。見た限りでは血なども流れていない。少し暗くなってきているのでこれ以上は無理だ。午後4時50分になる。このまま帰ろう。尾根の反対側に下りて,作業道に下り,車に着く。

 なんだかんだとチャンスに恵まれたが,その代償として数時間の忍耐が必要であった。もう少し落ち着いて撃てば,鹿を仕留められたのだが。
 何も撃てないよりもマシだが,出来ればイノシシは出ないで欲しい。 

2012年12月16日(日)
E目の焦点

 土曜は天気があまり良くなく,日曜は好転するらしいということで,日曜にハンティングに行くことにした。衆院選投票は土曜に期日前投票で済ませて,日曜午前11時に山を登り出す。先週は天気が悪くて山に行けなかったので,2週間ぶりということになる。体力と,目の焦点が気になるところだ。

 尾根に上がるまでが一苦労だ。すぐに足が悲鳴を上げる。急斜面を踏ん張るので腹筋も使うが,それ以上に足首やふくらはぎ,アキレス腱に負担が掛かる。アキレス腱が切れてしまえばおしまいなので,立木にすがるようにして度々休みながら登り続ける。山道がある場所まで登るだけで汗だくだくの息絶え絶え。尾根に登り着くまで30分も掛かった。直線距離で100mちょっとくらいしか無いはずだが。

 尾根に登り,時間を掛けて南側斜面の様子をゆっくり探る。目が慣れず(焦点が合わず),どうも見通せない。これはまずいな。目が慣れるまでここで少し待っておこうか?ちょっと見下ろす限りは特段何もいそうにないが。風が吹き上がっている。今動けば足音はちょっとは紛れる。少しずつ歩き出す。歩き出して数分で,左下から異音がする気がした。しかし見る限りはよく分からない。少し歩く。ガサッと音がする。しかし見えない。少し先の,木々で見えないところかな?一応警戒し,動きを止め,しゃがんで聞き耳を立てる。鳥の移動する音,枯れ葉が木から落ちて,木々をかすめながら落ちる音。顔は動かさず目だけで左右をうかがう。右,上斜面。いない。左,下斜面,いない・・・ようだが,なにか白いものがある。鹿を撃った場所に近いが,あのときの鹿がここにいるような奇妙な気持ち。いや,いるはずないし・・・。目は一旦左から正面へ・・・・。無意識がもう一度左を見るよう求めたため,左へ・・・。
鹿!?白い物は鹿の尻だった。無意識でよく見ようとして,少し顔を左に動かしてしまった。1センチも動かしてないはずだが,鹿に気付かれた。鹿は逃げだしてあっという間に見えなくなってしまった。オスジカだった。こちらは呆然と見送るしかなかった。こんな近くに鹿がいたのに見えなかった。距離にして15mほどか。彼我に障害物は何もなく,絶好のポジションだった。撃てば,尾根を歩き出して数分で一頭捕獲だったのに。目の焦点が合わず,遠くを見ていた目のピントが近くになかなか絞れずに,鹿が見えなかったのだ。俺も年かな。

 しばらく佇み,気を取り直して先に行くことにする。もちろん警戒しながら多大なエネルギーを使いながら歩く。通り慣れたコース故,鹿が出そうな所は大体分かるが,その場所は慎重に進む。すると,ちょっと遠くだったが,
鹿が逃げていった。見た感じ小柄だった。木々が絡み合っていた先だから,ちょっとこちらからは見つけられないな。これは撃てなくても仕方ないが,さっきの鹿はなぁ・・・。惜しいことをした。

 鞍部に上がる。ここはそこかしこイノシシが掘り起こしている。いつイノシシが出てもいいように警戒を怠らない。でもいないようだ。尾根を北側に巻く道を辿り,鞍部に下り,また尾根に上がり,進んでは止まって耳を澄ましを繰り返し,先週イノシシを撃った鞍部の手前にたどり着く。少々違う場所からしばらく様子をうかがうが,動きはなし。仕方ないので鞍部に下り,また上がり,支尾根に行き様子をうかがうが,何もいない。しばらくいたが,あきらめて先を急ぐ。北の方角,下の斜面のそのまたずいぶんしたあたりらドーンとスラッグ弾の音。犬の音もしていたし,方向的にちょうどこの方向のずいぶん下,川あたりには軽トラックが止まっていたから,その人が撃ったんだな。先を進む。今期待ち猟をしている場所にたどり着く。おにぎりを食べながら待つ。いない。ずいぶん待つ。2時半,左下斜面からまた母ジカが子ジカを探す声がする。しかしどちらも姿は見えず。仕方ないので帰る。途中支尾根にまた立ち寄ると,沢の下の方から鹿の声。鞍部を下り,上がった場所で30分ほど待つことにする。歩いて暑かったので手袋を脱いで地面に置くと,その音で気付いたらしい,下斜面から鹿の鳴き声。そんなに遠くはない。姿は見られていないはずだから,もしかしたらこちらに上がってくるかもしれない。隠れて待つ。こちらは高い場所にいるから,下の沢から鹿が上がってくればすぐに分かるし狙いやすい。しかはしきりに泣き続けるが,移動しているのかどうか分からないが,一向に姿は見えない。30分経過したのであきらめて帰ることにする。先週鹿を撃った(逃した)場所に少し早めに行って,鹿を待とうか。そううまくいくとは思えないが,あらゆる可能性を試すべき。なるべく音がしないよう慎重に歩き,近づくが,いないようだ。あまり汚れなさそうに座り,銃を膝に置いて待つ。少しずつ暗くなる。今日は午後5時13分が日没。いろんな事が頭をよぎりながら,時間は過ぎていくが,鹿は来ない。まあそう簡単にいくはずもない。あきらめて尾根に登り,林道へ急斜面を下りる。

 2週間ぶりの猟,天候的にはグッドタイミングだったはず。しかし,目の焦点が合わずに,せっかくのチャンスをフイにした。チャンスをフイにしてばかりだ。今日は1発も撃たなかった。 

2012年12月1日(土)
D同じ失敗

 午前9時頃に起き,いつものようにダラダラとして,山を登りだしたのが12時半過ぎ。これまで良かった天気が日曜に掛けて崩れるみたいだから,今日は狙い目なのだが,起きられないものはしょうがない。今日は,少し趣向を変えて,稜線の左側の先(南)に行ってみよう。何もなければ戻ってきていつものコースを通ればいい。ここらは,藪にイノシシが通ったようなぽっかりとした穴がいくつもあり,通るときにはすごく緊張する。あれっ,支尾根の下(南)から,結構近いところから,工事の音がする。参ったなぁ。こんなに近くじゃあ,猟は出来ないなぁ。しばらく考え,ちょっと付近を探索してから,来た道を戻る。時間を食ってしまったが,結局いつものコースか。芸がないが,仕方ない。鳥のうるさい鳴き声と飛び回り木々を揺らす音に惑わされつつ,少しずつ進む。本当に,鹿の足音と似ていて困る。途中,背後の斜面を鹿が通り抜けた音がしたようだが,姿は確認できず。

 今日は寒い。風も少々強め。これから寒さが厳しくなるな。北風が強い。

 アップダウンを数回繰り返し,前回少し鹿を待ってみた支尾根に来た。ここに来るまでに,なるべく音を立てないようにエネルギーを使って上り下りしてきた。支尾根の奥を注意しながら,そっと,そっと一歩,もしくは数歩ずつ,近づく。・・・いなさそうだが。今日もあんまり期待できないかな,と思っていた矢先,左側(南)に音が。向くと,逆光の中に
鹿の頭(特に耳)が翻って逃げるシルエット。20mもない。こんな場所にいたか。仕方ないので支尾根の先へ。慎重に近づくが,いない。先週ほどではないが,しばらく待っても変化がないし,ここで時間を食ってはすぐ日が暮れてしまうので,先を急ぐ。先週鹿を撃った場所を過ぎる。もう結構太陽が低い。太陽が低いと日が黄色くなる。日も差し込みにくいし,黄色だと見えにくい。倒木に座って待ってみる。数十分待ったが無理。少し奥の支尾根に行ってみる。いない。また倒木に座って待つ。途中,右で鹿の小さな鳴き声がした。ずいぶん後で,左斜面下で母ジカが子を呼ぶ声。どちらかが下を通らないか凝視したが,何もなし。4時を過ぎる。そろそろ日が陰ってきた。今日は成果なしか。まあ仕方ない。戻ろう。鹿に逃げられた支尾根に行ってみるか。ソロリソロリと戻る最中,左に支尾根が近づいてくる。支尾根に注意しながら慎重に慎重に歩いているとき,ふと正面に変な物がいた。目の焦点を合わせると,でっかいイノシシと20m位の距離を挟んでバッタリ顔を見合わせてしまった。イノシシは顔が大きいのでこの距離なら表情までハッキリ分かる。イノシシの反応が早かった。まさに一目散にきびすを返して逃げ出す。こちらは,「なんでこんな所に」という衝撃と,イノシシの大きさに,少々反応が遅れた。急いで挙銃しイノシシを狙う。イノシシは背が低いため,この位置関係ではなかなか捕らえきれない。この距離だと逆にスコープでは狙いにくい。ようやく木々の間で狙えたところで引き金を引く。轟音で右耳が耳鳴り。次弾を装填しながら近づくが,どこに逃げたのか分からない。鞍部で低くなっており暗いのでよく見えない。付近を見ても血も見つからない。どこにイノシシがいるか分からないので慎重に付近を歩き回る。いない。あきらめざるを得ない。いやぁ,大きかった。軽く80s越えかな(※よくよく考えればせいぜい6〜70sか・・・)。しかもこんな所に・・・そういえば,ここにはヌタ場があったな。だからイノシシが来たのか。先週あたりか?ここら辺の周囲数百mの地面がそこかしこ掘り返されていたが,あのイノシシがここを根城にし出したからか。南側斜面の工事で,この稜線に上がってきたのか?まあ,それはそれとして,こちらの目論見は全く狂った。今支尾根に行っても,発砲音を聞いているだろうから,鹿がいたとしても逃げているだろう。支尾根には下らず,帰り道を急ぐ。帰る途中,下の方から鹿が鳴く。

 最後のチャンスだ。林道へ降りる斜面の手前,いつも猟帰りの4時頃に鹿がいる場所。今日もいるかもしれない。薄暗くなった道を手前ではある程度早く歩き,目当ての場所に近づくにつれて歩みを落とす。ソロリソロリと数歩進んでは止まり耳を澄ます。これを繰り返すうち,正面からガサガサッと鹿が降り下る音。しまった,気付かれたか?仕方ない,また少しずつ歩を進める。そのうち,正面下斜面からかすかな音がする。ここら辺は落ち葉が多くてバリバリ音がしてちっとも静かに歩けないが,可能な限り音を立てないように慎重に歩き,下斜面を覗き込む。小さな沢になっており,木々の向こうになにか塊が動いている。イノシシか?いや,鹿じゃないか?距離的には3〜40m。近くはない。スコープで覗くが,なかなか捕らえられない。2頭の
鹿だ。地面の芽を探している?もっと前進してちゃんと見えるところに行きたいが,歩くと音がする。そうこうするうちに鹿は狙えない場所に移動するかもしれない。現に少しずつ移動している。移動したいのに出来ない,このジレンマ。スコープでは,木の間に首が見えている。もうここしかない,今しかない,狙える,やれる。意を決し,引き金を引く。鹿が逃げる。一頭が右側の支尾根を回って見えなくなったみたいだ。もう一頭は?当たったはずだから,鹿が横たわっていないか,前進し下斜面を回り込んでみる。いない。もう1頭の鹿が逃げていく。当たってない?認めざるを得ない。あれだけスコープに捉えて当たらなかったということは,スコープの射角と銃口の角度が一致していないことが原因と言わざるを得ない。つまり,スコープ上は一直線に狙えたが,その数p下の銃口ではそうではなく,発射された弾は手前の木に当たってしまったということになる。横倒しの木や枝が獲物の下にある場合はこのスコープと銃口の誤差を考慮して慎重に狙わなければならなかった。もっとちゃんと射角を取らなければならなかった。初歩的ミス。グッドチャンスを自ら潰してしまった。

 どっと疲れた。イノシシも外し,鹿も外す。このうち鹿はこちらに気付いていなかったはず。前にもこういうことはあった。同じ失敗をまた繰り返してしまった。でも仕方ない。猟も銃もほとんどは教えられるのではなく自分で経験から学んでいった。これからも一杯失敗を重ねながら学んでいくしかない。

2012年11月25日(日)
C30p

 午前8時半頃に起きたが,朝食やらテレビを見ながらボーッとするやらで,どんどん時間が過ぎていく。結局猟に出発したのは11時半過ぎ。目的地点へ車で移動中,猟の車(軽トラ)を何台も見る。荷台には檻があり,犬が鼻先だけ出していた。山を登りだしたのは12時20分頃。斜面を登り,稜線に出た。いつもは稜線の南側を巻く道を通るが,今日は稜線を歩くことにした。これまで歩いたことのない場所を歩くのは緊張する。シダが茂っていて静かに歩くのは無理。そうでなくても落ち葉が乾燥してバリバリ音を立てるのに。やはり稜線には鹿の寝床がいくつもある。鹿が体を横たえていた場所はすぐに分かる。

 稜線は少し登りになって,上の方はもっと木々が茂って歩きにくい。どんどん歩いて,やがて下りになり,いつも通っている鞍部に下り出た。あぁ,結構疲れたな。いつもの道を行く。あんまり鹿の気配がないなぁと思いながら,次の鞍部に下り,少しずつ登っていると,子ジカの警戒鳴き。稜線上の小高い部分の反対側から。これはいくら何でも無理だ。鹿が鳴くと遠くで返答の鳴き声。鹿の鳴き声はどんどん遠くになっていく。先を行く。次の鞍部に着く。この先,登った所の右側の支尾根が,前回鹿に逃げられた場所なので,慎重に下る。とはいえ,どうしても枯れ葉や石,木などで音がする。もちろん,登るときも音がする。これでいつも逃げられているのかなぁ。支尾根に到着する。様子をうかがいつつ支尾根を下るが,気配はない。午後2時少し前。しばらくここで待つか。少々風が寒い。ジャケットを着たいが,銃を下ろしてザックを下ろしてベストを脱いでジャケットを着て・・・・などと余計な音を立てたくない。どこに鹿がいるかも分からない。なので我慢してそのまま立って待ち続ける。状況的には鹿がいてもおかしくない。鹿が来てもおかしくない。でも,来ない。葉が風で落ちる音がそこかしこからする。これが足音に聞こえて,緊張を解くことが出来ない。30分くらい待ったが,少し考え直して,元の道に戻り,先を急ぐことにする。終点(と考えている場所)まで行って,そこそこやってから,またここに戻ることにしよう。

 先を行く。慎重に。稜線の右側を巻く道。道の右下は50mかそこらが急斜面になってその先が少しだけ平ら(それでも斜面だが)になって,先がまた落ち込んだ急斜面。この場所は日当たりからいっても鹿がいてもおかしくない場所だが,いままでここで鹿を見たことはない(下の方から声はしたことがある)。下の斜面を見ながらソロソロと歩いていると,急斜面の先,少しなだらかになっている部分に,黒い,細長いものが見える。イノシシか?イノシシでも撃とう,と思って銃を構えてスコープで覗く。いや,長い首と白っぽい角がある。
雄ジカだ。木々で見えにくい。左へ移動しているため,こちらもソロソロと足音を立てないように1,2歩移動する。なかなか狙いにくい。しばらく待つと,木々が切れている場所に,射界が取れる場所に鹿が来た。安全装置を外したことを確認し,体と銃を一体化し,鹿の首の付け根付近に狙いをつけて引き金を引く。命中。致命傷になったのはスコープ内でも容易に分かる。ボルトを操作して次弾を装填。鹿はまだ暴れている。下に逃げられたら取りに行けないので,いそいで息の根を止めるべく,2発目。命中。それでも暴れている。銃は2発しか込められないので,もう1発装填しようと,ボルトを操作して,弾をポケットから取り出して・・・2発目の薬莢は?地面を探すが見つからない。おかしいな。でも仕方ないので弾を装填してボルトを前進・・・あれ?入っていかない。ボルトを引いて中を見る。あっ!2発目の薬莢が銃身の奥に挟まってる。初めての出来事。ライフルではそういう話を聞いたことがあるが,散弾銃でもなるのか。焦る。付近に落ちている木の枝で銃口から突っ込んでみる。届かない。くそ。なるべく長い枝を見つけて,ナイフで削り,突っ込んでみる。それでも届かない。銃をがんがん叩いても外れない。鹿は動きを止めている。どうしようか。仕方ないので斜面を降りて鹿の所へ。小さいか?と思ったが,意外と大きい。お腹が丸々と大きく,足が長い。頭は小さめ。角はちょうど30pの8ポイント。近くで仲間であろう,鹿が鳴き続け,足音がする。撃った距離は50m以上か。射撃時刻は午後3時11分頃。


 降りるのはともかく,登るのは大変。必死で登り,心臓が痛くなった。
 帰りは疲れで足がもつれて木の枝などに引っかかりまくる。いつもの場所にはまた鹿がいて逃げていった。稜線から林道(作業道)へ下る斜面まで来たとき,下の道から車の音が。軽バンが道の奥から走ってきている。奥にハンターがいたのか?斜面を降りて車に帰り着いたときにはいつものように汗だく。

 雄ジカを撃った。よくよく考えれば,この角の形,大きさは,今期の初日に撃つことも出来ずに逃した雄ジカだったんじゃないかと思える。

2012年11月18日(日)
Bまちぼうけ

 これまで幸運に恵まれて,毎回鹿を撃っているため,どうも気が乗らない。日曜は天気も良く,絶好のハンティング日和なのだが,心が弛んでいるのか,どうもおっくうで,ようよう出て,山を登りだしたのは昼過ぎになってしまった。こんな日はあんまり成果も期待できない。

 いつも通りのコースを用心しながら少しずつ進んだが,時間帯が悪いのか,鹿がいない。鳥だけが相変わらずやかましく鳴いてあちらこちらを飛び回っている。日差しがあるところは暖かいが,木々の下は寒々しい。途中,斜面下の方からハンターの呼び声,犬の鳴き声,と散発的な発砲音がする。結構近い。どこでやってんだ?誤射でもされたたまったもんじゃない。

 2時を優に過ぎたところで,おにぎりを食べるが,風が冷たく,おにぎりも冷たく,味気ない。1回目に待ち猟をした場所には3時前に着く。ノープラン故,ここで本格的に待ってみようか。ジャケットを着込み倒木に座って,下の斜面,横,後ろを,くまなく目と耳で警戒する。吹き上げてくる風が冷たい。座っていると体が冷えて,ちょっと我慢がならない。がたがたと震えてくる。たまらずフェイスマスクをする。鳥だけが元気だ。鹿の声が聞こえないわけではないが,かなり下の方,仲間かなにかを呼ぶような声。近づく気配はない。何時だ?まだ15分しか経ってない?こりゃ大変だ。気持ちを空っぽにして,自然と一体になる。寒さは極力気にしないように・・・・。30分が過ぎ,1時間が過ぎる。午後4時。今のところ日差しはあるが,ずいぶん日が傾くのが早くなった。日差しが黄金色。山の中で動かずにじっと動物を待つ,とある童謡が頭の中で流れる。午後4時半を過ぎる。こりゃ駄目だ。帰ろう。もう日も傾いてきた。トボトボ帰る。
  
 途中,気になるところがあるが,そこから鹿の鳴き声。やけに鳴くので,ちょっと様子を見に行く。そこは支尾根を下るが,支尾根の左斜面から声がするため,尾根沿いに下って左側を見ていたところ,ふと右先30mほどに
鹿が2頭立っていてこちらを見るなり鳴きながら逃げていく。おぅ,往きにここの様子を見たときにはいなかったのに。右下斜面を下りながら逃げていった。追うのは無理。鹿の鳴き声はずっとしている。やっぱり気になって,支尾根が急に下っているところまで見に行った(あとで登るのが大変だが)。すると,正面下に鹿がおり,急いで右に跳ねて逃げて行ってしまった。左下の鹿の声はずっとしているが,姿は見えない。あきらめてもと来たコースにフウフウ言いながら戻る。低い鞍部を下ろう,としたそのとき,反対側斜面(30〜40m)に動きが。2頭の鹿がこちらに気付いて逃げていく。慌てて銃を構え,スコープで覗くが見えなくなったため一旦スコープから目を離すと,もう1頭いた。ちょっと大きめ。最後のチャンスだ,スコープに捉えた。逃げているがかろうじて狙える。引き金を引く。轟音が耳に痛い。鹿は倒れることなく視界から消えた。動く物を狙うのは難しい。ましてや速度の遅いスラッグ弾。ライフルが欲しい。鹿もどんどん警戒しだして,薄暗くなってからしか出歩かなくなった。これからはもっと遅くなって,日没後にしか出歩かなくなるだろう。そうしたら全く撃てるチャンスがなくなる。

 薄暗い中を黙々と歩く。ライトが欲しいくらいだ。暗い山の中は本当に心細い。先週鹿を仕留めた場所に近づく。ここらは日没近くには大体鹿がいるみたいだが,先週撃ってるからなぁ。踏み分け道の分岐で立ち止まる。暗くて視界はほぼ利かない。ちょっと足を踏み出した途端,斜面下からガサガサッと慌ただしく鹿が逃げていく音。あーあ,また逃がしてしまった。鹿が警戒鳴き。もうだめだ。暗くて見えない。帰る。

 今回は成果なし。鹿が警戒しだしているということもあるが,やはり気合い負け。根性負け。得ようとするからには相手を上回る集中力,忍耐力,エネルギーが必要。勝負は一瞬で決まるが,それまでの長い長いせめぎ合いで気を抜いては絶対に勝てない。気候などのコンディション的には良かったが,心がついていかない。時たまフラついたりして,気合いが入っていなかった。
 

2012年11月10日(土)
A雨

 週末の天気は良くないとのことで,あんまり乗り気ではなかったが,朝起きると,雨は降っておらず,時折晴れ間も覗いたため,行ってみようと腰を上げ,前回と同じ場所へ行く。午前11時25分,山を登り始めた。前回よりは体が慣れたようで,稜線まで出る斜面の登りはそこまできつくなかった(もちろん汗だくになったが)。

 稜線に登り南側の斜面をおそるおそる覗く。暗い。雨は降らずとも日が差さないと本当に暗い。見通せない。少し調子が悪いのか,目のピントも合いづらい。途中でGPSを忘れてきたことに気付く。今日は歩き慣れたコースから離れないようにしないと大変なことになる。少しずつ歩き始める。曇っているせいか,地面の落ち葉,枯れ枝などを踏む音も小さい気がする。最初の数十分は慎重に進む。鳥が五月蠅い。相変わらずだ。鳥が地面を跳ねたりする音が鹿などの足音にそっくりなので,音がする度に心臓がバクバクする。鳥の音だと思うが,どうもそれ以外の鹿の足音のような物も聞こえる気がする。しかし,腰を屈めてしばらく耳を澄ませ様子をうかがっても,うーん,鳥かなぁ?また間違えたかなぁ?ずいぶん様子をうかがったが,まだ歩き始めて間もない。しびれを切らして慎重に歩き出すと,数十メートル先で
鹿が鳴きながら体を翻して逃げた。あー,くそー。もう仕方ない。歩いて近づく。斜面の上へ逃げていく。斜面下にもガサゴソ。二頭か。歩いて行くと,右上斜面を鹿が逃げていって止まる。尻の白い毛が見える。スコープで覗くと,40m程の距離に小さめの鹿。さっきの鹿だろう。こちらが見えないのか,警戒を少し解いている。狙える。引き金を引く。鹿は逃げ出す。当たったかなぁ?外れたかも。ちょっと狙いづらかったか。先を進もう。

 先週オス鹿に逃げられた場所を過ぎ,鞍部に差し掛かる手前,タタッタタッと白い尻を見せながら(大きい)
鹿が逃げる。メス鹿だ。こちらが見えず音だけで警戒したのか,少し走って様子を見ている。こちらの方からも鹿が見えにくい。見えにくいからといってあんまり露骨に動くと途端に逃げられる。倒木の隙間,30センチ四方程度の隙間からスコープで覗く。鹿がこちらをうかがっている。30mほどか。この機会しかない。首あたりを目掛けて引き金を引く。頬付けが甘かったか,撃った瞬間銃が暴れて反動で後ろに少し飛ばされた。鹿はいない。倒れてないかと急いで向かうが,いない。血も流れていない。姿は見えないが先の方で鹿が鳴いている。外れたんだろうなぁ。がっかりだ。もっと落ち着かないと。先を進む。

 もう一つの鞍部を降り,登る。稜線に再び上がった先の支尾根(の先)は,これまでも要注意ポイント。でも,稜線に登ったとたん,20mも無い距離から
鹿とバッタリ。鹿は急いで逃げ出す。こちらは不意を突かれて何も出来ず。というか鹿が見えなかった。目のピントが合わなかった。暗いのもあるが,どうも調子が悪い。鹿は盛大に鳴くが,こちらはどうも出来ず。

 しばらく進んだ場所でおにぎりを食べる。斜面下の彼方から盛んに鹿が鳴いている。何十分も。食べ終わり,先を進む。先週待ち猟をした場所で,ほぼ同じ時間,午後2時30分頃から倒木に座り,待ち猟開始。暗くてよく見えない。少々寒い。こりゃ駄目かな?途中,雨が降り出す。いよいよもって駄目か。何十分もの退屈な時間が過ぎるが,駄目。ちょっと気分転換に,少し奥の沢を覗くと,盛大に鹿が鳴く。おっと,いるじゃないか。でも姿は見えず。もう鹿も警戒す時期か。これからの猟は簡単にはいかなくなる。また待ち猟に戻るが,どうも成果がないようだ。雨も降り出し,いよいよ空も暗くなり,好転する見込みはなさそう。捕獲はしていないがもう2発撃った。銃も装備も体も濡れる一方。帰ろう。

 トボトボと帰り始める。途中,鹿がいないか要所要所で見ながら歩くが,いない。そもそも暗くてよく見えない。もうあとちょっとというところで,もう既に暗くて周りがよく見えない状態だが,右下に動き。
鹿が走った。少し先で止まっている(ように見える)。25m位?スコープで覗く。鹿だ。木々があるが,胴体部分,それもギリギリ致命傷になる部分が木からはみ出している。いける。引き金を引く。命中。それでも鹿は動きを止めない。よく見えない。急いで斜面を下る。かなり斜面の下から鹿の鳴き声。もうあそこまで行ったのか?急いで向かう。鳴き声は盛大にするが,姿を見ることは無理のようだ。おかしいなぁ,あんなに確実に当たって一旦倒れたのに・・・・。暗い。ライトを取り出し,周囲を見回す。血の跡でもないか・・・。ない・・・。おかしいなぁ。ふと思い当たり,自分がいる斜面の上をライトで照らす。いた。死んでた。鹿を通り過ぎて下っていた。鹿を見ると,子ジカだと思っていたが,そこまで小さくなかった。オスジカだ。念仏を唱え,山の神様,猟の師匠(故人)への感謝と報告をした。撃った時刻は午後4時7分頃。

 車に帰り着いたのは午後4時半頃。外は雨に濡れ,中は汗でびしょ濡れだった。急いで帰ってシャワーを浴びる。
 調子が悪い中ではあったが,3発撃って,2頭逃がし,1頭捕獲。雨はやはり嫌だな。

2012年11月3日(土)
@交差点

 平成24年度の猟期は11月1日から。今日が今期の猟初め。どこに行こうかは余り深く考えていなかった。とりあえず,前期に鹿とイノシシを撃った場所に行こうと決めた。前日は興奮のせいかなかなか寝付けず,朝早くは起きれなかった。
 
 午前10時45分頃に登り始める。四方の山の神に合掌し,先日亡くなった猟の師匠にもお祈りをして,猟開始。登り始める直前,下の方で銃声。そう遠くもない。ふーん。最初の稜線に取り付くまでに急斜面を登る。登り始めて数分で心臓がバクバクする。この数十メートルが何と遠い事よ。稜線に出た頃には汗だくで息も絶え絶え。体力が落ちているのか。稜線にかがみ込み,しばらく様子をうかがう。まだ葉が青く茂っており,見通しが利かない。これは結構やっかいだ。用心しながら歩き出す。鹿が歩いた後はハッキリ残っている。蜘蛛の巣が行く手を阻む。蜘蛛の巣があるということは他のハンターは少なくとも今日は来ていない証拠。思いのほか木々に目は慣れている。いつもは林の中の遠近感に目が慣れるまで数時間かかるのだが,今回はすぐに違和感が無くなっている。歩くとバリバリ音が立つのは仕方ない。それでも可能な限り音がしないようにソロソロと歩く。

 稜線の南側の道から北側の道に出るため鞍部に上がった。右を見る。いない。この先(北側)で鹿を見たことはあるが,あまり期待が出来る場所でもない。歩き出して1時間経過して,その間にかなりエネルギーを使ったせいか,少し疲労が来て,集中力を欠いていたみたいだ。鞍部を北に少しずつ歩きながら,ぼやっと正面を見る。
鹿が尻を見せてコソコソと歩いて遠ざかっている。40〜50メートルか。角(20〜30p)と尻が白く浮かび上がっている。オスジカだ。全く予期しない鹿の出現に反応が遅れた。急いで銃を挙げスコープで捉える。撃てるが,急所は無理だ。そうこうするうちに遠ざかる。クソッ。見える位置に少し進むが,それでも,音を立てないように静かにしなければならないので,鹿が見える位置には付けない。遠ざかる鹿は見えない。もう少し進んだところで鹿に見つかり,ピヨーッと鳴かれた。こうなったら仕方ない。バリバリと普通に進む。数十メートル西に進むと,今度は右後ろからも鹿に鳴かれる。少し遠い。ありゃ,あっちにも居たか。どうも集中力がないな。あのオスジカは下に逃げていったな。無理だな。稜線を進み,低い鞍部に来た。すると,左側からいきなりガサッと音がして,左先に子鹿が逃げていく。20メートルもない距離。いかん,本当に感覚が落ちている。初日だから仕方ないが・・・。鞍部を登り,倒木を避けたり潜ったりして少しずつ進む。鳥のさえずりがそこかしこで,五月蠅いこと。右の斜面をヤマドリがサーッと早足で逃げていく。

 もう一つ低い鞍部を下って登って,稜線を進む。鳥だけが活き活きとしている。稜線の上下を警戒しつつ,前期に鹿や猪を撃った場所に着く。思ったよりも風は強くなく,寒くない。奥で鹿が鳴いている。さっきの子鹿かな。無視して,しばし佇む。午後1時を回ったので,おにぎりを立ったまま食べる。座って一息入れながら食べるなんて気にならない。カラスがおにぎりを見つけて頭上で何羽も旋回している。途中蜂もちょっかいを出してくる。ようやく食べ終わる。さてどうしようか。この付近は絶対に鹿を見つけられる。大体,3時頃が狙い目だと思うが・・・,来た道を一旦戻って,また来よう。少し戻りつつ鹿がいないか探る。いない。あんまり戻ると疲れるので,程々にして,再度さっきの場所に戻る。道中鹿は見つからない。倒木に座って,下の斜面がある程度見渡せる場所で佇む。ここら辺に鹿が来るのは間違いないから,思い切って,待ち猟をしてみようか。鹿が来なければ待ちぼうけだが,まだ時間はある。しかもいつもは寒いこの場所なのに今日は風もたいして無いし,日差しもまずまず。そんなに苦にはならないだろう。ダメ元でやってみよう。午後2時半頃から倒木に座り,時折右左を確認しつつ,待ちに入る。うららかといっても良いほどの季候(珍しい)。しばしば意識が混濁する。

 どれくらい経ったか,見ている北側斜面下ではなく,左後ろ,稜線南側からガサガサと音がし出した。鳥か?いや,この音は鳥ではない。さっきの子鹿が来るか?銃を挙げいつでもスコープを覗けるように構えて待つ。音は左後ろから左の林の中を移動する。鹿とは違うガサガサとした音。低くて黒い,胴の長い物体が左から左前へ移動する。
イノシシだ。距離は30mほど。何て黒いのか。結構でかい。イノシシなんて撃っても面白くないが,このまま逃がすわけにはいかない(イノシシの農作物被害は甚大)。木々の間を早足で動くイノシシが一瞬止まった。引き金を引く。命中。しかし倒れない。ボルトを操作し次弾を送り込むが,排出した薬莢が斜面を転がっていく。イノシシは逃げていってしまい見えない。仕方なく薬莢を拾いに行きポケットにいれて,イノシシが逃げた方向に行ってみる。銃声に驚いたらしい子鹿がまた鳴き出す。支尾根の先に行ってみるが,ちょっと無理だな。急所より少し後ろだったか?倒れなかったな。さて,どうしようか。ここで撃ってしまった以上,ここに鹿達が来ることは考えにくい。ただ,妙なもので,撃ったすぐ近くに鹿がいることも多い。まあ,他を色々歩いても疲れるだけだ。今日は初日だし,もう少しここで待ってみよう。しばらくすれば他の鹿かなんかが来るかもしれない。また同じ場所にに戻り,木に跨がって待ちに入る。

 なんと良い季候だ。こんな季候はこれからもう無いだろう。ウツラウツラではないが,それに近いくらいまどろんでしまう。どれくらい経ったか,右下斜面からピヨーウーッと鳴き声。何が始まる?と思っているとしばらくして今度は左の子鹿がいるらしき場所からピヨーッと。その後,しばらくすると左下斜面を
子鹿(距離は70m以上)が早足で歩き,木に隠れて見えないが,他の鹿と合流したような感じ。あの鳴き声は母鹿が子鹿を呼んだのか。母鹿を撃とうか,撃たないまでも親子ジカの姿を見ようと,少し歩いてみたが,ガサガサ音がしただけで,姿は見えない。また元の倒木に戻る。

 動かずに待っていると,どうも意識レベルが低下する。殺気が出ずに好都合なのだろうが,なんか眠たくて,横になりたいくらい。・・・・またまたどれくらい時間が経ったろうか。ふと正面の斜面下,結構な近く(約40m)に,なにやら灰色が。鹿の背にしか見えないが・・・。少し左に移動し,スコープでもっとよく見る。
オスジカが角を研いでいる。角は小さい。こちらに顔を向けて止まる。こちらも動かない。鹿はまた角を研ぎ始める。気付かれていない。なかなか急所を狙えないが,胴体に狙いを付け,引き金を引く。鹿は弾かれたように右に逃げ,数十メートル逃げ,木々の間に足を折って座った。弱っている。撃った鹿の左の方から鹿の鳴き声。まだ他にいたか。座ったままの鹿をもっとよく狙える場所を探したが無かったので,狙える位置から撃つ。鹿はまた弾かれて逃げる。うーん。何で倒れないかなぁ。右の方に逃げたのでこちらも移動したが,負傷した鹿の鳴き声はするが,姿は見えない。また駄目か。どうしようか。まだ午後4時回ったくらい。日の入りまで1時間は優にある。でも今日は3発も撃ったから,もういいや。帰ろう。

 帰り道,鹿が逃げていく音や,逃げていく姿や,通り道のすぐ前にいた鹿が驚いて逃げていく音などに会う。でももういいや。帰るとなると普通に歩いているだけなのに疲労がどっと来る。車に帰り着き,林道を戻る。林道を車で戻る最中,道に若い
兄弟鹿が出ていた。尻は拡がっていないので怖がってはいない。しばらく道を走って逃げて斜面を降りていった。

 今期最初の猟,最初はどうなることかと思ったが思いの他の幸運に恵まれた。季候も良かった。風はあまりなく,冷たくもなく,日差しも程よい。惜しむらくは,獲物が倒れなかった事くらいか。今回待ち猟をしていた場所,ここはイノシシの通り道だ。鹿も3時頃に来る。交差点のようだ。だから落ち着かない気がしたのか?

2012年3月11日(日)
I夕日が落ちる

 今日で今期の猟は最後となる。猟期は3月15日までだが,仕事ある身分故,平日は猟に行けない。よって今日が最後。猟期の最初と終わりは鹿を獲りやすいのだが,前日は獲れなかったしなぁ。まあ,欲はかかないようにするが,悔いの無いようにしないと。

 前日より少し早く山を登り出す。急斜面を登り,尾根の鞍部に出て様子を窺い,尾根を南側に巻く道を少しずつ進む。すると,道を歩き出して10分も経たないくらいに,前方から
鹿が逃げ出す音。もういるのかよ。気付かれた以上仕方ない,スタスタと歩いて近づき,斜面下の様子を窺う。鹿はガサガサいっているが姿は見えない。ピヨッと探るように鳴いたきり,下ったのか,気配がなくなる。しばらく右往左往したが,甲斐がないので,先を進もう。まだ始まったばかりだ。

 前日鹿三頭を見た場所の杉に,新しい角研ぎ跡が残っている。鞍部に上がり,尾根の反対側の道を慎重に進む。風が強いな。季節が変わったか。用心しながら少しずつ進む。鞍部に下り,左右の沢を覗き,ピークに挙がり,道下道上の斜面を見ながら,歩いては止まり,歩いては止まりしながら進む。また鞍部に下る。ここで,一つ計画を実行に移す。鞍部から南にできた谷(沢)を下りていく。沢を下りるのは危険だが,高低的には比較的平坦な川沿いを歩ける部分があるはず。少しずつ下る。杉林が主だが,雑木もそこかしこにある。平坦といえば平坦だ。次第に川になる。天気もいい。日差しもある。気持ちいいところという印象もある。でも,下ればその分登らないと元の場所に戻れない。下る分だけ後の面倒が増える。ずいぶん下ったか,前方左斜面から
鹿が逃げる音。場所的には,最初に鹿が逃げ出したところの下だろうから,逃げられた鹿に再度出合ってまた逃げられたことになる。姿は見てないが。

 その後,ドンドン下ったが,これではキリがない。そのうち集落まで下ってしまう。そうしたらもう戻れない。歩いてきた川がもう一つの川と合流する地点で,上がることにした。今度はそのもう一方の川を登る。正確には川沿いの支尾根をジグザグに少しずつ登っていく。やはり登りは大変だ。結構登ったつもりだがまだまだ半分以上ある。休憩しておにぎりを食べる。寒いのでジャケットを着る。獣道はどこにでもある。余り休憩しても体が冷えるだけだから,食べ終わって早々にまた登り出す。少し銃とザックを下ろして座っていたからずいぶん回復した。支尾根をドンドン登る。汗をかく。始めに歩き出した鞍部の東に出て,出発地点に戻る。地図上では左回りに大きな円を描いて歩いたことになる。あー,疲れた。でも成果はなかったなあ。どうしようか。まだ時間はある。午後3時頃だったか?少し考えたが,ここで帰るはずもなく,もう一度行くことにした。

 また尾根の南側の道を東から西へ歩き出す。少しずつ,目と耳で探りながら。鞍部を登り尾根の北側の道を西へ歩き,いくつか鞍部とピークを下って登る。沢を下った場所に来た。今度はまっすぐ目の前のピークを登る。そこは右(北側)に支尾根が延びている。支尾根自体はずっと下の川まで続いているが,少ししか傾斜が緩やかなところはない。せいぜい100メートルくらいか。風は強いし,ここには鹿の寝ていた後はあるが鹿はまだ見たことがないから,少し考えたが,最後なので一応再確認することにした。支尾根の右側を特に注意しながら,もちろん正面も見ながら少しずつ進む。そのなだらかな支尾根も,起伏があり,少々窪んだ部分を過ぎてまた少し上がろうという場所,歩き出して数十メートルの所で,前方に動き。少々木々で暗いが,影。左から右へ移動。40メートルほど。2頭。
鹿。屈みながらスコープで狙う。先頭の鹿を。オスだ。角の長さ20p以上。突然魔法のように現れた鹿2頭に驚く間もなく,必倒の願いを込めて,先頭のオスの首あたりを狙って引き金を引く。轟音も風で弱められている。鹿は倒れず,左にきびすを返して逃げ出した。すぐに走って追う。しかし,先は急斜面で追うことはできない。鹿がいた場所を確認するが,血は出ていない。当たっていても血は出ないことが多いので当たっていないとは思わないが,倒れてくれないと捕獲はできない。あきらめきれずに右往左往したが,ダメなものはダメ。あきらめて道に戻る。この喪失感,最後の猟で絶好のチャンスだったのに,倒れなかった。なぜだ。

 もう今年は無理か。でもまだ奥に行ける。一応行こう。ここは北側だから風が強い。でも見た感じは鹿がいそうな斜面だから,西に向かう道の右側(北)を注意しながら,少しずつ進む。鹿がいそうでいない。北に小さな支尾根がある場所に来た。支尾根を目前にして尾根の北側斜面を色々と覗き見るが,うーん,いない。この支尾根に行ってみるか。ここは1月だったかに鹿と猪を連続して獲った場所。その頃は葉もかなり落ちていたが,いまは緑で日差しも余り入っていない。前日も行ったが鹿には出合わなかったから,あまり期待はできない。ここもかなり北風が強い。トボトボと歩き出し,右にある大きな木を過ぎて北の斜面を何の気なしに見ると,すぐ目の前10数メートルに
オス鹿が立っており,地面を木の実でも探している風であった。その角のものすごい長さといったら。角の先はばっちり研いであり白い。角の長さは50pを優に超えているはず。反射的に木の後ろに体を後退させしゃがむ。鹿は頭を上げる。今度はさっきのような失敗をせず,急所を確実に狙おう。スコープで狙いながら木の後ろから少し出る。鹿は顔を上げたままで,歩き出したか?スコープで狙うには近すぎる距離。スコープの十字は鹿の前足付け根に重ねている。忍び猟での鹿撃ちは,長い忍耐の末の一瞬の邂逅。この瞬間さえあればすべてが報われる。今度こそ,と思いつつ,引き金を引く。轟音。鹿は後ろ足で立ち,右前足を何度か痙攣させた末,やはり倒れず,支尾根の先を斜めに逃げ出した。当たった場所が上半身なので,上半身を地面にこすりつけるような,不格好な格好で走り出す。こちらはボルトを操作して薬莢を排夾させて次弾を薬室に送り込もうとしたのだが・・・,また薬莢が詰まる。薬室に空薬莢が引っかかって抜き差しできない。そのうちに鹿は見えなくなってしまった。強引にボルトを引いて薬莢を出し,次弾を装填して支尾根の先へ。途中の地面に血はない。支尾根の先まで行っても鹿はいない。またか。落胆。鹿がいた場所に戻るが,血はない。でも当たったのは間違いない。もう少し右だったか。そうすれば心臓に・・・。でかい鹿だったこともあり,本当に急所でなければ倒れない。いや,急所に当ててもその場には倒れなかったろうな。尾根に戻り鞍部に下り,ピークに登るなどして,撃った鹿がそちらに逃げていないか探したが,いない。仕方ないので,鹿を撃った支尾根の左側の沢を下ってみることにした。急だからどこまで行けるか分からんが。支尾根を右に見ながら下る。ちょうど支尾根が急斜面になって落ち込む所から沢も急になっている。これ以上行くのは危険だ。くそー。猟期の最後の最後であんな幸運に恵まれたのに,2度も幸運に恵まれたのに,どちらも活かせなかった。あの角を。あきらめきれずにしばらく沢にいたが,下の方でドーンという音がした。銃声?俺が逃がした鹿が下に行き,下にいたハンターに撃たれた?いやぁ,この下にハンターがいるはずがない。下から登れるはずはない。俺に撃たれた鹿が急斜面を逃げている最中に落ちたと考えるのが自然だ。ここは風が無く,沢だから下の音が上に抜けやすい。いやー,惜しいことをした。でも無理なものは仕方ない。下った分苦労してまた登り,尾根に戻る。

 尾根には戻ったものの,今さっきの,魔法のようにオス鹿が現れて撃ち,鹿が逃げ出して見えなくなったという一瞬の出来事がリフレインする。同時に,撃った鹿を見つけられなかったという悔しさ,特にあの特大の角を持つ鹿を逃した悔しさが残っていて,なんとも収まりが付かない。こんな形で猟が終わるのか。いや,鹿も撃たずに終わるより,鹿を見ることもできずに終わるよりは全然マシなのだが,それでもなぁ。人は贅沢になる。撃つだけでは満足できない。無駄だと分かっていても,撃った鹿でも違う鹿でもいいからいないかそこかしこを覗く。何と無駄なあがきか。尾根の北側がかなり下まで斜面の角度が一定で木々もそこまで多くないので見通しやすい。なので北側斜面をいろいろと見る。風が吹き上がる。一番見通しやすいところを一応注意してみる。かなり遠い。100メートルは軽く超えているようだから,150メートルくらいか?遠いので,肉眼ではよく分からない。スコープで覗く。それでも3倍では何が何だか分からないが,なんだか鹿にも見えるような見えないような。しゃがんだり少し頭を上げたりして,しばらく凝視する。スコープを6倍にするが,余りよく見えない。安いスコープだからな。しかも空気銃用だし。また3倍に戻して覗く。しばらく覗くと,なんだか動いた?
鹿?二頭?一頭は突っ立っていて,もう一頭は頭を地面に下げて木の実かなんか探してる?もう破れかぶれだ。外れる可能性大の距離だし,当たって倒れても回収には行きたくない場所。でもオス鹿を獲れなかった悔しさから,何もせずにはいられない。撃とう。これが本当に今期最後だろう。でもまずは,本当に鹿であることの確信を得てから。あり得ない話だが人間だったら絶対にダメ。じっと確認し,鹿であることに確信を得て,体を凝固させ,スコープの十字の揺れが最小になるのを待ち,引き金を引く。風があるので銃声は気にならない。鹿はぴょんと跳びはねて白い尻を見せて下に逃げ出した。引き金を引いてから鹿が飛び跳ねるまで若干のタイムラグ。秒速350メートルだから,150メートルの獲物までは0.4秒程ズレる計算になるから,タイムラグも当然か。当たったかどうかは分からん。でも,これが本当に最後だ。もう帰ろう。

 来た道をトボトボと帰る。鹿がいても撃てるように最小限の注意はしつつ。途中,道下斜面から何か音がした感覚的にはイノシシのような気がする。少し警戒するが,それ以上の様子が分からないので帰る。もうこれで今期の猟は終わりか。名残惜しい。次は今年の11月,8ヶ月後だ。まあ,あっという間に時期が来るのだが。その間射撃でもしようか。なんだか射撃の腕が落ちた気がする。基礎的なことがおろそかになっているというか。スコープも照準が合っているか怪しい気がする。いろんな事が頭に浮かびながら,出発点の鞍部に到着し,北側の斜面に下り,林道に出て,車に戻る。銃を下ろし,ザックを下ろして一息つく。電話が通じる場所まで移動し,家族に電話をして,お茶を飲みながらしばらく佇む。もうかなり日没に近い。ここからは日が傾くのは早い。車で山を下りる間にどんどん日が暮れる。その黄昏の中を下りながら,いろいろなことを考える。成功したこと,失敗したこと,満足したこと,悔やまれること,これからのこと等々。なにはともあれ今日で終了(15日までが猟期だが)。また来期に。

2012年3月10日(土)
Hたそがれ
 しばらく膝の療養のために猟は休んでいた。天気も悪かったので猟に出ていても成果は期待できなかったろう。そうこうするうちに3月15日で猟期が終わる。土日しか猟には行けない。なので,最後の土日とも猟に行くことにした。花粉が凄そうだ。

 最後なのでむやみに場所を拡げず,同じ所に行くことにした。車を止め山に登り出す。午前11時30分頃。最初の急な登りを必死で登り切る。尾根の鞍部に座り,様子を窺う。なにもない。尾根を南に巻く道を先に進む。進んでは止まり周囲に目を配り耳を澄ます。鹿などの動きはない。鳥が五月蠅い。今のところ日は差しているが,雲があるのが気になる。

 20分程か,数百メートル進み,尾根を巻く道から鞍部に登るところに差し掛かる手前,道下斜面の木々の向こうから音が。見ると,
鹿が向こうの登り斜面を登って逃げ出す。一頭が登り,二頭目が登り,三頭目も登る。どれも重そうな音を立てている。大きい。オスではないか?距離は40メートルほどだろうが,間に木々があり,狙いようがない。しばらく様子を窺うが,尾根のピークを越えて行ってしまったようだ。

 仕方ないので進み,鞍部を越え,尾根の北側を巻く道を進む。少し行くと,前回オス鹿を撃った場所に差し掛かる。あのときと様子が変わっている。木には緑の葉が付いているし,心なしかすっきりしている。雨で色々流されたか?警戒しながら先に進む。鹿がいそうな場所は所々にあり,差し掛かる度に時間をかけて様子を窺うが,やはりいない。なんだか風が強い。雲行きも怪しい。雨は降らないだろうが,日が陰っている。

 時間をかけて歩き,前に鹿と猪を撃った場所に来た。ここも前とは様子が変わった。木に葉が着いてるので,日が余り差し込まない。午後2時を過ぎていたので,おにぎりを食べる。止まると寒い。風が強い。食事をするときだけはジャケットを着る。周りを見渡すと,木に鹿が角を研いだ後がある。大きい。しかも新しい。ここにはでかいオス鹿がいる(来る)はずだ。でも姿を見せやがらないな。

 食べ終えてまた進む。鹿はいない。下り,左右の沢を見て,また目の前のピークに登る。鹿はいない。鳴きもしない。戻る。鞍部に下った時,左の沢からダダッダダッと
鹿が走り飛ぶ音が。しかし,木々に付いた新緑で何も見えない。くそー。鹿はいるじゃないか。来た道を警戒しながら戻る。成果はない。

 出発地点近くの鞍部の下で座って佇む。鳥が相変わらず五月蠅いが,何か下から「ゴン」と定期的に音がする。間隔は空いている。下に鹿がいるのか?それは分からんが,ここに座って,鹿が登ってくるのを待とうか?この場所は前に鹿が逃げるのを見ているから,鹿が来ない場所ではない。しばらく座ってボーッとする。いろいろなことが頭に浮かぶ。

 少しずつ暗くなる。曇りだから余計暗い。ずいぶん時間をかけたが,鳥が周りでチョロチョロガサガサするだけ。もう帰るか?せっかくなのでもう一度歩いてみようか。 一旦は戻ったがまた先に進む。鹿三頭が駆け上がった斜面まで来たが,当然鹿はいない。鞍部を登る。風が強い。これはダメだろう。戻ろう。来た道とは少し違うコースで林道に下り,車に戻った。午後6時前。日没は午後6時20分だがもう今日は無理だ。あきらめて帰る。帰り道集落近くの川沿いの道で檻を積んだ四駆が止まっていた。何だろうと思っていると,下の川でハンターがメス鹿の解体をしていた。傍目に良くは見えないがなぁ。
2012年2月12日(日)
Gあきらめなくて良かった

 木曜から少し体調が悪かったせいか,土曜仕事したせいか,日曜はあまり早く起きられなかった。天気予報では晴れだったから,鹿に出合う確率はかなり高いはず。それでも起きられないとは,意欲の低下か。
 先週の林道の途中に車を止め,先週と同じ沢から登り出す。午前11時過ぎ。先週合った鹿が同じ場所にいることを願って,もう少し慎重に近づくことを目論む。といっても,葉っぱは踏むとバリバリ鳴り,藪は多くて,静かに近づけるはずもないから,心持ちだ。急斜面を登り支尾根にとりつく。少しずつ支尾根の奥へ。時間をかけて近づいたが,いない。支尾根の両側は沢,奥は低くなって,また違う尾根に続く。そこを登って尾根に付き,左へ。途中,またヤマドリに驚かされる。甲斐無し。うーん。こんなに天気がいいのに,鹿に出合わない。気持ちを切り替えて,引き返す。元来た支尾根を逆に下る。支尾根を下り,沢の中間,少し平坦になっている部分を歩いたり止まったりして進んでいると,進行方向左前斜面の奥からイレギュラーな音が。注視しながら,耳を澄ます。雑木林の中で何かが動いた。黒い。しかもずんぐりとした・・・
イノシシ?間違いない。斜面を降りて来る。右膝を付き左膝を立て,銃を肩付けしながら,スコープで狙いやすい場所に来るのを待つ。イノシシは斜面を少しずつ降りてきている。こちらに気づく様子はない。この前撃ったイノシシの二回りは大きい。1頭だからオスか?イノシシは斜面をもう少しで沢に降りきるところまで来た。距離は40メートルほど。スコープ上は遮る物はない。チャンスを逃さず,引き金を引く。轟音。当たった。イノシシは前に転げ落ちながらも右に走り出し,右の斜面を登りだした。くそ,倒れなかった。動いていたから急所を外したか?もっと下だったか?発砲時刻12時40分。イノシシは逃げているが,のろのろとした動き。藪の中を見え隠れする。スコープで狙って,撃てるチャンスもあったが,どういう訳か撃たずに見守った。さほど行かずに倒れると思ったからという点もある。イノシシは,藪の中を逃げ,尾根の奥へ消えていき見えなくなった。あれー,どうしよう。そこら辺に倒れるとばかり思ったのに,藪の中に消えていった。あそこに登って見に行くのは危険。まだ下り斜面ならいいけど,斜面を登っている最中に手負いのイノシシが向かってきたらよけられない。なんとかイノシシを見つけられないか右往左往したが,ダメ。何十分も逡巡していたが,意を決して尾根を登りだした。慎重に登ったが,結局イノシシは見つからなかった。半矢だ。

 ずいぶんと時間を食った。もう2時にもなろうか。今日は1発撃ったし,何発も撃つと耳が心配なので,もう帰ろうか。でも,イノシシの捕獲ができればまだ満足感も違ったのだが,撃つ前とあとの短い時間しかイノシシを見ていない。なんだか消化不良。やるとしたら先々週イノシシと鹿を撃った尾根を歩くのだが,それにはいったん車に戻って移動した方がいい。なので,車に戻り,おにぎりを食べることにした。斜面を降り,林道に出て車に戻る。

 おにぎりを食べ終え,しばらく休憩しながら,このまま帰るか,まだ続けるかを考え続ける。疲労はたいして無いが,果たしてこれから行こうとしている場所に鹿はいるだろうか?今日は鹿を見ていない。骨折り損にならないだろうか?今日の日没は午後5時58分とか59分だったからまだ時間はあるが,心なしか,日が傾いている様にも思える。日暮れの山の心細さといったらもう・・・。でも,日差しはいい。鹿に出合う確率は高い。この天気のいい日にあそこを歩かなかったら,後悔する気がする。今期あと何回猟に来られるか分からない。決めた。行こう。

 車を林道奥に移動し,支度を調えて尾根への取り付き場所に歩いて移動。取り付くといっても,道はないに等しい。険しい斜面を獣が降りたり登ったりする踏み分け道を必死に登る。足首が悲鳴を上げる。下は見ない。登る先しか見ない。平坦な場所に出ると,本当に助かった気持ちになる。尾根に出ると,日差しが明るい。これは期待できそうだ。でも,歩くと乾燥した落ち葉がバリバリと盛大に音を立てる。こりゃ鹿がいても逃げられて終わるだけだな。なかば開き直って歩く。鳥はやかましくそこかしこで鳴くが,鹿は・・・どうだろう?いてもおかしくない状況ではあるが,見当たらない。数百メートルほど歩き鞍部に登り,反対斜面を巻く道に出る。少し下りかけた時,下の急斜面に規則正しく植林された杉の間を
鹿の尻が左に逃げていく。70メートルはあった。杉林なのに鹿がいた。ようく下を見ると,確かに杉林だが日が差し込んでいて,気持ちよさそうな場所ではある。あの鹿はどこ行ったかなぁ。今から追っても到底無理だろうな。少し心残りがありつつも,道を進もう。鳥もガサゴソいうので,音がする度に立ち止まって耳を澄ませる。進行方向の道下の斜面からもなにか音がしたようだが・・・。あまり確かではない。が,数歩進むうちに,なにか違和感があって止まる。なんだろう。音か?音は鳥があっちこっち飛び回る音のようだ。・・・・でも・・・・・,ふと目の前約10数メートル先,道下斜面に生えている雑木に目の焦点が合う。・・・?その雑木のいくつかがどうも鹿の下半身,胴体下半分と足に見えて仕方がない。まさかね。そういう,木々や岩が鹿に見えてしまうという錯覚にはよく襲われる。こんな近くに鹿が立っているわけはない・・・・。ずっと凝視する。鹿らしき物体は全く動かない。頭や首に当たる部分は木の枝で見えない。我が目が信じられなかったので,スコープで覗いてみよう。仮に鹿だった場合に逃げられないように,ゆっくりと銃を持ち上げ,肩付けし,スコープを覗く。間違いない。鹿だ。真正面だ。心臓を狙って引き金を引く。轟音。ズザザッと鹿が斜面を下って逃げていく。こちらも走り出す。比較的大きい鹿だ。あんないいところに当たったはずなのに逃げる。道の所からは見えなくなった。でもそう遠くまでは逃げられないはず。斜面(崖)をそろそろと下る。途中滑って盛大に左膝をゴキッとやってしまい,しばらく悶絶。必死に痛みをこらえて,下る。血の跡が一面に続いている。早くもカラスが見つけて頭上から獲物にありつこうと狙っている。何十メートル降りたか,思いの外近くに,見えなくなったすぐの所に鹿がいた。オスだ。小さいが角がある。60sほどだろうか?ちょっと目方には自信がない。発砲時刻はだいたい午後3時30分頃か。数十分かけて,木,石,土をかぶせて,できる限りの埋葬をした。カラスにやられるのは仕方ないにしても,できるだけ埋葬をしてあげたかった。汗びっしょりになって,鹿の姿が見えないほど泥などをかぶせたあと,急斜面を必死に登り,来た道を戻った。途中,鹿が道下の距離数十メートルを逃げていくが,もう撃つ意思はない。車に帰り着いたのが午後5時頃。そのまま帰る。

 最初のイノシシはもったいない事をした。でも,撃ったことで満足していたら,オス鹿を仕留めることはできなかった。あきらめなくて良かったということだ。でも,2発撃って耳が痛い。

2012年2月6日(月)
F雨
 少しずつ猟に出られる時間が早くなってきている。少し暖かいせいか。しかし,山間部に入るにつれ雪が残っている。目当ての林道には一面の雪。これは寒くなりそうだ。林道には,朝方誰かが車で入っているようだ。鹿の足跡もそこかしこにある。どこら辺で車を止めようか。少し開けた場所で車を止めて外に出てみる。雪の上にこれでもかとばかり残っている鹿の足跡は数え切れない。大小色々。ここに車を止めて始動だ。

 林道を少し歩いて戻り,ほどよく入れそうな沢を見つけたので,少々考えた後,登り出す。午前11時より少し前。慎重に慎重に,なるべく音を立てないように登る。少し登った先はなだらかな部分がある。様子を見る。右に道があるがとりあえず前に進む。杉が多いな。早くも足が冷たい。雪のせいだ。
 どちらに進むか。いろいろと考えたが,GPSを見て考え直し,右の道に行く。道は,左になだらかな支尾根を見てそれを巻くようにして伸びている。途中まで来て,支尾根に登り出す。道はない。下草で地面の形状もよく分からない。音もバリバリと盛大に鳴る。もう少し登ればなだらかになる・・・。ふと進行方向,支尾根の元(高いところ)に目をやると,薄白い姿の獣が音もなく左に翻った。くそっ!。こんな所にいやがった。
鹿だ。警戒鳴きはしない。その後支尾根の反対側に下りて逃げたような音がした。少々考え,支尾根に上がり反対側を覗いたが,何も見えない。あー。時に午後11時30分。警戒が足らなかった。登るのに体力と集中力を取られた。残念。支尾根を登り,鹿がいた場所にたどり着く。ここはなだらかになって見通しが良いな。ここだと外敵が来たら簡単に気付くな。雄かな?

 そのまま支尾根の奥へ。下りになり鞍部。そこから目の前のまた違う尾根に続いている。そのまま目の前の尾根に登り,すぐ下にも支尾根があるが,まずは左に曲がっている尾根沿いに歩き出す。ここら辺は最近地積調査をやったみたいで,ずいぶんと歩きやすい。斜面下の雑木を覗くが気配なし。ずいぶんと進んだが,あまり甲斐がないので,引き返す。

 引き返し,左(南)の支尾根に下りる。いやいや,盛大にやられてるな。木の根っ子がそこかしこ掘り起こされているし,幹も引っ剥がされて・・・。雪の降るこの時期が一番山にエサが無くなる時期。エサが無くなると杉などの木がやられる。一体何匹ここらに鹿がいるんだろうか。比較的ここらは緩やかなので,少々あたりを調べてみるが,鹿(イノシシ?)がいた形跡はたくさんあるが,今はいなさそうだ。足音で逃げたかもしれん。目の前のピークに登って,その先も見るが,いない。引き返すか。結構な急斜面を登り,尾根に上がる。息が切れ,汗が噴き出る。

 鹿を見た尾根に戻り,まだいっていない方向の支尾根に向かう。支尾根を下り,そのまた右の支尾根に下り,先の尾根に登る。要所要所の木の皮が引っ剥がされて地の白い部分が出ている。遠くで鹿の警戒鳴き。俺を警戒しているのか?それにしては遠いが・・・(警戒鳴きは散発的にその後も続く)。さっきから雨がパラパラとしていたが,少々強く降り出した。まずいなぁ。雨に濡れると,地面の木に滑り易くなり危険。

 藪で覆われた斜面を横切る獣道を歩いている最中,至近距離でバサバサバサッ!っとヤマドリが急発進し,「うぉっ!」と情けない声を出させられてしまった。その後もこちらが進む方向にヤマドリが逃げているので定期的にヤマドリに驚かされる。おかげでまだ左ヒザをグキッとやってしまった。雨は降りつづける中,山を登ったり下りたりで,服の表面は濡れ,中も汗でぐっしょり。やっぱりゴアテックスがいいなぁ。ハァハァと息を荒げながら,先週弁当を食べた場所に先週と同じ位の時刻(午後2時)にたどり着く。ちょうどいい,ここで弁当としよう。おにぎりを2つ食べる。時刻的にはもっと行動できるが,このまま雨が降るならなんだかやる気も起きない。雨の日は鹿に出合いにくいから。ここから尾根を歩いて,先週鹿とイノシシを撃った場所に様子を見に行っても良いかと思ったが,この雨の中あそこまで歩くのか・・・と思うと,躊躇する。一旦車に戻って,この近くの違う林道に行ってみようか。雨が強ければそのまま帰ればいいし。決めた。車に戻ろう。

 少し引き返し,先週登り始めた支尾根を下る。結構急。中程には支尾根を横断する踏み分け道がある。ここを右に行けば車のある場所への近道になるのでは?行ったことがない場所だということもあるし,調査のために通ってみよう。最初は急な下り。ジグザグに道がある。その後は斜面を横移動。雨のため崩れやすそう。おっと?しばらく歩くと,車を止めた場所の上の斜面に出た。ここから下りる・・・のは少々高くて危険だ。仕方ないな。もう少し道の先の方に行ってみるか。ここらへんは木が無くて雨をもろに受ける。滑らないように足先を見ながら用心して歩いていると,突然,斜面上の方から鹿の警戒鳴き!ものすごく近い。10メートルくらいか?上は雑木や藪があって,見通せない。様子を見ながら移動するが,鹿も移動しているみたい。雨の時にはこんな所に鹿は休んでるのか。林道のすぐ上なのに。こちらが倒木の下を這々の体ですり抜けて,斜面上を見ると,視界左11時の方向約35〜40メートルほど先を支尾根の反対側へ
鹿が逃げていくのが見える。少々小さいか?コンマ何秒かで消えた。無理とは分かっているが,こちらも道を進み,支尾根を巻いて反対に出るが,鹿はいない。でも,なんだか気味悪い洞窟がある。イノシシが出てきそうで怖い。道はこれ以上は進めないようだ。鹿なら通れそうだが。しばらく上を見守るが,変化がないため,沢を強引に下りる。盛大に泥で滑りながら何とか車に帰り着く。この頃には雪はすっかり解けてほぼ無くなっていた。ザックと銃を車に入れ,運転席に乗り込み,温かいお茶を飲むと,どっと疲れが出てきた。体が重い。なんだか眠くなってきた。一旦こういう風に休んでしまうとまた動き出すのが億劫になってしまう。とにかく眠い。もはやこれから違う林道になんて行く気力はない。しばらく休んだ後決断。帰ろう。午後3時前。

 今回は雨のため中途半端に終わってしまった。出合った鹿は2頭。晴れた日ならもっと多くの鹿が見られただろう。雨の日には鹿はどこにいてどういう行動を取るのか。自然と動物が相手ゆえ研究テーマは尽きない。だからこそ面白い。生き物を撃つことには違いないが,撃てればそれで良いのではない。私の場合,撃つまでの過程,その研究と努力が楽しみの大部分だ。猟の醍醐味はやはり単独渉猟だ。忍び猟だ。
2012年1月29日(日)
E猪の逆襲

 前回の猟の最後に見た鹿がいた場所を今度の猟のとっかかりにした。鹿がいた場所は緩やかな支尾根。そこを登っていき,前回の尾根に上がり,あとは出たとこ勝負。計画も何もあったもんじゃないが,猟はとっかかりが重要。

 ともかく,なるべく早く起きて,準備をして,登りだしたのが午前11時頃。最初から膝を痛める。こんな調子じゃどうなることやら。
 最初は比較的なだらかな支尾根だが,途中から急になり,とにかく下草が多く,歩くのに難渋する。藪をかき分け,乗り越えるようにして尾根頂上に登り,向こう側に出たときは息も上がり,汗だく。銃を下ろし,ハンティングザックを背中から下ろし,ベストを脱ぎ,上着を脱いで畳んでザックに挟み,ベストを着て,ザックを背負い,銃のスリングを肩にかけて,やれやれと右回りで後ろを向いたら,下斜面15メートルも離れないところに
鹿が顔を出していて,こちらが振り向いて目が合ったとたんダッシュで逃げだした。こちらもビックリ。尾根を東の方向に逃げた。尾根に上がってどちらに行こうかと最初から決めかねていたが,これで決まった。東に行こう。
 尾根を辿り,一つ東のピーク(高くなっている場所)に登る。様子を窺いながら歩いていると,先からまた警戒鳴き。慎重に進むと,鹿が尾根の北側斜面を下り降りていく。しばらく行ったり来たりしたが無理のようだ。先に進もう。
 しかし,先に進むと行っても道はない。尾根を辿るも,藪に阻まれる。GPSを見ると,ちょっと行き過ぎたようだ。方向を南に変える必要がある。斜面(藪)を横切るようにして,南にある支尾根にたどり着く。低い鞍部で様子を窺う。ガサガサ音がする・・・。鳥だ。この尾根は鳥が何しろ多くて,そのたびにビクッとする。この沢を降りてみようか。少しずつ降りる。・・・あれ?南側の下方に開けた場所がある。整地?もっと近づく。林道?あれ?あの立ち入り禁止の林道はここまで延びてるのか?でも,入り口からのここまでの距離は300メートルなんてもんじゃないはずだが・・・。しかたない。戻ろう。

 今度は尾根を西に行く。午後2時になろうかというとき,少し休憩して弁当を食べる。その後,前回尾根に登ってきた場所を過ぎ,もっと西に行く。踏み分け道?地積調査や杉の運び出しの道かな?人が一人歩くのには十分すぎる道がある。これはいい。ここを歩いて西に向かおう。南斜面の様子を見ながら。風で杉林が揺れ,不気味な音を立てる。注意を払いながらどんどん歩く。いくつかピークを越える。どこまで行こうか。出発点から遠くなると,帰りのことを考えて少し不安になる。ここ(A点としよう。)から尾根が南(左)に曲がっている。行ってみよう。ここら辺は比較的なだらかだから,地図で見れば鹿などが大いにいそうな場所。ピークを登り,下る。一つのピークを下った底に来たとき,右前方でザザッという音と共に獣が逃げ出す。
鹿だ。40メートルほどか。やられた。細かな木々の向こうだったから見えなかった。全然鹿がいなかったから警戒が足らなかった。しばらく様子を窺うと,少しずつ遠ざかっているか,気配が消える。鹿が背後に回り込んで逃げるかもしれないので,しばらく待ったが,その恐れも無いようだ。しかたないので進む。目の前のピークを登る。藪で歩きにくい。盛大に音を立ててしまう。先に進むと下り,また底になり,またピークを登る。右に行き,薄浅い沢を見ながら歩くと,後ろから鹿の警戒鳴き。あっちか。でもあっちは進みにくい。鳴き声も遠そうだ。しばらく様子を見るが,諦める。来た道を戻る。

 またピークを上り,下り,又登るなどしてA点に登り着いて,ふと,左側,A点の尾根下りの方向(南方向)を見る。すると,なにかの動きを視界が捉えた。白い。
鹿だ。30〜40メートル程か。鹿が左方向へ音もなく移動しようとしている。途端に動悸が激しくなる。撃つにはこのハンターズフィーバーを落ち着かせなければならない。鹿は木々の間に見え隠れする上,先は下りになっていて体が上部しか見えないので遠くにいるように見える。スコープではなかなか捉えられない。いったんスコープから目を外して探す。左に・・・見えた。2頭だ。最初の鹿はもう見えない。今見える鹿しか撃てない。スコープで捉えた。十字は上下するが,許容範囲だ。当たる確信の下で引き金を引く。確実だ。轟音と共にボルトを操作し次弾装填。走り出す。もう一頭の鹿は一呼吸の後左の沢に降り下った。こちらも左に移動し沢を覗き込むと,鹿は沢を横断して反対の斜面に勢いよく駆け上がる。大きい。尻の白毛は広がって一目散。撃てる状況ではなかった。撃った鹿を見る。動きはあるが,行動不能だ。少し様子を見たが起き上がれる状態ではない。すぐに息絶えるだろう。子鹿だ。もう一頭は母鹿だろう。反対斜面の見えないところからしきりに鳴いている。余りにしつこく鳴くので,様子を見に沢に下る。目を凝らすが見えない。すると白い尻を見せて鹿が駆け出すのが見えた。少し駆け上がり,止まってまた鳴く。数回繰り返した後,尾根を越えていったので,こちらは撃った鹿に戻る。子鹿だなぁ。せめて母鹿を撃てればなぁ。害獣駆除の面でも,心理面でも良かったのに。射撃時刻は午後4時頃。
 今日の日没は午後5時45分頃だったはずだから,まだ時間もある。今日は晴れているからいつもより明るい。時間があるので解体しよう。銃はザックを下ろしているところに一緒に置いておき,ナイフだけを持って鹿の方へ。持ってみたところ,子鹿の重さは30sほどか・・・。弾が当たった場所も確認する。肩のあたりを貫通している。心臓にかなり近い。解体始めてまもなく,左後方からザクザクとなにかの足音らしき音が。その時考えたのは,発砲音を聞いた,近くで猟をしているハンターの犬が上がってきたのかということ。冷静になって考えればこんなところにそうそう猟犬も来ないし,来たとしてもあの方向から斜面を登ってくる可能性は低いはずだが,あの状況では猟犬ぐらいしか考えられなかったのだ。それで,左後ろを見て黒い物体が見えても,状況を理解するまでコンマ何秒か余計にかかってしまった。その黒い物体は
,しかも何頭もの群れがこちらに歩いてきた。目が合う。近い!慌ててナイフを放り出し銃に向かって走る。銃を取り上げ元の場所に戻ると,イノシシは少し左に移動し,木々の間に見え隠れしている。距離は30メートル以上。その時は何も考えずに,スコープで捕らえた黒い体に引き金を引く。轟音。当たったはずだ。そこからが大変。猪達は凄い勢いで左の沢に降り,さっきの母鹿と同じように沢を横断して走り去っていった。確認できただけでも4頭。あのずんぐりした猪の速いこと速いこと。あんな勢いで向かってこられたら弾なんて当たらないんじゃないか?鹿の解体も途中だし,ナイフも置きっぱなし。撃った猪もどうなっているか気になる。逃げた猪たちが戻ってくる様子がないようなので,撃った猪を確認するため近づいてみた。すると,撃った猪がいるであろう場所よりももっと左側にがいる。20メートルも無い。こちらをまっすぐに見ている。一番大きい猪か。やっぱり1頭残って向かってくるか。驚いたがとっさに片膝を着いて銃を肩付けする(まだスコープは覗かない)。猪が逃げるかと思った(逃げるのならあえて撃つつもりはない)が,反対に,ウゴァー!などと鳴きながら敵意を丸出しにして向かってきた。考える時間はない。スコープを覗き,スコープの視界いっぱいに映ってどんどん大きくなる牙を剥いた猪の首あたりに狙いを付けて躊躇無く引き金を引く。必倒。スコープでも倒れるのがハッキリ見えた。ボルトを操作しながら近づき様子を見ると,ひっくり返って弱々しく足をバタバタさせている。起き上がる恐れはないが,苦しみを長引かせないようにとどめを刺そうか。でも,弾はあと1発しかない!突然恐怖心がわき上がってくる。この1発を撃ってしまえばそれでおしまい。また猪がどこかから反撃してくるかもしれない。こんなに撃つと思わないからいつも4発しか持ってきてない。いっぱい出てくる猪にボルトアクションは不利。自動銃なら・・・。そんなことを言ってもしょうがない。最初に撃った猪はこのひっくり返っている猪(メス?)とは別のはずだが,もうそんなことはどうでもいい。ナイフを回収し,ザックを背負い,来た道を飛ぶように逃げ出す。獲物を埋める精神的な余裕もない。何しろあと1発しか弾を持ってないんだもの。あの凄い勢いで走り回る猪が2,3頭でも向かってきたらもうダメだ。こんな所には誰も助けに来てくれるはずもない。恐怖心でいっぱいになり,逃げに逃げた。汗が噴き出る。汗だくで車に帰り着いたのは午後5時過ぎ。やっと安堵する。まだ明るいが,もうそのまま帰る。

 長距離を歩き上り下りしたため,足が痛い。ヘトヘトだ。暑かったり寒かったりでも体力を消耗した。その上予期せぬ猪との遭遇と,逆襲に遭いそうになった恐怖心で疲労困憊。
 色々と教訓になった日であった。一つ。やはり,地形図と航空写真で目星を付けた場所には確実に獲物がいる。一つ。弾はものぐさせずにある程度余分に持つ。一つ。獲物を撃ったあとも気を抜かない。一つ。獲物解体用の小さなナイフ(ラブレスタイプ)では心許ない場合もある。長い剣鉈を持って行こうか。でもなぁ。重いし木鞘はカタカタ鳴るし・・・。
 次はどうしようか。また同じ場所に行けば鹿でも猪でも遭遇する可能性は高い。でもそれで撃っても芸がない。また地形図・航空写真とにらめっこして,新しい場所で探求してみようか。 

2012年1月23日(月)
Dシルエット

 最初に記す。今回は鹿を撃っていない。

 前回色々と惜しい体験をしてから,少々やる気になったはずだった。今度は全く違う,新しい猟場を開拓しようと(同じ所ばかり行って鹿を撃っても芸がない),地形図を見ながら計画を練っていた。にもかかわらず,やはり朝起きられなかった。天気もハッキリしない感じで,雨に濡れて歩き回るのも辛いという点もあった。だが,昼近くになると晴れ間もあり,なかなか雨が降る気配がなかったので,支度をし,11時過ぎに出発。ある林道を中程まで行き,そこから尾根に上がり,歩き回るのだ。なんだかんだで登りだしたのは12時を過ぎてしまった。しかも道が崩れている。悩んだ挙げ句,支尾根を強引に上に登る。上がったら風が強い。寒くなってきてしまった。木々が鬱そうと茂っているため,ただでさえ暗いのに,天気もどんよりとして,なんだか憂鬱になってくる。尾根に北から上がり,左(東)側へ歩く。杉林は派手にやられている。もちろん鹿にだ。表皮がめくられている木がそこかしこに。古い奴は立ち枯れ,新しい跡もいっぱいある。糞もある。寝場みたいになっている場所もそこかしこにある。だが鹿の姿は見えない。歩いている間中,犬の鳴き声が北側からする。犬の鳴き声のせいで鹿が警戒しているのか?南側の支尾根を伝って降りたりして様子を見るが,確実に鹿がいた形跡はあるが,姿は見えない。上がったり下がったり,沢を横断したりなど,色々してみるが,姿は見えず。それにしても暗い。雨もパラパラと降り出す。尾根に登ってきた場所まで戻り,反対に行ってみる。鹿が藪を抜けた通り道がハッキリと縦横に残っている。いつ鹿か猪が出てくるか不安なくらい。しかし,いない。いても暗くて見えない可能性もある。また南側へ支尾根を下る。ずいぶん下るが,鹿がいたであろう痕跡,歩いているであろう獣道しか見つけられない。距離としてはたいしたことないが,新しいところを登ったり下ったりしたせいで,足が痛い。息も上がる。今日の日没は午後5時39分。いろいろとほっつき歩いて,車に戻るともう5時近く。疲労と装備が肩と腰にズシンとくる。望み薄だが,林道奥に歩いて行ってみる。鹿が降りた跡,歩き回った跡はいっぱいあるが,人が来る時間帯には鹿も出回らないだろう。終点まで行き,車に引き返す。日没まであと20分くらい。仕方ないので,間に合うかどうか分からないが,前回の場所まで行ってみるか。車を走らせる。引き返す林道の途中で一旦車を止め,外で佇む。林道下斜面をボーッと見ていると,後ろ,林道上斜面の杉林(下草もたくさん生えている)から,バリバリッどすん!と,鹿の足跡のような,でも丸太が倒れたような,変な音がした。ビクッとするくらい大きい音。目を向けるが,元々暗くなって見通しが利かないのに加えて,陰になっていて余計見にくい。暫く凝視をしていると,支尾根の上の方で動き。紛う事なき鹿のシルエットが,右を尾,左を頭に動いた。頭の方にもちらっと陰の動き,あれは角だ。オスだ。距離は約30〜40メートル。この距離なら,本来なら確実に撃てるが,いかんせん暗くてよく見えない。今更感もあるが,車から銃を取り出し,様子を窺う。暗くて見えない。動きがない。音もしない。ダメか・・・と思ったその時,真正面上の方で低くピヨッ!と一鳴きがあり(メスの鳴き方とはやはり違う気がする。),シルエットが右に翻った。バリバリとガサッガサッと,今度は本格的に逃げ出したみたいだ。くそぅ,何も見えない。尾根の向こうに行ったかも知れないと思い,車に乗り尾根の反対側まで行き様子を見るが,変化無し。そこから鹿と遭遇した場所まで林道を歩いてコッソリ近づいてみるが,変化無し。もうだいぶ暗くて,探しても無意味だ。ナイトビジョンがあれば!(高いけど) あと10分程度あるが,もう何も出来ない。諦めて家路に就く。
 
 今回は新しいところをずいぶん歩き回った。歩き回れば普通はある程度満足するのだが,今回は天気も良くなくて暗い中をずっと歩き続けたのもあるし,鹿に近づいた気もしなかったので,あんまり気分が晴れなかった。最後に出合った鹿も,オスだったという点はともかく,シルエットだけでちゃんと見られなかった。猟をするということはこういう失敗の繰り返し。生き物を狩るというのは一筋縄ではいかないし,簡単でも困る。次回もここだな。今回の反省点を活かして違うアプローチをしよう。

2012年1月16日(月)
C遠距離射撃

 猟期もはやあと半分,折り返し地点に来たがなんとまだ3回しか猟に行けてない。これではダメだ。前回(3回目)に鹿を撃った余力を借り,今回(4回目)はこれまでよりは早く猟に行くことにした。それでもなんだかんだで遅くなり,出発したのは10時30分くらい。

 途中の道で,子鹿の死骸を取りがついばんでいた。かわいそうに。
 いろいろと事前に予定を練っていたので,どこに行くかを迷うことはない。まず最初の予定は・・・,おー,やはりここは林道があったか。「立入り禁止」。仕方ない。ここで立ち入ったりするからハンターのイメージが悪くなる。ルールはちゃんと守る。ただ,立ち入り禁止なのは林道だけと解釈することも出来る。右側の稜線に登るのはいいとも思えるが,そんな詭弁は弁護士として許せない。あきらめる。まあ,いつかは通れるようになるだろう。

 先を急ぐ。次の予定はもう少し先。車を走らせていると,左側斜面に動きが。よく見ると,2頭の
鹿が逃げ出す。20メートル以上。尻もたいして開いていないからさほど警戒しているわけでもない。流しで撃つのは好きじゃないが撃てるなら撃とう,と思ったが,道路が狭く,車を寄せられるスペースがない。道路の先に広くなっている部分がないか少し登る。カーブの所に止めるスペースがあったので車を止め,道を徒歩で戻る。近づくと,鹿の警戒鳴き。2頭で鳴いている。1匹は近いが,体を晒せばすぐに逃げられるだけ。じりじりと待つが,どんどん遠くなるので,諦めて車に戻る。

 予定外のことに時間を食われた。予定にもどる。前回鹿を撃ったのと同じ事を,時間帯を変えてやってみようと思う。前回と同じ場所に車を止め,徒歩で林道を進む。相変わらずこの道は歩くとジャリジャリして,静かに歩くことは無理だ。道下が遠くまで見通せる場所を過ぎ,いよいよ前回鹿を撃った浅い沢に近づく。ここからは少し用心して歩く・・・・と,目の前からトコトコと小さな
が歩いてくる。こちらが気づいてしゃがむのと,猪が気づいて回れ右して一目散に逃げるのがほぼ同時だった。ここは猪も居たのか。猪を撃っても仕方ないが,他の猪(それもでかい奴)が居るかも知れないし,猪は向かってくるのもいるので,そのままにはしておけない。逃げた方向に進む。他には居ないようだ。右の下斜面からガサガサ音がする。道を少しだけ戻って,道路下斜面の藪を探す。いた。猪は俺が居る道に登ろうとしていたが,こちらが上にいるのに気づいて慌ててまた下に逃げ出した。追うのは無理だ。どうしよう。これ以上は何も出来ないか。・・・待てよ,もしかしたら,道下が見下ろせる場所まで行けば,下の方を猪が通るかも知れない。すぐそこだから道を戻ってみた。崖下が見通せる場所。下を覗く。ドンピシャ。予想していたのと同じように,の黒い姿が左側から現れ右に行こうとしている。時間は少ない。道路に伏せ,崖下目掛けて狙う(遠いな・・・)。スコープを覗くと,結構大きく猪が映る(あとでスコープの倍率見たら6倍になっていた)。左から右へ移動する猪を目掛け,引き金を引く。轟音と共にスコープを通した視界が一瞬ブレ,猪は逃げ出す。ここから降りるのは無理だな。100メートルは優にあるな(あとでGPSの地図で図ったら直線距離で100メートル以上。だったから,もっと遠かったことになる)。射撃の衝撃で頬が痛い。遠かったけど,あの感じなら,当たったと思う(たぶん・・・)。当たったということにしておこう。午前11時58分射撃。

 その後,道を先へ進む。銃声がしたから鹿は出てこないだろうなと思いつつ,進むが,案の定いない。途中,林道上の稜線に登ってみる。鹿は確実にここらに住んでいるが,姿は見せない。暫く稜線を歩き,また林道戻り,来た道を引き返す。少し雨がパラつき出した。あの浅い沢の先がどうなっているか知りたい。地形図ではその下も緩やかな坂で,歩いて行けそうだ。気になる。沢に入り,下に降りる。見事に,そこかしこに獣が通った後。あの猪もここらを通ったんだ。さほど苦労をせず窪地に到着。ここは,あの開けた崖下。猪がいた場所もある。猪が逃げたであろう方角を少し探してみるが,血はない。あーだこーだウロチョロしていたが,だいたい見たので道に戻ることにする。下るのは楽だが登るのはきつい。息を切らせて道に登り付く。道を戻り,今度は崖上から見下ろす。銃やザックを下ろして,汗だくの体を冷やす。もう1時半だ。すぐ近くの車に戻り,また崖下を見下ろせる場所に戻って座り,弁当を食べる。
 
 さて,どうしようか。雨がパラつきだした時点ではもう帰ろうかと思ったが,少し天気は持ち直したようだ。・・・よし,ここから歩いて行ける距離に,気になる沢がある。そこを登り,前回も行った稜線に登ってみよう。出発。途中,前回もあったジムニーとすれ違う。こちらは徒歩。沢を登り出す。比較的緩やかだが,きつい。すぐに息が上がってしまう。体力不足か。登り切ろうとするとき左の斜面向こうから,少しガサガサ音がしたように聞こえる。沢を登り切り,右側斜面にとりつくと,音がしたのと同じ方角から,
鹿の警戒鳴き。あー,ここにもいる。暫く様子を窺い,稜線に上がる。右に行くか,左に行くか。右に行こう。古い山道のような,杉の運び出しに使うような道を上る。少々行くと,前回行った三角点に付近に到達。ここを,前回の登り口まで反対に進んでみよう。鞍部まで来ると,鹿の警戒鳴き。次の稜線に登る。鹿の警戒鳴きが近くなった。2頭。近い。もしかして,車に乗っているときに見た鹿をずっと追う形になっている?違うか?すぐ近くに鹿がいることは分かっていても,歩こうとすると地面一杯の葉っぱを踏みしめることになる。一歩一歩で盛大にバリバリ音を響かせることになるため,一歩も動けずしゃがんで様子を窺うことしかできない。そのうち鹿が遠ざかったか,聞こえなくなる。仕方ないので先に進む。その後は何事もなく,前回稜線に登った山道を降りて,林道に着く(途中,ヤマドリと遭遇)。ここから車を止めた場所までは少し距離があるが,まあ歩けない距離ではない。歩き出す。稜線ならほぼ一直線だが,林道は稜線から方々に延びている支尾根を巻くかたちでカーブだらけ。その分距離が伸びる。車に帰り着けたが,結構きつかった。もうザックは背負えない。車にザックを入れる。

 次はどうするか。午後4時30分頃。今日の日没は5時33分。あと1時間ある。ここまで来たらもうひとがんばり。銃だけ持ち,猪を撃った林道をもう一度歩き出す。もう結構暗い。バリバリと音をさせながら,足を引きずるように歩く。崖下が見通せる場所を過ぎ,浅い沢を過ぎてすぐ,左側の上斜面から音がして,
鹿の警戒鳴き。おっと,ここにもいたか。鹿は近い距離でずいぶん鳴いている。少しずつ近づくが,鹿も遠ざかる。結局ダメだった。諦めて道を進む。なんだか今日は鹿に鳴かれてばっかりだ。もうだいぶ暗い。道は下っているから余り進むと帰り(登り)が大変。杉林だから余計に暗くて気分が滅入る。程々のところで戻ることにする。帰りは登りで,周囲の様子を窺う気力もない。浅い沢を少し見ながら,道を歩く。特になにもない。トボトボと歩き,崖下が見通せる場所に来た。最後のワンチャンスとして,ここから崖下を覗いてみよう。動物が通っているかもしれない。頭が見えないように遠くから回り込み,そっと頭を出して崖下を覗く。暗いが,動きを発見。スコープ(3倍)で覗く。鹿だ。2頭。コソコソと右に移動している。チャンスだ。距離は100メートル以上。でも伏せ撃ちが出来ない。仕方ない。腰を屈め出来る限り体を安定させ,あまり頭を出さないようにして狙う。時間はない。すぐにでも鹿の姿が消えそうだ。ここなら,というところで引き金を引く。轟音と共にスコープ内が土煙。?よく見ると,弾は目の前数メートルの所にある土の盛り上がりに当たってしまったようだ。くそっ!もうダメか。時計を見ると5時29分。あと3分。鹿はどこに行ったか。右の方には,少し崖下に下れる段差がある。そこから下を覗いてみよう。そっと覗くと,なんと,2頭の鹿が少し崖を上がったところに立っていた。こちらも鹿も驚いた。一旦頭を引っ込めてまた出したが,もうダメだった。鹿は一目散に逃げだして遠くで警戒鳴きを続ける。少し様子を窺ったが無理。もうタイムリミット。猟は終了。車に帰り着く。
 
 今回は思いがけず猪を撃ってしまった(当たったとしておこう)。それに散々歩き,鹿にも散々そこかしこで鳴かれた。肩,腰,膝が痛い。それにしても,今日の鹿2頭は残念だった。なんとしても撃ちたい。他方,まだオス鹿を撃って無いどころか見てもいない。次は,また崖下目掛けて遠距離射撃をするか,それとも,違う場所を攻めるか。
 
 ※帰るときにも鹿の死骸がある道を通った。もうかなり骨になっていた。カラスなどがついばむのだ。ふと思った。『この前俺が撃った鹿じゃないのか?』以前も半矢にしたときにこういうことがあった。鹿を撃つことにはもはや慣れたが,半矢にした後の現実(本当に俺が撃った鹿かどうかは分からないが,いずれにしろ半矢にすれば長く苦しんで死んだことには変わりがない)を見ると,少々心が痛む。

2012年1月9日(月)
Bあと十数分

 年末年始,己の怠惰さと膝の故障で狩猟に行かなかったことを少々悔い,この連休こそ,と少々意気込んでみたものの,なんだかんだと過ぎ,はや月曜の昼前。あまりの怠惰さに我ながら呆れつつ,成果は期待せず,昼過ぎに出発。

 「あぁ,良い具合に山が枯れてるなぁ」と思いつつ,慎重且つ急いで山道を走る。しかし,途中の道路工事でそれ以上通れず,当初予定していた場所には行けないことになった。初っぱなから予定が狂う。道路脇の広くなっているスペースに車を止め,少々思案。しょうがないので,今まで気になっていてまだ行ったことがない場所(こういう所もどんどん少なくなっていくなぁ)に行くことにする。途中,ジムニーとすれ違う。場所に到着し,登り始める。時に午後2時25分。

 ここは初めてだが,地形図からだいたいの予想は付く。オス鹿を撃った林道の稜線の反対側から登りだし,その稜線に出る道だ。登っている途中,下の道から車が通る音がする。そろそろと登っていると,上からガサガサッと音がする。鹿か?ハッキリしないが,様子を窺う。しゃがんで動かず耳を澄ます。音は聞こえない。ずいぶん待ったが音はしないため,諦めて登る。しばらく進むと,上の斜面をヤマドリが足早に逃げる。さっきのはこいつだったかな?よく分からん。稜線に出る。途中,東側で銃声が2度聞こえる。右へ進むか左へ進むか。左は先の方で登りになっている。ちょっとだけ左へ進んでみる。高い高い。下を覗くとちょっとだけ怖い。平坦な部分まで歩いたが,進むのをやめて,後戻りし,右側へ進む。稜線にも道があるし,稜線を巻く道もある。歩くと,一面に敷き詰められた乾燥した落ち葉がバリバリと盛大な音を立てる。まあこれは仕方ない。稜線を巻く道も,斜面に無理矢理作ってあるから,とにかく狭い。下を見ると結構怖い。ただでさえ膝がヤバい状態で無理が利かないのに。歩き続けると,ずいぶん歩きやすい道になった。ここは最近地積調査があったんじゃないか?こんな場所で地積調査なんて,本当にご苦労様です。こういう道は歩きやすいから鹿も好んで歩く。もちろん,ハンターや犬も。誰がか何がか分からないが,歩いた跡が明確に付いてる。途中,稜線の上からガサガサッと大きな音がした。鹿か,大きな鳥かどちらかだ。ビックリさせんなよ。少し進んだ場所でもガサガサ音がした。鞍部に出る。広い。どう考えても鹿が寝てたであろう地面もある。少し登り,また下りになる。太陽はずいぶん傾いている。日が落ちるのが早い。日が陰ると途端に寒い。風も冷たい。ジャケットなしで来てしまった。先に進んでもいいけど,しばらく考えて,戻ることにした。途中,また稜線の向こう側からガサガサ音がする。行って覗きたいが,盛大に音を立てること必至。しかもよりによって立っている場所は道の中でも一番傾斜がきつく道幅が狭い上に斜面になっている場所。立っているのも座っているのも危険な場所。でもじっと我慢し,音を立てないように足を動かさず耳を立てる。こっちに来ることを考え,銃を構えたりしてまた体力を消耗。何十分そのままでいたか?もう体が限界なので,もっと道幅がある方へ進み,そのうちに,反対側の稜線が見えるところまで来た。ガサガサいっている。しかし暗くて何も見えない。そのうちにバサバサッ!と大きな音が。鳥かよ!鹿だと思って何度騙されたことか。帰る。

 最初行った稜線の左側にまた行って,また戻って,下に下りた。膝がヤバイ。車に戻る。午後4時25分頃。2時間ほどいたことになる。少々疲れた。少し休む。日没まであと約1時間。今日はもうダメかな。・・・そうだ,今日は元々ダメもとだったのだから,あそこに行ってみよう。どうせ帰り道だ。

 移動したのは,猟を始めた年のしかも最初の頃1度行ったっきり,全く行っていない場所。あのとき見た感じでも,いかにも鹿がいそうな場所が幾つもある林道だったが。到着し,歩き始めたのが午後5時少し前。少し薄暗くなってきていて,もう完全にお帰りモードになるころだ。日没まであと約30分。一応警戒はするが,様子を見る意味合いも強く,ダラダラと歩く。以前は軽トラもちゃんと通れない道だったが,かなり地面をならしてある。車もよく通ってそうだ。おっと,ここはこんなに開けてたっけ?広いスペースもある。どこまで行こうか,何時になったら引き返そうか,とかいろいろ考えながら歩いていると,進行方向からザッと音がして,見ると白い尻を向けて
鹿が逃げ出した。15メートル程か?おっと,こんな所(道)にいたか。やっぱりここには鹿がいるんだな。少し小さかったか?こんな出合いじゃぁ逃げられておしまいだな。一応歩いて近づく。すると,先は浅い沢が広場のようになっている場所。鹿は警戒鳴き。でもわりかし近い。しゃがんで様子を窺うと,まだ鳴いている。鳴き声からすると遠ざかっておらず,沢のどこかにいるようだ。あ,見えた。スコープを覗く。いろんな木々でピントが合わない。暗い上にスコープなので,どこを覗いているかよく分からない。まだ肉眼の方がいい。肉眼で位置を確認し,スコープを覗くが,うまくいかない。鹿の姿は少し見えたり消えたりする。距離はおよそ25〜30メートル。これは待つしかない。仕方ない,地面に腹ばいになって伏せ撃ちの体勢になって待つ。鹿は右に移動しているので,狙おうとするとまた見えなくなる。くそ,手前にある杉だか松だかの葉のせいで姿がすっぽり隠れてる。葉の右側付近で止まったようだ。足が見える。それとばかりにスコープで狙うが,少しすると動き出す。もうそろそろ後がない。右の木々に隠れられてしまえば万事休す。歩く鹿の先回りをしてスコープを用意する。来た来た。なかなかピントが合わないが仕方ない。歩く鹿に合わせてスコープを右に移動しながら,引き金を引く。轟音と反動。鹿は弾かれたように飛ぶように,右へ駆け出し見えなくなった。くそ,狙いが急所の少し後ろにズレたか。ボルトを操作して次弾を装填しながら(空薬莢はポケットに入れて),沢に降り下る。下っている最中に膝がゴキッとなったが,今はいい。急いで鹿がいた場所に行くが,血はない。当たっていてもそういうことはある。時計を見ると午後5時15分。その少し前に撃ったから,鹿を撃ったのは午後5時13分頃としておこう。今日の日没は午後5時28分だから,タイムアップまであと十数分だった。 先の方でガサガサ音がする。こちらも藪をかき分けながら進む。トゲのある植物が至るところにあり,引っかかってなかなか先に進めない。新鮮な糞もあるな。こっちに行けばいずれは道に出るはずだが・・・なかなか道にたどり着かない。行けども行けども藪だらけ。這々の体で道にたどり着く。さて,鹿はどこに行ったか?探した限りでは血痕はない。仕方ない,道を進むか。ある程度進んだところで日没近くなったので,諦めて戻ることにした。少し戻りかけた道の下から,か細い鹿の鳴き声が。俺が撃った鹿だ。あの鳴き方からするとかなり弱っている。スコープで狙って撃ったから間違いないのだが,あの鳴き方からしても当たったのは間違いない。いずれ死ぬだろう。一息に死なせてやれなくて申し訳ない。車に戻った頃にはかなり暗くなってきた。もう少しすると真っ暗だ。帰途に就く。

 今回は,昼過ぎ出猟にもかかわらず,幸運に恵まれて,鹿を撃てた。でも,半矢。鹿は死んだろうが,一息に死なせてやれず,亡骸を見ることもなかった。その点は悔やまれる。

2011年12月4日(日)
Aイリノイ

 狩猟2回目。1回目で,鹿を良いシチュエーションで撃っているため,後は気楽だ。気が緩んでいるのか,朝が起きられない。猟場としている谷には10時頃到着。これまで猟で回っていて気にはなっていたがまだ入っていない場所に行くことにする。まずはあそこだ。

 しばらくして目当ての場所に到着,誰も(少なくとも車は)入っていなさそうな林道。先がどんな風になっているかちょっと想像が出来ない。新しい場所,新しい道に入るときはこういうワクワク感がある。風は少し冷たくなってきたが,日差しが強い。暑くなるかもな。

 林道は,急斜面をジグザグに少しずつ上っていく。最初から杉林。鹿などの足跡はない。林道は先でいくつか枝分かれしている。一旦左に行くか。成果無し。右へ。そんな風に林道をすべて歩く。途中,二つの林道の間にあるくぼんだスペース(600坪ほど?)の真ん中の杉の幹には,鹿が角を盛大に研いだ跡があった。まだ新しそうだ。やっぱりオス鹿もいるんだな。林道の一つの支道を後戻る際,道に足跡を見つける。かすかにある。母鹿と子鹿か。今年生まれた子鹿みたい。結構上になると,杉林だが,ぬた場らしき水たまりが。近づいてよく見ると,足跡がいっぱいある。大きな足跡だ。林道行き止まり近く。その先には雑木に鹿道がぽっかりと空いているが,人が通れるはずもない。ここにはトレイルカメラを設置してもいいかもしれない。

 道を戻る。杉林のある斜面の南側に接する斜面は雑木生えており,心地よさそうな日差しが差し込んでいる。そりゃあ,鹿だって,日差しもそんなに差しこまず寒々しい杉林より,心地よい雑木林に居たがるだろうて。杉林に鹿がいるのは夜から早朝にかけてくらいのもんだ。少し雑木が生えている沢を覗いてみるが,成果無し。仕方ないので道に沿って登っていくが,最後はほぼ山の頂上が見える位置まで来て林道は終点。あのてっぺんまで行けないことはないが,凄く尖っているな。稜線を左に巻いて少し歩いてみる。成果無し。帰る。始点の車まで帰り着く。3時間ほど歩いたか。弁当を食べ,次の策を練る。近くにある,もう1カ所気になっていた場所に行くことにしよう。


 その通り道,これまで使っていた林道がチェーンで柵をしてあり,「一般車両通行禁止」となっている。工事現場の立札も。今期はなんか,どこもかしこも工事中で,勝手が違うなぁ。まあ仕方ない,今回ここに行くつもりはなかったから。

 2カ所目に到着。なだらかな支尾根が幾つも重なって,入り口が広い扇状になっている場所。緩やかな谷みたいな場所。アメリカのパソコンゲーム「ディアハンター」の「イリノイ」のようだ。斜面が急じゃないから入って行きやすい。目星を付けて,一つの沢に入っていく。途中,車が通りかかった音がする。ここは道に近いから,あんまり道に近いところには鹿は居ないかもなぁ。支尾根の一つに上り,尾根沿いに登っていく。これくらいの傾斜なら登るのも簡単なんだが。木々(雑木)はそこかしこにあるが何とかそれを縫って歩くことは出来る。遠くもそこそこ見通せる。登りながら,尾根の先,尾根の左右の沢を見ながら登る。歩いては止まり,また歩き出しては少しして止まり,耳を澄ます。鹿との遭遇は目よりも耳が先。足音や異音に耳を澄ます。当然鹿もこちらの音が聞こえるわけだが。前回はこちらが勝った。でもほとんどは鹿が先に察知する。このギリギリのせめぎ合いは体と神経に堪える。鹿がいるかどうかも分からない状態でこの状態をずっと続けなければならない。上に登るにつれ,緊張は高まる。歩くと葉を踏みしめて音がどうしても出てしまう。これはダメかな?でも,なにか音がする。そういう時は全く動けない。屈めた体も凝るし,足も曲げていて痛い。異音はもう聞こえない。暫くじっとしていたが同じ。ガッカリ。果たして,単なる勘違いか,それともギリギリの距離で鹿に遠ざかられたか。支尾根を左に渡り,沢を越え,もう一つ向こうの支尾根に行く。支尾根に登るときに鹿道らしき箇所があるため,利用させてもらう。すると,踏み分け道一杯にワイヤーが直径50pほどの円を描いて設置されていた。くくり罠だ。法律で要求されている札(氏名等を書く)はないから,違法罠。突然見つけてビックリした。慎重によけて進む。結構人が入る場所なんだ。道から近いからなぁ。鹿も用心する場所かも。支尾根を登る。成果なし。もう一つ先の支尾根へ。地図上では一番広い,なだらかな支尾根に着く。色々やってみるが成果無し。帰るか。急な沢を滑りながらようやく下り,沢に沿って下る。低い支尾根に上がって尾根沿いに下っていると,また輪になったワイヤーが目の前に。これにも名札は付いていない。外して捨ててやろうかとも思ったが,やめた。どんどん下ると,出発点の車に戻る。2時間くらい経ったか。山に入っていると時間が経つのが早いのう。荷物を片付けていると,軽トラが2台通りかかる。1台は檻を積んでいた。犬猟か。近くで犬猟をされると途端に鹿にお目にかかれなくなる。まあそれはともかく,今後どうするか。帰ろうか。

 帰路に就く。途中,前に入ったことがある沢に来たとき,あのときは朝だったことを思い出した。昼以降に来たことはなかったかな。一応行ってみるか。まだ日没まで2時間近くはある。車を止めて一応入ってみる。鹿の歩いた跡(まだ新しい)はある。でも鹿がいる気配はあまりしない。程々の所まで入ったが,引き返す。その後はまっすぐ帰宅。

 今回は,鹿の姿も見なかったが,鹿を探して合計6時間ほどかけて歩いたので,結構な疲労だった。鹿は見ずとも自分のハンティングフィールドは拡がった。次は,今回行きそびれたあそこだな。今日見たぬた場にもトレイルカメラも設置しよう。

2011年11月20日(日)
@近距離射撃

 狩猟解禁日から初めての週末,土曜は仕事だったので,日曜に今期初めての猟に行った。最初の猟だから無理せず,前年度鹿を撃った場所に様子を見に行く程度にしようか。日の出からゆうに1時間以上経過して,林道入り口に到着。ここは一般車両通行禁止なので歩くのだが,なにやら立札がある。この先は工事?でもまさか休日には仕事してないだろう,と期待をして歩き出す。すると,チェーンソーの音が。歩き続けると,音に近づいている。やっぱり工事か。休日もか。今期はここで猟は出来ないのか?かなりガッカリ。

 ここがダメなら今日はどうしようか。何も考えていなかった。とりあえず,仕方ないから,これまた前に鹿を撃った谷に行こう。谷を車で走る。思ったより木々の葉が落ちていて,見通しが利く。しかし走行中に鹿は見ない。

 谷の奥に車を止め,山道の入り口まで少し歩いた時点で鹿の警戒鳴き。おっ,さっそくか。でもこちらが予定している場所と方角は逆だから,まあいいだろう。山道を歩く。湿っているから足音はしづらいが,小枝が至る所にあり踏むとパキッと嫌な音が周囲に響く。周囲の気配を探りながら少しずつ進む。10分も経過しないうちに,目の前,20メートルほど先を小さな
鹿が鳴きもせず右奥へ飛ぶように駆けていった。音はほとんどしなかった。また鹿に先手を取られたか。うーん。少し止まって様子を窺う。鹿は逃げただろうなぁ。またじりじりと少しずつ進む。すると,沢の反対側,進行方向右奥の斜面(距離は30〜40メートル)を3頭の鹿がきびすを返して逃げ出すのが見えた。さっきの鹿はこの鹿達に合流したんだ。見えなかった。チャンスを生かせなかったことが悔やまれる。後は稜線まで余り気にせずに歩く。稜線に上がり,北へ稜線を歩く。両斜面を見ながら。天気は曇り。周囲は暗い。よく見えない。少しずつ進む。稜線の左の支尾根に曲がる。予定していた場所の手前で,稜線の反対側から足音がする。そろっと近づくが,無駄。支尾根を下るが,手応えなし。

 歩き出して1時間ほど経過したか。まあ,仕方ない。帰ろうか。トボトボと帰る。帰りの道も,一応周囲に気は配る。歩いていると,ふと,稜線の右斜面から音がする。でも,足音がしてもだいたいはその場で鹿の姿を見ることはない。遠くにいたり,音のする方に歩くと逃げられるし。それで,あんまり気がなく,音のする方を見ながら少しボーッとしていたら,木々の間からヌッと,
鹿が,驚くほど近くから鹿の顔が出てきた。鹿は左(こちら側)を向き,目が合う(合ったように見えた)。こちらはとっさに視線を外して,動かない(動かないでいるしかない)。なんということか,鹿はまた前を向き,トボトボと歩き出した。なんと。こんな至近距離で,俺が見えなかったのか。10メートルもないのに。鹿が進んで顔が木の向こうになった時に静かにしゃがみ,右膝を付き,鹿の進行方向,こちらから向かって左側の,木の切れ間を狙う。鹿の顔が出るのを待つ。都合良く鹿が通ることを願って。出た。くそっ,余りに近すぎてスコープでは視野が狭くて逆に狙いにくい。鹿が通り過ぎた。急いでスコープから目を離す。もっと左の開けている箇所で撃とう。来た。スコープで狙う。近すぎて,スコープには鹿の体は半分も入らない。前足の付け根後ろ付近を狙い引き金を引く。外しようがない。でも鹿は倒れない。目の前を右から左,稜線を越えて反対側へ飛ぶように逃げる。あ,もう1匹いた。2頭が逃げる。急いで次弾を装填しようとボルトを操作するが,手元でボルトが引っかかっている。見ると,次弾が薬室に入らず引っかかっている。くそっ,またかよ。鹿が逃げた方向に走りながら,弾をようやく抜き出す。あの調子で斜面を逃げ下ったのならどこまで追えばいいのか,と斜面下を見たら,崖下20メートルほどに倒れていた。あれ,結構小さいな(それほど至近距離で遭遇したという証拠)。死んだかな?少し動いている。苦しみを長引かせないように,とどめを刺す。

 鹿を間近で確認する。やはり思っていたのより少し小さい。40sくらいか。合唱し念仏を唱えた後,苦労して出来る限り埋葬した。斜面が滑ってなかなか上がれなかったが,ようよう稜線に上がると,そこにも鹿がいた。今度は顔を見るなり逃げていった。撃った鹿は,やっぱり,最初に出合った鹿達なんだろう。時計を見ると午前10時30分。撃ったのは10時15分くらいか。来た道を戻り(戻る途中も鹿の逃げる音が。),車に戻る。

 お茶を飲んで一息入れる。さほど寒くはない。これからどうしようか。猟初日で鹿を撃てたのは前年度と同じ。今日はもういいかなと思える。なにより,2発撃っているから,これ以上撃つと難聴になるのが心配だ。帰ろう。

 総括:どうも林道や作業道は今工事をしているところがいくつかあるみたいだ。運良く今日は撃てたが,今期どこで猟をするか,ちゃんと考えないといけない。前期もそうだが,猟の初めの方は鹿を撃つ機会が多い。これからはそうは行かなくなる。次は,違うところに行こう。

2011年3月22日(火)
平成22年度狩猟総括

猟期の最後の方では,左足小指の剥離骨折や東北関東大震災もあり,結局猟には行かなかった。猟期を通じて6回しか猟に行けなかった。鹿を撃ったのは最初と2回目の猟だけ。まあ,なんともお粗末な結果としか言いようがない。いろいろな迷いが消えなかった。流し猟をすれば比較的楽に鹿を撃てるが,そういう流し猟はあんまり好きではない。かといって忍び猟は場所を開拓しないと同じ所ばかり行ってしまう。ポイントで待つ猟も下見などの準備が必要だが行く暇がない,そうこうするうちに鹿を撃つチャンスが少なくなり,流し猟でもいいから鹿を撃たなきゃ,という焦りがジレンマとなり,なかなか・・・・。鹿を撃つには執念が必要。生半可な気持ちでいたのでは,運を頼りとするしかない。高齢化した狩猟界の行く末も少々不安だが,来期に向けて少しずつ準備を始めよう。

2011年2月28日(月)
E迷い

左足の小指を怪我して先週は猟に行かず,今週もまた少し痛めたので,あんまり長い距離は歩かない猟をするつもりで出発。あんまりちゃんと計画を立てずに行き当たりばったりで。まずはある林道へ行き,「一般車両通行禁止」の立札のところから少し歩いて様子を見に行く。ここは今期は最初にちょっと来てそれから来ていなかった所。うーん。時間帯が悪いのか,いそうでいない。数十分歩いて車に戻る。少し考えて,芸がないとは思ったが鹿を撃った作業道に行くことにした。ここも「一般車両通行禁止」。立札の前に車を止め,歩き出す。歩き出してすぐ,道上の斜面から音が。アドレナリンが上がる。我慢して様子を窺っていたが,鳥みたいだ。気を取り直して奥へ歩く。先週は鹿に先に気づかれて逃げられたから,今回は要所要所は慎重に。まだ山に目が慣れていない。1週空いたから余計に。少しずつ進む。しかし,どうもいない。雪も消え,地面も湿っているので,かなり静かに歩けるが,鹿の姿は・・・。とうとう,先週鹿に逃げられた場所に近づいてきた。ここはある程度慎重に・・・と考えるそばから,道の右下斜面(沢)から異音が。鳥か?様子を窺う。足音だ。鹿だ。どこだ?歩いたら音がしそうで動けない。でも動かないと逃げられそう。下なのは分かるがどこら辺かも分からない。覗かなきゃいけないがどうやって覗こうか。顔を出したらダッシュで逃げられそう。少し近づいて覗く。全く見えない。体の緊張がつらい。少し考え,慎重に右へ横歩きをして,少し道を戻ってから,意を決して覗いてみた。すると左の視界の限界付近に動きが。すぐ左の斜面に鹿がいた。10メートルもなかった?顔を出した途端にきびすを返して逃げ出した。先は木々が生い茂っていて視界が全く効かない。こりゃダメだな−。戻ったり先に行ったりして様子を窺ったが,木々で全く見えない。今考えると逃げられたらすぐに先に走って,向かいの道に上がったところを撃つべきだったか?鹿が上がったかどうかも分からないが。どうすりゃいいんだ。午前9時45分頃の遭遇。まあ,でも,子鹿だったからな。その意味では撃ってもしょうがないしな,と自分を慰める。奥へ進む。足跡はいっぱいあるのだが,鹿とは遭遇せず。気になっていた崖下に行ってみる。あんまり無理はしないようにしていたがどうしても気になったので。下りるのも一苦労。下りる段階から登る時の苦労が頭をよぎって憂鬱になる。ここは鹿が下りていく鹿道だな。沢の底まで下りた。さて,登らなきゃ。途端に汗が噴き出す。足首周りの筋が悲鳴を上げる。アキレス腱を切ってしまえば最悪のたれ死にだ。銃も持って登るからきついのなんの。見上げるとすぐそこなのになかなか上がれない。ようやくヘトヘトになって上がりきった時は汗がそこかしこから噴き出している。しばらく動けない。少し休んでトボトボと帰る。鹿はいない。車に戻り,違う場所へ。これまた前期鹿を撃った林道へ。林道を行く途中,目の前に軽トラ。荷台に檻を積んでいる。先客,しかも犬なので,早々に引き返す。ある広い谷を車で回る。途中の支道に入る。奥に停車し昼食のおにぎり。雲行きが怪しい。気になっていた場所(待ち猟候補地)に行ってみたい。出発。支道から本道に出る前に,気になる沢を見つけたため,歩いて入ってみる。新鮮な糞もある。

もっと奥まで行きたいところだが,雨が降ってきた。車に戻る。どうしようか,一応,待ち猟の候補地に行ってみる。手前に車を止めて,歩いて行ってみる。ここではオス鹿や,メス二頭を見かけた。どちらも午後3,4時頃だったか?待ちが出来そうな場所を下見したが,雨が・・・・。もう帰ろう。小指も痛い。これ以上歩くのは辛い。県道25号線を東陽に向かう。県道沿い,集落のすぐ近くで,銃を持ってハンターがグループ猟をしているようだ。何考えてるんだか。これだから猟友会やハンターはよく思われないんだよ。まあそれはともかく,今回も鹿を撃てず。少し,方針に迷いがあるのか,執念が足りないのか,運に恵まれない。今期は行けても後2回くらいしか猟はできない。さて,どうしようかのう。

2011年2月14日(月)
D犬

4回目の猟。違う場所でやってみることにした。しかし歩くのを主にするのは変わらず。雪が深くて二の足を踏んでいた奥地へ。この奥地は「一般車両通行禁止」。手前の空きスペースで車を止め,雪にズボズボと足を取られながら延々と歩く。またまた暑い。鼻水は出るのに暑い。どこまで行けるだろうか,行けるだけ行ってみる。鹿の足跡はある。雪だからハッキリ残っている。でも・・・・これは犬?どんどん奥に進んでも,犬の足跡が続く。あとは山鳥だかキジだかの足跡が点々と雪の上に続く。とうとう雪が深くて進めない位の場所まで来た。なのに犬の足跡はある。車も来ない場所を選んでこんな奥地まで来たのに,犬は来るか。ハンターの足跡はない。犬だけ働かせて座ってタバコでも吸っていたのか(野犬の足跡かも知れんが・・・)。引き返す途中,車から数qのところで鹿の警戒鳴き。おう,鹿はいたか。車に帰る前に少し寄り道をして北へ行く。鹿が好きそうな場所があったが,痕跡はよく分からない。車に戻っておにぎりを食べ,10分ほど休憩して,どうしようか思案。先週行った場所は少し遠い。そうだ,1回目と2回目に鹿を撃った場所は,3回目に行った時には途中木が倒れていて車が通れなくなっていたな。犬は入るだろうが車が来なければ歩ける。ということでその場所へ。ここも「一般車両通行止め」だからその看板の前,道路の脇に車を止めて出発する。準備をしているとパジェロが通りかかる。オレンジのジャケットを着たハンターだ。この林道に入りたかったのかも知れん。ハンターは細かなルールを守るより獲物が欲しい。俺がいなければあのパジェロは林道に入ったかもしれんな。まあいい,歩き出す。先週よりは雪は少ない。ここに来た理由は,この道の奥の気になっている場所に行ってみるためだから,途中は結構早めに歩いた。それでも少しは注意して歩いたが。先週よりは音を立てずに歩ける。鹿の気配はない。半分以上歩いて,前期に鹿を撃った場所に来る。ここはいつ来ても鹿はいそう。上の斜面が雪一色。上を見ながらある程度ゆっくり歩いた。少し気が抜けていたかも知れない。突然前方の道付近からザッと音がして,タタッ,タタッ,ザザッ,ザザッと走り去る音。鹿でしかあり得ない。30メートル程か。この30メートルがくせ者だ。もっと遠くで気がつけばゲット率が上がるが,なかなか・・・。どう考えても追いつかない急ぎ方だったし,道は谷の反対側に続いているので,後戻りして向こうの斜面が見られる場所を探したが,ダメだった。鹿の動く音はしているが,それも次第に消えていった。鹿は逃げたら後方にコソッと回って逃げ去ることもあるため,念のためもっと後戻りしたがダメだった。いない。うーん,仕方ない。.姿は見えなかったが,間違いなく鹿だ。鹿がいた場所に行ってみる。足跡がしっかり残っている。

ずっと追っていくと,途中から道の下の斜面に下っている。どこに行ったのやら。奥に行って,気になる場所を見てみたが,成果はない。途中,銃声がした。俺から逃げた鹿かも,と一瞬思ったが,少し場所が違う。同じ鹿だったら,追い出す役目を犬じゃなくて俺がやったということだ。まあいい。
車に戻り,帰りがてら,2年前に鹿を立て続けに撃った林道へ。工事中か。なら鹿も出てこないかも,と思ったが,一応行ってみる。鹿はいない。ハンターの車も来ない。林道を出る。帰り途中,もう一つ気になっていた脇道に入ってみた。以前はここを歩こうと思ったこともあるが,車で行ってみると(もちろん通行禁止の看板はない),かなり長い。ここを歩かなくて良かった。延々と行くと,どうやら鉄塔管理道のようだ。終点は鉄塔付近。少し下りて様子を眺める。おうおう,鹿の遊び場だなこりゃ。足跡何のかんのといっぱい。でもここはすぐ下に集落があるみたいだ。銃は使えない。うーん。帰ろう。今回は鹿の姿が見られなかった。10キロ以上歩いてそれなりの充実感はあるし,鹿との遭遇もあったが,鹿を撃ってないからなぁ。だからといって車で鹿を探し回って,見つけたら車を降りて撃つなんて流し猟はあんまりねぇ。贅沢も言えないんだが,そればっかりやり出すとホントに成長しないからなぁ。自分の足で歩くことすらおっくうになってしまう。さて,残り1ヶ月,どうすべきか。成果を求めるか,今までのやり方を貫くか。

2011年2月6日(日)
C暑い

3回同じ場所に行っていたので,今回は違う場所に行かなきゃ。前期に忍びで鹿を撃った場所に行こう。午前9時半頃,雪がだいぶ残っている。道を外れ,斜面を登る。歩いては止まって耳を最大限澄ましながら。少ししてふと銃を見ると,ボルトがない。くそっ。ボルトを外したまま車に置いて来てしまった。やけくそでバリバリ音を立てながら降りる。雪が固まった道を滑りながら車に戻り,銃にボルトを装着して再度出発。また同じ場所から登り出す。ボルトがないことに気づいた場所からもう数十メートル登ったところだったか,左の方でガサゴソ。鳥だなぁ。右前でもガサゴソしている。しばらく息を整えたところで,立ち上がって歩き出したその瞬間,目の前,20メートルほどを鹿がきびすを返して大急ぎで逃げ去っていく。あっけにとられる。鹿は文字通りあっという間に遠のき,見えない場所で警戒鳴きを繰り返す。右後ろでもガサゴソいってる。何頭か鹿がいたのか。鹿はしつこく鳴く。後悔が胸を渦巻く。右前のガサゴソも鳥だと思ったのに!もっと注意してれば・・・。それより何より,ボルトを取りに帰る時にバリバリ下りなければ・・・。もっと言えばボルトを忘れなければ・・・。止まっていてもしょうがないので少しずつ動く。右の小高い場所を越えて逃げて行ってしまったみたいだ。この斜面ではよく鹿を見た。同じようなシチュエーションで3回目か。まさか同じ鹿ではあるまいな。鞍部に出る。鹿の足跡はハッキリ雪の上に残っている。よく見ると,鹿の足跡と共に犬の足跡も。あー,ここでも犬が入っているか。こりゃだめだなー。まあ一応行くか。

雪の上は歩きにくい。それ以上に,音がうるさくてげんなりする。鹿に知らせているようなもんだ。鹿の糞はいっぱいある。稜線を北へ数百メートル。前期に鹿を撃った斜面を臨む場所に来たが,なかなか見通しが悪い上に,鹿がいる気配もない。仕方ない。戻ろう。来た道を戻る。車に着いた時には暑くて暑くて。寒い時用のハンティングウェアが暑すぎた。脱ぐと体中から湯気が出て止まらない。
一息ついて,どうしようか思案。これまた前期行ったことのある林道へ行こうか。出発する。雪が本当に多い。山鳥を見た。つららも凄い。到着し,弁当のおにぎりを食べる。鹿の足跡はハッキリ残っている。遠くで犬の鳴き声がする。12時過ぎに出発。少し長めに歩くつもり。雪とぬかるみの坂道を登る。10分ほどした頃か,銃声。2発?さっきの犬はこのハンター?まあこっちは単独猟だ。焦らずやるさ。ブーツの底にどんどん泥が付いていき重く,歩きにくくなる。日陰側(北)のせいか,鹿の足跡は見当たらない。道の下の斜面にもいない。どこまで行けるか歩く。暑い。風は冷たいがとにかく暑い。途中鹿の足跡をようやく見かけた。でも気配は感じられない。1時間半ほど歩いた。道が下り気味になって結構経つ。これ以上は辛い。帰ろう。帰りはきつい。この道は稜線の北側を巻いているが,稜線を越えて南側に行けば鹿はいるんだろうがなぁ。とてもこの斜面を登って稜線を越える気力がない。もう少し,もう少しと自分に言い聞かせつつ戻る。帰りは時間的には早かったがとにかく疲れた。車に戻る。服もベストも汗だくでびっしょりだ。まだ3時過ぎだ。もう1カ所くらいは行けそうだが,新規の猟場を開拓していないため,目星が付かない。一応,遠ざからず,帰路に就きながら考えよう。途中,ごついタイヤを履いたランクルと行き違う。道の近くで入っていない,廃林道を,この際探ってみることにした。ものすごく,鹿が好きそうな場所だ。川にも近く,平坦な場所が多く雑木林。倒木も多い。こういう,うち捨てられた山は鹿の格好の遊び場所だ。夜とかはいっぱい鹿がいるんだろうが,今はいないようだ(ちょっと上に登れば鹿がいそうだが)。ここなら待ち伏せに良さそうだが,果たしていい時間帯はいつなのだろうか。道が陥没したり倒木もいっぱいだが,最後は行き止まり。ここは日差しがちょうど良く,温かな,居心地のいい場所だ。絶対鹿が来るはずの場所だが,悲しいかな,場所の生かし方が分からない。車に戻り,帰路に就く。
2回続けて,鹿を撃てなかった。最初の2回が上出来すぎたのだが。すこし,猟の研究がおざなりになっているように思える。もう少し頭を使わなければ。今回は10キロ歩いてある程度充実感はあったが,鹿は1頭しか会っていない。とにかく暑かった。

2011年1月30日(日)
B雪

ずいぶんと猟に行けなかったが,仕事を平日に詰めてやって,週末に時間を取れたのでやっと行ける,と思っていたら朝から頭痛。せっかく時間を空けたのによりによってこんな時に・・・・。昼にようやく起きる。薬を飲んでもなかなか収まらなかったが,少しずつ頭痛や首の痛みが治まって,午後2時出発。久々の猟なので様子見で、また前回の場所に行くか。3回連続同じ場所に行くなんて工夫も何もあったもんじゃないが。八代市街では普通の,日差しがまぶしいくらいの晴天だったからあんまり気にしていなかったが,国道から山に入った,ある集落の付近から様子が変わる。チラホラと雪が舞い始める。こんな里で雪が降ってるなら奥は凄いことになってるんじゃないか?途中,猟の軽トラ2台とすれ違う。一台は荷台に犬の檻を置き,もう一台には小さい猪が横たわっていた。獲れて良かったね。どんどん進む。人里を離れる。奥はやはり,雪があった。道に雪が少し残っているところから始まり,とうとう全面雪。チェーンは着けた方がいいかのう。そろそろと進む。かなり雪が深いからどうしようかと思うが,前回の場所までは少なくとも行こう。到着し,車を出た途端,ブーツが雪に埋まる。ここはもしかして一番雪が深いか?午後3時出発。しかし,雪を踏むとザックザックと盛大な音を立てる。道全体が凍っているからバリバリという音もする。こりゃ鹿なんか獲れるわけ無い。一般車両通行禁止の道なのに,軽トラらしき轍が雪にしっかり残っている。猟する奴はモラルがなぁ。釣りと一緒だ。途中,木が横倒しになって道をふさいでいた。軽トラはここで無理矢理方向転換して引き返したみたいだ。木の下をくぐって先に進む。犬の足跡がある。新しい。今日だな。犬が入ったなら鹿は警戒して山の上に逃げてるから,出てくるわけ無い。こりゃダメだな。鹿の足跡は幾つもあるが,ダメだ。雪があると山の斜面などの見通しは良くなるが,鹿は見当たらない。ザックザックバリバリ音をさせて歩くだけ。風が冷たくて顔が痛い。耳が痛い。またしもやけになるなんて嫌だ。でも聞こえなくなるのも嫌だから耳当ては出来ない。風が凄い音を立てて,時折雪を舞わせる。風向きもしょっちゅう変わる。1時間以上歩いて,引き返す。引き返す時も道の上下左右を探りながら歩いたが,暗くてよく見えない。鹿の気配もない。くそー,犬め。車に戻った時には5時20分くらい。汗だく。温かいお茶を飲んで一息つく。早く帰らないと雪がもっとひどくなるかも知れん。帰ろう。道すがら鹿を撃つ機会もあるかも知れん。雪の残る道を滑らないようゆっくりと帰る。神経を使って雪が残る場所をようやく越えた。ある滝の近くを通っていたら,カーブを曲がって出たら鹿2頭が至近距離。道下に下りていく。どうしようか迷ったが,まだ日没時刻ではないから撃てる。車を降り,銃を取り出して弾を装填し,走る。音がしているがなかなか姿が分からない。身を乗り出すと,ザッと二頭が尻を向けてまた逃げる。40メートルか。木々が邪魔してよく見えない。これが雪が残っている場所なら楽に撃てるのだが。右往左往したが鹿の姿は見えず遠ざかる。撃てる時刻が過ぎたので諦めて車に戻り,帰宅。結局,今回見た鹿は2頭だけ。犬の影響か,それとも運がなかったのか。もう少し検討の余地があるようだ。
(歩き始めて10分の状況)

2010年12月5日(日)
A新しいハンティングブーツ

今期2回目の猟。今日行けないと今年はもしかしたらもう猟に行けないかも知れなかったので,ある程度意気込んで臨んだ。しかし,軽く寝坊。プランとしては,この前昼3時から歩いた林道を,朝歩いてみる(その後余った時間は何をするかは随意その場で決める)。同じ場所・道でも,時間帯が違えば全然違った表情を見せる。シカもそうだ。まあ,気候によっても左右されてしまうが。要するに一つとして同じ条件はないということだ。だからこそ工夫しがいがあるのだが。林道入り口に着き,午前9時出発。今回は登山靴ではなく暖かい時用の新しいハンティングブーツを履いている。それに双眼鏡も装備した(特殊なストラップ付)。このブーツはいい。初めて履いてまだ硬いのにいい感じになりそうな予感。乾燥した葉を踏むとバリバリいうのは仕方ないが,登山靴とは比べものにならないほど静かに歩ける。天気は晴れ。今は寒いが昼頃には暑くなるかな?朝はシカが出る予感がバリバリにある。慎重に歩く。前回よりもゆっくりと。9時40分頃,道は沢を渡る形になっている。こういう場合,下の沢を慎重に覗きながら歩くことになる。沢の上から下を覗く。まだ目が山の風景に慣れていなくてピントが合いにくい。でも,50メートルくらいか,下にシルエット。胴体・・・首・・・二つの耳・・・。シカだと考えるのに全く不自然ではないシルエット。だがぼやけていて自信が持てない。喜び勇んでもだいたい倒木だったりする。でも前回はシカだったからなぁ。こんな時のために今日は双眼鏡を持ってきた。早速役立つなぁ。・・・よく見えない。ピントが合ってない。くそ。そうこうするうちに物体が動いた。シカがきびすを返して逃げ出す姿が双眼鏡から見えた。・・・双眼鏡でなくて最初からスコープで覗いていれば撃てたのに!少し落胆してトボトボと歩き出す。でもこの調子ならシカにはもっと会えそうだ。その後数十分歩いたか,道の下からガサゴソと音がする。しかし姿が見えない,音が遠ざかる。仕方ないな,歩き出す。100メートルほど少し歩いたところで道下を覗く,すると,さっき通り過ぎた道の下あたりからまたゴソゴソと音が。様子を窺うと,突然激しい音がして物体が数頭右から左下に駆け下りていく。あんまり早いから猪かと思ったが,尻が白かったのでシカだったのだろう。2頭は確実にいた。左下に逃げたので,こちらも道を進んで様子を窺うが,分からない。かなり日が照ってきた。日の当たる道上にある葉っぱは乾燥していて,どんなに注意深く歩いてもバリバリと音がする。仕方ない。尾根を巻いた道を歩き,比較的開けた場所に出る。ここの数十メートル先の道下で前回シカを撃っている。ここはいつ来てもシカがいそうでドキドキする。でもこんなにバリバリいわせてれば道下にシカがいてもすぐに逃げられちゃうな。鳥が相変わらずバサバサ飛び回って五月蠅い中,少しずつ足を進めていると,ふと目の前の道を見ると変なものが,道は少し先で緩い登り坂になっていて,その先が下っている。その坂向こうでなにやら灰色の背中が見える。動いている。すぐ撃てるようスコープで覗く。ここからは猪のように見えるが,歩き方はシカに見える。なにぶん,少ししか見える部位がないから判別しがたいし,悠長にしている時間もない(今にも背中が消えてしまいそう)。まあこの際シカでも猪でもいい。急所を狙えないのが心残りだが,うまい具合に背骨に当たってくれればと思い引き金を引く。距離は30メートルもないか。当たった(はず)。すると少し右から鹿の頭が見えた。2頭以上いる!。ボルトを操作して次弾を薬室に送り込みながら歩き出す(もちろん空薬莢は拾ってポケットへ)。ここで走って追いかけてもいいが,走って息が上がっても狙いが定まらないから意味がない。悠々と歩く。俺も成長したもんだ。シカ達は山側と道下の斜面と二手に分かれたように見えた。現場に行くと確かに山の斜面にも道下の斜面にも足跡が残っている。今は姿どころか音もしない。血は見つからないがだいたいそういうものだ。さて,どうしようか。発砲した以上付近に別のシカがいたとしても撃てる可能性は低くなった。まあ,一応,奥に進んでみよう。さっき撃ったシカも当たっているからどこかで追いつくかも知れない。少し進んだところで,右下の沢を見る。ふともっと右を見ると,シカが逃げた。警戒鳴きをする。動きが鈍く,右後ろ足を庇っているみたいだ。あれがさっき撃ったシカだと簡単に分かった。少々追いかけてみたが,とても追いつくものではない。シカは強い。急所を外したらシカはどんどん逃げる。人間が追いつくものではない。諦めて先へ。暑い。汗が出る。林道奥でもシカがいそうな場所はいくつもあるが,見た限りはいる様子がなかった。もっと違う時間帯がいいかもしれんな。結局,前回1時間で歩いた道を2時間40分も掛けて歩いた。引き返す。途中ガサゴソいう場所もあって緊張して身構えていたが結局鳥だった。撃ったシカに再会した場所付近を見た時,血らしきものがあった。双眼鏡で見るとべったりと木に着いていた。やはりちゃんと当たっていた。これなら助からんなぁ。1時間以上掛けて車に戻る。前回と同じく汗だくになった。弁当を食ってどこか違う場所を検分しようかと思ったが,適当な場所が無くていろいろ探しているうちに下の集落まで下りてきてしまった。ここまで来たらもう帰った方がいいだろう,弁当を食べずにそのまま帰宅。明日は仕事だからこの程度で良かったかも。シカも撃てたし。2回連続でシカを撃った。ハンティングブーツは期待通り。双眼鏡はいまいち。もう少し扱いに習熟しなければ。でも,この調子で毎回発砲してたら耳がヤバイな。今回も右耳が痛い。

2010年11月20日(土)
 @平成22年度初猟
今期初の猟。少々寝坊したが,出発。今期の出発点として考えていた場所に午前9時30分に到着。道が崩れて車が入れない林道に入る。まだ歩き慣れずにバランスを崩しつつヨタヨタと歩く。進行方向は逆光だ。うーん。どこまで続くこの林道は?ん?木々の間を変な陰が。ぞわっとする。近くまで行ってみるが,よく分からない。林道を歩く。数十分で終点。少し休憩して戻る。戻る途中に先ほど気配がした場所で足音らしき気配。やっぱり鹿だったかな。でも探せない。奥の林道に少し行ってみよう。ここは猟を始めた頃から頻繁に来ているところ。落ち葉で盛大に足音がする。木には鹿が角を研いだ跡がある。まだ新しい。若いオス鹿がやったんだな。

糞も足跡もある。まだ葉が落ちきっていないから見通しが悪い。車に戻る。歩くと暑くてしょうがない。ベストとジャケットを脱ぐと風が気持ちいい。体中汗だくだ。 なんだか眠くなった。暖かく,ちょっと仮眠するつもりが1時間ほど寝てしまった。昼食を取る。今日はなんて暖かいんだ。   場所を変えよう。どこに行こうか。初日だからな,あんまり遠いところには行かないようにしようか。考えていた場所のうちここから一番近いポイント(林道)に行ってみようか。途中,車とすれ違う。福岡から来たとのことで,五木から八代の国道3号線に一番近い道を現地の人に聞いたそうだ。何でこんな道を教えるかねぇ。午後3時,ポイントに到着。林道に良くあることだが,ここも「一般車両通行禁止」。なので,看板の前に車を止めてそこから歩く。ここは前期(平成21年度)に鹿を撃っている。車が入ってこなけりゃ邪魔されずに鹿を探して歩けるんだが。地面は一面落ち葉が絨毯のように敷き詰められており,登山靴で歩くと盛大に音を立てる。暖かい時期のハンティングブーツが欲しい。半ばあきらめの心境で音を立てながら歩くと,何分もしないうちに前方道上の木々の間(これも逆光)に忍び歩く陰。右から左へ。約20メートル。一瞬で鹿のイメージが脳裏に鮮明に飛び込む。子鹿だ。鹿に先に気付かれているから難しいとは思ったが,少し入り込んで探す。だめだ。あきらめて戻る。逆光じゃなかったら全く気付かないところだった。音も全くしなかった。やるじゃないか,子鹿。林道に戻り歩き続ける。この前ここに来たのは今年の2月頃か,寒くて,木々の葉もすっかり落ちていた。今は違う。なかなか風情がある場所だ。シカも好みそうな場所だと思うがなぁ。うん?道下の斜面で音がする。途端に周囲の音がシャットダウンしその足音らしき葉擦れの音だけに神経が集中する。よく見えない。屈んで頭だけを木々の間から出してしばらく様子をうかがう。動きが見えるが,どうも,鹿ではない?小動物みたいだ。少しがっかりし,音をそのままにして道を進む。進んでいると,2回,鹿に鳴かれる。いるなぁ。でも姿も見えない。しつこく鳴かれる。駄目だなぁ。前期鹿を撃った場所に着く。葉が付いているとこうまで様子が違うものなのか。鳥がそこかしこにいてうるさい。カラスも。本当に山で遭うカラスは不気味だ。道を進む。道下の斜面をときおり眺めるが,いまいち。シチュエーション的には鹿が好みそうな場所なんだがなぁ。道を歩くと,薬莢が落ちている。ここで誰かが鹿を撃っているか。誰にせよ,薬莢は持って帰れよ。ずいぶん歩く。なんと気持ちの良い道か。しかし,銃も装備も重く,体が痛くなって疲労してきた。まあ,初日だから仕方ないか。4時になったら引き返そう。4時になる。この林道の終点近くまで来た。仕方ない,戻るか。戻るときにチャンスがあるかもしれない。そこそこ楽しめた。帰ってまた作戦を練ろう。来たときと同じく,少し歩いてから立ち止まって物音を探ることを繰り返しながら林道を戻る。うん?薬莢?これは来たときには気付かなかったな。まだ新しいな。今期になってから誰かが鹿を撃ったのか。どこを向けて撃ったのだろうか。しばらく歩くと道下の方からまた物音。さっきの小動物の場所かどうかは覚えていないが,また小動物?と思った。一応背を屈めて慎重に下を除く。よく分からん。なんかいるようだが。スコープで覗く。3倍だが,よく見えない。一旦顔を引っ込めて6倍にする。相変わらずガサゴソいっている。どこを覗いてるか分からなくなりあわてて3倍に戻す。鹿じゃないか?少し動悸が激しくなる。ここからじゃよく分からん,一旦下がって,数メートル右から大きな木の横から少し覗く。ここからならハッキリ見えるだろう。スコープを覗く。黒い,太い首,
鹿だ。それも雄のようだ。こっちを見てる!。スコープの十字は奴のバイタルエリアを捉えてる。やれる。無意識に引き金を絞って・・・クソッ!セイフティを掛けたままだった。急いでセイフティを解除したが,動揺で十字が上下に揺れる。なんとか収めるために息を吐いたところで,鹿は「ピャッ」と鳴いて左へ,スコープから逃れてしまった。途方もない喪失感。一気に上がった血圧で首や頭の血管が痛い。動いていないのにハアハア息が切れてどうしようもない。しばらく動けなかった。なんてチャンスをフイにしちゃったんだ!。少しずつ落ち着いてくる。まあ初日だ,鹿をスコープで捉えられただけでも上出来じゃないか。距離は35〜40メートルくらいかな?やっと立てるようになった。体を引きずるようにしてまた歩き出す。抜け殻だ。とぼとぼと歩き出したのもつかの間,一つ先の沢,道下の斜面を何気なく見た。ぼんやりとした黒いもの。距離はさっきと同じ位。鹿?と怪訝に感じるが,大体こういうときは切り株や倒木だったりしてガッカリするするのがオチ。動く様子もないし。でも直感もたまに当たる。気になる。さっきの今で疲れていて,確認するのもちょっと億劫に感じたが,一応スコープで覗いて確認する。鹿か?間違えて別のものを撃っちゃうと大変だから慎重に目をこらす。スコープの中の物体は横向きで,左側がどうも尻のようだ。黒い。反対側の顔は?木でよく見えない。いや,口の辺りが白い。鹿に間違いない。信じられないが現実だ。今度こそセイフティを解除し,バイタルエリア(前足の上辺り)をスコープの十字で捉えて引き金を引く。轟音が響き渡る。鹿は斜面を俵のように横倒しで転げる。手応え充分,確実だ。すると鹿の数十メートル右の斜面でもガサガサ。他にも鹿がいるようだ。前方道上の茂みからも音が。なんだなんだ?何頭いるんだ?撃った鹿が何回か鳴いているようだが,そのうち鈍い音がして,鳴き声は止んだ。どうする?この斜面を下りて確認するか?下りられなくはないが,登る時にただでは済まなそうな嫌な,危険な予感がする。道上からの音は止まない。嫌な感じ。音を伺っていたが,しばらくガサガサいって去る気配がない。発砲時刻午後4時40分頃。鹿の回収・確認もあきらめて,その場を離れる。今日の日没は午後5時14分。5時過ぎに車に到着。もう帰ろう。   帰る道すがら,雄鹿(スパイク)1頭,雌2頭,テン1頭,タヌキ1頭と遭遇。初日から成果有り。幸運だった。次はいつどこに行こうか,計画を練らなければ。



 

  


                     
八代わかば法律事務所 ホームへ